著者
茂木 眞希雄 森田 あや美 尾関 伸明
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は, ヒト骨格筋幹細胞由来高純度間葉系細胞の脱細胞化した間葉系細胞擬態マトリックス上にマウスiPS細胞を播種し, 間葉系細胞の再細胞化の効率について生化学的手法を用いて基礎的検討を行うことを目的とした.ヒト骨格筋幹細胞由来高純度間葉系細胞(象牙芽細胞, 骨芽細胞, 軟骨細胞)を培養後に界面活性剤を灌流して, 間葉系細胞由来の脱細胞化した細胞外マトリックス3種類を作成し, ヒト骨格筋幹細胞を用いて間葉組織の再細胞化の効率と適正条件を検討する. 平成28年度研究計画の中で根幹となる実験の大半は,以下のように進展している. ヒト骨格筋幹細胞由来高純度象牙芽細胞,骨芽細胞, 軟骨細胞3種の分化誘導系ならびに培養条件を確立した. 3種の分化細胞に界面活性剤(Triton-X)を灌流することで, 脱細胞化細胞外マトリックス3種類を作成を試み,作成ならびに精製条件を確立した.これら擬態マトリックス3種とヒト骨格筋由来幹細胞を組み合わせて培養する事で,擬態マトリック ス3種は、コラーゲンtype1、ファイブロネクチン、ラミニンの組成が各々異なる特異パターンを示す事を明示した。3種擬態マト リックス上にヒト骨格筋由来幹細胞を播種し, 培養した結果, 象牙芽細胞由来擬態マトリックス にて培養した場合は象牙芽細胞, 骨芽細胞由来擬態マトリックスでは骨芽細胞、軟骨細胞由来擬態マトリックスでは軟骨細胞が高頻度で得られる事を確認した.擬態マトリックスにより得られた分化細胞は、各々の骨関連分化マーカーの検討(一部)により,象牙芽細胞,骨芽細胞,軟骨細 胞である事を,ほぼ確認した.細胞表層タンパクintegrinの発現をフローサイトメーターを用いて観察したところ,象牙芽細胞ではα 1integrin, 骨芽細胞はα2integrin,軟骨細胞ではα5integrinの特異的発現を確認した.
著者
茂木 眞希雄 森田 あや美
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

目的1) in vivo研究としてヒト歯肉溝滲出液(GCF)中ならびに顎関節症滑液中の骨代謝関連因子の探求、とくにRANKLとの関連性が強い破骨細胞由来Cathepsin-Kの定量2)in vitro病態モデル(炎症性サイトカイン処理マウス骨芽細胞)により、惹起されるRANKLならびにアポトーシスを誘導するcaspaseを中心としたシグナルカスケードの分子機構の解明3)病態モデル(炎症性サイトカイン処理マウス骨芽細胞ならびにストローマ細胞)により、惹起されるOPG産生抑制シグナルカスケードの分子機構の解明4)骨芽細胞の分化・増殖におけるosteoprotegerin(OPG)の新規な生理的役割について詳細な基礎的な検討を行い、新たな歯周関連疾患治療戦略の構築をめざすことを目的とした。結果1) 健常者、顎関節症のdisk displacement with reduction, disk displacement without reduction, osteoarthritisの4群から滑液を得てRANKL, OPG, RANKL/OPG ratioを測定した。ヒト顎関節症、とくにosteoarthritis患者滑液中にRANKLが存在し、OPG量が健常者と比較して統計的有差を持って低下を示し、有意にRANKL/OPG ratioが亢進することを初めて明示した。Osteoarthritis患者滑液がin vitroでヒト末梢単球からの破骨細胞形成ならびに活性化能を持つことを確認し、Osteoarthritisの骨破壊の機序にRANKL/OPGが関わる可能性を初めて明示した(Wakita, Mogi et al., J. Dent. Res.)2) 健常者GCFとの比較から、ヒト歯肉溝滲出液GCF中の破骨細胞由来と考えられるプロテアーゼCathepsin-Kと破骨細胞分化誘導因子RANKL濃度が歯周病の進行・ステージにより上昇変動が見られ、両者とも統計的有意な増加ならびに相互に相関を認めた(Mogi, M. et al., Archs Oral Biol., 2007)。