著者
勝又 隆
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究は、古代日本語において述部に連体形が含まれるなどして名詞と共通する特徴を持つ文(名詞性述語文)について、それぞれの構文が互いにどのように影響し合い、上代から中古、中世にかけて変遷したのかを記述・考察し、「述語」や「構文」の変化が起こる原理の一端に迫ることを目的とする。その過程で、構文的特徴や文意味・文機能等の観点から分析し、古代語の文終止体系におけるこれらの構文の位置づけを明らかにする。また、名詞性という基準によって各構文の変化を質的に捉えることにより、「述語」や「構文」の変化が起こる原理の一端を明らかにすることに貢献することを目指す。
著者
宮本 直人 竹田 正樹 森 敏 宮本 明 畠山 望 三浦 隆治 森本 達郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

スキー競技において,ワックスおよびストラクチャは勝敗を決める最重要要素である.本研究では,ワックスおよびストラクチャの摩擦係数を推定するための高精度GPS装置を開発した.摩擦係数の推定はエネルギー保存の法則を用いた.本手法により,摩擦係数が0.001の精度で計測できることを確認した.スキーの滑走性能は雪面状態や気象条件に大きく依存する.競技コースの雪面状態および気象条件とワックスおよびストラクチャの摩擦係数を関連付けてデータベース化した.これにより,スキー競技における最適なワックスおよびストラクチャを選定するための基礎を構築した.
著者
沼知 寿美子 佐藤 光源
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

メタンフェタミン(MAP)やアンフェタミン(AMP)などの覚せい剤を長期反復投与した際に観察される逆耐性現象(以下逆耐性と略)は,その出現様式,行動内容の変化及び抗精神病薬への反応性の類似から覚せい剤神経病の発症と再発の生物学的機序に関する研究モデルとされている.逆耐性に最も直接的に関連した神経化学的な変化は逆耐性形成動物に覚せい剤を再投与した際のドパミン(DA)作動性神経終末からのDAの過剰放出である.低用量の覚せい剤はドパミントランスポーター(DAT)に作用してDAを細胞外へ輸送する(交換拡散モデル:FischerとCho.1979)と考えられており,最近DATの発現を阻止したマウスでは上記のDA過剰放出や逆耐性が形成されないことが確認された(Girosら,1996)ことから逆耐性形成時にはDATのDA放出機構に何らかの異常が生じている可能性が示唆されている.そこで今回我々はMAP逆耐性形成後断薬7日目の,1.ラット脳線条体を用いてDATに特異的なリガンドである〔^<125>I〕RTI 55の結合実験を行い,逆耐性に伴うDATの変化を検討し,2.定常状態での^<11>C-MAPの脳内動態の変化について検討した.非線形最小二乗法による解析の結果,DATへの〔^<125>I〕RTI 55の特異結合は高親和性,低親和性部位の2つが存在した.解離恒数(Xd)に関しては両群に有意な差は認められなかったが,逆耐性群では高親和性部位の最大結合数(Bmax)が対照群に比較して有意に増加していた(p<0.05,t-test)).しかし,^<11>C-MAPの脳内動態は線条体,側坐核/嗅結節,小脳のいずれの部位でも両群に有意な差は認められなかった.最近,コカイン誘導体で標識されるDATの高親和性部位はDAT機能を反映することが報告されており,今回の結果はMAP逆耐性に伴って少なくとも断薬7日目にはDATの高親和性部位のBmaxが増加し,再投与の際のDA過剰放出の一部に関与することを示唆すものであるが,薬物動態の変化はある特定の神経細胞の変化のみでは説明が困難であると考察した.
著者
仁平 典宏
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本課題の目的は、日本の市民社会組織の「ビジネスライク化」と呼ばれる変化に焦点を当てて、そのメカニズムや諸帰結を明らかにすることである。本年度は、企業や助成団体への聞き取り調査については、コロナウイルスの感染拡大のために調査を断られるなど、十分に進まなかった。その代わりに、市民社会に関する言説分析を進めた。具体的には「NPO」に関する新聞記事のコーパスを用い、計量テキスト分析を行った。ビジネスライク化の仮説では、それらの言葉の強い連関を持つ言葉群が、政治・運動的なものから、経営・事業的なものへと、経年的に変化することが想定されているが、その妥当性をDictionary-based approachとCorrelational approachを併用しつつ検証した。分析の結果、仮説通りのトレンドが見いだされた。具体的には、1990年代から2010年代後半までの間に「運動」「政治」「市民」とコード化される記事は減少したが、「経営」に関する記事の割合は変わらなかった。また経営に関連して「不正」の関係する記事の割合は増加していた。このような変化がNPOに対する人々の不信感につながっている可能性について、計量データの二次分析によって、明らかにした。その知見の一端はNPO学会のシンポジウムで報告した他、論文にまとめ、NPO学会の学会誌である『ノンプロフィット・レビュー』に査読を経て掲載されることになった。その他、前年に実施した「首都圏の市民活動団体に関する調査」の分析結果をNPO学会で報告した。さらに、東日本大震災の市民活動の経年変化に関する分析を日本社会学会で発表し、その知見が収録された共著書が出版された。オリンピックのビジネス化にボランティアが動員されるプロセスの分析を行った論文が収録された共著書も刊行された。
著者
Donald・C Wood
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

