著者
古屋 良一 馬場 一美 木野 孔司 船登 雅彦 阿部 有吾
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

我々は、歯を接触させている習慣(TCH)が顎関節症(TMD)の寄与因子であると考えている。本研究の目的は、TCH測定システムを開発し、TCHの頻度、TCHとTMDの関係およびTCH是正システムの効果を調査することである。TMD患者と健康な人について携帯電話の電子メール機能を利用したTCH測定システムを使用してTCHを評価した。TMD患者におけるTCHの頻度は、健康な人より約5倍高かった。
著者
高山 芳幸 横山 敦郎 齋藤 紘子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

まず骨質を表すパラメータ(皮質骨厚,海綿骨のヤング率)を種々変化させた有限要素解析を行い,骨の最大ひずみを評価値として応答局面を作成した.次に,インプラントのサイズを最適化手法を用いて検討したところ,海綿骨のヤング率が0.5GPa以下の場合,インプラントのサイズを大きくしても生理的なひずみの限界値を超え,インプラント先端部周囲の海綿骨に最大歪みがみられた.しかし,CTデータから構築したモデルによる解析では,最適化計算の結果と比較して,歪みの値はやや低く,最大相当歪みの現れる位置が異った.これは,CTから作成したモデルでは,骨の物性が部位によって大きく異なっていたことが原因と考えられた.
著者
山本 融
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

精神神経疾患は誰もが罹患しうるコモンディジーズであり、その克服は重要な課題である。我々は膜タンパク質MDGAの欠失が、各種精神神経疾患に通底する分子病態であるシナプス形成バランス異常を引き起こすことを明らかにしている。本研究ではMDGAの高次脳機能統御における役割を明らかにするするとともに、こうした異常を改善する薬剤を探索することにより、精神神経疾患の新たな創薬シーズを獲得することを目的とする。
著者
百瀬 弥寿徳
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は飲酒時の心拍数増加作用について、アセトアルデヒドは心臓洞房結節ペースメーカー細胞を直接活性化し発現するとの仮説を基に、アセトアルデヒドの心拍数増加作用を明らかにすることを目的とした。アセトアルデヒドは交感神経終末よりカテコールアミンの遊離作用を持つことが知られているが、単離細胞標本では作用部位がpost-synaptic membraneに限局されることから、アセトアルデヒドの心拍数への効果が明らかにされると考える。本研究ではウサギ心臓洞房結節ペースメーカー細胞を単離し、アセトアルデヒドが陽性変時作用を有することを確認した。次にパッチクランプ法によりIfチャネル、T-type Caチャネル、Na/Ca exchange currentsを計測してアセトアルデヒドの陽性変時作用機序を検討した。その結果アセトアルデヒドはT-type Caチャネルを活性化することが明らかとなった。またL-type Caチャネルも著明に活性化した。このことは細胞内Ca濃度の増加がアセトアルデヒドによって起こりペースメーカーの発現に促進的に働くことが示唆された。またIfチャネル、Na/Ca exchange currentsに対してアセトアルデヒドは明らかな影響を及ぼさなかった。以上の研究結果は、アセトアルデヒドがこれまで考えられた交感神経終末からのカテコールアミンの遊離作用に起因する心拍数の増加作用以外に、直接洞房結節ペースメーカー細胞に作用し陽性変時作用を起こすことを明らかにした。その機序はT-type Caチャネルの活性化と細胞内Ca濃度の増加に起因するものと結論した。
著者
木下 祥尚
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

局所麻酔薬の作用機序に関して、これまで複数の仮説が提唱されてきた。しかし、いずれの仮説も矛盾を含んでおり、結論は得られていない。近年、申請者らは「麻酔薬はラフトの形成を阻害することで、チャネルが活動する場を奪い、神経伝達を阻害する」というラフトを基盤とした仮説を提唱している。しかし、細胞膜に存在するラフトをありのままに標識することは困難であり、ラフトを指向した研究は立ち遅れたままである。本研究では 申請者らが開発した脂質の分布を高精度で追跡できる蛍光プローブを利用し、麻酔薬が脂質ラフト形成に及ぼす影響を調査する。本実験により、脂質ラフトを基盤とした、麻酔作用発現の機序に関するモデルを提唱する。
著者
橋本 健志 四本 かやの 児玉 豊彦 田中 千都 平良 勝 大畠 久典 北岡 祐子 藤本 浩一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、自殺未遂歴および希死念慮がある精神障害者に対してリスクをマネージメントしながら、就労支援を行う特化型就労支援プログラムを開発しその有用性を検討することを目的に実施した。このプログラムは、医療機関と連携した特化型就労支援窓口と携帯メール自動配信サービスから成り立っている。K市内の就労支援事業所と精神科診療所外来作業療法部門の2箇所で医療機関と連携した特化型就労支援窓口を開設しその有用性を検討した。さらには、希死念慮等の精神症状を有する精神障害者に対して携帯メールを配信するプログラムを開発し、それによって希死念慮が低下し、社会資源を積極的に利用する者が有意に増加したことを報告した。
著者
渡辺 志朗 藤田 恭輔
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

