著者
細川 育子 細川 義隆 中西 正
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、ヒト口腔上皮細胞(TR146細胞)やヒト歯根膜由来細胞(HPDLC)を用い、炎症性サイトカインおよびケモカインに及ぼすCarnosic acid(CA)の影響を明らかとすることを目的に実験を行った。その結果、CAはIL-27が誘導したTR146細胞のCXCL9,CXCL10およびCXCL11の産生を抑制すること、また、IL-1βが誘導したHPDLCのIL-6,CXCL10およびCCL20の産生を抑制することが明らかとなった。これらのことより、CAは歯周炎病変局所にてケモカインや炎症性サイトカインの産生を抑制することにより、歯周炎の炎症を調節している可能性が示唆された。
著者
前川 佳代 森 由紀恵 宍戸 香美 宮元 香織
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、多様な日本古代菓子について日本と大陸での実態を明らかにし、古代菓子を再現して活用することである。日本古代菓子の起源、伝来、実相、展開と変質を実証的に研究し、古代菓子の大陸におけるルーツと大陸に対して甘味料の甘葛煎は日本独自という由来を解明する。その過程で得られた情報から古代菓子を再現する。甘葛煎は菓子だけでなく平安時代に利用された薫物を再現する。再現した古代菓子や甘葛薫物の活用と普及を目指す。菓子は大陸の儀礼や行事とともに伝来した。その用法を食儀礼や修法を含め検討する本研究は、東アジアの食膳研究解明の第一段階である。次いで食膳形態や箸匙の使用法へと発展が見込まれる。
著者
中川 隆之 飯田 慶 喜多 知子 西村 幸司 大西 弘恵 山本 典生
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

哺乳類とは異なり、鳥類の聴覚器官である基底乳頭では、有毛細胞再生が自発的に誘導され、聴覚機能も再生される。鳥類とは異なり、哺乳類では有効性が期待できるレベルの聴覚機能再生は報告されていない。近年、鶏に関する遺伝子情報が充実し、網羅的遺伝子解析手法を用いて、これまで困難であった鳥類における有毛細胞再生に関連する遺伝子およびシグナルの詳細な分子生物学的解析が可能となった。鳥類における旺盛な有毛細胞再生機構を哺乳類における有毛細胞再生活性化に応用し、哺乳類蝸牛における有毛細胞再生効率を向上させ、新しい感音難聴治療薬開発につなげる。
著者
小林 快次
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

「今世紀最大の発見、恐竜全身骨格化石」が,平成25・26年に北海道むかわ町穂別から発掘された.通称“むかわ竜”と呼ばれている全長8メートルを超える巨大恐竜で,平成27年に行われた記者発表は,世界を騒がせた歴史的な発見だった.日本の恐竜研究史の中で,国内から発見された恐竜骨格化石としては,最も完全な骨格であり,恐竜絶滅直前の白亜紀末の恐竜としても国内初の全身骨格である.本研究では,この“むかわ竜”を記載・比較研究することで新属新種として命名し,この恐竜が属すグループである植物食恐竜ハドロサウルス科の進化と移動の解明,そして恐竜絶滅直前の東アジアの多様性の解明を目指す.
著者
繁宮 悠介
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

交尾器破壊が起こらず多回交尾が可能なゴミグモでは、オスはメスの交尾歴に基づくメスの選択を行わず、交尾器破壊が起こり1回交尾と考えられるミナミノシマゴミグモでは、春世代に限れば未交尾のメスが選ばれやすかった。オスが糸を弾いて送る振動信号(求愛歌)は、種間の違いはあるものの、ミナミノシマでメスの1回交尾の機会を獲得するためにオスが行動を進化させている証拠は見つからなかった。どちらの種でも、メスの網に2匹のオスが同時に侵入した場合にもオス間の闘争は見られず、メスはどちらのオスとも交尾するなど、メスによる選択も起こらないようだ。
著者
米田 誠 田中 雅嗣 小坂 浩隆
出版者
福井県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「橋本脳症」は、慢性甲状腺炎に伴う自己免疫性精神神経疾患で、免疫治療が奏効する。橋本脳症の中には幻覚・妄想を呈する患者も多く、統合失調症の中に橋本脳症が潜在する可能性がある。本研究では、①抗NAE抗体を用いて統合失調症と診断されている患者から橋本脳症を抽出し、②その臨床的特徴(臨床情報・症候、脳画像MRI、脳還流SPECT)と背景遺伝子多型(免疫関連)を明らかにし、最終的に③診断指針を作成する。
著者
吉村 あき子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

