著者
Tin・Tin Win・Shwe
出版者
国立研究開発法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、神経発達障害であり、社会的相互作用や、言語/コミュニケーションに障害が見られ、興味の範囲の狭さおよび反復性の行動を特徴としている。遺伝的要因と環境要因の両方がASDに寄与しているとされるが、自閉症の正確な病因と病態生理は不明である。我々は、出生前と幼少期の大気汚染物質曝露がASDの潜在的な要因であると仮定し、神経炎症は大気汚染物質とASDのような異常を結びつけるメカニズムとして役立つ可能性を考えた。本研究では、ラットモデルを用いて環境汚染物質への発達期曝露における神経免疫応答に重要な役割を果たすマスト細胞、ミクログリアとASD様の行動についても検討する。
著者
水間 広
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

自閉症スペクトラム障害(ASD)の病因に、周産期の神経免疫機構異常の関与が示唆されているが、生後の社会性行動異常との関連は未だ不明な点が多い。我々は母体疑似ウイルス感染により再現された病態モデルマウスを無麻酔下による脳機能イメージング法(PETやfMRI)を用いて同一個体で長期間追跡した結果、正常発達マウスと比較して神経機能ネットワークや糖代謝活性異常を見出し、また、ASD患者研究と同様の結果が得られた。本研究では、モデルマウスの生後神経機能ネットワーク異常と脳内ミクログリア活性による神経シナプス形成異常との関連性を調べ、ASDの病態メカニズムの一端を明らかにする。
著者
溝口 和臣
出版者
独立行政法人国立長寿医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は以下の仮説、「老化により前頭前野そのものの機能低下として抑うつや認知機能障害が発生するのと同時に、情動の発現に関与する扁桃体や側坐核に対する前頭前野による抑制が低下することによりストレス脆弱性が発生する」を、実験動物を用いた基礎研究から検証することを目的とした。研究実施期間は3年間とし、初年度である本年度は、当初の計画を若干変更しつつ、一部の実験を前倒しで実施した。以下に結果の概要を記す。ドーパミンD1受容体アゴニストの前頭前野内投与実験より、老齢ラット(24ヶ月齢)において観察されたワーキングメモリ障害は、前頭前野におけるドーパミン放出量の減少によるD1受容体刺激の低下に基づくことが明らかとなった(Mizoguchi et al., Neuroscience, 2009)。しかし、セロトニン系抗うつ薬の老齢ラットに対する抗うつ効果は限定的であった。グルココルチコイド受容体(GR)を介した作用の低下が、ドーパミン放出量を低下させることが示唆された。この結果を受けて、老化による前頭前野におけるドーパミン放出量の減少にGRの機能低下の関与を推定すべく、まずはGRのcoactivatorの発現を解析した結果、GRIP-1, SRC-1, CBPの前頭前野における発現は老化により減少することが確認された。ストレス反応性を検討した結果、老齢ラットではストレスによる不安の亢進が顕著で、且つ、血中corticosterone濃度もより高値を示し、老化によりストレス脆弱性が発現することが明らかとなった(Shoji and Mizoguchi, Behay.Brain Res, 2010)。この脳内機構として、老化による前頭前野の機能低下と、その低下に基づく扁桃体の機能亢進が重要な役割を果たしていることが示唆された。
著者
澁谷 智治
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では, 機密データの不正使用や盗難に対する効果的な対策を実現する, 秘密分散法と呼ばれるセキュリティ技術を取り上げる.機密データを分散共有するためのシェアとよばれるデータを生成する際, Komargodski らにより, 参加者数が未確定でも加算無限個のシェアが生成できる手法が提案されている. しかしながら, シェアサイズが最適性や, 秘匿計算への応用の可否については明らかではない.本研究では, これらの解明に取り組み, 加算無限個のシェアが生成可能な秘密分散法におけるシェアサイズの上界・下界の導出と効率的なシェアの構成方法の開発, および, その秘匿計算への応用について検討する.
著者
長総 義弘 紺野 慎一 菊地 臣一
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