マウスにリトコール酸(LCA)を投与することによって誘導される実験的胆汁うっ滞性肝傷害が、漢方薬である防己黄耆湯(BOT)を投与することによって軽減されることがわかった。このとき肝臓において、LCAの毒性を弱める酵素である水酸化酵素(cyp2b10)や硫酸抱合化酵素(sult2a1)の発現量が、BOTの投与によって増加していることもわかった。これらのことから、BOTはprenane X 受容体(PXR)をはじめとして、constitutive androstane受容体 やvitamin D受容体などの核内受容体の活性化を介して、上記の胆汁酸分解系酵素の発現誘導する可能性が示された。
著者
脇山 俊一郎 藤原 和彦 矢島 邦昭
出版者
仙台高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

エリア放送を地域情報発信基盤として活用する場合の2つの課題、現実的な視聴エリアの把握と、視聴者ニーズに沿った放送コンテンツ制作を低コストに実現する手法を提案し実装した。視聴エリアの把握は、既存のテレビ受信アンテナの方向を考慮した受信電波強度のシミュレーションを行い、それを可視化するツールを開発した。また公的機関等がWeb等で公開している二次利用可能な情報を取得し、それらを組み合わせることで住民が必要としている地域情報をタイムリーに自動生成して放送する地域情報発信基盤システムを開発した。
著者
酒井 直人 竹原 康雄 山下 修平 馬場 聡 難波 宏樹
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

脳神経外科手術において頭蓋内腫瘍の硬さは手術の難易度を左右する。核磁気共鳴エラストグラフィー(MRE)は非侵襲的に生体内に組織の弾性率、すなわち硬さを測定することができる画期的な方法である。我々は、MREを用いて代表的な4つの頭蓋内腫瘍:髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、グリオーマに対してMREを用いて術前に弾性率を評価し術中の硬さとの相関について研究を行った。その結果、術前のMREの弾性率と術中の腫瘍の硬さは相関した。MREは術前に硬い腫瘍を鑑別するのに有用と考えた。
著者
高橋 実鈴
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

植物は長期にわたって成長を続けることができ、地上部の成長は茎頂分裂組織の持続的な器官分化により支えられている。長期間、器官分化を続けた茎頂分裂組織において、茎頂分裂組織の機能はどのように維持されているのか又は変化しているのであろうか。本研究は栄養繁殖により長年維持している植物個体と種子から発芽した1年目の通常個体の茎頂分裂組織の機能を比較することで、茎頂分裂組織の永続性や老化の仕組みを理解することを目指す。本研究ではイネを多年生のモデル植物として利用し、栄養繁殖個体と種子由来の通常個体の成長やゲノムを比較することで、栄養繁殖の長期化が茎頂分裂組織の機能やゲノムに及ぼす影響を明らかにする。
著者
飯塚 崇 神谷 和作
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

