著者
山田 功夫 深尾 良夫 深尾 良夫 浜田 信生 鷹野 澄 笠原 順三 須田 直樹 WALKER D.A. 浜田 信夫 山田 功夫
出版者
名古屋大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

我々はPATS(ポンペイ農業商業学校)や現地邦人の方々の協力を得て,平成5年3月ミクロネシア連邦ポンペイに地震観測点を開設することができた.平成4年9月の現地調査以後,手紙とファクスのみでのやりとりのため,現地での準備の進行に不安があったが,現地邦人の方々のご協力もあって,我々は計画を予定どうり進めることができた.その後,地震観測の開設は順調に進んだが,我々の最初の計画とは異なり,電話が使えない(最初の現地調査の際,電話の会社を訪ね相談したとき,「現在ポンペイ全体の電話線の敷設計画が進んでおり,間もなくPATSにもとどく.平成5年3月であれば間違いなくPATSで電話を使うことができる」とのことであったが,工事が伸びた).このため最初に予定した,電話回線を使った,観測システムの管理やデータ収集はできなくなった.近い内に電話回線を利用することもできるようになるであろうことから,観測システムの予定した機能はそのままにし,現地集録の機能をつけ加えた.そして,システム管理については,我々が予定より回数を多く現地を訪問することでカバーすることにして観測はスターとした.実際に観測初期には色々な問題が生じることは予想されるので,その方が効率的でもあった.現地での記録は130MバイトのMOディスクに集録することにした.MOディスクの交換は非常に簡単なので,2週間に1度交換し,郵送してもらうことにした.この記録の交換はPATSの先生にお願いすることができた.実際に電話回線がこの学校まで伸び,利用できるようになったのは平成6年1月のことであった.よって,これ以後は最初の予定通り,国際電話を使った地震観測システムが稼働した.観測を進める中で,いくつかの問題が生じた.(1)この国ではまだ停電が多いので無停電装置(通電時にバッテリ-に充電しておき,短い時間であればこれでバックアップする)を準備したが,バックアップ時ははもちろん,充電時にもノイズが出ているようで,我々のシステムを設置した付近のラジオにノイズが入るので止めざるを得なかった.(2)地震観測では精度の良い時刻を必要とする.我々はOMEGA航法システムの電波を使った時計を用意したが,観測システム内のコンピューター等のノイズで受信状態が悪く,時々十分な精度を保つことができなかった.結局,GPS衛星航法システムを使った時計を開発し,これを使った.このような改良を加えることによって,PATSでは良好な観測ができるようになった.この観測点は大変興味深い場所にある.北側のマリアナ諸島に起こる地震は,地球上で最古のプレート(太平洋プレートの西の端で1億6千万年前)だけを伝播してきて観測される.一方,ソロモン諸島など南から来る地震波はオントンジャワ海台と言われる,海底の溶岩台地からなる厚い地殻地帯を通ってくる.両方とも地震波はほとんどその地域だけを通ってくるので,地殻構造を求めるにも,複雑な手続きはいらない.これまでにも,これらの地域での地殻構造に関する研究は断片的にはあるが,上部マントルに至るまでの総合的な研究はまだ無い.マリアナ地域で起こった地震で,PATSで観測された地震の長周期表面波(レーリー波)の群速度を求めると,非常に速く,Michell and Yu(1980)が求めた1億年以上のプレートでの表面波の速度よりさらに速い.このレーリー波の群速度の分散曲線から地下構造を求めてみると,ここには100kmを越える厚さのプレートが存在することが分かった.一方,オントンジャワ海台を通るレーリー波の群速度は,異常に遅く,特に短周期側で顕著である.この分散曲線から地下構造を求めると,海洋にも関わらず30kmもの厚い地殻が存在することになる.これは,前に述べたように,広大な海底の溶岩台地の広がりを示唆する.同様のことは地震のP波初動の到着時間の標準走時からの差にも現れている.すなわち,マリアナ海盆を伝播したP波初動は標準走時より3〜4秒速く,オントンジャワ海台をとおる波は2〜3秒遅い.この観測では沢山の地震が記録されており,解析はまだ十分に進んでいない.ここに示した結果は,ごく一部の解析結果であり,さらに詳しい解析を進める予定である.
著者
陶山 佳久 中澤 文男 PARDUCCI Laura BENNET Keith D.
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