3) マウス骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞において, 炎症性サイトカイン誘導アポトーシスシグナルは, mitogen-activated protein(MAP)キナーゼの活性化を伴うことを明らかに、iNOS依存性アポトーシス細胞死システムの誘導を調節する上でp38MAPキナーゼカスケードが, 重要な役割を担うことを明示した(Kuzushima, Mogi et al., Archs Oral Biol).4) OPG-knockout mouseにおける血中RANKLおよびOPGの変化と骨代謝異常の関連性について精査し、OPG-knockout mouse血中RANKL濃度の顕著な増大を発見した。本実験結果はOPGの新規な生理的役割として膜結合型RANKLの可溶性型RANKLへの移行を調節するユニークな作用を持つことを初めて明示した(Nakamichi et al., J. Immunol., 2007)。5) ヒトgingivitis患者歯肉溝滲出液(GCF)中のサイトカインの変動を健常者GCFサンプルとの比較探索を行ない、EGF superfamily のtransformng growth factor-αが特異的にgingivitis群において低下している事を明らかにした(Mogi et al., J. Immunoassay Immunochem., 2009)
著者
尾関 伸明 茂木 眞希雄
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

多能性幹細胞は, 特定の微小環境に晒されると様々な細胞に分化することができる. 本研究では, 象牙芽細胞擬態マトリックスと幹細胞を用いて象牙芽細胞への分化機構を検索し, 象牙芽細胞擬態マトリックスと幹細胞の接触が特定の増殖因子の発現および分泌を誘導することが明らかとなった.本研究結果から, 象牙芽細胞擬態マトリックスとインテグリンの相互作用により, 象牙芽細胞への分化に必要な増殖因子を幹細胞自身が分泌することが明示された.
著者
上倉 庸敬 田之頭 一知 渡辺 浩司
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、ドラマ繰り広げられる場で音楽がはたす役割を観客の観点から実証的に解明しようとするものである。そのさい研究の最大の動機(モティーフ)となったのは、研究対象としての、ドラマにおける音楽および効果音楽というものが美学においても音楽学においても、従来あまり主題的にはとりあつかわれないまま充分に研究されてこなかったということである。ないよりも強調されねばならないのは、ドラマ空間や劇場における音楽ないし効果音楽なるものとは、ドラマそれ自体、劇それ自体とは異なる独自の効果を観客に与えているということである。本研究が当初その解明をめざしていた問題は多岐にわたるが、とりわけ重点をおいていたのは、1.ドラマや劇に附けられた音楽ないし効果音楽がドラマや劇とは独立した一つの芸術ジャンルたりうるか、2.音楽ないし効果音楽がドラマや劇と独立して観客の感情におよぼす影響がどれほどのものであるのか、3.ドラマや劇の構成を観客が理解するさいに音楽や効果音楽がどれほどの・どのような役割を担っているのか、といった問題である。そのうちでも2と3とに最も重点がおかれており、ドラマや劇と密接に関係があると思われている附帯音楽や効果音楽が、ドラマや劇の構成や演出に多分に左右されながらも、ドラマや劇に対する観客の理解をたすけ、観客の感情面をも支配しうるという側面が明らかにされるとともに、ドラマや劇の附属とされ二次的なものとする従来の考え方との違いということもいっそう際立ってきたと思われる。その意味では、附帯音楽や効果音楽について今日それなりにおこなわれている、音楽学的ないし映像(画)学的といった支配的な諸研究とことなる本研究の意義が多少とも示されたということができる。研究の実際において特筆すべきは、まず第一に、具体的な映像作品を取り上げ、映像に対する観客の反応と日楽に対する観客の反応、ならびに映像を理解するときにはたす音楽の役割を実証的な研究をおこなったことである。第二に、音楽と感情効果との関係を哲学的な原理からも追及し、その実例を文化史のなかに求めて歴史的に実証したことである。
著者