「メタ言語否定」は、命題の真理条件的内容を否定する「記述否定」とは異なり、先行発話の持つ様々な要因(前提、慣習含意や会話の含意、形態、スタイル、発音など)に基づいて、その先行発話に異議を唱えるものであり、否定は語用論的に多義的であるとHorn(1985,1989,2000^2)は主張する。本研究はメタ言語否定の全体像を明らかにすることを目標に、メタ言語否定の否定対象に対する統一的規定、メタ言語否定の現象から明らかになる自然言語の否定辞の意味、さらに、個別言語としての日本語におけるメタ言語否定の特徴を明らかにした。メタ言語否定の否定対象は、上記のように非常に多様である。しかしメタ言語否定という現象が自然類をなすのであれば、その対象に対して統一的規定が可能であるはずだという考えに基づき、発話の認知処理プロセスという視点から、メタ言語否定の否定対象は、エコーの元になるものによって必然的にあるいは一般的に伴われるが伝達されないもの、と規定できることを示した。自然言語の否定辞のコード化された意味について、Horn(1985,1989,2000^2)はグライスの精神とメタ言語否定/記述否定という現実に存在する使用の区別(語用論的多義性)の間のジレンマに苦しみ、Carston(1996,1998a, b,2002)の、否定辞の意味はメタ言語否定を含むどのような否定辞の例も真理関数演算子であるという主張も、本来の定義に沿うと矛盾を生じる。メタ言語否定の現象の詳細な観察分析から、自然言語の否定辞は、論理学において定義される真理関数演算子を超えた非常にgeneralな「異議を唱える」機能を持つものであると分析しなければ解決しないことを示した。さらに、日本語のメタ言語否定を観察することによって、日本語には「の」を伴う「〜のではない」のような、述語を含むレベルの帰属的な(帰属元を持つ)メタ表示の否定であることをマークする表現形式があること、このことによって通常の否定形式が用いられた場合に伴われるニュアンス/効果が説明できることを示した。
著者
西山 忠男 池田 剛
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

インドネシア・スラウェシ島南部のビリビリアルカリ層状貫入岩体の産状を調査し,岩体内部に発達する火成層状構造の成因を検討した.その結果以下のことが判明した.(1)岩体内部には貫入面から内部に向かって120mの範囲に渡り,197枚の層が確認された.全ての層の厚さを計測した結果,層の厚さは貫入面近くで薄く,岩体内部に向かって徐々に厚くなるスペース則に従うことがわかった.(2)一枚の層は,有色鉱物(カンラン石・単斜輝石)に富む堅い部分と,無色鉱物(斜長石・アルカリ長石・リューサイト・沸石)に富む柔らかい部分の互層よりなる.堅い部分の全岩組成は柔らかい部分に比してNa2Oに富み,K2Oに乏しい.その他の成分については顕著な差は認められない.(3)貫入面から岩体内部に向かって5m間隔で(堅い部分,柔らかい部分に無関係に)試料を採取し,その全岩化学組成を求めた.その結果,それらの組成の範囲は一枚の層の中の組成範囲とほぼ同じであることが分かった.このことは,マグマが貫入した後,マグマ溜まり内部で対流が起こり,マグマの化学組成が均一化したこと,ならびに化学組成の変化は層状構造の形成に伴って起こったことを示す.(4)堅い部分の長石の化学組成は,Or-Ab-Anの3成分図において,約900℃のソリダスに沿う全組成範囲に幅広く分布するのに対し,柔らかい部分の長石は組成範囲が狭く,アノーソクレースやサニディンは出現しないか,出現頻度が非常に小さい.このことは堅い部分が結晶化する際にメルト中の拡散が十分進行せず,全体的に非平衡な状態であったことを示す.柔らかい部分は非平衡の度合いが小さく,ゆっくり冷却したことを示す.(5)以上の事実から,層状構造は対流によって良く撹拌されているマグマ溜まりの境界部(母岩との接触部)において,熱境界層が形成され,その内部でソーレー効果によって形成されたと考えられる.
著者
葉廣 和夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