セロトニンとセロトニン拮抗薬投与前後での神経根内血管と血流量の変化を検討した。方法:雑種成犬35頭。A群;非手術群、B群;バルーンのみを挿入したsham群、C群;馬尾に圧迫をかけ、解析時にバルーンを除去した群、D群、E群、F群、G群;馬尾に圧迫をかけ、解析時にバルーンを膨らませたままの群の7群を設定した。解析時にA, B, C, D群にはセロトニン0.5μM、E群、F群はセロトニン投与前にセロトニン受容体拮抗薬(0.5μg/ml、0.05μg/ml)、G群にはセロトニン投与後にセロトニン受容体拮抗薬(0.5μ9/ml)を投与した。デジタルハイスコープを用いて仙椎神経根の血管を記録し、血管径と血流量の計測を行なった。圧迫部位の神経根を採取し組織学的検討を行った。結果:[血管径]AとB群はセロトニン投与後、血管が拡張した。CとD群では、血管が収縮した。EとF群では、血管収縮が抑制された。G群では、血管が収縮は抑制されなかった。[血流量]AとB群でセロトニン投与後に血流量は減少しなかった。CとD群では血流量は減少した。E、F群およびG群では、血流量が増加した。電子顕微鏡学的検討では、馬尾圧迫下の神経根内血管のtight junctionが破壊されていた。考察:セロトニンは圧迫のない神経根内血管は拡張させ、慢性圧迫下の神経根内血管では血管収縮と血流量の減少を引き起こす。5-HT_<2A>受容体拮抗薬は、セロトニンによる慢性圧迫下での神経根内血管収縮反応と血流量の減少を抑制した。5-HT_<2A>受容体拮抗薬は、馬尾・神経根の血流低下により引き起こされる間欠跛行を改善させる可能性がある。今後、腰部脊柱管狭窄の保存療法の1手段として、有効性が期待できる。
著者
和田 小依里 佐藤 健司
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日本食の発酵食品中に抗炎症効果を有する複数のピログルタミルペプチドが含まれていることを明らかにした。これらのペプチドは発酵の過程で生成されていると考えられるが、大腸炎誘発モデルマウスにおいて,微量で腸炎改善効果を示すことを示した。また、ピログルタミルペプチドは腸内細菌叢を正常化させることや抗酸化作用を有することも明らかとなった。一定の発酵条件下でこれらのペプチドを高濃度に含有する米発酵物サンプルを作成することができ、ヒト試験でも腸内細菌叢改善作用を示す可能性が示唆された。これらの結果から日本の伝統的な発酵食品の健康増進作用が期待される。
著者
青木 純一 前原 健二 樋口 修資 平田 昭雄
出版者
日本女子体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

学校はこれまで民間企業などの職務経験を積んだ後に教職をめざす人達を積極的に受け入れてきた。教員以外の職務経験が学校という「閉鎖的」な場を活性化すると考えたからである。しかし、中途入職教員が採用後の教育活動や、校務分掌や研修といった業務においてその経験をどのように活かし、活かされているかといった実態調査は、これまで必ずしも行われていない。そこで、中途入職教員やその任命権者である教育委員会へのインタビュー調査や質問紙調査によってこれらの課題を明らかにする。
著者
亀山 渉 菅沼 睦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

ネットワークを介したAVコンテンツ視聴時におけるユーザ主観評価を効率よく、かつ、精度よく推定する手法について研究する。具体的には、ユーザに装着する各種の生体情報測定器及びセンサ、並びに、ユーザが使用するデバイスから得られる多次元情報より、ユーザ主観評価を、ユーザ毎の違い、ユーザの満足度や興味、ユーザコンテクストを考慮し、かつ、リアルタイムに推定する手法を研究する。
著者
三枝 淳 森信 暁雄 河野 誠司
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

関節リウマチ(RA)の関節破壊に関与している滑膜細胞(RA-FLS)の細胞内代謝に着目して研究を行い、以下の知見を得た。1. RA-FLSではグルタミナーゼ(GLS)1の発現が亢進しており、GLS1阻害によりRA-FLSの増殖は抑制された。2. GLS1阻害薬の投与により、関節炎モデルマウスの関節炎は抑制された。以上より、グルタミン代謝はRAの病態に関与していることが示唆され、GLS1は新たな治療標的と考えられた。
著者
真野 祥子 川上 あずさ
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、ADHD児の両親の夫婦関係・家族機能の側面が、ADHD児の不適応問題の発達にどう影響を及ぼしているのかを明らかにし、不適応問題の予防・改善のための援助方法を検討することを目的とした。11名のADHD児の母親に対して半構成的面接を実施し、質的帰納的に分析した。子どもの不適応問題の発達に影響を及ぼす要因として、夫婦間の関係性の状態が影響を及ぼしていることが考えられた。また夫婦間の良好な関係性維持のためには、双方向的なコミュニケーションの促進が必要であることが示唆された。
著者
石井 信子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

