著者
松浦 清
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

星曼荼羅(北斗曼荼羅)の構成要素と構成原理は仏教の教義とは無縁な天文学の基礎知識に基づいており、仏教はその知識を教義に利用している。星曼荼羅の図像の原型は、現実の天体配置を把握する際に必要な「基礎的天体モデル」とでも称すべき一種のイラストと推測され、それにインドと中国の暦法や西洋のホロスコープ占星術が融合して、星曼荼羅は成立した可能性を研究論文にまとめた。また、星宿信仰の歴史的展開を解明するには、近世の関連作品の分析が重要であることも、他の研究論文において指摘した。
著者
田中 多佳子 梅田 英春 金子 敦子 沖花 彰 尾高 暁子 田中 健次 塚原 康子 筒井 はる香 寺田 吉孝 横井 雅子 岡田 恵美
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

楽器というモノに込められたわざ学、すなわち意匠と具体的変容の過程に着目してさまざまな角度から観察・分析することによって、今まさに音楽に生じつつある西洋対非西洋および伝統文化と現代化のせめぎあいと伝播と変容の具体的諸現象を確認し、可能な限り資料化し公開した。主な研究成果としては、(1)日本の大正琴とその異形たるアジアの楽器群に関する研究、(2)インドのリードオルガンとその異形に関する研究、(3)ヨーロッパの楽器学と楽器制作の現状に関する研究、(4)19世紀末のインド楽器をめぐる東西交流史に関する研究があげられる。
著者
石井 亮 土基 善文 稲場 道明 上原 北斗 島田 伊知朗 木村 俊一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

A型クライン特異点の極小解消上の例外集合に台を持つ連接層の導来圏に関して, Bridgelandの定義した安定性条件の空間を決定し, 特にそれが連結かつ単連結であることを示した. また, ダイマー模型にそれぞれ適当な条件を課すと, 付随する箙の表現のモジュライ空間が, 対応する3次元特異点のクレパント解消になり, 箙の道代数はその非可換クレパント解消であることを示した. 特殊McKay対応との関係も明らかにした.
著者
瀧本 禎之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

摂食障害患者の治療拒否時の対応に関して、文献調査により「最善の益」と「判断能力」の二つが論点として抽出された。この2つの論点に対して、国内の摂食障害の治療専門家の意識を調査した結果、「最善の益」を生命維持と捉えて、生命危機時には強制的治療を選択する一方で、摂食障害患者の「判断能力」は認める傾向が認められた。強制治療に対する考えは、保健行政側も同様に考えていることが明らかなった。国外との比較においても、一定の判断能力を認めつつも生命危機時には強制的治療を選択する傾向は同様に認められた。ただし、日本は、海外に比べて強制治療の根拠を家族の同意におく傾向が強いという特徴が認められた。
著者
善如寺 俊幸 渡辺 裕司
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

世界の文字教育に関し、教育法を含む各種各様の実態を調査したうえで、非漢字文化圏からの留学生に現在のところ最も有効と思われる教授法に基づいて、漢字教材を開発作成した。世界数カ国の文字教育の実態を調査したところ、結果は予想を裏付ける形となり、非漢字文化圏諸国が多くても50字に届かない数の文字を3カ月から1年の間に学習し終えるのに対し、漢字文化図諸国では発音記号もしくは文字の他に国によって1000から3500に及ぶ漢字の読み書きを6乃至7年に亙って学習し続け、更にこれに続く3年間を読みあるいは熟語の学習を主軸とした1000字から2000字の漢字学習に当てるにもかかわらず、それでも文字習得が完結するわけではないという各々の実態が比較概観できた。こうした実態から翻って留学生の日本語文字教育を見るとき、非漢字文化圏からの留学生が日本語の文字学習別けても漢字学習に臨む際の気の遠くなるような絶望感にも似た無力感の一端が実感できるのである。これら調査結果を礎に、漢字学習が決して漠として杳とした際限のないものではなく、漢字の創成に着目すれば漢字の系統的相関も明解になり、積み上げ式の漢字学習が可能になることを、教材を通して分かりやすく示した。また、非漢字文化圏の留学生に対して、現在考えうる最も有効なコンピュータ教材のモデルも試行的に作成した。これは漢字の字源のイメージ(原像)を記号化する過程、即ち漢字の創成過程を映像として知覚認知させることによって漢字の字形と字義を同時に記憶させる速習法で、対留学生日本語教育は言うに及ばず、広く国語教育にも帰国子女教育にも活用でき、その汎用性は極めて高い。
著者
浅野 毅 中川 慎介 角家 健
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