鍋島 直樹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年度は、現代政治経済学の教科書(単著)の執筆にほとんどを費やした。現代の主流派である新古典派経済学との対抗関係を明らかにしながら、政治経済学の多様なアプローチにもとづき、資本主義経済の基本的仕組みについて解説するものであり、近く公刊の予定となっている。新古典派経済学の理論については夥しい数のミクロ経済学とマクロ経済学の教科書が存在する一方で、政治経済学では入門レベルの教科書はいまだ少ない。これまでマルクス経済学の教科書は数多く刊行されているものの、それらのほとんどは、『資本論』の体系に沿ってマルクスの経済理論を解説することに主眼がおかれている。今日においても、マルクスの経済理論を学ぶことに大きな意味があることは疑いないものの、現代の資本主義経済をとりまく諸問題を理解するためには、マルクス経済学の新しい展開についても知る必要があるし、さらには、ケインズとカレツキを源泉とするポスト・ケインズ派の経済学についての知識も欠かすことができない。本書では、マルクスの経済理論の主要部分についての基本的な知識を得ることができるように配慮する一方で、現代マルクス経済学やポスト・ケインズ派経済学における新しい理論的成果も積極的に取り入れている。しかし、さまざまな学説を並列的に紹介するのみに終わるのではなく、それらの学説のあいだの共通点と相違点、および補完関係についても論じているので、読者は、マルクスとケインズの総合によって新古典派経済学に対する代替理論の構築を進めている政治経済学の今日的な意義と課題について大まかな理解を得ることができるはずである。
著者
新田 陽子
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

加熱無毒化ができないアレルギー食中毒の新たな予防策として、食品中に蓄積したヒスタミンを除去する方法について検討した。食品に付着した菌が産生するヒスタミンの多量摂取でアレルギー様症状が現れるこの食中毒では、ヒスタミンが無色、無臭であることから汚染食品を事前に見分けることは困難であり、また通常加熱で分解されないため、現在の対策は低温保存を徹底してヒスタミンを増やさないことである。しかし一旦ヒスタミンが蓄積した食品への対策がないため、毎年食中毒が発生していると考えられる。ヒスタミンは水溶性であることから、下ゆでにより食品からゆで汁に溶出すると考えられるが、どの条件でどの程度溶出するかは検討されていない。そこで、食中毒レベル以下のヒスタミン量にするための下ゆで条件について調べた。近年保育施設の給食でヒスタミン食中毒が連続して発生しており、厚生労働省食中毒統計資料内ヒスタミン食中毒と思われる事例の15件中7件(2016年)および13件中5件(2015年)が保育所給食および学校給食で発生している。また保育所給食および学校給食の患者数が全体の約8割を占めている。つみれによる食中毒が多いことから、赤身魚すり身中にヒスタミンを一定量添加したサンプルを作成し、その中からのヒスタミン除去法を検討した。食中毒レベル(100mg/kg以上)のヒスタミンを添加して作成したイワシのつみれを下ゆですることでヒスタミンが除去されるかを検討した。ヒスタミン溶出量の定量にはヒスタミン定量キット(はチェックカラーヒスタミン)を使用した。
著者
小沢 隆司
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.フトミミズ(Amynthas vittatus)と、シマミミズ(Eisenia fetida)を、灰色低地土内で飼育することによって、土壌の全窒素量、土壌のアセチレン還元活性、およびMPN法により求めた好気性窒素固定細菌数の増加が認められた。また、フトミミズを飼育した土壌では、飼育しなかった土壌に比べて低い^<15>N自然存在比(δ^<15>N値)が認められた。2.フトミミズを入れた土壌を^<15>Nで標識したN_2-O_2-Ar気相下で培養したところ、フトミミズを入れなかった対照土壌に比べ有意に高いδ^<15>N値が得られた。3.無窒素軟寒天培地を用いてフトミミズの腸管、糞、体表および土壌から好気性窒素固定菌を分離した。