著者
都築 功 松田 良一
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.635-636, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
3

カンボジアの公立中学校理科および高等学校生物の教科書では健康や衛生,食物,農業,ヒトの生殖と発生など生活に関連した内容が多く扱われている.ウイルスに関しては,カンボジアの教科書では中学校第3学年と高等学校第1学年で感染症および生物の分類と関連させそれぞれ3~4ページにわたり扱っている,韓国,中国,台湾の教科書においてもカンボジアと同様,ウイルスを数ページにわたって扱っている.一方,日本の理科や生物の教科書では生活と関連の深い内容の扱いが少なく感染症も扱わない.日本の教科書ではウイルスは本文外で参考として1ページ以下の扱いであり,他の国々と大きく異なっている.日本の生物教育で生活や健康に関連した内容をもっと多く扱うこと,ウイルスに関しては本文で扱うよう見直すことが必要と考える.
著者
水町 衣里 磯部 洋明 神谷 麻梨 黒川 紘美 塩瀬 隆之 堂野 能伸 森 奈保子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.289-290, 2011
参考文献数
2

大学教職員や大学生が,小学校,中学校,高等学校の教員と共同で開発した『宇宙箱舟ワークショップ』は,「宇宙に引っ越しするならどんな生き物を連れて行く?」というある種極端な舞台を設定しながら,普段の生活の中では見えにくい現代の問題をみんなで考えるという教育プログラムである.本稿では,この多様な答えを許容する教育プログラムの開発過程を報告する.
著者
山田 俊弘
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 31 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.129-130, 2007-08-17 (Released:2018-05-16)
参考文献数
13

本稿は科学史研究の手法を参照しつつ,戦後の地学教育の歴史記述を再検討する.特に戦後教育改革期を題材とし,専門家の結集によるカリキュラム編成から教科書作りまでを追跡し,一つの専門分野の成立史として描出する.
著者
岡本 紗知
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.407-408, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
3

文系・理系というのは基本的に学問上の区分だが、個人の特性などと結び付けられることでステレオタイプ化につながることがある。本研究は、この文系・理系を学生自身がどのように定義をしているのかを明らかにするために実施した。42名の半構造化インタビューデータから、学生が文系・理系を7つの着眼点に基づき分類することが明らかとなった。これら7分類は、「興味の対象」「技能」「知識生産の性質」「知識生産の方向性」「思考のプロセス」「思考の出発点」「思考の到達点」である。この中で、「思考のプロセス」に言及した学生が最も多く、ここには「文系は感情が許されるが、理系は感情を排除して考える」や「理系は論理的に考える」というものが見られた。しかし、例え同じ単語で表現されても学生により解釈が異なったことから、学生の文系・理系の定義は、ある程度の共通性があるものの、完全に一致することはないことが明らかとなった。
著者
山野井 貴浩 佐倉 統
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 36 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.285-286, 2012-08-27 (Released:2018-05-16)

本研究では,進化論の学習機会および創造論を知る機会がほとんどなかったと考えられる文系大学生を対象に進化論と創造論の両方を紹介する講義を行い,進化論の方が科学的であると考えられたかどうかを講義前後アンケートによって明らかにすることを目的とした。その結果,事前に科学的な考え方に関する講義を行っていたとしても,創造論を知ることで進化論への支持率が高くなるとは限らず,逆に,創造論への支持率が高まってしまう可能性があることが示唆された。
著者
名倉 昌巳
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.417-420, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
19

平成20年告示の中学校学習指導要領において,「進化」と「遺伝(の規則性)」が復活し,平成29年改訂では「進化」が第2学年から第3学年に移行し,「遺伝」の学習後に扱われるようになった.「進化」と「遺伝」は「細胞説」と並び生物学上の重要な概念である.しかしながら,過去の学習指導要領においては,「進化」と「遺伝」は削減と復活を繰り返してきた学習内容である。本研究では,このように重要な科学的概念がなぜ学習内容から消え去る時期があるのかを究明することを目的とした.この点に鑑み,戦後8回にわたる学習指導要領・その解説・教科書などの記述を調査し,さらに当時風靡した言説・進化論争・優生学など社会的歴史的背景を論じた文献を調査した。その結果,優生保護法・遺伝決定論・反ダーウィニズムの台頭などの共通項が浮かび上がってきた.一時の要請に左右されない科学的進化理論・遺伝理論を中心置いた生命教育が望まれる.
著者
土井 徹
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 42 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.235-236, 2018 (Released:2019-06-15)
参考文献数
2