(1)量子群の圏化の2圏構造をpivotalなものに変形できることを示した。(2)有限生成自由群の圏が対称モノイダル圏として可換Hopfモノイドにより自由に生成されるという事実の初等的・直接的な証明を与えた。(3)ハンドルボディ内の底タングルの圏BでKontsevich不変量を用いて定義される関手を構成し、圏Bの線形化のVassiliev-Goussarovフィルトレーションに付随する次数的線形圏の構造を決定した。(4)曲面の写像類群のJohnsonフィルトレーションとJohnson準同型の概念を、任意の群Gの任意のフィルター付き群Kへの作用に対して一般化した。
著者
酒井 邦秀 ハウザー エリック 金子 克己
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

幼児用の絵本からはじめる英語多読及びその朗読CD による多聴授業により、学生は学校英語を忘れてゼロから英語を英語のまま吸収し始め、一人一人が自分に合った内容とレベルの素材を選んで読み、聞く自律した学習者となった。また、一人一人の多読多聴状況を授業中に教師が英語で質問し、学生がそれに英語で答えることにより、extensive speakingの効果も確認された。また、英語による学生同士のbook talk と、それを書く事により、extensive writingの成果も確認できた。
著者
渡辺 邦彦 岡本 拓夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

平成7年度〜平成9年度の3年間の研究成果の概要は下記の通りである。研究目的は、自然電位の観測でノイズとされる電車の漏洩電流を信号源と考え、電車軌道から約3kmの北陸観測所で漏洩電流波形を基準とし、それより約15km離れた池田観測室での観測波形を比較し、それによって両観測点間の歪場の変動を電磁気的に解析するものである。特に、地殻ブロック境界の観測点は、広域応力場の状況変化を強く反映すると考えられるので、時間的変動を解析することで、地殻歪の変動を測定することができる。研究成果:1.温見断層に着目し、福井県の北陸観測所坑内と池田観測室で地電位差観測を実施した。2.経年変動を解析した。北陸観測所坑内の自然電位分布は、湿潤度に依存する傾向が見られた。池田観測室では、温見断層に直交する方向と平行な方向に長基線と短基線の電極を配置した。断層に平行方向は地盤の状態により不安定であるが直交方向は安定した年周変動も測定された。地震活動との関連は今後の課題である。3.北陸観測所と池田観測室とで1秒毎サンプリングによる漏洩電流観測を実施した。池田での波形は北陸観測所の数分の1に振幅が減衰するが、波形変形はそれほどなかった。FFTによると、解析限界を超える周波数成分変化は認められなかった。今後、時間的変動と高周波成分までの解析を充実する予定である。4.特定の成分にのみ現れる漏洩電流と思われる特徴的波形を認めた。伝播方向や変電所と電車の位置関係の特定が必要である。特に池田の場合、出現する成分が断層に直交する成分のみであることから、地殻ブロックに関わる可能性が有る。
著者
松本 勲 小田 誠 渡邊 剛 田村 昌也
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ナノテクノロジーを応用して作成したキトサンナノ繊維チューブ(C-tube)による胸腔内自律神経再生効果について検討した。ビーグル犬を使用し、交感神経および横隔神経を切断し、神経の断端をそれぞれC-tubeの両端に縫合した。いずれの犬も合併症なく生存した。術後1年でC-tube内で神経が連結しており、神経障害症状が回復する犬もいた。C-tubeは交感神経および横隔神経の形態的再生を促し、神経機能の一部を再生させることを確認した。
著者
岡田 文男 大谷 育恵
出版者
京都芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

