著者
河村 洋子 横田 康成 亀谷 謙
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.659, pp.85-90, 2006-03-10

性同一性障害(以下,GID)の診断では,診断精度向上と迅速な診断を実現するため,心理的性(gender)の客観的かつ定量的な評価法が必要とされる.本稿では,正常男女とGIDを有する被験者の頭部MRIを用いて,正中矢状断における脳梁形状の性差を調査した.まず,脳梁形状をフーリエ記述子で表現し,ソフトマージンをもつ線形サポートベクタマシンを用いて,フーリエ記述子によって張られるベクトル空間において,正常男女の標本群を最も良く分離する超平面を決定した.各被験者の脳梁形状を得られた超平面に直交する線形部分空間に正射影した座標を,正常男女の生物学的性(sex)差を最も顕著に表す特徴量として定義した.さらに,GID患者に対し,この特徴量の値を調べた結果,この特徴量は,生物学的性差ではなく心理的性差を反映することが示された.このことは,提案した特徴量を用いて心理的「性」の推定が可能,更には,GID診断の客観的尺度として利用できることを意味する.
著者
大足 恭平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.208, pp.23-25, 2008-09-09

ウィキペディア日本語版は,日本語によるインターネット上の情報源としてはもとより,参考図書的な扱いによる「百科事典」としても無視できないものとなっている.「誰でも自由に書ける」「フリーな」百科事典として紹介され,社会に一定の影響力をもつに至っている.しかし,ウィキペディアがいかなる理念のもとに運営され,また形成されてきているのかについては,多く知られているわけではない.本稿ではウィキペディア日本語版における知の形成のあり方を,理念と現実の面から振り返り,そのうえで社会的知との関わりを論ずる.
著者
赤井田 健造
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSS, 安全性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.486, pp.9-12, 2009-03-16
被引用文献数
3

詐欺に対する社会の監視とターゲットを守る環境が必要だ.
著者
落合 克隆 塩見 英久 山本 錠彦 オチアイ カツタカ シオミ ヒデヒサ ヤマモト サダヒコ Ochiai Katsutaka Shiomi Hidehisa Yamamoto Sadahiko
出版者
電気情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MW, マイクロ波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.136, pp.39-42, 2001-06-19

マイクロストリップ線路とスロットを用いた進行波アンテナと分布増幅器を融合した進行波アクティブ集積アンテナについて報告する。進行波アクティブ集積アンテナは、高出力で指向性が鋭く、ビームステアリングが容易なアンテナである。まず、進行波アクティブ集積アンテナの構成を示し、その設計について議論する。さらに、2.5GHzで動作する試作品を作成し評価した結果、同様な構成のスロットアンテナアレイと比べ、受信電力が20dB増加した。また、給電周波数を750MHz変化する事で最大40度のステアリング角が得られた。An active integrated antenna array consisting of a distributed amplifier and a slot antenna is demonstrated. In this report, a two element array was fabricated and examined. Two slot apertures were embedded in the ground plane of a microstrip feed line with the distributed amplifiers. An observed antenna pattern and steering angle ware also investigated.
著者
大竹 稔 齋藤 毅 三好 正人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.349, pp.79-83, 2013-12-13

本稿では,愛知県三河地方から石川県への転居者,三河弁話者,石川方言話者を対象に,転居による方言の音響的変化を調査した.話者による意図的な制御が困難とされる母音(母音ホルマント周波数F1,F2とMFCC),鼻濁音(鼻音ホルマント周波数)の音響特徴を調査した.分析の結果,転居者の三河弁の母音ホルマント周波数F1,F2,MFCC,鼻音ホルマント周波数は,石川方言に近い傾向がみられた.これらは,転居者の三河弁の調音が石川方言の影響を受けて変化している可能性があることを示唆している.
著者
野田 篤司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.162, pp.73-77, 2000-06-23