日本の小学校生活科の教科書にある学習後のアメリカザリガニの扱いに関する記述について調査した。その結果,約 30 年の間に,記述なしあるいは野外への放逐を推奨する記述から,野外放逐と飼育継続を選択させる記述を経て,飼育継続を推奨する記述へと変遷していることが明らかとなった。
著者
段 玉山 于 雷
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.219-220, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
5

中国における地理科カリキュラム改革は,20年近くの時を経て,理論・実践の面でともに多くの成果をあげてきた.カリキュラムの理念が広く伝わり,授業実践にも大きな変化をもたらすとともに,多くの教員と生徒の肯定と支持を得て,広い社会的影響を生み出した.本稿では,20年にわたる中国での地理科カリキュラム改革で得た成果を整理することで,カリキュラム改革の成果を確固たるものとし,今後の改革動向を明らかにするとともに,地理教育の持続的発展を促すことを目的とする.
著者
Kumiko Takahara
出版者
Japan Society for Science Education
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.153-154, 1995 (Released:2018-05-16)
参考文献数
3

The goals of Japanese language teaching in the United States as part of the university curriculum needs to be reset in response to a changing socio-economic climate and societal expectations from foreign language studies. Three major areas are identified for discussion on how the Japanese Language Program at the University of Colorado may expand its roles and increase its contributions to higher education in order to continue its growth. A number of problems which may be encountered in pursuit of these goals will be addressed.
著者
小野寺 翔汰
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.403-406, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
11

近年,動物園ならびに水族館は生物多様性保全や環境問題などに関する科学教育へ有用な施設として,研究者の間で注目されつつある.しかし一方で動物園・水族館への社会的な関心の高まりには欠けるものがあり,生涯教育的な啓蒙には至っていないのが現状である.本研究では,一般市民への動物園・水族館に対する関心惹起の手段としてサブカルチャー作品を用いることを提案し,その一例としてメディアミックス作品「けものフレンズ」を取り上げ,アンケート調査により本作品が動物園・水族館ならびに科学教育へ与える効果を評価した.その結果,「けものフレンズ」が動物園・水族館への来園館頻度・リピーター率・園館の役割に対する理解度に寄与していることが分かり,サブカルチャー作品による動物園・水族館への関心惹起が十分可能であることが示された.
著者
植竹 紀子 垣内 康孝 千葉 和義
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 37 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.278-279, 2013-09-06 (Released:2018-05-16)

理科自由研究データベースは児童・生徒の自由研究作品の検索システムである。自由研究を教材化するために,小学生の作品内容を理科単元・分野に分類し,解析した。作品51点を対象として分類した結果,作者(著者)の発表時学年より上級学年の単元を含む自由研究は36作品(82%)であり,これから学習する内容に関連する研究を行っていた。
著者
森永 康子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.7-8, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
5

STEM分野における女性研究者や女性学生はなぜ少ないのかについて,ジェンダー・ステレオタイプ(GST)に関する社会心理学的研究を取り上げて,1) GSTが他者評価に影響を与え,女性が低く評価される可能性,2) ST脅威の現象に見られるように,GSTが自己成就予言として働く可能性,3) 潜在的STの影響,4) 表面的にポジティブに聞こえる場合でも,GSTがネガティブな結果をもたらしうること,の4点から説明を試みる.これらの研究をもとに科学教育にどのような示唆ができるかを考えてみたい.
著者
鈴木 誠
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 28 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.79-80, 2004-07-30 (Released:2018-05-16)
参考文献数
1

高等学校までの学びと大学での学びの間には、大きな乖離が存在する。最近、これを克服できない学生が増えてきている。それは、学習内容の縮減や学習指導の質の変容といった問題と合わせて、学生の学力低下や学ぶ意欲の欠如といった現象として現れている。また、それを補完する機能を持っていた日常生活の中での自然体験や社会体験は大きく減少した。この乖離を埋めるには、用意周到な授業デザインが大学初年次に必要となる。
著者
柿原 聖治
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 28 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.521-522, 2004-07-30 (Released:2018-05-16)
参考文献数
1

