著者
浅倉 むつ子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究成果の概要:雇用分野における複合差別禁止法理が有する差別の是正・救済可能性を明らかにするために、近年のイギリス、EU、日本の雇用差別をめぐる立法動向と判例法理について研究した。これら一連の研究から、イギリスの2010年平等法が各種の差別是正について効果をあげていること、日本にも存在するマイノリティ女性の複合的差別状況の解決を図る方法としては包括的差別禁止立法の構想が重要であることが明らかになった。
著者
根本 泰雄
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

小学校,中学校等,高等学校等での「理科(地学領域)」で実験・実習・演習教材が不足している項目を探り,不足している項目での実験・実習・演習教材の改良・開発を行った.改良・開発にあたっては,安価かつ簡便であることを重視した(キッチン地球科学の精神に基づいた).結果として,これまでの実験より安価に作れる教材の提案や新しい教材の提案を行い,提案した実験等を取り入れることで授業効果が高まることを明らかにした.
著者
永山 ルツ子
出版者
静岡英和学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,子どもの顔の認知が成人の行動に影響するかどうかを検討するため,実験社会心理学的アプローチ,認知心理学的アプローチ,発達心理学的アプローチにより実験を行った.その結果,子どもの顔は危険行動を抑制すること,自意識が高い成人や親子間関係が不安定な成人ほど子どもの顔に対する反応が遅いこと,葛藤を伴う顔判断は,両側前頭前野が関係している可能性が示唆された.また,月経周期における排卵期の成人女性は,子どもの顔より成人男性に対して反応しやすいことが示された.これらのことから,子どもの顔の認知は成人の行動に影響することがわかった.
著者
久野 和子 川崎 良孝 吉田 右子
出版者
神戸女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、21世紀に入って評価が高まっている「場としての図書館」の価値とその展開を歴史的、実証的に解明している。すなわち、欧米の学際的、先進的な「場としての図書館」の先行研究と国内外における公立図書館、学校図書館、児童図書館における広範な実地調査、資料収集に基づいた統合的な研究である。これからの日本の図書館は、利用者の情報交流、生涯学習、市民活動、社会関係資本、豊かな日常生活を効果的に創出・支援できる「第三の場」となるべきことを提言した。
著者
宮浦 國江 宮原 勇
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

認知語用論の理論構築と実証的研究を進める中で、知識構造としてのストーリー、言語使用場面では、複数解釈可能性を示すマルチ・ストーリー・モデルの有効性が明らかになった。記号体系の一部としてストーリーを捉えることで、形態論、統語論との連続性が確認された。接辞-ish,-likeなどの分析をベースに、メタファ、メトニミ研究の陰に隠れがちなシミリに注目し、参照点構造によるレトリック戦略について論ずると共に、形容詞に見られる主観性、客観性を考察した。
著者
松谷 明美
出版者
高千穂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

否定極性表現と数量詞表現を含む文に関して、派生と解釈および言語習得に影響を与える要因を検討した。大人の日本語母語話者への実験を行うことで、特に意味・運用上の要因(適切なコンテクスト・関係節等)が否定極性表現および数量詞表現を含む文の容認度を高める可能性があることを統計的に明らかにした。第一言語習得においては、数量詞化された数詞に関して、英語の場合とは対照的に、日本語の母語話者の子供の場合は、語彙上数量詞化された数詞のほうが、運用上数量詞化された数詞より早く獲得することが明らかになった。第二言語習得に関しては、第二言語(外国語)としての大人の日本語学習者に対する実験結果から、意味・運用論上の要因が、否定極性表現および数量詞表現を含む文に関して、容認度を上げる可能性があるということを統計分析によって示した。
著者
日野 健一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

