著者
吉田 敏弘 石井 英也 松村 祝男 吉田 敏弘 林 和生 小野寺 淳 小倉 眞 松村 祝男 小倉 眞 古田 悦造 林 和生 野間 晴雄 小野寺 淳 松尾 容孝 原田 洋一郎
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

文化財保護法や景観法に基づく文化的景観の保全事業実施にあたり、保全対象となる文化的景観の選定にあたっては、文化的景観のAuthenticityを学術的・客観的に評価する必要がある。本研究では、「一関本寺の農村景観」と「遊子水荷浦の段畑」を主たる事例として、景観の価値評価を試行し、次のような5つのステップから成る基礎調査が有効であると判断した。(1)明治初期地籍図などに記録された伝統的景観の特質の解明、(2)伝統的景観(地籍図)と現景観との精密な比較、(3)近代以降の景観変化の過程とメカニズムの解明(土地利用パターンや作物、地割など)、(4)伝統的な景観要素残存の背景を地域の社会・経済・文化的側面から考察、(5)現景観の活用可能性の考察と保全の方向性の提示。なお、上記の作業をヴィジュアルに活用するため、GISの導入と時系列統合マップの構築が有効であることも確認した
著者
雲財 悟 朴 三用 小見山 上
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

SynGAP遺伝子は、ヒトの精神疾患リスク遺伝子の代表的なものの1つで、その遺伝子産物蛋白質の具体的な働きや構造、変異型SynGAPがどのような異常を引き起こすかなどの情報は、創薬など精神疾患治療法開発に重要であるため近年注目されている。本研究では、SynGAPおよびパートナー蛋白質のRap1Bを大腸菌発現系で大量に調製し、構造生物学的手法で研究を行った。結果、Rap1Bの結晶構造解析によりその詳細なスイッチ機構の解明に成功した。また、マラカイトグリーン法を利用して、SynGAPによるRap1BのGTPase活性促進を小スケールで測定できる系を確立した。
著者
大谷 元
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

平成8年度及び9年度に「乳汁κ-カゼインの免疫抑制作用に関する研究」という課題のもとに研究を行い、得られた成果は以下の通り要約される。1.牛乳κ-カゼインのTーリンパ球増殖抑制メカニズムについて検討を行い、κ-カゼインはそのκ-カゼイノグリコマクロペプチド(CGP)域(106-169域)のシアル酸を含む糖鎖を介して単球・マクロファージに結合し、IL-1レセプターアンタゴニストの大量生産を誘導することと、CD4+Tーリンパ球に直接結合し、その膜表面へのIL-2レセプターの発現を阻害することにより、Tーリンパ球の増殖を抑制する。なお、CGPは、IL-1レセプターアンタゴニストと同じIL-1ファミリーのサイトカインであるIL-1αやIL-1βの生産には影響を与えない。2.κ-カゼインは本来、マクロファージの食作用や活性化を抑制する作用を有しているが、その作用はペプシン消化では直ちに消失するが、トリプシンやキモトリプシン消化を行っても殆ど変化しない。3.CGPをマウスの飼料に混合し、経口投与すると、経口投与抗原や腹腔内投与抗原に対する特異抗体の生産が顕著に低下し、その原因はサブレッサーTーリンパ球の数が機能、あるいはその双方が増大していることによる。4.人乳CGPはマウスのT、B、両リンパ球に対してアポトーシス誘導能を有する。5.牛乳κ-カゼインをトリプシンで消化するとアポトーシス誘導能を有するペプチドが生じ、そのペプチドはパラ-κ-カゼイン(1-105)域とCGP域の双方から生じる。以上のように、牛乳κ-カゼインによるTーリンパ球の増殖抑制メカニズムを明らかにするとともに、人乳κ-かゼインのペプシン消化により生じるCGPにはアポトーシス誘導能があることや、牛乳κ-カゼインでも直接、トリプシン消化するとアポトーシス誘導ペプチドが生じることを明らかにした。
著者
大串 和雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