就学前幼児を対象として、幼児の発達の特徴を調査・研究した。①幼児の発達指数の分布はほぼ正規分布となるが、発達の偏りには非常にばらつきが大きいこと、②3歳児が5・6歳児より偏りが有意に大きい傾向があること、③神経発達障害児との比較では、発達の量的な遅れに関しては両者に有意な差はあったが、発達のアンバランスについては有意な差は認められなかった。幼児の発達特徴を明らかにすることにより、発達障害の診断の精巧化に貢献。親子の関係性改善の心理学的アプローチとして、個別の支持的相談と併行して集団療法を取り入れることが効果的であることを明らかにした。
著者
田村 悦臣
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1日3-4杯のコーヒー摂取は生活習慣病を予防する効果があることが報告されている。一方、ストレスホルモンや性ホルモンなどのステロイドホルモンの代謝異常は生活習慣病のリスク要因である。そこで、ヒト由来培養細胞を用いてコーヒーの影響を解析した。その結果、コーヒーは大腸がん細胞においてはエストロゲンの活性化、乳がん細胞においては不活性化に寄与する効果を示した。これらは、共にそれぞれのがん細胞の発症を抑制する効果を期待させる。一方、前立腺がん細胞では、男性ホルモンの活性化の傾向が見られ、予防効果との相関はなかった。また、神経系細胞では認知症予防効果が期待される神経ステロイドの産生を増加する効果を示した。
著者
西沢 理 田辺 智明
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

冷えストレスによる下部尿路症状(LUTS)はQOLを低下させることで悩んでいる人が多いが検討は十分とは言えない。基礎的検討では膀胱の尿路上皮に注目し, 前立腺肥大症患者において,自律神経系受容体mRNAの発現を検討したところ,アドレナリンα1D, β3受容体,セロトニン2b, 3a, 7受容体の変化が起こることが示された。臨床的検討では健康講座の受講生を対象として冷え症と冷え性でない2群に区分し,LUTSに対する体操の効果を検討したところ,冷え症群では,体操が蓄尿症状を改善させることが認められた。また,大建中湯が便秘症とLUTSを有する患者に対して冷え症とLUTSに有用なことが示された。
著者
水内 智英 宮田 雅子
出版者
名古屋芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