超短パルス高強度レーザーを半導体に照射すると、位相がそろったコヒーレントフォノン(CP)が瞬時に励起され、観測量に顕著な振動パターンが現れる。本研究では、CP生成に付随して発現する過渡的Fano共鳴や光学フォノン・プラズモン結合状態などを統一的に理解可能な量子論的枠組みの構築、さらにそれに基づく実験結果の検証を目的とする。そのために、プラズモン、電子・正孔対およびフォノンから成る擬ボゾン演算子を導入し、これによるポーラロニックな準粒子モデルを提示し、当該系の解析を行う。特に、このモデルをさらに単純化することにより、過渡的Fano共鳴を含むCP振動の解析的表式を得ることに成功した。
著者
大場 修
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本論は上海租界の都市形成過程を踏まえつつ、近代上海における日本人居住地の形成過程と空間的特徴を、英、米、中との国際関係の中で明らかにした。まず、1840年代から、イギリス人は、租界として開発された以前の上海に存在していた河川、村道を生かしながら、土地、道路を開発していたこと、及び下水道の建設過程を明確にした。次に、日本が独自の居留地を諦め、租界全域に渉る都市開発権を得た過程を辿った。日本は英米施設との立地関係、交通条件や地価等に応じた都市施設配置を進めたが、結果として上海の日本人居住地の確保は後回しにされた実態を明確にした。一方、日本人居住地では、英米が供給する里弄住宅を主体とする借家居住に終始したことを、租界外の北四川路地区の住宅遺構等の調査を通して示した。その住宅形式は洋風ではあったが、畳を持ち込む等の動向もそこに読み取った。
著者
黒澤 香
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

2つのことを並行して行った。まず、どのような研究が可能かをさぐるため、1年目は韓国で開かれたアジア法社会学会に参加し、発表を聞いた。2年目と3年目はアメリカから研究者を招いた。それをもとに、参加者が一般人であることが不可欠と考え、インターネットを用いたサンプルで、小グループごとに討論を行った。時間のため、今回は裁判官役を加えることができなかった。独立変数はそのときの人数が大と小、および用いた事例AとBで、従属変数は有罪・無罪など。参加者数は合計で100を超えるが、研究のためには少なかったようである。差が統計的有意になったものは考えていたより少なかったが、重要なものが見つかったように思われる。
著者
ゲラー ロバート 河合 研志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

マントルの地震学的構造とその地球化学的性質を明らかにすること、特に、核-マントルの相互作用と共進化の理解に貢献することを目指し、我々はより高解像度の地球内部構造を推定するための独自の手法(波形インバージョン)を開発してきた。波形インハージョンは走時などの2次データではなく、地震波形そのものをデータとして用いて情報を最大限抽出し、これまでになく高い解像度でD”領域の構造を推定する手法である。本研究ではその手法を三次元不均質構造に適用できるように拡張し、同手法を使用して中米下及び西太平洋下のD”領域の局所的3次元S波速度構造を推定した。
著者
磯川 幸直
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

(1)本研究の出発点は,3次元ユークリッド空間において,その座標軸のどれかに平行に,高さ無限大の角柱ロッドを逐次ランダム充填する問題である.この問題に対して,本研究以前に,充填される領域の大きさが無限大になる極限では,充填密度が3/4に収束し(平均収束の意味で),かつロッドの配置が等方的になることの解析的な証明に成功していた.本研究でははじめに,その結果を高次元(4次元以上)の空間に拡張することを試みた.その結果,未だ部分的な解決ではあるが,次の事柄を発見した:(i)高次元空間のロッドパッキングにおいては,ロッドの高さの次元が空間の次元により決まるある値大きい場合(この場合のロッドをfatと呼んだ)と,ロッドの高さの次元が小さい場合(この場合のロッドをslimと呼んだ)では,パッキングの様態が全く異なること;(ii)4次元空間におけるfatロッドのパッキングではパッキング密度は1または3/4となること,(iii)一方,slimロッドのパッキングでは任意の周期に対して,fatロッドの周期的パッキングでしかもパッキング密度が1となるもの構成できること,を示した.この内容はISMシンポジウム"Packing and Random Packing"(統計数理研究所2006年3月1日〜3日)において発表した.(2)球面上での球帽のパッキングの問題と関連して,球面上のネットワークで分割されたセル(球面多角形)の面積が互いに等しい場合に,ネットワークの周長を最小にする問題を研究した.この問題は,セルの個数nが4,6,12の場合に古くTothが解を与えて以来,研究は進展していない.本研究ではn=5およびn=7の場合に解決を与えた.(3)球面の多角形分割の問題との関連で,正多面体でない凸多面体サイコロを投げたときに各面が着地する確率を求める研究を行った.サイコロをある仕方で投げるとき,各面が着地する確率が,凸多面体をその重心を中心とする球面に射影したときにできる球面多角形の面積に比例することを発見した。この研究では球面ラゲール分割が重要な役割を果たした.(4)有名なペンローズの3角形のように,局所的には3次元立体の投影像であるが,大域的には矛盾を含んでいるような2次元図形の研究を行った.具体的には,アルキメデスのタイル貼りの各辺を4角柱ロッドで置き換えた不可能図形を構成した.
著者
今林 修 堀 正広 田畑 智司 高口 圭轉 島 美由紀 舩田 佐央子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、チャールズ・ディケンズの言語と文体の本質的な特徴を解明ための共同研究プロジェクトで、18世紀から19世紀にいたる主要な小説家の全作品を網羅する大規模な電子コーパスを構築し、それとディケンズの全作品、手紙、演説からなる電子コーパスから最新のコンピュータ技術を駆使したデータ分析とフィロロジーに立脚した伝統的で精緻なテクストの読みとを融合させた研究である。
著者
西村 幸満 酒井 正 野口 晴子 泉田 信行
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