日本では古代より、漆に黒色顔料を混和して表面から黒くみえる漆を長期にわたり利用してきたが、現在ではウルシオールと鉄イオンの反応により黒く発色させた「鉄黒漆」を一般に用いている。申請者は漆文化財の塗膜分析を通して、建造物塗装や仏像、漆工品の文化財修理において「鉄黒漆」が用いられていることを発見した。「鉄黒漆」の利用開始時期が不明なまま、それを漆文化財の修理に用いることは、漆文化財に本来用いられた漆液と異なるものを付加するおそれがある。そこで漆文化財の横断的調査を通して「鉄黒漆」の利用開始時期の解明を試みる。
著者
北森 絵里
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の対象は、ブラジルの都市において1990年以降、貧困層の若者から大きな支持を得ているヒップホップという音楽とスタイルである。研究の目的は、この研究対象の実態を明らかにすることを通して、貧困層の若者がどのように自己を表現しアイデンティティを構築しているかを考察することである。ブラジルのヒップホップは、米国のヒップホップを土着化した音楽とスタイルである。リオデジャネイロでは、それは「ファンキ」と呼ばれ、サンパウロでは「ヒッピホッピ」と呼ばれる。両者に共通するモチーフは、若者が日常的に経験する貧しさと社会的排除の実態および犯罪である。都市の貧しい若者のアイデンティティの構築にとって、これらのモチーフは根本的であることが理解できる。一方、リオデジャネイロのファンキに固有の特徴は、2000年代以降、ファンキの歌詞に快楽と暴力の強調が見られる点である。サンパウロのヒッピホッピに固有の特徴は、人種デモクラシーに対する批判とネグリチュードの主張である。両者にはこのような違いが見られるが、どちらも政府や富裕層に対する批判性であり、かっ貧しい若者が、社会において自ら「内なる他者」であろうとする点である。したがって、ブラジルのヒップホップの社会的文化的な意味は、貧しい若者が社会において自らを差異化することによって、支配層を排除し彼ら自身の世界の境界を画定することであると考えられる。今後は、米国をはじめ、アフリカ都市部およびラテンアメリカ各国のヒップホップとの比較研究を進めたい。
著者
日高 和美
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、文部科学省が平成30年度に教職課程設置大学に対して実施した「再課程認定」が各大学に与えた影響を明らかにすることを目的としている。具体的には、再課程認定前後の教職課程の科目の変化、担当者の専門性、事務職員の対応等を明らかにすることを通して、本改革が目指す「教職課程の質保証」と「各大学の自律性・独自性」がどのように実現しているのかを明らかにする。本研究を通して、政策の成果の検証の他に、教職課程担当者に求められる資質・能力が解明され、研究者養成機関と教職課程担当者を繋ぐ人材育成プログラムの基礎的・基盤的研究の構築に寄与できると考えている。
著者
小深田 祐子
出版者
熊本学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究の主目的は、意味・語用論的な観点から、日英語の所有構文および関連構文に見られる定性効果に焦点をあて、所有の概念と名詞句の意味的性質とがどのような関係にあるのか、その根底に潜む意味的要因を見極めることである。具体的には、以下の3点に重点を置き、原理的説明を試みる。1) 英語の所有構文および獲得動詞を含む構文の定性効果と名詞句の意味機能との関係の解明2) 名詞句の意味機能が密接に関わる構文のうち、とりわけ所有の概念と一見関係しないような他の言語現象(日本語のコピュラ文など)との比較検討をおこなう。3) 名詞句の意味機能の観点から、日英語の普遍的な特徴および個別的な差異を明らかにする
著者
松本 マスミ
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究では植物の生物学的特徴とヒトの認識の間の「ずれ」が言語表現にも反映していることを、生物学的見地を導入しながら、英語の植物表現を用いて明らかにする。生成文法の枠組みで、植物を記述する動詞である「園芸動詞」などを含む英語表現について、統語的・意味的・形態論的に分析し、反語彙主義に立脚した三層分裂動詞句構造の精緻化と展開を行う。生物学、植物学、生物言語学の知見を取り入れることによって、言語をより広い視野により研究することができ、新しい生物言語学の分野を開拓することができる。同時に、本研究の成果により「無生物主語」の新しい説明方法が可能となり、英語教育に貢献することができる。
著者
大島 義和 宮地 朝子 佐野 真一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

名詞述語文は,一般に「aとbは同一である」または「aはAに包摂される」という関係をあらわす(例:「平塚らいてうは {『青鞜』の創刊者 / 作家} だ」)が,その一方で,「ユミはウナギだ (= ユミはウナギを注文した,ユミはウナギの専門家だ,等)」「ヒロシはスーツだった (= ヒロシはスーツを着ていた)」「ナオミは東京に行く予定だ (= ナオミには東京に行く予定がある)」といった,非典型的な意味を持つ有標的な名詞述語文も存在する。本研究では,このような有標的名詞述語文の分類と,形式意味論,歴史言語学,対照言語学,語彙論といった諸観点からの分析に取り組む。