当初の計画通り、平成30年度は現地調査を実施せず、前年度の現地調査のインタビューを整理するとともに、文献資料に基づいて研究を進めた。平成30年度は、コロンビアの動きを追うことにやや多めに時間を割いた。コロンビアでは、国内最大のゲリラ勢力FARCと政府との2016年の和平合意に基づき、移行期正義のシステムが設置された。中でも、ゲリラ及び治安部隊の人権犯罪を修復的正義のアプローチで裁き、加害者が真実の解明と賠償に協力すれば服役を免れるという「特別和平司法」(JEP)の仕組みは、国論を二分し、2018年の大統領選挙の争点となった。大統領選挙ではJEPが「ゲリラに甘い」として反対する勢力が勝利し、現在では、国際社会を含むJEPを支持する勢力と、JEPを骨抜きにしようとする政府及び与党との綱引きが続いている。このような流動的状況を背景として、コロンビアでは全国レベルでは和解どころかJEPをめぐってヘイトスピーチが飛び交う状況が続いている。ただその一方で、ミクロなレベルでは、旧武装勢力と犠牲者との和解の実践も観察される。コロンビアとともに本研究が重点を置くペルーでは、移行期正義は多くの国民の関心事ではない。人権侵害等の罪で収監されていたアルベルト・フジモリ元大統領が、当時の大統領とフジモリ派との政治的駆け引きの結果として2017年末に特赦を受けた際には、犠牲者たちと彼らを支援するNGOが米州人権裁判所にアピールし、結果的にペルーの最高裁が特赦を無効とした。この件に見られるように、ペルーでは移行期正義は、犠牲者を含む一部の活動的なアクターにおおむね限定された関心事となっている。また、ミクロなレベルにおける和解の実践もペルーではあまり観察されない。農村では元ゲリラが出身の共同体に再び受容されていることがあるが、和解というよりは緊張を孕む共存として描写されている。
著者
吉内 一浩 山本 義春
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

日常生活下の情報取得法であるEcological Momentary Assessment(EMA)を発展させ、摂食障害患者の過食行動治療のため、ス マートフォンによるEMAで得られたデータを機械学習を用いてリアルタイムに解析し、その場で治療介入するEcological Moment ary Intervention(EMI)のシステムの開発を行うことを目的として以下を実施する。 1.過食衝動・行動の評価・介入システムの開発:コンピューター適応型質問票を含めて症状・行動の評価システムとEMIを行う ための機械学習を用いたシステムの開発を行う。 2.身体活動度による過食衝動・行動の予測モデルの開発:EMAで得られた情報を用いて、身体活動度による過食の予測モデルの 開発を行い、治療介入タイミングの同定を行う。 3.摂食障害患者における使用感の調査とマイクロランダム化試験による有効性の検証を行う。2018年度は、過食症状の評価・介入システムの開発を行った。具体的には、スマートフォンを用いて、過食衝動 ・行動、排出行動、気分の記録システムを実装した。そして、機械学習を用いた介入システム開発のための基礎的データを収集するために、日常生活下において、スマートフォンによる症状・行動の記録と、加速度計による身体活動度の記録、自律神経機能の評価のためのRR間隔の記録、過食の前の唾液中のコルチゾールとアミラーゼの記録のシステムのセットアップを行い、倫理委員会での承認を得た。現時点で、4名の被験者からのデータの取得が終了しており、2019年度中にデータの取得を終了させ、介入システムの開発を行う。
著者
西舘 泉
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題では、ディジタルカラーCCDカメラにより取得したヒト皮膚のRGB画像から皮膚表在毛細血管の酸素化・脱酸素化血液量を求め、動脈血酸素飽和度のイメージングと脈拍数の計測を行なう新しい方式を開発した。吸入酸素濃度が異なる条件下のラットを用いた動物実験およびヒト皮膚に対する実験により脈波伝搬の時空間計測と動脈血酸素飽和度のイメージングが可能であることを確認した。これにより、RGBカメラを基盤とした動脈血酸素飽和度と容積脈波の非侵襲・非接触イメージングが実証され、新しいバイタルサイン計測法の可能性が得られた。
著者
林 則行
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