小型研究衛星(μ-Lab Sat)は、2001年度の打ち上げを目指したH-IIAロケットの余剰能力を活用した50級の小型衛星である。衛星の目的とする実験は大別して以下の3つが行われる。(1)50kg級小型衛星バス実証(2)SELENE(SELenological and ENgineering Explorer)リレー衛星分離機構実証(3)遠隔検査技術先行実証本論文では、μ-Lab Satのシステム概要と共に50kg級の小型衛星を設計する上での特徴的な点を報告する。
著者
小比田 涼介 宮本 エジソン正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.440, pp.7-12, 2014-02-21

先行研究において、CMC (Computer-Mediated Communication)はその匿名性ゆえに、自己開示(本当の自分について話すこと)が行われやすく、シャイな特徴を持つ人において特にそのような傾向が見られると主張されている。本研究では、Twitter上での自己開示に対する匿名性とシャイネスの影響を調査した。結果、Twitter上での自己開示と対面状況での自己開示を比較の上で、以下の2つの知見を得ることができた。1. Twitterを匿名で利用しているユーザーのうち、シャイなユーザーはシャイでないユーザーと比べ、Twitterにおいて自己開示的である。2. Twitterの匿名性がユーザーの恣意的な操作によるものであることから、匿名利用のシャイなユーザーと非匿名利用のシャイなユーザーの間には、パーソナリティや利用動機など何らかの差異があり、その差異によってTwitterがシャイな人にとって自己開示機会となるかどうかが規定されている。
著者
高橋 有里 桐田 隆博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.383, pp.7-12, 2011-01-14

本研究では,育児中の20組の父親と母親の乳児の泣き声に対する心理生理的反応を測定し,性別および,乳幼児の泣き声に対する不快度の観点から比較検討した.具体的には,他人の乳児の泣き声を聴取中の父親,母親の心拍数,皮膚コンダクタンス変化を測定した.その結果,乳児の泣き声に対する父親と母親の生理的な反応には統計学的な差異は見られなかった.すなわち,どちらにおいても,泣き声聴取により心拍数は一過的に低下した後ベースラインに戻り,皮膚コンダクタンス変化は急激に上昇した.ただし,細かく見ると,母親と比較して父親の心拍のベースラインへの復帰はいくぶん早く,皮膚コンダクタンス変化は若干高いことが示された.このことから,父親は母親より泣き声を不快に感じる傾向があることが示唆された.また,乳幼児泣き声不快尺度における差に関しては,私的状況不快得点が低い父親では,心拍数に一過性の低下が見られず,心拍数に関する限り不快低群の父親は泣き声から受ける影響が少ないことが示された.
著者
平田 佐智子 山田 陽平 中川 岳 永井 聖剛
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.283, pp.65-68, 2013-11-02

本研究では、従来概念との対応が主に検討されてきた音象徴に対し、動作の強度や速さといった反応出力との対応を検証した。音声または文字を刺激、動作の強度や大きさを反応とした刺激反応適合性課題を行った結果、有声子音と強い/大きい動作、無声子音と弱い/小さい動作の間に適合性が見られた。これらの結果は音象徴と身体動作の接点を示唆する新しい知見といえる。
著者
奥田 輔 安田 孝美 水野 政司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.268, pp.1-6, 2011-10-20
参考文献数
12

近年,ソーシャルメディアの普及に伴い,ユーザが情報の発信,受信の双方を手軽に,かつリアルタイムな情報の共有ができるようになった.本研究ではそのようなソーシャルメディアのひとつとして,マイクロブログサービス「Twitter」を取り上げ,その中で特定の商品に対するつぶやき数の推移とその商品の売れ行きとの間にいかなる相関が見て取れるかを検証した.今回,つぶやきの集計期間は2011年1月1日から2011年3月19日までの78日間,集計対象とした商品はiTunes App Storeで有料にて販売されているiPhone・iPod touch・iPad対応のモバイルアプリ, 1235種類である.統計の結果, Twitterのつぶやき数ランキング, iTunes App Storeのランキングの双方が24時間以内に, 1時間あたり10位以上のランク上昇が見られる割合は,全体の49.79%となった.また,つぶやき数ランキングが上昇してからそれに追随してiTunes App Storeのランキングが上昇する割合は37.17%,その時間遅れは平均値で4.9時間後,中央値で6時間後にする傾向が見られた.
著者
牧野 奨平 坂野 秀樹 旭 健作
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.404, pp.61-66, 2014-01-23

