著者
岩崎 聡 宇佐美 真一 髙橋 晴雄 東野 哲也 土井 勝美 佐藤 宏昭 熊川 孝三 内藤 泰 羽藤 直人 南 修司郎
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.149-155, 2017 (Released:2019-02-13)
参考文献数
8
被引用文献数
1

平成28年2月下旬に日本耳鼻咽喉科学会に登録している人工内耳実施施設109施設を対象に日本耳科学会人工聴覚器ワーキングループによるアンケート調査を実施した結果を報告する。85%の施設で平均聴力90dB未満の患者が人工内耳手術を希望されていた。48%の施設で一側の平均聴力90dB未満の患者に人工内耳手術を行っていた。82%の施設が1998年の適応基準の改訂が必要と考えていた。人工内耳手術を行った最も軽い術側の平均聴力レベルは91dB以上が20. 7%、81〜90dBが51. 7%、71〜 80dBが14. 9%であった。93%の施設で適応決定に語音明瞭度も重要と考えていた。67%の施設が両側人工内耳を実施したことがあった。本アンケート調査結果を踏まえて、成人人工内耳適応基準改訂が必要と考えられた。
著者
髙橋 美奈子 谷部 弘子 本田 明子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.72-89, 2019

<p>日本語が「第三者言語」として使用される機会が増えている現在、第三者言語接触場面における実証的な研究の必要性は高い。本稿では、実態と意識との乖離が指摘されているジェンダー規範を取り上げ、日本語学習者がどのようなジェンダー規範意識をもっているのかについて、相手言語接触場面と第三者言語接触場面を比較し明らかにする。分析に使用したデータは、留学生の日常談話データおよび意識を明らかにするための半構造化インタビューである。結果として、学習者は来日前から日本語のジェンダー規範についての知識があり、規範を肯定的にとらえていた。しかし、実際の言語使用においては、意識と異なり、規範にとらわれない自由な言語使用がみられた。中には、第三者言語接触場面より相手言語接触場面での方が日本語のジェンダー規範を順守しようとする言語使用もあった。学習者のもつ規範意識と実際の言語使用との複層性にどう向き合うか、日本語の教育に携わる者の意識が問われている。</p>
著者
中西 良孝 岩成 文子 髙山 耕二 伊村 嘉美
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.21-31, 2019

<p>クマザサ抽出残渣(以下,ERDB)の畜産的有効活用を図ることを目的として2つの試験を行い,試験1では,ERDB原物の化学成分,栄養価および反芻家畜による嗜好性を明らかにするとともに,保存性を高めるために米ヌカ類を添加してサイレージ調製した場合の発酵品質,栄養価および嗜好性についても検討した.サイレージ調製については,ERDBのみのERDBサイレージ(以下,ERDBS)区,米ヌカまたは白ヌカを10%添加した米ヌカ区および白ヌカ区の計3区を設定した.試験2では,ヤギに市販ルーサンヘイキューブ(HC)のみを給与した区を対照区とし,HCとERDBS, 米ヌカ添加ERDBSまたは白ヌカ添加ERDBSをそれぞれ乾物重比で8:2に混合したERDBS・HC区,米ヌカ添加ERDBS(以下,米ヌカ・HC)区および白ヌカ添加ERDBS(以下,白ヌカ・HC)区の3区を試験区として計4処理区を設定した.</p><p>試験1の結果から,ERDBの粗タンパク質(以下,CP)含量は10.4%,粗脂肪(以下,EE)含量は7.4%と稲ワラのそれらの2倍以上であり,粗繊維含量も45.7%と高く,両飼料間で化学成分に大きな違いが認められたものの,ERDBの可消化養分総量(以下,TDN)は45.5%と稲ワラのそれとほぼ同等であった.しかし,ヤギおよびウシによる嗜好性は稲ワラや輸入乾草に比べてERDBで劣ることが明らかとなった.また,サイレージのフリーク評点はERDBS区と比べて米ヌカ区および白ヌカ区で有意に高く(P<0.05),いずれの区も62点以上と品質は「良」であった.さらに,ヤギおよびウシによるサイレージの嗜好性はERDB区およびERDBS区と比べて米ヌカ区および白ヌカ区で有意に優れた(P<0.05).試験2の結果から,ヤギの代謝体重当たりの乾物,CPおよびTDN摂取量,1日の個体維持行動型割合および粗飼料価指数に有意な区間差は認められなかった.血液性状については,血中総ビリルビン濃度以外,有意な区間差が認められず,すべての項目はほぼ標準範囲内であった.</p><p>以上より,ERDBを原物のまま密封保存してもサイレージ化は可能であるが,米ヌカ類を添加することで発酵品質,栄養価および嗜好性がさらに向上することが示された.ただし,米ヌカ類添加ERDBS中のEE含量が7%以上と高かったことから,他の飼料と混合給与する必要があるものと考えられた.また,ヤギにHCの20%(乾物重比)をERDBSまたは米ヌカ類添加ERDBSで代替給与しても,飼料利用性や健康状態がHC単体給与の場合と比べて遜色なかったことから,それらのサイレージは反芻家畜の飼料として利用可能なことが示された.</p>
著者
平木 大地 植原 治 原田 文也 髙井 理衣 高橋 周平 虎谷 斉子 森川 哲郎 安彦 善裕
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.271-278, 2019 (Released:2020-01-07)
参考文献数
24