湖底堆積物や山岳氷河に含まれる古代花粉試料のDNA分析により、花粉試料の種識別や種内系統に関する情報を取得する研究を行った。湖底堆積花粉のDNA分析では、スカンジナビア半島の北方針葉樹が最終氷期から生き残っていたことを明らかにした。また、花粉分析法と堆積物DNA分析による古植生解析の比較を行った。山岳氷河から得られた花粉のDNA分析では、形態からは同定できない節レベルの識別に成功した。これらの成果は、堆積花粉のDNA分析による過去の植物の遺伝情報取得法として新たな提案となる。
著者
Sud Y.C. Mocko D.M.
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.335-348, 1999-03-26

ISLSCP Initiative-Iデータを用いた全球土壌水分プロジェクトでの評価で、SSiBモデルによるロシア小麦地帯(RWB)での融雪が観測と比べて非常に遅れ融雪水の浸透が極端に少ないことが示された。さらに、融雪水の多くが土壌水分増加ではなく流出となった。この欠点はSSiBの雪モデルと土壌層のモデル化の不十分のためであった。本研究では独立の雪層を考慮した新雪モデルを採用している。雪は入射太陽フラックスを吸収・射出し冬と融雪期を通じて雪温・地温に影響する。ISLSCP Initiative-Iデータによる評価で、新雪モデルはRWB域での融雪が2〜3週間早くなり、融雪期の初期に土壌が融け、より多くの融雪水が土壌に浸透する。このように新モデルは土壌水分やボルガ河流出をより現実的に再現する。融雪の遅れ(1〜4週間)の理由として、(1)密な森林での衛星による雪観測の不正確さ、(2)モデリングの仮定、例えば雪の年齢の影響を無視していることや雪による太陽放射吸収の簡単化のために雪面温度と平均気温の区別が不適切になること、(3)ISLSCP気温データの低温バイアスの可能性、が考えられる。
著者
田村 実 スタンレー ジョージ・デ STANLEY George D.Jr. ジェームズダブルシアーズ 渡辺 一徳 ジョージ・ディー・スタン
出版者
熊本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

研究成果報告書日本の三宝山帯とはアルプス等テチス海域に特徴的なメガロドン石灰岩をはじめとする二枚貝及び造礁性サンゴ化石が報告されている。日本はアルプスを含むテチスプロパ-地域とテチスフォーナを含む米国太平洋岸地域の中間的位置を示している。勿論日本及び北米のテチスフォーナを産する地域はExotic terranesではあるが,テチス域の当時の古地理をしらべる上で重要な資料を提供しうるという点でこの度の共同研究となった。1993年に田村はWallowa産地を訪れ,又スタンレーは1993年9月より1994年8月はじめまで日本に滞在し,球磨川流域,熊本県の八代郡水上越,奈良県のアザミ谷,沖縄の今帰仁層の資料に基き,専門は異なるが夫々の資料を提供し,日本とアメリカの三畳紀(特に後期三畳紀)テチス化石群の対比を二枚貝とサンゴに基づいて行い,更にテチス域全体についてにも対比を広めた。現在入手しうる最大の資料(化石)を用いて検討したが資料の不足はなお残る。特に日本のサンゴ化石は保存が悪く又産出は礫からに限られているため充分な研究ができたとはいいがたい。今後更に資料の蓄積に努力してより確度の高い結果をえたい。全体的な結論として二枚貝・サンゴ共,テチス要素を含みテチスフォーナに属するが夫々がEndemicな要素の含有率が高く,又日米双方間についても二枚貝では共通種がなく,サンゴでは北米産60種のうち1種が共通するだけで,分布を容易にする環境ではなかったと考えられる。以下に研究により判明したことを箇条書に示す。二枚貝の研究(1)ニュートン他は北米ワラワ山地の二枚貝化石群をテチス域のものとしたが,この中に日本ではテチス域(三宝山帯)に全く産せずより内側の河内ケ谷フォーナの要素の産出を報じたが検討の結果ワラワ山地で河内ヶ谷フォーナの種に同定又は類似種とされたもののいづれもが異なることが以下の如く明かになった。(2)テチスフォーナ中の三角貝類を検討した結果,次のことが明らかになった。a.日本産の上部三畳系の三角貝はGruenewaldia decussata,Gruenewaldia vokhlmanni,Kyushutrigonia hachibarensis new genss and next species,Prorotrigonia(?)sp.でこれらはテチス域から中国西部にかけての
著者
加藤 照之 CATAPANG Her KOSHIBA Frit PARK PilーHo FEIR Remato GERASIMENKO ミハエル BEAVAN John 小竹 美子 平原 和郎 中尾 茂 笠原 稔 GERASIMENKO Michael D HERBERT Cata FRITZ Koshib PILーHO Park RENATO.B. Fe MICHAEL Gera JOHN Beavam FEIR B. Ren
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