商用周波数領域において人体内部抵抗および体内電流密度分布の検討を行った。BMIが16.1~41.4 kg/m2の被験者26名に対して550 ~800Ωの人体内部抵抗値が得られた。これらの実測値は過去の同様な実測結果ともよく一致したが,詳細人体モデルを用いた数値解析値と比較すると1/3~1/2倍程度とかなり小さい。しかし,人体内部抵抗とBMIとの関係や電流経路に沿った相対的な人体内部抵抗の分布特性は数値解析値とよく一致した。また,BMI値が増加すると、人体内部抵抗値は減少すること,心臓周辺では、導電率の高い、肺や心臓などに電流が集中し、その電流の方向は感電経路に依存することが分かった。
著者
福田 宏 姉川 雄大 河合 信晴 菅原 祥 門間 卓也 加藤 久子
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、社会主義期の旧東欧諸国を事例として権威主義体制の強靱性を明らかにしようとするものである。従来の政治学の議論では、全ての国や地域は民主化されるべきであり、実際においても、その方向に向かっているという暗黙の了解が存在した。ところが、2010年代半ば頃より、民主主義の「後退」や権威主義体制の「しぶとさ」が盛んに議論されるようになってきている(例えば、モンク『民主主義を救え!』2019)。その点において、東欧の権威主義体制は今こそ参照すべき歴史的経験と言える。本研究では、史資料の公開やオーラルヒストリーによって急速に進みつつある歴史学上の成果を活かしつつ、当時における体制の内実に迫りたい。
著者
岡田 正則
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、日本における行政救済制度(行政事件訴訟および国家賠償訴訟・損失補償訴訟)の形成過程の通史を比較法制史の視角からまとめること、を目的とした。具体的には、(1)公法学における歴史研究の基本的な視点と方法論を明らかにした、(2)国の損害賠償責任の範囲と「行政処分」概念との関係史という視点から、憲法・行政法・民法理論と判例の歴史的分析を行った、(3)経済行政法理論の形成史および裁判制度史の視点から行政争訟法制度の歴史的位置づけと変遷過程の分析を行った。これらの研究の成果として、いくつかの学会報告を行うとともに、10本の論文等を公刊した。
著者
一谷 智子
出版者
西南学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

現代社会は、環境問題をはじめ、貧困、テロ、戦争など、もはや国民国家の枠組みでは対応が困難なほどグローバル化した危機を抱えている。本研究は、そうしたグローバル・リスクの一つである(核兵器と原子力発電の両方を含む)核問題を描いたアメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスを中心とする英語圏の文学と日本の文学を横断的に分析・考察することを通して、人類共通の危機を回避するための国や文化を越えた連帯の可能性と、持続可能な社会を構築するための地球規模の環境的想像力の意義を明らかにした。
著者
岸本 宗和 柳田 藤寿 横森 勝利
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

マスカット・ベーリーA(MBA)種赤ワインの品質向上を目的として、市販ワインにおけるγ-ラクトン類およびフラネオールの香気成分含有量を調査するとともに、γ-ラクトンの生成機構の解析およびワインの含有量に及ぼす醸造条件の影響について検討した。γ-ノナラクトンは、ブドウ品種間のリノール酸含有量の差異、発酵工程における果皮および種子の浸漬、ブドウの収穫時期および発酵に用いる酵母菌株の影響を受けて含有量が異なると推測される。さらに、新たに開発したMBAの副梢果房を用いる赤ワインの醸造方法は、γ-ノナラクトンおよびフラネオールの含有量を高め、ワイン品質の向上に有効であることを明らかにした。
著者
中尾 佳行 地村 彰之 佐藤 健一 大野 英志
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

話法の研究は、近代の小説が中心的に行われ、その発達過程の調査は少ない。中世の韻文は殆ど扱われず、特に意味論では、Fludernik (1993, 1996)やMoore (2015)により部分的な検証がある程度で、チョーサーでの体系立てた調査は殆どなされていない。話法の設定の切り替えは、多くの場合その言語の意味を変容させ、話法は本質的に意味論の問題である。本研究では、話法を意味付けるタグを精緻化し、そのタグを多様な社会層の巡礼者が話をし、話法の多様性が見られる『カンタベリー物語』、これまでの研究で作成した電子化された4テクスト、Hg, El写本及び刊本に付加し、話法の意味論コーパスを構築する。
著者
寺田 龍男
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