目的 : ホップには抗菌効果のあることから, 口腔細菌に対する抗菌作用も期待できるが, 歯周病原細菌Porphyromonas gingivalisに対しての抗菌効果およびそのメカニズムについては明らかにされていない. 本研究では, ホップの成分であるキサントフモール (XN) のP. gingivalisへの作用についてRNA-Seqによる網羅的解析を行った. 材料および方法 : 歯周病原細菌P. gingivalisへのXNの影響について, 次世代シーケンサーを用いたRNA-Seqによるトランスクリプトーム解析を行った. P. gingivalis W83株をXNと嫌気培養し, 最小発育阻止濃度 (MIC) の測定, 抽出したRNAを用いRNA-SeqおよびReal time PCRによる再現性の確認を行った. 結果 : トランスクリプトーム解析で発現が増加していたものにmolecular chaperone GroES, nucleotide exchange factor GrpEおよびmolecular chaperone HtpGなどのHeat Shock Proteinにかかわる遺伝子が認められた. 低下していたものにFe-S cluster assembly protein SufB, Fe-S cluster assembly protein SufDおよびFe-S cluster assembly ATPase SufCが認められた. SufB, SufDおよびSufC遺伝子は, 鉄の取り込みや鉄-硫黄クラスターの形成において重要な役割を果たしていると考えられることから, XNはP. gingivalisの発育に必要な鉄の取り込みを阻害する可能性がある. 結論 : ホップ成分XNがin vitroで歯周病原細菌P. gingivalisの発育抑制効果を有することが示唆された.
著者
髙岡 豊 浜中 新吾 溝渕 正季
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.35-58, 2012-07-15 (Released:2018-03-30)

The paper considers the experiences and the perceptions of the Lebanese toward cross-border movement and explains its effects on contemporary Lebanese politics and societies. To this end, we analyzed the results of “Middle East Opinion Poll (Lebanon 2010),” which was conducted by the Beirut Center for Research and Information (BCRI) in May and June 2010. There are some widespread stereotyped images about the Lebanese; for example, they are cosmopolitan, multilingual, and business-oriented, and tend to be entrepreneurial. These images have led the Lebanese to be commonly known as the “New Phoenicians” or a typical case of “Trade Diasporas.” However, the credibility of these images has not necessarily been verified. In this paper, therefore, we attempted to verify the stereotyped image that all the Lebanese are cosmopolitan, by scientific methods and rethought conventional wisdom. The result suggests that all the Lebanese and Lebanese emigrants not necessarily embody the stereotyped images of “New Phoenicians” and “Trade Diasporas,” and there is room for further research on the patterns of cross-border movement of the Lebanese.
著者
平賀 篤 髙木 峰子 隆島 研吾 鶴見 隆正
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.505-510, 2019 (Released:2019-08-28)
参考文献数
19