16S rDNAの部分塩基配列とRFLP解析、および生理的特徴から、これらの分離株は主に、Azorhizobium caulinodans, Azospirillum brasilense, A.lipoferum, Azospirillum sp., Klebsiella oxytoca, Pseudomonas sp., Rosemonas fauriae,およびXanthobacter sp.に属していた。4.フトミミズを飼育した土壌およびフトミミズの糞よりDNAを抽出し、これを鋳型にしてPCRによりnifHの部分配列を増幅し、増幅産物を変成剤濃度勾配電気泳動法(DGGE)によって解析した。DGGEゲル上のバンドパターンと各バンドから抽出したnifH断片の塩基配列を調べた結果、土壌の窒素固定細菌群がフトミミズを添加することによって多様化することを明らかにした。5.以上の結果より、フトミミズはその腸管内および体表に多様な窒素固定細菌を集積することによって、土壌中の窒素固定細菌群の増加と窒素固定の活性化をもたらし、土壌の肥沃化に貢献することが示唆された。
著者
新野 直哉 橋本 行洋 梅林 博人 島田 泰子 鳴海 伸一
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

近現代の日本語における新語・新用法の事例に関する記述的研究とそれに関する言語規範意識の研究を行った論文の発表、従来学界で注目されてこなかった資料の紹介、さらに中国で開催の国際シンポジウムで計3回の研究発表・招待講演を行った。そして、メンバー全員による共同発表として、「代用字表記語」(「当用漢字表」にない字を使う漢字語の書き換えにより、新たに生じた漢字語)に関する発表を『日本語学会』で行い、それに関連する論文を計3件発表した。また、最終年度末には紙媒体(非売品)の「研究成果報告書」を作成した。
著者
永野 昌俊 鈴木 秀典 齋藤 文仁 坂井 敦 肥後 心平 三ケ原 靖規
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

マウスを用いた行動実験系で、帝王切開によって生まれた仔マウスは自然分娩によって生まれた仔マウスと比較した場合に、社会性を含め様々な違いが確認された。行動実験のほとんどが仔の成長後に実施しているが、一部は、生後8日目という早期から確認されたものもある。つまり、帝王切開出産による生まれた仔への影響は生後の長きにわたる事が示唆された。そして、これらの影響は周産期におけるオキシトシンの単回投与で抑制できることが確認された。また、周産期にオキシトシン受容体のアンタゴニストを投与して自然分娩をさせると、生まれた仔マウスは帝王切開によって生まれた仔マウスに近い行動変化を引き起こすことも確認された。これらの研究の進行の手がかりとして大きく役立ったのは、同時進行している自閉症のモデルマウス(Nakatani et al., Cell, 2009)を用いた研究で、生後3週間に及ぶ選択的セロトニン再取り込み阻害薬のフルオキセチンの処理が、成長後の社会性行動を改善させることを見いだしたこと(Science Advances, e1603001, 2017)、及びその改善効果はセロトニン1A受容体アゴニストの投与によっても再現され、オキシトシン受容体のアンタゴニストとの同時投与でキャンセルされてしまうこと、セロトニン1A受容体アゴニスト投与はモデルマウスの血中オキシトシン濃度を上昇させることを見いだしたこと(Scientific Reports, 8:13675,2018)である。
著者
木村 奈緒子
出版者
東京医療学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