西太平洋地域は収束するプレート境界が複雑に入り組み、多くの海盆やトラフがあって地震や火山噴火の活動の盛んな地域である。この地域のプレート運動とその境界の非剛体的変形を検出して監視することにより各種の地殻活動の予測に役立てられると同時にプレート運動の機構がより詳しく明らかにされると期待される。最近のGPSによる基線解析では1000kmを1cmの精度で計測することが可能である。そこで本研究では、これまでの日米科学協力事業等による基礎調査をふまえて西太平洋地域にGPS連続観測網を構築した短期間の観測研究により当該地域の変位場を明らかにすることを目的とした。本研究では、IGS(国際GPSサービス機構)のグローバル観測網の手薄な地域に観測点を建設して資料を蓄積すると同時にIGSによるデータを取り込みながら得られたデータを解析して観測点の速度ベクトルを算出するという観測と解析を並行して実施するという方式をとった。平成7年度には気象研究所と共同で南鳥島に連続観測点を建設したのを手始めに、トラック島、マニラ、大田、ウラジオストックに観測点を建設しいずれも現地収録方式により観測を開始した。また、平成8年度にはポートモレスビ-に観測点を建設した。これにより、別途設置した石垣島とパラオとを合わせ8点のGPS連続観測点を建設し、IGSの他の観測点と合わせ西太平洋に1000kmスケールのGPS連続観測網を建設することができた。この観測網から取得できた1995年7月からのデータを用いて基線解析を実施しつつある。ここでは最高精度による基線解析を実施するため新たにfiducial freeによる解析方法を考案した。この方法ではIGSグローバルサイトの観測点を取り込み、観測網全体がバイアスを持たないようにしたうえ、どの観測点も固定しないで解くという方法を用いる。ソフトウェアはBernese software Ver.4.0を用い、IGS精密暦を使って解析を実施した。こようにすると、座標の絶対値は正確には求められないが、基線は正確に求められる。このようにして基線を求めた上でHeki(1996)によるつくば(TSKB)の速度を与えて固定し、全観測点の位置座標を決定する。このような解析を毎日のデータについて実施し、各観測点の時系列を得た上で直線近似によって速度ベクトルを求める。求めた速度ベクトルをマップにまとめたところいくつかの新しい事実が判明しつつある。1)マニラの観測点は北西に約4cm/yrの速度で移動しつつあり、フィリピン海プレートによる圧縮の影響が顕著である。2)石垣の観測点は南南東へ約6cm/yrで移動しつつあり、フィリピン海プレートが押している影響は見られない。このプレート境界はむしろカップリングは弱く、背孤である沖縄トラフが拡大しつつあるのを見ているものと考えられる。3)グアムはフィリピン海プレートないにあるにも関わらず、その変位速度は剛体的変位から考えると速度が小さすぎる。マリアナトラフの拡大の影響を受けているものと考えられる。4)大田、上海、イルク-ツク等の東アジアの観測点はすべてヨーロッパに対して東向きの変位を持ち、インドプレートの北方への衝突による大陸地殻の東への押し出しの影響を見ているものと考えられる。以上を要するに、本研究によって西太平洋地域にはじめてGPSの連続観測網が構築され、テクトニクス研究の基礎を築くことができたと同時に、日本の南西諸島,フィリピン,マリアナ諸島などにおいて従来の剛体的プレートモデルでは説明できないようなプレート境界部における非剛体的変位が明らかになりつつある。このことをふまえ、今後もこの地域にGPS観測点を増強すると共にその観測領域を東アジアに拡げ,当該地域のテクトニクスを明らかにすべく観測研究を強化する予定である。また、本観測網は「海半球ネットワークプロジェクト」(新プログラム:研究代表者 深尾良夫)に引き継がれ、引き続き観測を続行する予定である。
著者
笹田 正明 藤井 正美 斉藤 威 コトフ Yu.D ゼレンチコフ N.I.
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.13-18, 1999-01-22
被引用文献数
3