中世ドイツ英雄叙事詩の一ジャンルである「ディートリヒ叙事詩」には,写本が書き継がれる過程で本文が大きく流動する作品群「ディートリヒの冒険叙事詩」(以下「冒険叙事詩」)がある。その流動の原因は従来,唯一の原本を後の写字生が自由に改作した結果であると説明されてきた。しかしこの解釈では,多くの作品に複数ある系統の成立とその後の動態を十分には説明できない。本申請研究は,冒険叙事詩の諸作品において,①書記伝承の初期の段階ですでに内容の異なる複数の「原本」があったこと②異なる系統の本文が混じり合う写本の中には,写字生が先行する複数の写本を校合勘案して書かれたものがあること以上2点の論証を目標とする。
著者
住本 規子
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本課題はシェイクスピア・フォリオを中心として、現存するシェイクスピア戯曲の初期近代における出版物に残された当時の、特に17世紀の所有者/使用者(読者)の書き込みを読み解くことを目指しています。本年度は、ニューヨーク公共図書館にて、ファーストフォリオ(F1)2冊、セカンドフォリオ(F2)10冊、サードフォリオ(F3)3冊、フォースフォリオ(F4)4冊、同図書館バーグ文庫にてF1を1冊、F2を2冊、F3を2冊、F4を2冊、モーガン図書館にてF1を2冊、F2を3冊、F3を2冊、F4を2冊、フィラデルフィア自由図書館にてF1、F2,F3,F4を各1冊、さらにはストラットフォード・アポン・エイヴォンのシェイクスピアセンター図書館にて、F1を1冊、F2を6冊(うち1冊は非完全本)、F3を4冊(うち2冊は非完全本)、F4を4冊 および、12冊の初期クオート本の閲覧調査を実施することができました。すべてのフォリオに何らかの書き込みが見られました。また、書き込みが作品テクスト部分にないコピーでも、作品によりページの摩耗の違いが観察されるものがあり貴重な資料となる可能性があることに新たに気づくことができました。本課題にとってとりわけ注目すべきフォリオは、ニューヨーク公共図書館のF1のうちの一冊で、欄外の「名言なり」の意と考えられている'ap'という文字とテクストへの下線がセットになった書き込みを持つという点でも、複数サイズのページが混在するかたちで製本された寄せ集め本という点でもグラスゴー大学所蔵のF1によく似たケースであることが判明しました。コモンプレイシングマーカーは読者により様々な形をとり、しかもときどきで変化するゆたかな読書体験のあかしですが、その豊かな世界を記録する方法をみつけることに挑戦していきたいと考えています。
著者
青山 幹雄
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