これまでの研究結果より、日本におけるピア・サポートに関しては基礎研究が必要であることが明らかとなった。そのため、本年度は2つの基礎研究を行い、データの収集を行った。(1)ピア・サポートの活動内容の分析実際のピア・サポート活動をしているグループ(脳血管障害、頭部外傷)に聞き取り調査を行った。その結果、地域におけるピア・サポートは家族や専門職が運営しているグループがほとんどであることが明らかとなった。家族や専門家が直接介入していないグループは確認できただけでは5グループのみであった。グループの活動内容はグループを構成するメンバーの年齢と重症度によって変わっており、比較的若く後遺症が軽いグループは屋外での活動が多く、社会的就労も念頭に置いていた。一方高齢で歩行範囲が限られるメンバーがいるグループは話し合いが中心となっていた。どのグループも強いリーダーシップをとるメンバーがおり、全体の構成を考えながらスタッフ的な役割を担っていた。リーダーシップをとる人の負担は大きく、時間的経済的に大きな問題がないと行なえない現状があることが分かった。(2)ピア・サポーターの成長過程ピア・サポート活動をしている人(脳卒中既往者)を対象にインタビューを実施。得られた回答を分析した結果、「集まれる場所の必要性を実感する」、「同病者が気持ちを分かり合えることの重要性」、「助けられるばかりの自分から助ける自分への変革」、「既往者としての役割の任氏指揮」のカテゴリーに集約された。ピア・サポートを行うきっかけは多様であるが、必要性を強く認識していった過程が明らかとなった。更にリハビリテーションの中でピア・サポートの意識が育まれていったケースがあることが明らかとなった。
著者
郷 健太郎 李 吉屹 福本 文代 木下 雄一朗
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では,ポジティブ心理学における研究成果をユーザに直接反映させるという課題に挑戦する.具体的には,予測文字変換における変換文字候補に,入力語よりもポジティブな語を表示することによって,ユーザにポジティブな作文を促し,その結果としてユーザの主観的幸福度を向上させることを目指す.この効果を実証するために,以下のプロジェクトを実施する:①ポジティブ・ネガティブ語から構成される辞書及び課題文集合の開発と,それらを使った主観的幸福度の計測,②スマートフォン用のジェスチャキーボードの開発と,ジェスチャと主観的幸福度の関係の解明,③入力語の評価極性に基づくポジティブ語候補の表示システムの開発と評価.
著者
岩下 仁
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、マーケティング研究の中心的な概念である市場志向 (Market Orientation、以下MOに略)研究の中でも、近年注目を集めているフロントライン従業員の視点を取り入れ、それが個人レベルのMO (Individual Market Orientation、以下IMOに略)、ひいては事業成果にどのような影響を及ぼすかという一連のメカニズムを解明する。これまでの研究によって応募者は、MOと成果要因との関係を明らかにしてきた。一方、本研究ではフロントライン従業員の様々な要因が個人レベルのMOに及ぼす影響に光を当て、事業成果に至るまでのメカニズムの解明を目的にしている。
著者
相澤 州平 伊藤 江利子 酒井 佳美 小野 賢二
出版者
国立研究開発法人 森林総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

窒素飽和下の高密度人工林における炭素蓄積の実態解明と間伐の影響予測のため、長期間の施肥により高窒素負荷の環境下にある高密度の壮齢トドマツ、エゾマツ、アカエゾマツ人工林において炭素窒素の蓄積量と循環量を調査し、間伐を行って成長量の変化を調べた。トドマツとアカエゾマツでは施肥により初期成長が促進されて蓄積が増大した。壮齢林段階では施肥による成長促進は認められなかった。また間伐は残存木の成長を増加させたが、高窒素負荷による成長促進効果は認められなかった。土壌pHとリターフォール量を変数とするモデルを開発し、高窒素負荷環境下の土壌炭素蓄積量増加速度は、間伐後は対照区と同等の水準に低下すると予測した。
著者
出口 剛司 赤堀 三郎 飯島 祐介 伊藤 賢一 渡會 知子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題は、社会学の公共性を実現する条件を理論及び学説史の研究によって明らかにすることにある。上記課題を実現するために五つの論点の考察した。1.ヴェーバー「価値自由」テーゼの批判的継承、2.批判的社会理論とN.ルーマンの社会システム論の再検討、3.ドイツにおける国法学、公共性研究とフランスの中間集団論との比較、4.ドイツにおける社会理論と法学の関係についての考察、5.ネット時代の個人化と社会的連帯の変容の解明である。その結果、理論が自己の正当化実践を行うことを通して、また社会的現実を別様に記述することにより、政策課題を設定=再設定することで通して、社会学の公共性が実現しうるという結論を得た。