平成30年度は、アクターネットワークセオリーをベースにしたデザイン方法論とその応用のための基礎理論を整理し、同時に実践メッソドの検討を行う期間と定めており、具体的には次のような活動を行った。1.アクターネットワークセオリーへの基礎的理解を得た上で、デザイン理論への展開方法を検討するため、関連文献を選定しそれらを基に研究会を重ね、議論を深めた。加えて、行動心理学や社会学などの関連分野の専門家に対する対談形式でのインタビュー調査を行い、デザイン方法論としての展開可能性について多視点から検討を加えた。2.実践メソッドの検討として必要となる、対象地域と対象課題の設定を行うため、候補として挙げられた地域に赴きフィールドワークを行い、必要に応じて、地方自治体関係者らとの打ち合わせを行なった。それらを通じて、次年度にメソッドの実践・検証を行う地域の選定と研究協力体制について確認することができた。3.国内外でサービスデザインや、多様なアクターを考慮に入れたデザインワークショップを実施し、その成果を研究会に持ち寄り報告・検証することで、実践メソッドの検討を進めた。加えてデザイン論、メディア論、サービスデザイン等を扱う研究会に参加し、本研究に関係する理論と実践の現状を把握した。研究推進に必要な関連基礎理論の理解、基礎的調査・準備は不可欠である。今年度に行なった一連の活動により、本研究の目的であるアクターネットワークセオリーを導入したデザインメソッドの開発とそれを支え得る基礎理論の構築に向けた準備を進めることができた。
著者
西川 淳 舘野 高 大高 友斗 橘 唯至 羽賀 健亮
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では,閉ループ電気生理を用いて特定の脳領域における神経応答特性を制御する新規手法を提案した.まず,フラビンタンパク質蛍光イメージングと局所電場電位計測を用いて齧歯類聴覚皮質における各サブ領域および層における時間周波数受容野(STRF)を体系的に調べた.特に,覚醒自由行動下のマウス聴覚皮質では,異なる2つの行動文脈においてSTRFの特性が動的に遷移することを明らかにした.得られた知見をもとに,各サブ領域および層にまたがる多点シリコン電極を刺入し,聴覚応答を計測しながらSTRFを実時間で推定し,その結果に応じて特定のチャンネルを多点電流刺激できるシステムを構築することに成功した.
著者
杉田 聡 田中 誠二 後藤 芳美 丸井 英二
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、1945~1952 年の占領期において、厚生省等の日本の行政機関と、GHQ/SCAP/PHW(連合国最高司令官総司令部 公衆衛生福祉局)との協同や対立と構造を分析した。分析には、国立国会図書館に所蔵されるGHQ 文書、特に占領開始から終了までのGHQ/SCAP/PHWの業務日誌であるDaily Journalを用いた。厚生省とPHWの会合記録を集計分析した結果、占領開始時の厚生省衛生局長である勝俣稔が重用されていることが明らかとなった。また、①日本脳炎対策のための岡山県の野外調査と、②衛生教育のために全国を巡回した公衆衛生列車の立案実施の実態を明らかにした。
著者
松本 晃幸
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

栽培きのこの一種、ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)で見出された子実体が発生後、正常に傘と柄の分化を行うことができない(子実体の奇形化)自然突然変異の原因遺伝子を連鎖地図、ゲノム配列情報、発現解析等により探索し、候補を1遺伝子に絞り込んだ。この成果は栽培現場で偶発的に発生する子実体奇形化の説明につながる可能性がある。今後相補あるいは破壊実験などにより検証し、当該遺伝子の変異検出用DNAマーカーを開発する予定である。
著者
冨田 秀一郎 畠山 正統
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

カイコを材料にして、これまでabd-Aの発現が腹脚の発生に必要であることを示した。本研究でカイコ胚でのDllの発現を調べたところ、腹脚原基の先端部で発現していることを確認した。これはabd-Aによる抑制は受けないものの、Dllが発現することにより腹脚の発生が誘導される、というこれまでの説をおおむね裏付けているように思われた。そこで、腹脚形成へのDllの関与を検討するために、Dllのノックダウンを行ったところ、正常な腹脚が発生し、先端構造が欠損することはなかった。これらの結果より腹脚の形成おいても胸部体節同様の位置情報分子メカニズムを利用していると考えられ、腹脚は付属肢であることが示唆された。
著者
武田 晴人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、横浜正金銀行の経営資料を用いて両大戦間期の日本の対外金融が日本企業の経営にどのような役割を金融面から果たしたのかを明らかにすることを目的とし、横浜正金銀行の融資先業の中から、両大戦間期に重要な地位にあったと考えられる貿易商社や対外投資などのため設立された国策会社を対象に選び実証的な研究を行った。その結果、正金銀行の資料群からこれまで明快ではなかった貿易商社等の資金面での問題が明らかとなった。
著者
後藤 明 角南 聡一郎 大西 秀之 石村 智 吉田 二美 門田 修 今野 利秋
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究においては、日本国内の琉球列島の太陽信仰、西日本の降星伝説を中心に調査を行った。海外ではオセアニアおよび中米の資料を遺跡の踏査によって行うことによって、人類集団が従来もっていた天体に関する知識を改めて「ネオ・サイエンス」として捉え直す試みを行った。また本科研の成果は移動式プラネタリウムを使ったイベント「星空人類学」にて、ポリネシアや中南米先住民の星座にまつわる生活の知恵や神話などをプラネタリムの中で投影し市民に紹介した。このようにして本科研は学術的な資料の収集、国内外での学術成果の発表、さらに一般市民への還元という形で、新しい民俗科学のあり方を実践した。