物が水に溶けると,その重さは一部なくなると考える小学生の考え方は,大学生になると修正されるが,体積増加までないと考えている。また,水以外の溶媒を挙げることができない学生が非常に多いので,ヨウ素を有機溶媒に溶かす実験を行わせて,理解を助けた。
著者
吉岡 有文
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.453-454, 2020

<p>科学の学習においては実物や現象にくり返しふれることが必要である。しかし,非常勤講師にはそのような学習環境をデザインすることが困難であることが多い。また,新型コロナウィルスによる活動自粛の影響などにより対面授業自体が困難になることもある。このようなときオンラインの授業やオンラインの画像や動画の活用が必要となる。そこで本研究では,自らの授業「看護物理学」の実践を通して,オンライン動画を利用した科学の授業の妥当性について検討した。また,オンライン動画の選択については,日本の教育映画における「動く掛図論争」を念頭において考察した。その結果,教師の役割は,授業で共に実物や現象を視聴し,それらを授業後にも再度視聴し吟味検討することができる学習環境をデザインすることである。教師は,ドラマ仕立てのオンライン動画ではなく,一つの事物,現象を熟視させるクリップ的なオンライン動画を用意しておく必要があるとした。</p>
著者
齊藤 有里加 下田 彰子 梶並 純一郎 小川 義和
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.493-496, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
3

理系学芸員課程の授業教材として,モバイル端末アプリケーションiNaturalistを使った体験を実施した.演習は国立科学博物館付属自然教育園で行われ,動植物の管理,保存,活用についてレクチャーと,植生管理のための生物モニタリングの試みとしてiNaturalistのシステムを紹介し,「バイオブリッツ」を体験し,ディスカッションとアンケートを行った.本発表では,大学生がiNaturalistを操作し,博物館資料として野外生物情報を習得し,公開するまでの過程を紹介し,野外博物館の資料特性理解の効果について考察する。
著者
水島 未記 堀 繁久
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 40 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.31-34, 2016 (Released:2018-08-16)
参考文献数
4

筆者らは、2015 年春にオープンした北海道博物館の総合展示のうち、北海道の生態系および生物多様性を扱ったテーマである「生き物たちの北海道」を担当した。そこでは、元々博物館に興味関心がある層に対してより深い学習効果をもたらすだけでなく、博物館好き層ではない層、興味レベルが高くない層も含めた「その他大勢」にリーチするための展示手法および表現手段について模索した。本研究では、企画意図を紹介するとともに、そのアプローチおよび考案した具体的な展示手法等について報告する。
著者
上田 祥平 平林 真伊 清水 美憲
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 38 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.491-492, 2014-09-13 (Released:2018-05-16)

STEM教育は,科学・技術・工学・数学を統合的に扱うことで,21世紀型能力等,これからの社会に求められる力の育成を目指す.学校数学の立場からこのSTEM教育をみると,理数系教育の新たな取り組みとして今後の展開が期待される一方,他分野と統合的に扱われるなかで数学の内容が後退するという問題点も挙げられる.本稿では,重要な数学の内容が含まれる活動として紹介されていたSTEM教育の活動の実践例を分析し,STEM教育での生徒の探究活動において数学化がどのような役割を果たしているのかを考察する.
著者
森田 直之 滝澤 賢 中安 雅美 舘林 恵 森口 哲平 大熊 雅士 川端 康正 猪又 英夫 白鳥 靖
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.305-306, 2016

<p>東京都立多摩科学技術高等学校(以下、本校)は、平成22 年に開校し、平成24 年に文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、4 年が経過した。これまで科学技術教育の一貫としての倫理教育の在り方について取り組んできた。本校では、SSH 指定科目である『科学技術と人間』の「技術者倫理」という単元において未来の科学技術を多く取り上げたウルトラセブンを題材に倫理教育を行なうプロジェクトチームを立ち上げた。本研究では、ウルトラセブンを題材とした初等技術者倫理教育の教材開発および倫理教育のアクティブ・ラーニング化への試みを報告する。</p>