〔目的〕本研究の目的は,健常成人に対し超音波療法(ultrasound therapy:US)とスタティックストレッチング(static stretching:SS)の実施条件による検証を行い,併用の有効性を明らかにすることとした.〔対象と方法〕健常成人男性13名を対象とした.下腿三頭筋の筋腱移行部に対しUSとSSを,①US照射中にSSを同時実施,②US照射直後にSS実施,③US単独実施,④SS単独実施の4条件で実施した.測定項目は足関節背屈可動域,深部組織温,深部血流量とし,介入前後の変化量を比較した.〔結果〕背屈可動域の変化は,US同時群が他条件に比べ有意な増大を認めた.US直後群はUS単独群,SS単独群と比べ有意な増大を認めた.〔結語〕可動域変化を目的に行う場合,USとSSを同時に行う重要性が示唆された.
著者
髙橋 直哉
出版者
法学新報編集委員会
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.11・12, pp.1-27, 2015-03-16

本稿は、犯罪化の正当化条件の総体を体系的に示す「犯罪化論」の構築を試みるものである。犯罪化は、国家が刑罰という峻厳な制裁を用いてある行為を規制するものであるから、それが正当化されるためには、そのような行為を規制することが国家の果たすべき役割に含まれるといえ、かつ、そのように強制的に規制するだけの特別な理由がなければならない、という認識を出発点として、犯罪化の正当化条件を、「国家の介入の正当性」「犯罪化の必要性」「全体的な利益衡量」「刑罰法規施行後の検証」の四段階に分けて、それぞれの意義・内容、および、それらの相互関係について考察を加えている。従来、わが国ではあまり理論的分析が加えられていなかった刑事立法のあり方について、道徳哲学・政治哲学の知見も交えながら一試論を展開するものである。
著者
石原 与四郎 髙清水 康博 松本 弾 宮田 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.Supplement, pp.S41-S62, 2014-08-31 (Released:2014-12-26)
参考文献数
40
被引用文献数
2 2

宮崎県の日南海岸沿いには,古第三系~新第三系の深海相がよく露出する.このうち日南市の猪崎には,古第三系日南層群がオリストリスとして見られる.その内部はチャネル・レビーシステムのタービダイトサクセッションから構成されるが,ソールマークや生痕化石が顕著に観察できるとともに,様々な液状化・流動化構造がよく発達していることで知られている.日南層群を不整合で覆う宮崎層群は,前孤海盆充填堆積物であり,粗粒な“宮崎相”と砂岩泥岩互層からなる“青島相”からなる.“宮崎相”は河川~浅海および,狭い陸棚をもつ斜面上に形成されたファンデルタシステムで,相対的海水準の変動と対応した堆積相の分布を示す.これらには石灰岩や波浪を特徴付ける堆積相,さらに重力流堆積物が顕著である.一方,“青島相”は海岸沿いによく露出し,全体的に単調な砂岩・泥岩互層からなる“タービダイト”サクセッションをなす.これらの“タービダイト”は,通常とは異なる堆積構造をもち,その重なりは通常のタービダイトサクセッションとは違う層厚分布を示す.そして一部には津波堆積物と考えられる厚層理砂岩層も挟在する.●本巡検では,主に日南海岸沿いに分布するこれらの深海相・タービダイトサクセッションをめぐり,様々な重力流堆積物やそれらが構成する地層を見学する.
著者
髙橋 梯二
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.29-35, 2014

わが国の酒類の「地理的表示」としては,これまでに清酒の白山,単式蒸留しょうちゅうの薩摩,琉球,球磨,壱岐が指定されていたが,新たに果実酒(ワイン)の山梨が指定された。わが国では,酒類だけでなく,様々な飲食物で産地の名称を使用したものが多くあるが,法律に基づく地理的表示の整備はまだこれからである。今回は,地理的表示の持つ意義や今後の課題について,詳しく解説していただいた。
著者
髙橋 怜子 福田 充 山﨑 周一郎 駒場 麻有佳
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.65, pp.26-28, 2018-12-01 (Released:2019-12-30)
参考文献数
4