血液脳脊髄関門保護効果を有する薬剤同定のハイスループットスクリーニング(HTS)方法を確立した。次に、既存薬のスクリーニングによって、候補薬剤を同定し、in vitro血液脳脊髄関門モデル、マウス脊髄損傷モデルによって、候補薬剤が血液脳脊髄関門保護効果を持つことを確認した。また、候補薬剤の1つであるBerberineを脊髄損傷マウスに投与することで、歩行機能が向上し、損傷脊髄の損傷範囲が減少することが明らかになった。これら一連の結果は、今回開発したHTS方法が血液脳脊髄関門機能保護効果を持つ薬剤の絞り込みに有用であり、同定された薬剤が脊髄損傷に対する神経保護効果を持つことを示している。
著者
富永 篤 西川 完途 中田 友明 島田 知彦
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

アカハライモリ5遺伝集団の分類学的関係の解明のため、集団遺伝学的解析に加えて、飼育下での配偶行動の観察と比較、性フェロモンの地理的変異の把握を行った。また、各系統の潜在的な生息適地を推定した。その結果、北日本と中部日本系統、中部日本と西日本系統は交雑帯を形成しつつも独自性を維持していること、北日本系統の東北集団と関東集団間には遺伝的にも形態的にも緩やかなクライン状の変異がみられることを確認した。系統間の分布境界では境界を挟んで配偶行動と性フェロモンの組成に明瞭な地理的変異がみられることを確認した。生息適地解析では、現在の交雑の実態と各系統の潜在的生息適地に関連がありそうであることを確認した。
著者
渡邉 誠 土谷 昌広 萩原 嘉廣 水野 康
出版者
東北福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

睡眠は心身の健康を維持する上で非常に重要な基盤であり,睡眠障害は精神および身体疾患を総じて増悪させる傾向にある.口腔環境においても同様であり,睡眠障害患者においては歯周疾患の高い罹患率が報告されている.しかしながら,これらの因果関係については不明な点が多い.我々は,大規模な被災者健康調査の結果から,歯周疾患と不眠症の罹患とが強く相関することを示した.それらの因果関係については不明であるが,本研究で介護施設において実施された,専門的口腔ケアの介入が口腔衛生状態の改善・維持が睡眠の質的改善に直結することを示唆したことから,睡眠障害患者への歯科的介入の有効性が示されたと考えられる.
著者
藤本 一男
出版者
作新学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

データの幾何学的配置を分析の基礎におく「幾何学的データ解析」という分析フレームワークを用いて、社会調査におけるカテゴリカルデ ータ分析の方法を構築する。その際、以下の問いにGDAを用いることで答えることを示す。・「取得したデータの構造を破壊しない分析は可能か」カテゴリカル・データを分析するためには、数量化が必要 となるが、どうすれば、データ構造を破壊せずに可能か。・「観察データに対して変数の連関性を評価することは可能か」実験が 可能な場合は、実験計画法として因果分析が可能である。だが、社会調査データでは、この前提は成立しない。この観察データに対して「効果」の評価を行なうことはいかに可能か。
著者
前田 智司 千葉 健史 浦丸 直人
出版者
日本薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

母乳中のセロトニン(5-HT)およびノルアドレナリン(NA)の母乳産生および乳児に対する役割の解明を行った。母乳中の5-HTの経時的変動についての検討では、初乳、出産後1ヵ月、3ヵ月では母乳中の5-HTの含有量にほぼ同程度であった。母乳産生を担う乳腺上皮細胞は、NAを自ら合成し、母乳中へ分泌していることを明らかにした。さらに、授乳期にストレスを受けたマウスでは、母乳のNAが上昇し、β-カゼインを減少させることが分かった。これらの結果から母乳中に含まれている生理活性物質は母乳産生および乳児の成長に関与している可能性が示唆された。
著者
北澤 茂良 桐山 伸也 松本 祐二
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