White defects(W.D.)on CCD determine the lifetime of TV camera on a manned space station. CCD is sensitive to cosmic ray compared with other semiconductor devices. Two TV cameras are terminated after 4 years operation in "MIR", even though other equipment are using after 9 years operation. The results of flight experiment and ground irradiation experiment are compared with each other to generate dark-current increasing. When pass an ion or neutron in a Pixel, it generate the "Flash" event as single event. Multi Pixel Flash phenomena is discussed.
著者
入野 俊夫 河原 英紀 西村 竜一 高橋 徹 津崎 実 津崎 実 高橋 徹 ロイD. パターソン
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

初期聴覚系における「寸法・形状知覚理論」の検証とその応用を行った。そのための心理実験を実施し、理論を支持する実験結果を数多く得た。fMRI実験によって、音節情報処理の脳内部位を推定し、寸法・形状情報処理の部位特定のための制約条件を与えた。「ガンマチャープ聴覚フィルタ」等のモデルをさらに洗練化した。 高品質音声分析合成法STRAIGHTの性能改善や、劣化音声の知覚実験と自動音声認識実験の対比も行い、音声知覚の計算理論構築の足がかりを得た。
著者
柏原 正樹 有木 進 谷崎 俊之 中島 俊樹 加藤 周 三輪 哲二 SCHAPIRA Pierre KANG Seok-Jin VILONEN Kari D'AGNOLO Andrea
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

この5年間の表現論に関連した研究の成果として大きなものが3点挙げられる。第一は、確定特異点型ホロノミーD-加群のリーマン・ヒルベルト対応を不確定特異点型ホロノミーD-加群に拡張したこと(A. D'Agnoloとの共同研究)、第二は、余次元3予想の肯定的解決(K. Vilonenとの共同研究)、第三は、円分箙ヘッケ代数を用いた量子群の表現の圏化である(S-J. Kangとの共同研究)。
著者
野村 亨 WOLLNIK H. MEUSER S. ALLARDYCE B. SUNDEL S. 稲村 卓 RAVN H. 中原 弘道 松木 征史 HANSEN G. D'AURIA J.M. 永井 泰樹 篠塚 勉 藤岡 学 和田 道治 池田 伸夫 久保野 茂 川上 宏金 福田 共和 柴田 徳思 片山 一郎 NITSCHKE J.M BARNES C.A. KLUGE W.K. BUCHMANN L. BARMES C.A. MEUSEV S. D´AURIA J.M. SUNDELL C.
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