トマトかいよう病は管理作業等による二次伝染でほ場内に蔓延すると考えられる。本病原菌汚染ハサミを用いた連続切り付け処理により伝染能力を検証したところ,連続して切断作業をする場合,50回以上の作業の間,本病菌を伝搬させる可能性が示唆された。すなわち,ほ場においては汚染ハサミ1本で50株以上に本病が伝搬される可能性がある。そこで,地上部からの二次伝染防止対策として,各種消毒資材を用いたハサミ消毒による防除効果を検討した。その結果,熱ハサミで最も防除効果が高く,次いで,70%エタノール,塩素系殺菌剤であるケミクロン®Gで防除効果が認められた。ベンチアゾール系殺菌剤であるイチバン,食酢,重曹では防除効果は認められなかった。
著者
髙橋 文 田中 健太郎
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.183-190, 2019 (Released:2019-12-24)
参考文献数
69

生殖的隔離機構が生じる遺伝的メカニズムについては、Bateson-Dobzhansky-Mullerモデルで示されたように遺伝的要素間の不適合に起因することが古くから概念化されている。モデル生物であるキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)やその近縁種を用いた研究では、交尾後に生じる不適合性に関与する遺伝子が複数同定されている。また、外部生殖器形態の種間差のような量的形質についても原因となる遺伝領域に迫るツールを駆使することができる。このような不適合性の生起には、自然選択が関与している場合としていない場合があるが、交尾後の生殖的隔離に寄与する遺伝子が同定されたケースの多くで、アミノ酸の置換速度が速いなど、正の自然選択が関与した痕跡が見られる。特にショウジョウバエでは速い進化の原因として、ゲノム内コンフリクトから生じる強い正の自然選択の関与が多く報告されているが、環境適応による自然選択が不適合性の生起に関与するケースがもう少し見つかってもよいのではないか、またそれを明らかにするためにモデル生物を用いる利点や難点は何か、今後の展望について考察する。
著者
田代 峻一 髙嶋 美和 岩田 幸子 森田 正治 髙嶋 幸男
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.125-129, 2019 (Released:2019-02-26)
参考文献数
13

〔目的〕周産期脳障害において早期MRIから脳障害特性評価と予後予測の可能性を調査する.〔対象と方法〕療育施設利用者のNICU退院時頭部MRIより在胎週数別に異常部位の視覚的評価と部位別の径計測,また白質異常部位と臨床所見と対比した.〔結果〕すべての群で大脳白質に異常所見が多く,白質部位別では在胎22~26週群では全体,27~32週群では中間部と脳室周囲,33~36週群では中間部,37~40週群では皮質下に異常が多くみられた.白質の皮質下異常では自閉スペクトラム症が有意に多く四肢麻痺と重度知的障害が多い傾向にあった.脳室周囲異常では軽度知的障害が有意に多く痙性両麻痺が多い傾向にあった.〔結語〕大脳白質異常は在胎週数別で特徴があり,予防的リハビリを実施することは重要である.
著者
岡田 真幸 鵜山 淳 岡村 有祐 三宅 茂 寺薗 貴浩 山本 一宏 髙石 吉將 近藤 威
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.799-804, 2019-07-10

Ⅰ.はじめに 頚部の外傷が原因で動脈解離や動脈瘤形成などの血管損傷を来すことはよく知られている5,14,22,27).内頚動脈系・椎骨動脈系の損傷は脳虚血症状を引き起こすため,脳神経外科医が治療を担うことが多い.外頚動脈の動脈瘤形成の多くは仮性動脈瘤であり,脳への血行動態に影響を及ぼさず,有痛性(ときには無痛性)の腫瘤で発症し,出血破綻の程度によっては出血性ショックや気道閉塞に至る15,24,25).過去には,原因不明の頚部腫瘤としてドレナージや生検を試みて大出血を来したことが報告されている20,21).一方で,特発性とされるものの中に出血のない真性の動脈瘤も含まれているようで,長期間経過観察のみで何ら病状の進行がなかったとの報告2,11)も散見され,症状が進行性であるかどうかを見極める必要がある. 形成外科,耳鼻科,血管外科などで治療されることが多いが,アテローム性頚部頚動脈疾患を治療する機会の多い脳神経外科医にとっては日常よく経験している手術領域であり,直達術あるいは血管内治療のどちらの治療法にも熟達していることにより,症例ごとに適切な治療の選択が可能である.今回われわれは,脳神経外科医にとっては遭遇する機会の少ない,頚部外頚動脈仮性動脈瘤を直達術にて治療したので,文献的考察を加えて報告する.