人工内耳装用者(CIR)のための音楽聴取支援装置として個人ごとの移調と速度調整の特性を学習獲得できる「懐名歌」を開発し、CIRの内観報告を多数得た。これを生かして人工内耳の音響シミュレーションを開発し、人工内耳音階の効果を確認し、音楽聴取できる人工内耳の可能性を検討した。 CIRが楽しめる音楽を提供するために、知名度、年代、主旋律の音程、リズム、などを考慮して15曲を選択し、音楽訓練を受けた女声・男声・口笛が演奏した。曲楽は、刺激電極数が最大化されるように移調を行った。
著者
郷原 佳以
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

モーリス・ブランショ、ロラン・バルト、ジャック・デリダは、いずれも20世紀フランスにおいて「エクリチュール」を概念化し、根源的な営みとして捉えた批評家であり思想家である。彼らのエクリチュール概念は、それが主体の理性的な統御を免れるものだという点においては共通している。しかし、構造主義が依拠した発話理論の言語学との関係という観点から見ると、彼らのエクリチュール概念はそれぞれに異なっている。本研究は、関連テクストの精査により、エクリチュール概念と発話理論の関係性という見地から彼らの思想の共通性や差異を明らかにし、それを通して、ブランショやデリダと構造主義との距離をも明らかにする。
著者
田守 正樹 山田 章
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

ナマコの体壁真皮はキャッチ結合組織と呼ばれる刺激に反応して硬さが変わる結合組織である。細胞外基質に直接作用して真皮を軟化させる物質は、これまで知られていなかった。我々は強い機械的刺激をあたえると著しく軟化するシカクナマコの真皮から軟化タンパク質を精製し、ソフニン(softenin)と名付けた。ソフニンの分子量は約20 kDaであった。ソフニンは生きた細胞を含んだナマコの真皮だけでなく、細胞を破壊した真皮も軟化させたので、ソフニンは真皮の細胞外基質に直接作用して真皮を軟らかくすると考えられる。
著者
山崎 晴雄 田村 糸子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

黒滝不整合は房総半島で鮮新・更新統上総層群の基底に認められる不整合である。その成因に関しては,構造運動説や海底地すべり説など様々な見解が検討されてきたが明確な答えは得られていない。本研究では不整合を覆う上総層群中の広域テフラの対比・編年を通じて、各地の不整合形成時期を明らかにした。その結果、房総の上総層群基底の堆積時期は3.2Ma ~ 1.9Maに及び、三浦半島には不整合が存在しないことが分かった。これから、黒滝不整合は,2.3~1.9Ma頃に局地的な海底地すべりが、順次発生した結果と考える。
著者
人見 健文 陳 和夫 池田 昭夫 松本 理器 澤本 伸克 井内 盛遠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

【背景】良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん(BAFME)は、全身のてんかんと大脳皮質由来のふるえが主症状の疾患である。てんかんやふるえにおける睡眠・覚醒時の大脳皮質の興奮性変化は十分に分かっていない。【目的】BAFMEにおける睡眠覚醒の変化にともなう大脳皮質の興奮性変化を明らかにする。【方法】BAFME患者の脳波記録を解析し、てんかん性放電の睡眠・覚醒時の変化を検討した。【結果】時間当たりのてんかん性放電は軽睡眠・徐波睡眠・REM睡眠時では覚醒時に比べ減少した。【結論】BAFMEは、皮質興奮性の覚醒睡眠時の変容に関してBAFMEは進行性ミオクローヌスてんかんの一部と類似の挙動を示した。
著者
野入 直美 蘭 信三 飯島 真里子 松田 ヒロ子 森 亜紀子 坪田 美貴 (中西 美貴)
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フィリピン、台湾、旧南洋群島、満州からの沖縄引揚者の研究は、3年間の研究成果を『移民研究』第9号(2013年刊行予定)の特集として発表すべく、現在、原稿の最終とりまとめ作業を行っている。 フィリピン引揚者については、沖縄社会における引揚者の戦没者に対する慰霊に関する調査として、沖縄県立平和記念公園内ダバオ之塔で行われる慰霊祭の参与観察と参加者へのインタビューを行った。それにより、慰霊祭が始まった1960年末と現在の慰霊の形、目的、内容、参加者の変遷を明らかにした。また、成果報告を発表するにあたり、戦没者慰霊に関する先行研究(国内外)の動向を調査し、本テーマの位置づけを再検討した。 台湾引揚者については、沖縄県内で刊行された『那覇女性史』や『近代沖縄女性史』などの女性史移住先の台湾の記載は非常に少なく、ほとんど視野に入っていないことを踏まえ、それを補うために市町村誌史の蒐集、整理とともに、台湾経験者およびその家族へのインタビュー調査を行った。 旧南洋群島引揚者については、「旧南洋群島から沖縄へ引揚げた人々の移民経験・戦争体験および戦後経験とはいかなるものだったのか」を、帝国圏他地域からの引揚者の経験と比較検討しつつ明らかにすることを目的とし、これまでに沖縄本島と宮古諸島伊良部島で行った旧南洋群島引揚者149名への聞き取り調査で得られた音声データを文字資料化し、県史・市町村史に掲載された旧南洋群島引揚者の証言と比較・検討した。さらに、この作業によって明らかにされた旧南洋群島引揚者の経験と、他帝国圏から沖縄へ引揚げた人々の経験がどのように共通し、異なるのかを検討した。
著者
佐貫 理佳子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