遺伝性難聴は1600出生に一人と高頻度に発生するが、その根本的治療法はなく次世代の治療法開発が期待されている。遺伝性難聴の原因遺伝子として世界中で圧倒的に検出頻度が高いのがギャップ結合タンパク質Connexin (CX) 26をコードするGJB2遺伝子である。CX26は蝸牛ギャップ結合の主要構成要素として蝸牛リンパ液のイオン組成を高電位に維持することで音の振動から神経活動への変換を可能としている。申請者はアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターを用いたCX26欠損マウス内耳への遺伝子治療実験により、CX26欠損マウスにおける高度難聴を優位に回復させることに初めて成功した。しかし、この実験において聴力回復に成功したマウスは生後0日齢であり、ヒトの内耳では胎生期に相当する。当時の方法による遺伝子治療法では成熟マウスの聴力回復には至らなかった。本研究ではベクター投与法を改良することによりヒト臨床応用への対象として現実的である成熟マウスでの聴力回復を実現させる新たな遺伝子導入法の開発を目指す。当該年度は従来型のAAV1-Gjb2との比較実験により感染能と感染指向性の解析をおこなった。生後4日齢のマウスから蝸牛を摘出し、蝸牛器官培養を行った。この培養系にて既存の血清型AAVでのin vitro感染を行った。これにより標的細胞への感染効率の良いベクターを選抜した。蝸牛器官培養での結果を元にAAVベクターの配列を比較し標的細胞であるCX26ギャップ結合形成細胞への効率の良いベクターが選抜された。このAAVベクターをマウス蝸牛に効率よく導入するための投与法の検討を行い5~10ulのウィルス液を効率よく外リンパ液へ導入する手技を確立した。
著者
加藤 一郎
出版者
国立音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究はバッハ演奏の際に行われるテンポの微細な変動の基本原理を明らかにし、今後のバッハ演奏への示唆を得ることを目的とした。そのために、主にバッハ当時の演奏理論書やバッハのオリジナル資料を基にテンポの変動と拍との関係、テンポの変動とアーティキュレーションとの関係について検証し、更に20世紀の演奏家によるバッハ演奏のテンポを解析することによって、テンポの変動の多様性や、今後のピアノによるバッハ演奏への応用等について考察した。
著者
小谷 斉之 大内 茂人 稲葉 毅
出版者
釧路工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本事業は災害現場等の危険領域探査や遠隔地への自律搬送への利用が期待できるCMG搭載型無人二輪車の開発を目的とし,CMGを疑似荷重移動装置として応用した高機動化制御の制御系設計と制御手法の確立および外界センサ測定による周囲環境に応じた自律走行制御を目指している。2輪バイクによる旋回走行では予め車体をバンクさせる必要があるため,適切なタイミングでCMGによる疑似荷重移動によって車体のバンク動作をさせながら滑らかな旋回走行が実現可能となる。そこで,適切なタイミングを図れるように,走行可能な領域と回避すべき障害物を事前に把握するための周囲環境測定を行う。昨年度の研究計画では,自律走行制御のための周囲環境測定手法としてステレオカメラを用いた自己位置推定を当初予定していたが,研究に遅れが出たため,膨大なデータ容量管理と構築に時間がかかる本方式から修正し,レーザー測域センサ方式を用いて処理を軽減した周囲環境構築を行うように研究計画を変更して実施した。しかしながら,コロナウィルス予防による度重なる自粛要請の影響によって実験機を用いた実験データを取得することができなかった。このため,十分な実験に基づいた有効性を検証できていないため,国内外での発表ができていない現状である。
著者
山本 武史
出版者
広島女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

音節とは母音を中心とした音のまとまりであり、音韻論的に有用な単位である。この音節を分類する視点に音節量、もしくは音節の重さというものがあり、この概念を用いて例えば英語の語強勢(語アクセント)の位置が説明される。一般的に音節量は母音の長さ(短母音か長母音・二重母音か)と尾子音(母音の後に来る子音)の数によって決まるとされるが、尾子音の種類や頭子音(母音の前に来る子音)も少なからず影響することが分かった。
著者
山崎 恒夫
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

アミロイドβ蛋白(Aβ)とタウ蛋白の脳内沈着はアルツハイマー病を特徴づける重要な所見だが、両者の存在が単なる合併なのか、あるいは何らかの関連が有るのかは不明であった。ニーマン・ピック病タイプC(NPC)はNPC遺伝子に変異を持っ遺伝性神経変性疾患であり、興味深いことに神経細胞内にアルツハイマー病と全く同じタウの沈着が生じる。NPCのもう一つの特徴は細胞内、特に後期エンドソーム内にコレステロールが沈着することであり、これがNPCの本態と考えられている。近年、アルツハイマー病とコレステロールの関連が想定されつあり、私はNPCに見られるコレステロール輸送異常機構がいかにタウの沈着に結びつくか、またAβの異常とも関係があるのかを検討することとした。まずAβを産生するCHO細胞にType2 amphiphileを作用させ、NPCと同様にコレステロールを細胞内に蓄積させた。次に、コレステロールを蓄積する後期エンドソームを細胞分画法によって集め、生化学的に解析したところ、Aβが同じ画分に凝集していることが判明した。そこで、後期エンドソームをセルソーターによって集め解析すると、やはりAβの凝集が明らかとなった。このエンドソーム内へのAβの蓄積はコレステロールの蓄積量に依存していた。一方、Runzらは同様の処理を細胞に行い、エンドソーム内にAβの産生酵素を検出した。これらの事実は、後期エンドソームがAβの産生部位の一つであることを示すとともに、コレステロールの輸送異常はタウ並びにAβの細胞内蓄積を生じさせ、このことがアルツハイマー病の病態発生に関与している可能性が考えられた。
著者
城塚 達也 多田 昌平
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