「団塊の世代」という日本のベビー・ブーマー(以下、BB)は、人口規模の大きさから戦後一貫して文化的・思想的異質性を強調されてきた。欧米(主に米)が消費の担い手としたのと対照的である。世代の特殊性・異質性を過度な強調は、引退過程にも見られた。本研究は、BB世代の引退過程に注目し、就業分布、健康・介護要因が前後の世代と比較して異なるかを検証した。結果から判断すると、BB世代が特殊な傾向をもつとはいえないが、人口規模の大きさによる社会的な対応は避けられない。法改正による就業延長が規模の効果を吸収したようにみえるが、そもそも引退パターンも前世代と変わらないため、法改正の効果と認めることはできなかった。
著者
西村 秀樹 清原 泰治 岡田 守方
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

昭和初期においては、力石には労働様式と関連した「通過儀礼」的な意味はすでにうすれてしまっていたようである。概しては、祭りのとき、相撲大会のとき、お宮の掃除のときなど若い衆が集まった際に、「力比べ」「力試し」「力自慢」の「遊び」としておこなわれていたと言える。すなわち、「伝統的身体」は、かつてのように農耕という労働様式と有機的に関連するものではなくなっており、「遊び」「レクリェーション」のなかでその威力を発揮するものになってしまっていた。こうした変容は、明治政府のスローガン「富国強兵」「殖産興業」を推進していくために講じた「身体の近代化」政策-学校体育の普及・運動会の普及-によると同時に、それと並行して生じた農業技術の向上、科学肥料の供給、生産の集約化等による「伝統的身体」の変質あるいは意義喪失といった社会過程にも負うている。こうして、昭和初期には、身体は近代化されていた。一方で力石を担いで遊んでいたが、他方では町や部落、学校の運動会が盛んで、「躍動」「すばやいロコモーション」「方向転換」「整列行進」になじんでいたのである。戦後は、力石はこの「レクリェーション」からも姿を消し、現在では香北町や香我美町で年一回のコンテストとして残存するにすぎない。これは、村落構造の崩壊(例えば、力石の担い手である若い衆が減り、若者宿が消失していったこと)や他のレクリェーション(野球・相撲・芝居・浄瑠璃など)の普及といった社会過程を背景にしていると考えられる。今回の聞き取り調査は、今や風化してしまいそうな力石の実態を記録にとどめることができたというところに、最大の成果があったと思っている。
著者
山本 建郎
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