外傷性脳損傷(TBI)のモデルとしてショウジョウバエを用いた解析を実施した。前年度までにミノサイクリンの薬効が若齢と老化個体で異なることを見出した。この解析をさらに進め、ミノサイクリンがTBIではなぜ若齢ショウジョウバエにのみに有効かを調べた。その結果、ミノサイクリンは若齢群の引き起こす自然免疫の活性化を抑制することができるが、老化群ではそれができないことが明らかになった。また、バルプロ酸は神経保護薬として緑内障の治療においても期待されているが、ショウジョウバエでは明確な有効性は示さなかった。自然免疫との関連をさらに解析するために、いくつかの遺伝子についてノックダウンできるショウジョウバエ系統を入手した。入手したショウジョウバエ系統を用いてノックダウンを実施したが、系統間の遺伝的背景の違いによりノックダウンの効果がマスクされてしまうことが分かった。そのため、アウトクロスを繰り返し、野生型として用いられるCanton S系統に遺伝的背景を置き換えた。また、哺乳動物での検証のためマイクロRNAを用いた老化細胞モデルの作製に取り組んだ。17ラインの細胞を得ている。この際に利用したマイクロRNAの生体における効果についても検証した。さらに、マウスの初代培養細胞を長期間にわたり培養し、自然老化モデルとして使用可能であることをb-gal解析によって確かめた。脳損傷時を模倣できる処置を行い、死亡する細胞の数が培養期間の短いものに比べて増加することが分かった。
著者
見坂 武彦 谷 佳津治 内井 喜美子 片岡 憲司 藤光 隆司 石本 唯奈 細見 峻司
出版者
大阪大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

細菌の越境移動に関する現状の把握は、健康・衛生の観点から重要な課題である。地球上の種々の細菌が渡り鳥とともに国境を越えて移動している可能性があるがその実態は明らかではない。本研究では、渡り鳥の糞に含まれる細菌群集を培養に依存せずに高速シーケンサーを用いて明らかにし、潜在的な病原細菌が長距離移動する実態を検証した。関西地区および北海道東部の沿岸部において、ツバメ科、カモ科、カモメ科の渡り鳥を主な対象として、糞に含まれる腸内細菌群集の16S rRNA遺伝子の配列を網羅的に解析し、鳥の種類による相違、他の生物との相違を明らかにした。また糞に含まれる多剤耐性菌について遺伝学的特徴を明らかにした。
著者
山田 久美子 近藤 貴子 飯沼 光生
出版者
名古屋女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

子宮内環境は胎児の発達だけでなく、出生後の子の健康障害発症の素因を胎児期に形成し、出生後の健康障害発症に影響を及ぼすことが示唆されている。妊娠期の腸内細菌叢は子へと伝えられ、離乳期には最初の細菌叢が完成すると考えられる。また、咀嚼運動のストレス緩和効果も解明されつつある。本研究では、摂食を開始する離乳期について、ストレス暴露とストレス下で棒を噛ませる咀嚼運動をさせた妊娠マウスから出生した仔マウスについて、肥満やストレスとの関連が示唆されている腸内細菌叢、間葉系幹細胞の脂肪への分化能および肥満関連因子の定量などを行うことにより、ストレスと肥満発症の素因形成および咀嚼運動の影響について検討する。