本研究の目的は,原子核反応で生成するさまざまな短寿命の不安定核種を,その場で分離・選別し,さらに加速して二次ビ-ムとして実験に供する技術の開発とそれによる先駆的研究の実施であった。上記の実験技術は,現在世界的に注目されている先端的技術で,原子核物理学と関連基礎科学分野に全く新しい研究手法を導入するものと期待されている。本研究では,以下の研究課題を設定し,東大核研を軸にして,欧米の主な関係大学・研究所と共同開発・研究を実施した。その成果は,国際会議等に発表するとともに,論文として雑誌に報告されている。A.大効率・高分解能オンライン同位体分離器(ISOL)の開発・・・不安定核のその場分離・選別(ア)大効率ISOLイオン源の開発CERN(スイス)とTRIUMF(カナダ)等と共同開発を実施。表面電離型,FEBIAD型,ECR型イオン源を試作し,さまざまな不安定核原子のイオン化効率を測定。その結果を踏まえてイオン源の改良を行った。アルカリ金属元素については40%以上の大効率イオン化に成功した。また,ビ-ムバンチングについても成功した。(イ)超高質量分解能ISOLの光学計算M/ΔM【greater than or similar】20,000のISOLイオン光学系の設計を,東大核研・東北大・ギ-セン大学(独)の共同研究として実施。機械精度や放射線ハンドリングの観点から,そのフィ-ジビリティを検討。その成果は,東大核研の不安定核ビ-ムファシB.不安定核ビ-ムの加速技術の開発(ア)世界の現状の調査・検討不安定核ビ-ムの加速は,唯一例としてベルギ-の新ル-バン大学でサイクロトロンによって試験的に実施されている。そこでの現状を調査の上,CERN(スイス),GANIL(仏),TRIUMF(カナダ)等の加速計画を吟味し,種々の加速器の長所・短所を明らかにした。この結果は次の(イ)に反映されている。(イ)分割同軸型RFQリニアックの開発電荷質量比の極めて小さい,入射エネルギ-の非常に低い重イオンリニアックの設計・開発を東大核研で行った。そのさい,GSI(独)とTRIUMF(カナダ)の研究者に詳細な検討・批判をあおいだ。試作した分割同軸型RFQリニアックは順調に稼動し,世界的な注目を集めている。C.不安定核ビ-ムによる核物理・天体核物理学の研究(ア)レ-ザ-による不安定核の精密核分光GaAs,AlGaInPなどの固体結晶中に, ^<75>Br, ^<114m>In等の不安定核を打ちこみ,レ-ザ-による光ポンピングにより,娘核( ^<75>Seや ^<114>In)のスピン偏極を実現した。固体中の不安定核のスピン偏極は世界的に稀な成功例である。さらに,RADOP法により,娘核の核磁気能率を精密に測定した。これは,CERN(スイス)との共同研究である。(イ)不安定核の天体核反応率の測定東大核研・理研・GANIL(仏)との共同研究として宇宙における重元素合成機構において,不安定核の天体熱核反応に役割の研究を実施。 ^<13>Nの熱核反応率の測定に成功した。上述の研究成果の多くは,平成3年度に開催された国際会議(原子核・原子核衝突に関する第4回会議,於金沢;第2回放射性核ビ-ム国際会議,於新ル-バン大学[ベルギ-];第12回EMIS会議,於仙台等)の招待講演として発表されている。また,国際誌等に論文として報告した。本研究成果は国際的な反響をよび,東大核研の研究プロジェクトにその結果が活用されたばかりでなく,CERN(スイス),TRIUMF(カナダ),LANL(米)等の研究所から共同研究が期待されている。
著者
増田 喜治 浅野 涼子 J.H ジャンゼン D.R ジャンゼン
出版者
名古屋学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