アリスティデス・クィンテリアヌスの『音楽論』全三巻を翻訳し、詳しい注釈を付した。それによって、これまで不明として不問に伏せられていたいくつかの点に決着をつけ、古代ギリシアの音階理論のほぼ全容を明らかにした。
著者
服部 哲 柴田 邦臣 庄司 昌彦 松本 早野香 吉田 仁美
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、発話や聴覚に障害があったり認知に障害があったりするため、コミュニケーションや活動の見通しを立てることが困難であったりする人を支援するためのタブレット・アプリを開発した。本アプリの基本機能は、音声認識システムによって単語を認識し、それに対応する写真やイラストを順番に並べて表示することであり、これによってコミュニケーションや予定の見通しを支援する。本研究では仙台市のNPOと協力し、本アプリの評価実験を行った。その結果、本アプリの有効性が示唆された。これらの成果は、これまでデジタル・メディアから縁遠いと思われてきた高齢者・障害者のコミュニケーションの質を高めうると思われる。
著者
野口 武悟 植村 八潮 岡山 将也 高岡 健吾 中和 正彦 成松 一郎 深見 拓史 松井 進
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、アクセシブルな電子書籍の製作と提供をめぐる国内外の動向を把握したうえで、日本国内においてアクセシブルな電子書籍を安定的に製作・提供し得るプロセスを検討し、アクセシブルな電子書籍の普及に向けての提案を行うことを目的とした。具体的には、(1)アクセシブルな電子書籍の製作・提供をめぐる国内外の動向を調査し、参考となる情報・事例の収集、(2)出版・図書館・利用者の三者で共同し、アクセシブルな電子書籍を安定的に製作・提供し得るプロセスの検討、(3)出版・図書館・利用者の三者で、アクセシブルな電子書籍の普及に向けてのあり方の考察・提案を行った。
著者
堀内 正昭
出版者
昭和女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、2004年に発見された仮議事堂(初代国会議事堂:竣工1890年)の図面をきっかけに、関連文献の収集と分析を通じて仮議事堂を建築史的に復元考察しようとするものであり、研究期間中に日本建築学会を中心に計6件の論文を発表した。まず、今回発見された図面は仮議事堂の実施原図であること、工事中に設計変更がなされて竣工したことを明らかにした。また、当初の煉瓦造から木造に変更かつ縮小されたが、原案を設計したパウル・ケーラーのプランニングが継承されていたことを明らかにした。次に、わずかに遺された写真や明治期の錦絵をはじめとする絵画資料ならびに類例建築から、仮議事堂の小屋組は、当時わが国で「ドイツ小屋」と呼ばれていた技法を用いて、それをタイ・バーで補強した混合構造で造られていたと考えられること、その構法は、同時代のドイツに建てられた祝典会場のそれに酷似していたこと、それは第1回帝国議会開催に間に合わせるという工期の問題があったからに他ならず、双方とも仮設建築であったことに起因することを明らかにした。さらに、仮議事堂の屋根葺き材についてはこれまでスレート葺きと推察されてきたが、本研究では、当時のドイツでこの種の仮設建築にアスファルト・ルーフィングを用いた例が複数あり、わが国では時期的にルーフィング仕様が可能であったことから、工事の最終段階で変更がなされた可能性の高いことを考察した。こうした研究成果を通じて、期間中にとくに貴族院議場とその周辺の50分の1の模型を製作した。唯一遺された仮議事堂の外観写真を参考に、この模型を使ってとくに複雑な起伏を見せる議場周りの屋根伏せを復元的に考察するとともに、建物全体の屋根形状を明らかにした。
著者
藤野 毅
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

2005年から試験堪水が開始された荒川水系中津川の滝沢ダム上流とダム直下を対象に、流下有機物と底生動物群集の構成調査を行った。試験堪水以降、下流域のほうがタクサ数、バイオマスともに豊かであった。バイオマスの増加は主に大型のヒゲナガカワトビケラが早々に定着したことに起因した。底生動物群集の出水後の回復過程を比較すると、ほぼ同時期に同程度の回復が見られた。統計解析(CCA)によっても出現優占種と環境要因との対応関係が明確に示された.
著者
田島 智子
出版者
四天王寺大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、文献と絵画の調査を行った。文献については、主として平安・鎌倉期の歴史資料と文学作品を対象に、絵画に関する記述を抜き出して整理した。絵画については、主として現存する絵巻・屏風絵・障子絵を対象に、屏風歌などの文献の説明と似通う絵を、抜き出して整理した。とくに、絵画を広く調査したことにより、平安期の屏風絵の構図とかなり近いものを見出すことができた。それを参考に絵と歌の関係を再考した結果、たとえば「網代」について、その典型的な光景が、絵と歌の相互作用により形成されていったことを明らかにした。