音声分析合成による鼻声の声質改善を目的とし,鼻声発声の分析を行っている.なお,本研究において,鼻声発声をノーズクリップを装着した状態での発声とし,異なるノーズクリップの装着位置で鼻声発声1・2とした.発声継続時間長が長めの鼻子音を収録し,鼻子音の発声区間での長時間平均スペクトルと,帯域分割した長時間平均スペクトルのパワーの時系列を観察・比較した.その結果,鼻声発声における鼻子音の発声区間は,通常発声に比べ630Hz以上の帯域でパワーが減衰すること,その帯域において,時間経過に伴いパワーが減衰することがわかった.また,鼻声発声することによって,通常発声で見られる400Hz付近の山が100〜200Hzに移動することがわかった.これらの結果から,鼻声発声1の周波数特性の傾向が通常発声と鼻声発声2のものの間にあると考えられる.
著者
増田 真実 岡嶋 克典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.283, pp.57-62, 2011-11-03

食体験は味覚だけでなく,視聴覚を含む様々な感覚を動員して行われる.本研究では,咀嚼音が食感に与える影響について実験的に検討した.咀嚼タイミング検知システムを用いて,実験前にあらかじめ録音した咀嚼音を被験者の咀嚼タイミングに合わせて呈示した.カステラ,かまぼこ,キャラメルコーン,グミ,たくあん,パイの実,マシュマロの7種いずれかを咀嚼している際に,せんべいか団子かのどちらかの咀嚼音が呈示された.評価食感は硬さ,液分率(食品が含む液体分の割合)の2種で,呈示咀嚼音による変化の度合いを9段階尺度で被験者に評価してもらった.その結果,せんべいの咀嚼音は硬さ感を増して液分率を小さく知覚させるが,団子の咀嚼音は硬さ感を減少させて液分率を大きく知覚させる傾向があることが示された.また被験者は,咀嚼行動によって生じる快度も評価した.その結果,団子の咀嚼音呈示時に快度が減少する傾向があることが示された.
著者
大橋 宏正 北岡 教英 原 直 武田 一哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.219, pp.59-64, 2010-10-01

音声を連続音声認識システムにより常時認識することによって得られる認識単語列からその場の雰囲気に適切な音楽・楽曲を提案し,再生するシステムを構築した.楽曲を説明するテキストより構築された文書ベクトル空間と,楽曲の音響特徴量を表現する音響ベクトル空間の対応付けを利用することで,大語彙音声認識によって得られた音声認識単語列を音響ベクトル空間へとマッピングする.また,大語彙音声認識ではカバーできない固有名詞などのキーワードをワードスポッティングで認識する.本稿ではシステムの概要と基本的な性能評価の結果と実際の雑談音声への応用に向けた予備実験結果を示す.楽曲のレビューを読み上げた音声を認識した結果による楽曲検索結果と,レビューのテキストを用いた結果との比較により,テキストではMRR値1で検索できたものが,音声認識性能はWER70.55%,ワードスポッティング性能はF値31.58%でもMRR値0.83と比較的良い結果を得た.また,今後の雑談認識の応用の予備的実験を行い,雑談書き起こしからの例を示した.
著者
加藤 充美 西村 明 安藤 由典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.635, pp.43-50, 2001-02-15
参考文献数
6
被引用文献数
5