CO2の再資源化を目的として、ジルコニア系触媒を用いたCO2水素化によるメタノール合成が注目を集めている。本研究では、ジルコニア系触媒による触媒反応における分子科学を電子状態計算により明らかにし触媒活性との相関を解明する。そして、ジルコニア系触媒を用いたCO2水素化反応を題材とし、constrained density functional theory (CDFT)法などの触媒反応の理論的解析手法の更なる開発と応用の開拓を目指す。
著者
菊地 利明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

レジオネラ菌(Legionella pneumophila)は重症肺炎の起炎菌として、しばしば臨床的問題となっている。当該研究ではレジオネラ菌の無作為遺伝子変異株を作製し、その原因遺伝子の探索を行った。その結果、レジオネラ菌ゲノム上に計7個の責任遺伝子が同定された。これらはレジオネラ菌において分泌機構に関わっていることが知られている遺伝子だったため、なんらかの分泌因子がレジオネラ菌より分泌され、これによってレジオネラ肺炎が重症化するものと考えられた。
著者
國吉 一樹 大鳥 精司
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ラット腕神経叢損傷の節前モデル(BPA)において,疼痛行動および脊髄におけるグリア活性を比較・検討すると同時に神経栄養因子低親和性受容体であるp75NRTの抗体の局所または全身投与による疼痛抑制効果を検討した. 結果, BPA群では損傷側において有意な疼痛過敏を認めると同時に反対側においても有意な疼痛過敏を認め, 脊髄の非損傷側レベルにおいてmicrogliaおよびastrocyteの活性化が有意に認められた.またp75NRT抗体の局所投与または腹腔内投与によりどちらにおいても有意に疼痛過敏が減少した. 脊髄microgliaおよびastrocyteの活性化は非投与群に比べ有意に抑制された.
著者
倉本 一宏
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

平安時代の漢文日記である古記録の中で、宇多・醍醐・村上という三人の天皇によって記録された、三代御記(三代天皇御記)について、他書に引用されて残された逸文の史料的価値を検討する。そして三代御記の逸文である可能性があるものについて、精確な本文を確定し、その訓読文を作成して、テキスト・データベースとしてアーカイブス化することによって、内外の研究者・国民の利用における便宜をはかる。後世、「延喜天暦の治」と賞讃されたこの時期において、三代御記は政事・儀式の慣例典故を徴すべきものとして特に尊重された。本研究は、その価値を甦らせ、正しい平安時代認識を導こうとするものである。
著者
山崎 捨夫 大井 修三 佐藤 亮平
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

我々は,鳴禽類の研究ではセキセイインコを被験体として音声コミュニケーション行動を神経行動学的アプローチで解析し,魚類の研究ではキンギョを被験体として視覚性振動刺激の認知について検討した。インコを被験体とした研究では,雌のインコを防音箱の中に入れ,同種の雄のSong(さえずり)を聞かせ、最初期発現遺伝子Zenkの産生物であるZENKタンパク質(ZENK)の発現を指標として,認知的な情報処理を行っている脳の部位を検討した。初年度の研究では,高次聴覚関連野(neostriatum caudale pars medialis ; NCM)のニューロンが,song(言語性音声)認知に関与していることを明らかにした。また,刺激Songの複雑度が増すにつれて、NCMにおけるZENK発現細胞数が増加した。次年度以降の研究では,この様な関連核としてNILが,また前脳部分ではfield L1,field L3,caudomedial neostriatumが関与していることを明らかにした。キンギョを被験体とした研究では,当初の予定とは異なり,聴覚性振動刺激の認知機構を調べるにあたり,聴覚刺激のみを使用するのではなく視覚的刺激を併用する形で認知機構を検討することが振動性刺激認知の解明に有用であることが分かってきたので,視覚性振動刺激として白黒縞模様を用い,その認知機構の解明を先に行うこととした。その結果,水平あるいは垂直方向の傾向情報の弁別が可能であることが分かった。さらに,この傾向情報からの偏角情報(傾角情報)をも認知情報として弁別方略に使用していることが明らかとなった。ただし,この傾角情報の弁別では,傾角が大きくなるに従い弁別能が低下していた。傾向と傾角の弁別方略においてどちらの情報を主に使っているかについては,被験体ごとでの一定した認知方略が認められなかった。