クラウドコンピューティングを統合する開発技術に関する次の成果を得た.1)Linked Dataを用いたクラウドデータ連携アーキテクチャの提案とプロトタイプによる実証評価.2)構成定義言語TOSCAを用いたクラウド連携の設計方法論の提案とプロトタイプによる実証評価.これらの成果はクラウドコンピューティングに関する国際会議等で論文として発表している.さらに,Linked Dataを用いて複数組織間でデータを連携するためのインタフェース仕様を開発し,実証実験で有効性を示した.これは,国際標準化団体OASIS内にTCを設置し,本研究代表者が議長として国際標準化を進めている.
著者
芦名 定道
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、拡張された自然神学を、科学技術と東アジアという二つの文脈で具体化するという研究目的にむけて進められてきた。まず、科学技術の文脈。特に、原子力、脳科学、AI、遺伝子工学といった現代において問題化しつつある諸問題について、宗教思想(特にキリスト教思想)との接点が人間理解(人格概念)にある点が明らかになった。科学技術の神学においては倫理学から文明論までがその射程に入れられねばならない。次に、東アジアの文脈。その成果は、『東アジア・キリスト教研究とその射程』としてまとめられた。無教会キリスト教、特に矢内原忠雄の原子力論において、科学技術と東アジアの二つの文脈を結びつける可能性が示された。
著者
岡田 正則 友岡 史仁 杉原 丈史 田村 達久
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究の目的は、国際・国家・地域の各レベルにおける人々や団体の連携を通じた新たな公共的制御のあり方を、経済行政法の面から構想することである。そして本研究は、(1)グローバル化した経済活動に対する主権国家による制御と多元的に構成された国際的な組織や手続による制御との関係および両者の功罪に関し、主要国の理論的到達点を明らかにし、(2)その調査結果に基づき、個別行政領域について日本法との比較検討を行い、(3)E・オストロムの集合的行動領域の規範理論に着目して、“市場でも国家でもない”領域に対応する経済行政法理論の提示を試みる。
著者
国枝 悦夫 斉藤 秀敏 川口 修
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本補助金により、M.Cristyらの楕円による人体数式ファントム(成人男性胸部を単純化し、肺内中央部に直径2.0cmの球体を孤立性肺癌(GTV)として挿入したモデル)に基づいて、胸部の人体構造を模したファントムを作成した。X線をコリメータにより直径3cm程度に絞り、細ビームとし、このファントムに照射するというEGS4モンテカルロコードを使用した解析をおこなったところ比較的低いエネルギーの場合、ビーム軸に垂直方向、水平方向とも平坦性がよかった。一方、不均一部分の影響から、これまでの放射線治療で使われている、高エネルギーX線では、腫瘍と肺組織の境界面でなだらかな勾配が生じ、標的体積内での均一性が損なわれる傾向にあった。標的体積の中心点の線量で正規化した場合、エネルギーが小さいほどGTV内の均一性は高く、平均線量は100%に近くなる。さらに、CTV内の肺組織(sub-clinicalな浸潤)に対しても均等な照射が可能である。14年度は既存のヘリカル式高速CT撮影装置を改良した。実際に企業との共同研究で設置した実験用CT装置で、X線をコリメータにより細ビームとし照射が可能となった。実測で、線量計および測定用フィルムで基礎データを取得した。また、呼吸移動を模擬するため、前年度に作成した人体型ファントムを3軸方向に周期的に移動させる装置を作成し通常の呼吸状態での照射した場合のデータも取得した。前年の線量分布、コンピュータ・シミュレーションのデータを総合的に解析し、さらに実際の治療条件に近い形で基礎データ測定と、動物実験などを進めた。なお、コンピュータ・シミュレーションと線量計算に関しては、当初の計画の予定外ではあるが、さらに進んで将来の研究計画に必要な、ネットワークを介したスパーコンピュータ利用を計画し、基礎的な検討をおこなった。これらの成果の一部はすでに発表し、論文としており、さらに投稿中である。
著者
山村 高淑
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、日本のアニメ作品が海外の観光地形成に影響を与える場合には大きく二つのパターンがあることを明らかにした。すなわち、第一に、クリエイターが実在の場所をモデル地として設定したり、実際にロケハンを実施したりすることが、結果として観光地形成につながる場合。第二に、作品とは全く関連しない場所において、作品関連のイベントが開催されたり、ファン自身が作品との結び付けを行ったりすることが、観光地形成につながる場合、である。そのうえで、これら2つのタイプの典型事例の実地調査を行うことで、アニメイメージや物語世界の受容実態、国際観光地化の経緯と実態を具体的に明らかにした。
著者
梅村 正幸 松崎 吾朗 高江洲 義一
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

結核菌感染における免疫応答では、IFN-γ産生を主体とする細胞性免疫が最も重要な役割を担っている一方で、我々は炎症性サイトカインであるinterleukin(IL)-17Aが結核菌感染防御においても重要であることを明らかにしてきた。近年、我々は結核菌感染組織由来のTcR γδT細胞が抗原特異的な刺激においてIL-17A産生増強することを見出した。しかし、その産生増強メカニズムは未だ不明瞭な点が多い。そこで、TcR γδ T細胞がどのような機序により抗原特異的なIL-17Aを産生誘導するのか検討した。野生型C57BL/6(WT-B6)マウスに5x10e6 cfuのMycobacterium bovis BCGを気管挿管法により経気道感染させ、感染20日後の肺からリンパ球を調整した。WT-B6マウス由来の抗原提示細胞(APC)と肺リンパ球を結核菌精製抗原(PPD)存在/非存在下で共培養し、IL-17A産生T細胞(Th17およびγδ17細胞)を検出した。その結果、BCG感染肺においてIL-17A産生T細胞が認められ、PPD刺激において抗原特異的γδ17細胞の顕著な増強がみられた。加えて、この反応が培養上清中の液性因子に依存するのか、あるいはcell-to-cell contactが必要であるのかを明らかにするため、肺リンパ球とAPCを非接触型共培養法を用いて培養した。この非接触型共培養の条件下においても、PPD刺激によりγδ17細胞の増加が認められ、IL-23p19 KOマウス由来APCにおいても同様の結果が得られた。培養上清中の液性因子による影響を調べる目的でIL-1βおよびIL-23の中和処理をしたところ、γδ17細胞の増強は著しく減退した。一方、APCを介さず、感染肺リンパ球に直接PPDを投与したところ、γδ17細胞の増加が認められた。