聾学校に通学中の3名の人工内耳装用児に日本人と外国人英語教師による英語教育とシドニー在住で英語を母国語とする人工内耳装用児との交流の場を提供した。言調聴覚論を基礎としたグループレッスンを名古屋学院大学・白鳥キャンパスで合計25回、スカイプによる個別の遠隔授業が50回行われた。身体運動を伴った発音矯正を常に行なったが、3名とも日英語の話し言葉の認知度は3年間で変化することなく、約60%程度であった。しかし、英語レッスンに参加した時の学習意欲は常に高く、楽しい授業展開であった。一方、スカイプを利用した遠隔レッスンではパソコンとデジタル通信に伴う障害を乗り越えて、各装用児がパソコンに向かい、自分のペースで教師の映像、音声と振動情報を頼りに、英語学習を行なった。スカイプのチャット機能を利用し、文字言語を利用した意思疎通も日英語で行なった。ただし、英語に対する一人一人の学習意欲はグループレッスンと比較すると高いとは評価できなかったが、シドニーにおけるホームステイの活動目標により、学習意欲の継続的支援となった。国際交流プログラムでは、平成22年の夏に代表2名がシドニー在住の人工内耳装用児宅でホームステイを行い、異文化体験した。また、シドニーの装用児との交流を通して彼らの言語訓練プログラムと置かれている環境を体験した。更に4ヶ月後にはシドニー在住の装用児が名古屋を訪れ、ホームステイを通して互いに活発な文化交流を行なった。本研究は、日本在住の人工内耳装用児たちに対して英語教育を行なうだけではなく、同様の障害を持ちながらも異なった文化背景の中で、継続的言語リハビリテーションを受けた英語を母国語とする人工内耳装用児とホームステイプログラムにより交流することができた。今後、彼らが日本と世界に在住する人工内耳装用児・者との交流に貢献が出来るような基盤が築き上げられたと本研究グループは確信している。
著者
ZHANG L. X. WANG R. F. HESKETH J. D.
出版者
九州大学
雑誌
Biotronics : reports of Biotron Institute, Kyushu University (ISSN:02890011)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.59-64, 1995-12

A date-of-planting study of time from emergence (VE) to floral bud initiation (R0, detection of floral bud primordium) and first flower (R1) was carried out at Urbana IL USA for soybean genotypes representing maturity groups (MG) 00 through VIII. Growing degree days (GDD), base 10℃ with a cutoff at 30℃, were calculated for VE-R0, R0-R1 and VE-R1 and were plotted against the averge photoperiod between events. We found a temperature relationship among GDD values between events for MG's 00-I; subtracting these GDD values from those of MG II or greater and plotting the residual or adjusted GDD (AGDD) values (or 1/AGDD values) vs. average photoperiod improved the linear or curvilinear relationship involved. Photoperiod effects on R0-R1 were significant for later -maturing genotypes (MG IV+or greater) as reported earlier. These phenology-temperature-photoperiod relationships greatly improve our ablility to predict phenology with computers for real world situations.
著者
高嶺 豊 KHAN Imran Ahmed BALARAJU Kasupa DAS D.K.Lal REDDY Sudhakara MURTHY Krishina PRATAP Kumar Raja
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

南インドのアンドラプラデッシ州における障害者の自助グループとその連合体の構築の取り組みが、開発途上国の農村部における障害者のエンパワメントと貧困削減に効果的であることが検証された。この取り組みは、さらなる研究が必要であるが、今後、この取り組みが、他の開発途上国においても障害者の貧困削減のための重要な解決策となることが期待される。
著者
ペリー アンソニー VERMILYEA M.D.
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