筆者らはフルート演奏音の倍音の微細な変動のフルート音の品質への影響を研究している。フルート音には、倍音の振幅や周波数の変動とともに息音に起因するノイズ成分が含まれている。このノイズ成分は倍音の変動にも影響を及ぼし、フルート音の品質へも影響している。それらの影響を研究するためには、倍音の振幅や周波数の変動とノイズ成分をまとめて分析し、変動の深さなどのパラメータを変化させて合成し試聴する手法が必要となる。このため、筆者らは解析信号を用いた分析・合成手法を採用し研究を進めている。本報告ではこの手法がフルート音のような倍音の変動のみならずノイズ成分をもつ楽音に対する分析・合成に適している手法であることを示し、その性質を明らかにする。
著者
澤田 優貴 平原 達也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.240, pp.25-29, 2009-10-15

本報告では誰もが不快に感じる絶対不快音を構成している要因を明らかにするために、16種類の不快音の音響分析と聴取実験を通じて不快感の原因となるスペクトル的特徴を明らかにする。その結果、音圧の高い音は不快度が高いこと、不快度の高い音は、5〜7kHzに強いスペクトル成分を持つこと、その強いスペクトル成分は、周波数的にも時間的にも不規則に出現していることがわかった。また、絶対不快音の強いスペクトル成分を逆フィルタで減衰させると、不快度は低くなることもわかった。
著者
尾田 政臣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.320, pp.1-6, 2004-09-19
参考文献数
11

これまでの多くの研究が,対称性と顔の魅力に正の相関があることを明らかにしている.しかし,その影響の度合いが他の要因と比較されて論じられことはなかった.一方,目の大きさが魅力に影響することが知られている.そこで,顔の魅力と美しさの手ががりとして何を用いているかを質問紙法で調査し,さらに対称性と目の大きさを統制した顔を評価させる実験によって各要因の影響を比較した.その結果,対称性が美しさや魅力の評価の手がかりとなることが少ないこと,目の大きさが対称性より大きな手がかりになっていることが明らかになった.両目が大きい対称顔は目の小さい対称顔より魅力や美しさが高く評価されるが,片目が大きい顔でも対称顔より魅力や美しさが高く評価された.この結果は非対称顔でも対称顔より魅力あるいは美しさが高く評価される可能性を示した.
著者
壁谷 彰慶
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SITE, 技術と社会・倫理 : IEICE technical report (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.244, pp.21-26, 2008-10-10

Googleが提供した高機能な検索エンジンは、インターネットの利用法を根本から変えるほど多大なインパクトを世間に与えている。しかし、この企業の情報の扱い方に対して、たびたび良識を欠いているとの非難がされることがある。Googleが非常に優れた技術集団であることは疑い得ないが、倫理的な問題についての配慮が欠如しているのも事実である。そこで、じっさいにGoogleが行った「検閲」の事例を参考に、「検索エンジンにおける検閲」のあり方について、「検索」と「検閲」の関係とともに考察する。結語として、この企業が作業ポリシーを確立し、それを明示することの必要性を述べる。
著者
新井 賢一 原山 卓久 砂田 哲 デイビス ピータ
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.117, pp.53-58, 2012-06-28

確率的挙動を生成する装置としてカルトンボードが古くから知られている.ここでは数理的カルトンボードモデルの出力結果の予測不可能性について報告する.カルトンボード中のボールの運動は決定論的な運動方程式に従うが,不可避な初期状態の不確かさが存在し,出力結果が予測不可能になる場合がある.出力状態の初期状態空間におけるベイスンの構造と初期状態不確定性の大きさから,予測不可能性をより精密に調べた.まず,このモデルはフラクタルなベイスン構造を持っており,任意の小さな不確定に関しても予測不可能性をもつことを示した.次に,予測不可能性の定量的な議論を初期条件鋭敏性,統計的偏りの観点から行った.さらに,これらの結果から予測不可能性についての基準を決めると,それを満たすためのボールの半径を決めることができることを示した.