著者
川村 文彦
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

味覚の再生医療を目指す。舌上皮に点在する味蕾には、味覚を司る味細胞の幹細胞が存在すると言われていた。しかしながら我々が行った細胞系譜追跡法によって、味蕾には前駆細胞しかなく、舌上皮の乳頭間窩(Interpapillary pit; IPP)に味幹細胞が存在することが判明した。先行研究において樹立したIPP由来味蕾オルガノイドと、マウスES細胞より内胚葉系に分化誘導した細胞とを共培養したところ、世界で初めて3種の味細胞マーカーを発現する細胞塊を確認した。本研究では、この味細胞分化誘導法の確立を目指し、さらにヒトiPS細胞に応用することを目的とする。将来的には味覚障害患者の再生医療を目指す。
著者
南 一成
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

睡眠・覚醒の調節にはアセチルコリンが重要である。アセチルコリンを放出するコリン作動性ニューロンはREM(Rapid Eye Movement)睡眠時に強く活動することから、アセチルコリンはREM睡眠の調節に関わっていると考えられている。また、パーキンソン病やアルツハイマー病においてはREM睡眠の減少が見られ、同時にコリン作動性ニューロンの病変も見られることが知られている。したがって、これらの病気について、アセチルコリン活性の低下によるREM睡眠の減少が重要である可能性が考えられる。そこで本研究では、睡眠調節に関わると考えられるmAchRのうち、mAchR1〜5それぞれのサブタイプの遺伝子欠損マウスについて、睡眠の各ステージ、特にREM睡眠をモニターしながら障害させる実験系を開発した。マウスの脳波と筋電図を計測しながらリアルタイムでコンピュータにより解析し、吸気中の二酸化炭素濃度を自由にコントロールすることで睡眠の各ステージを障害させることに成功した。この実験系を用いて、mAchRの遺伝子欠損マウスの睡眠、特にREM睡眠の変化を解析する。また、アセチルコリンは睡眠だけでなく、概日リズムにも関わっている。概日リズムは光刺激とそれに伴う視交差上核の活動によってコントロールされているが、そこでアセチルコリンが重要な役割を担っていると言われている。したがって、アセチルコリン受容体の概日リズムの影響を調べるため、マウスの概日リズムを解析するための行動実験系、体温測定の実験系を作製した。この実験系を用いてこれまでに、プロスタグランジンE2(PDE2)が末梢の概日リズムを変化させる作用があることを見出している。これからさらに、アセチルコリン受容体の遺伝子欠損マウスについて解析する予定である。
著者
古庄 律 石田 裕 谷岡 由梨
出版者
東京農業大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ムクナ豆にはL-ドーパが高含有されていることに着目し、加熱処理して可食化したムクナ摂取によるパーキンソン(PA)病の病態軽減と抗酸化作用の両面から検討を行い、次のような成果を得た。①加熱処理したムクナ豆粉末を6-OHDA処置したPA病モデルラットに与えると対照動物に比べ運動機能が改善された。②DPPHラジカル消去活性は、14.3mmol Trolox/100gだった。③ヒト肝由来細胞株を用いた抗酸化能については、H2O2濃度10μM暴露時の生存率が111%で無添加時(88%)に比べ生存率は高値であった。以上により、ムクナ豆はPA病の病態改善と抗酸化機能を有する機能性食品であることが示された。
著者
池内 了 杉山 直 海部 宣男 土居 守 福島 登志夫 長谷川 哲夫
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