I have made considerable progress over the last two years. The core project of my research - the translation of Yoshida Saburo's 1938 book - is nearly complete. About 75% of it has been typed, and about the same percentage of the illustrations have been prepared (including the original photographs). However, because it is an extremely complex document - illuminating the life and community of a small-scale subsistence farmer and his family through a sequence of daily entries spanning the period from March of 1935 to March of the following year - there is still much work to do. During the final year, more typing will be done, and the final work on the illustrations and proofreading and editorial adjusting will be completed. Also during the final year, a publisher will be sought for the English language version.
著者
和田 久泰 藤井 秀比古 清島 満 斉藤 邦明 山田 泰弘 関川 賢二 和田 久泰
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

動脈硬化病巣にはコレステロールの蓄積を中心として,マクロファージ,平滑筋細胞,Tリンパ球などが存在しており,これらの細胞群は種々のサイトカインを分泌している.従って,これらのサイトカイン,とりわけproinflammatory cytokineであるTNF-α(tumor necrosis factor-α)は動脈硬化の発症,進展に深く関与していると想定される.しかし,現在までのところ動脈硬化に対するTNF-αの関与を直接的に証明した成績は認められない.本研究では,TNF-αノックアウトマウス(TNF-αKO)とアポリポ蛋白E(ApoE)ノックアウトマウス(ApoE KO)を交配させることによって樹立したダブルノックアウトマウス(TNF-α/ApoE KO)を用い,動脈硬化発症におけるTNF-α.の役割を直接的に証明した.ApoE KOとTNF-α/ApoE KOの血清コレステロール値はWild-type(C57BL/6J)に比べて著明に上昇し,超低比重リポ蛋白(VLDL)コレステロールがその主体を占めていた.しかし,ApoE KOとTNF-α/ApoE KOとの間に有意な差を認めなかった.一方,大動脈基部における動脈硬化病変の大きさを比較すると,TNF-α/ApoE KOはApoE KOに比して動脈硬化病変が有意に減少していた.さらに,大動脈におけるRT-PCR分析および免疫染色により,接着因子(ICAM-1,VCAM-1)やケモカイン(MCP-1)の発現が,ApoE KOに比べTNF-α/ApoE KOにおいて有意に少ないことを認めた.以上の成績より,TNF-αは接着因子やケモカインの発現を誘導してマクロファージの接着・遊走を促進し,動脈硬化病変の形成に促進的に働いていることが示された.
著者
守 明子 長谷川 直司 志岐 祐一
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

わが国における鉄筋コンクリート造建築物の黎明期に生産され,かつ現在も供用中の工場(山口県山陽小野田市)を対象に,当該建築物に関する資料調査と実測調査とを行った。併せて黎明期の鉄筋コンクリート造に関する著作の調査も行った。その結果,我が国が明治時代より近代化をすすめた際の建築材料製造技術の歴史ならびにその材料を用いた新しい構工法である鉄筋コンクリート造建築物の歴史の一端を明らかにすることができた。ここで得られた成果は,黎明期の同構造建築物における耐久性を解明するための基礎的な資料となるとともに,現在,各地で進められている多くの鉄筋コンクリート造建築物の文化財としての保存に対し,補修改修方針の策定に関しても資するものである。
著者
澤田 篤子 猿谷 紀郎 寺尾 正 古坂 紘一
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

『金光明最勝王経』(以下『最勝王経』)を講論する法会である薬師寺最勝会は830年に勅命により始修された。中世には戦禍のため、廃絶し、近世には最勝講として形を変えて細々と行われていたものの、明治の廃仏毀釈により途絶えた。薬師寺の史料は大半が焼失しており、薬師寺や他寺蔵の最勝会および最勝王経に関連する法会および経疏等の史料(第二次史料を含む)を併せて比較分析を行った。本研究にあたって、まず以下の4点を精査した。(1)維摩会、御斎会、その他『最勝王経』を所依の経典とする諸儀礼の史料、および薬師寺蔵の最勝会関係の史料に基づく最勝会の成立と変遷の過程。(2)『最勝王経』の概要と特徴。(3)雅楽付法会における音楽(声明・論義・雅楽)の実態。(4)最勝会のテキストおよび遡及の上限(江戸期)における声明の旋律。また以上の結果から、次の2点を考察した。(1)中世以降その経典としての必要性が希薄になった『最勝王経』に依拠する儀礼の存在意義。(2)教義の追求が音楽やパフォーマンス等の表現の追求に凌駕されていく儀礼の特質。以上の成果から導かれた、宗教が本有する審美性、あるいは伝統に内在する創造性という二重構造の原理を、薬師寺大講堂における最勝会の復興に反映させた。すなわち、かつて護国経典として日本に受容された『最勝王経』を今日的視点から見直し、この結果を復興する最勝会の基本的理念に反映させた。さらに復元した声明・論義を軸に、新たな伝統に内在する創造性の面を強調し、かつ『最勝王経』の経説に基づき、新たに雅楽と打楽器による音楽を創作し、最勝会の平成での具体像を提言した。
著者
金子 希代子
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2020年度は、新型コロナウイルス感染症が拡大したために研究が中断され、継続が難しかった。しかし臨床研究である『尿路結石症患者および健常者における血中・尿中Protein Z濃度の比較』の学内倫理審査が2019年11月に受理され、測定データの見直しを行った。さらに尿路結石の分析に関しては、2019年度からの継続で、ヒトの結石ではないが、イルカとクジラの腎結石について、無機成分分析を実施した。これらがリン酸カルシウム結石であったことから、石灰化との関連に興味が持たれる。さらに検討を進める予定である。