当研究チームは、受精直後数時間中に起きるエピジェネティックなクロマチン再構築に関する研究を続けており、これまでに減数分裂再開の起因となる物質を精子頭部より採取し、これを減数分裂第II期中期の卵母細胞へ移植する方法を見付けている。この方法により、卵子や雄系クロマチンによる介入の変化を観察する事が可能となりその後、同ステージの受精卵で起こる変化と比較する事も可能となった。(この減数分裂再開は精子由来の活性因子がまだ衰退していない受精卵で通常起こる。)この結果、減数分裂第II期中期と受精卵で起こるヒストン修飾に相違が見られる事が判明した。そこでこの相違の列挙に取りかかったが全ての相違の掌握に限りがあり、そもそも基本的な再構築がどの様に起こっているのかまだ分かっていなかった。この事を考慮に入れて、当プロジェクトでは発生学と分子細胞の方法を統合し、より包括的に初期段階のヒストン変化を列挙させる事にした。またこの結果を元に我々は修飾を引き起こす遺伝子制御を解析しようとした。この研究は非常に研究結果の期待出来るものであって、現在取りかかっているマウス初期胚で起こるエピジェネティックな制御に関する研究への導入となる基礎を築いた。しかしながら残念な事に当プロジェクトは研究途中で中断させなければならなくなったが、ここで大きな進展のあった研究は現在も引き続き継続させている事を報告したい。当プログラムは米国籍の特別研究員を日本の研究室において研究する機会を与え、今後も米国と日本の研究室が研究交流を続ける機会を与えてくれた事は多いに意義があると言える。
著者
岩井 浩一 澤田 雄二 野々村 典子 石川 演美 山元 由美子 長谷 龍太郎 大橋 ゆかり 才津 芳昭 N.D.パリー 海山 宏之 宮尾 正彦 藤井 恭子 紙屋 克子 落合 幸子
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.57-67, 2001-03

看護職の職業的アイデンティティを確立することは, 看護実践の基盤として極めて重要であると考えられるが, 看護職の職業的アイデンティティの概念や構造は必ずしも明確になっていない。そこで, 現在様々な立場にある看護職を対象に調査を行い, 看護職の職業的アイデンティティの構造を探るとともに, 職業的アイデンティティ尺度を作成した。因子分析の結果をもとに, 1)看護職の職業選択と誇り, 2)看護技術への自負, 3)患者に貢献する職業としての連帯感, 4)学問に貢献する職業としての認知, 5)患者に必要とされる存在の認知, という5つの下位尺度が抽出された。これらの下位尺度に高い因子負荷量を示した項目について信頼性係数を算出したところ, α係数は0.78〜0.89といずれも高い値を示しており, また尺度全体としては0.94と信頼性が高いことが確認された。さらに, 因子得点を算出し, 看護職としての臨床経験年数や看護教員としての教育経験年数などの変数との関連を探ったところ, 看護職の職業選択と誇り, 看護技術への自負, 患者に貢献する職業としての連帯感, および学問に貢献する職業としての認知という4つの因子は, 年齢, 臨床経験年数, および教育経験年数と有意な相関が認められたが, 患者に必要とされる存在の認知因子は年齢および臨床経験年数とのみ関連が見られた。各因子とも, 看護学生群でスコアが低く, どのようにして職業的アイデンティティが高まっていくかを探ることが今後の課題といえる。
著者
Liebmann Brant Hendon Harry H. Glick John D.
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.401-412, 1994-06-25
被引用文献数
1

当論文においては、西太平洋及びインド洋における熱帯低気庄とMadden-Julian振動(MJ0)との関連を記述する。熱帯低気圧は振動の積雲対流活動活発期に生じ易いし、雲塊は下層の低気圧性渦度の周辺に存在し、発散場はMJ0に伴う積雲対流活動の西方極側に現れる。熱帯低気圧や台風の絶対数は振動の積雲対流活動活発期に増大するが、弱い熱帯低気圧から転化する熱帯低気圧と台風の比率は、積雲対流活動活発期と乾燥期において同一である。積雲対流活動活発期においてより多くの熱帯低気圧や台風が存在するのは、当時期により多くの弱い熱帯低気圧が存在することによる。当研究の第三の結果は、積雲対流活動活発期の熱帯低気圧の活動度がMJOの活動度に限定されていない点である。事実、我々はMJ0と独立かつ無作為に選ばれた積雲対流活動活発期において熱帯低気圧の活動度が同等に増大することを見いだした。結論として、MJ0は熱帯低気圧に影響を及ぼす独自の機構を持つと言うより、むしろそれに伴う熱帯の変動度が大きな割合を占めるという点で重要である。