アジア・太平洋地域(オセアニア、南北アメリカも含む)における天文学研究は、多くの先進的観測装置を有する国から観測装置が未整備な国まで、さまざまな研究環境条件にある。そこで、国際天文学連合(IAU)が主催して、これらの諸国の天文学研究者が一堂に集まり、最前線の研究成果を交流しつつ、若手研究者の育成、共同研究の推進と相互援助、天文学普及のための活動、などについて情報交換を行う「IAUアジア・太平洋地区会議(略称APRM)」を開催してきた。本研究課題は、2002年7月2日から5日まで東京の一橋記念講堂で開催された、第8回APRMの準備費用・会議運営経費・報告集発行経費を賄うことによって会議の成功に寄与したものである。会議には、総計462人が参加し、うち148人は23カ国からの外国人研究者であった。会議は、全体会議行われた(1)大型観測装置、(2)大規模サーベイ、(3)太陽系外惑星、(4)天文学教育の4つのセッションと、(5)星・惑星系形成、(6)星・太陽活動、(7)高エネルギー天文学、(8)活動的銀河核、(9)重カレンズ、(10)系外銀河・宇宙論の6つのセッションが分科会で行われ、約30の招待講演、約100の口頭発表、約320のポスター発表があった。加えて、(11)情報交換のためのネットワーク形成と研究雑誌の発行、(12)今後の地域集会の予定、の2つのビジネス・セッションを持ち、アジア・太平洋地域における天文学研究のよりいっそうの発展のための討論を行った。会議の報告集として、全体会議については太平洋天文学会(ASP)の国際会議録シリーズ、分科会およびポスター論文は日本天文学会(ASJ)の国際会議録として出版した。なお、最終日の翌日の6日には4つのサテライト集会が持たれ、これにも多数の研究者が参加した。
著者
池内 了
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

研究の3つの柱として、(a)星密度の高い星団におけるスターバースト現象、(b)スターバースト後の恒星レムナントの重力相互作用による中間質量ブラックホール(IMBH)の形成、(c)IMBH間の重力相互作用による超巨大質量ブラックホール(SMBH)への成長、を考えてきた。これら3つの段階は、それぞれ独立した項目として切り離して進めることができる。まず、(a)の段階では、スターバースト現象において、どのような恒星レムナントが残されるかを検討した。通常の質量関数ではブラックホールや中性子星のレムナントは少なすぎるので、フラットな質量関数を仮定しなければならないことが判明した。続く(b)の段階では、恒星レムナントを観測されている星の分布と同じ空間分布を仮定し、通常のガウス型の速度分布とすると、レムナント系は遠隔2体重力相互作用でコア・ハーロー型構造へ進化する。やがて、3体衝突が効き始めて高密度レムナント団となるが、問題は、それ以後断熱的となるために収縮が極端に遅くなり100億年の間にIMBHへと進化しないことである。そこで、ガスが共存していると仮定し、ガスの粘性効果を取り入れ、また超音速で運動するレムナントによる衝撃波の形成とその散逸効果を考慮したが、十分な冷却効果にはならず、半径10pcの球内に10万太陽質量が集積する程度となった。(c)の段階では、重力相互作用によって100億年の間でSMBHになりうる条件を求めたところ、半径1pcの球内に100万太陽質量が集積することが必要と結論が得られた。とすると、(b)の段階で得られた高密度レムナント団とは、4桁の差があり、このギャップを埋めることができなかった。従って、(b)から(c)に至るプロセスで、ここでは考えなかった新しい物理過程を想定しなければならず、この研究は今後の研究への指標となると考えている。
著者
田邊 史 小宮 節郎 瀬戸口 啓夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

細胞はヒトiPS細胞から樹立された神経幹細胞AF22を使用した。1%O2下では20% O2下と比較してオートファジーのマーカーであるLC3-IIの発現が亢進した。またオートファジー活性剤であるLiClの投与で1% O2,20% O2ともにAF22の細胞増殖能が亢進することがWST assayで示された。さらに他のオートファジー亢進剤であるラパマイシンの投与でも同様に1% O2,20% O2ともにAF22の細胞増殖能が亢進することがWST assayで示された。低酸素で培養した際のヒトiPS細胞由来AF22の分化能を検討したが20% O2と比較して1% O2では分化能に影響がないことが示された。