著者
鈴木 留美子 山岡 吉生
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、(1)Helicobacter pylori(ピロリ菌)を利用した先史時代アジアにおける人類移動経路の推定、および、(2)ピロリ菌が持つ新規疾患関連因子の探索の2つをテーマとして進めた。テーマ(1)に関しては、沖縄に特異的に見られるピロリ菌の分岐年代(2~3万年前)から、縄文時代以前に琉球列島に人口流入があった可能性が示唆された。テーマ(2)に関しては、胃がん、および胃MALTリンパ腫患者由来のピロリ菌の比較から、主要な病原性遺伝子であるcagAとvacAで、アミノ酸頻度に有意差のある座位を見出した。
著者
村田 宮彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

体液カルシウム恒常性は従来はホルモン性の制御によると考えられていた。しかしながら、実験的にひきおこされたカルシウム低下ではそれらのホルモン性制御に先立ってカルシウム濃度の上昇が始まっていた。低下した血液カルシウム濃度は腎臓を通り抜ける間に急速に、秒単位で、正常化されていることが示された。この反応はPTHや活性型ビタミンDには依らず、組織自律的なものである。この恒常性効果はalpha-klothoのホモ/ヘテロノックアウトマウスで減弱する。
著者
岡崎 龍太郎
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

同時ペル方程式x^2-a z^2=y^2-b z^2=1の正の整数解の個数が2個以下だという定理を証明し, 雑誌論文として発表した. また, より一般的で, 代数的数体との関係の深い不定符号の一般化された同時ペル方程式|a_1 x^2-a z^2|=|b_1 y^2-b z^2|=4, (a_1, a, b_1, b : 正のパラメーター, x, y, z : 未知整数)を研究した. 不定符号の一般化された同時ペル方程式に適用できるようにYuanのp-進的な間隙原理を一般化した. 実複2次体の類群の研究の発展につながる研究であり, 8次以上のCM体の類群の構造の研究にフィードバックが期待される.導手が2の巾の円分体の実部文体の類数が常に1であるとのWeberの予想がある. Weberのこの予想の研究に単数の大きさの下からの評価が有効である. 類体論の計算的側面や不定方程式の研究で培った技術を応用することにより、次のような評価を得た : Kを該当する体の1つとし, その導手をfで表す. FをKの部分体のうち[K:F]=2を満たす唯一のものだとする. Kの単数εのFへのノルムが-1であるとの条件の下で, εの平方の有理数体へのトレースはf(f/2-1)/4以上である.
著者
金井 雅彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は本来 Margulis の超剛性定理を典型とする高階リー群の格子の剛性に関わるものであった.しかし,研究方向は1年ほど前から変わりつつある.それを説明したい.Margulis の超剛性定理に先行して確立されたリー群の剛性定理のひとつに Mostow のそれがある.とくに,n 次元実双曲空間の等長変換群の一様格子は n が 3 以上のとき剛性を有する.一方,n=2 の場合には剛性現象は発現せず,逆に柔軟性とでも呼ぶべきものが観察される.その柔軟性を極めて精密な形で記述したのがタイヒミューラー空間論である.この類似がトンプソン群というまったく異種の離散群に対しても観察されることを認識したのが1年のことである.それ以降,この類似性を追求している.ところで,トンプソン群には F, T, V と言う記号で表される合計3種が存在する.いま,問題にしているのは,F ないし T である.これらの離散群の定義においては,Z[1/2] が登場する.そこに現れる 2 を 2 以上の整数 m で置き換えることにより,あらたな離散群が得られる.それを F(m), T(m) と書くことにしよう.McClearly-Rubin と Brin の結果を合わせると,F=F(2), T=T(2) に対しては Mostow の剛性定理に相当する結果が得られる.一方,m が 3 以上の場合には,柔軟性が発現することが Brin-Guzman により指摘されている.しかし,いま名前を挙げた研究者たちは,彼等の結果と Mostow の剛性定理やタイヒミューラー空間論との類似性を意識していないよう推察される.一般化トンプソン群 F(m), T(m) の剛性ー柔軟性を Mostow の剛性定理やタイヒミューラー空間論の類似性を強く意識しながら,新たな理解を目指し,部分的ではあるが成果を上げた1年間であった.
著者
古屋 康則 山家 秀信 松原 創
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

雄が繁殖期中に営巣するトゲウオ科、カジカ科、ハゼ科魚類では、雄の腎臓で粘性物質の合成が活発化し、膀胱に尿を蓄えるという共通した現象を見出した。トゲウオ科では雄の腎臓で巣材を接着する物質(スピギン)が合成されることが知られているが、カジカ科の雄の腎臓でもスピギンと相同の遺伝子が繁殖期中にのみ発現していることを見出した。また、トゲウオ科で雄の腎臓抽出物が成熟した雌を誘引する作用を持つことが示唆された。このことから、営巣繁殖するトゲウオ科、カジカ科、ハゼ科魚類の腎臓で合成される粘性物質の機能は、雌の巣への誘引であり、トゲウオ科では雌の誘引に加えて巣材の接着の機能が付加されたと考えられた。
著者
竹安 大
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、シラビーム方言における音節の時間制御の特徴を明らかにすることを目的とする。シラビーム方言の一つである鹿児島方言の促音とそれに隣接する母音持続時間を対象として、(a) 音声の産出・知覚の両面からの分析、(b) 世代間の比較(若年層・高年層)、(c) モーラタイミング方言や日本語以外の言語との比較の3つの観点から多角的に分析を行い、シラビーム方言の音節の時間制御の特徴を明らかにすることを目指す。
著者
井上 基浩
出版者
明治鍼灸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

鍼治療の筋緊張に対する弛緩作用の有無を明確にする目的で、動物の下腿三頭筋に対して、実験的に筋緊張モデルを作成し、足関節を他動的に一定角度まで背屈させた時の足底部に加わる圧力を指標に、鍼治療前後の変化を観察した。その結果、強縮負荷筋緊張モデルラットに対する当該筋への鍼刺激は、その直後効果において、無処置と比較して筋弛緩作用を有する傾向を見出した。この結果は、従来から経験として言われている鍼治療の筋弛緩作用にエビデンスを与える第一歩となる成果と考えた。
著者
山本 達郎 野中 崇広 篠崎 友哉
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

プレガバリン・ガバペンチンの作用部位であると考えられているα2δ-1の発現を、青斑核と中脳水道周辺灰白質で検討した。青斑核ではα2δ-1は発現せず、近傍にある三叉神経中脳核に発現していることが分かった。坐骨神経切断によりα2δ-1の発現に大きな変化はないことが示された。中脳水道周辺灰白質では、α2δ-1の発現はほとんど見られなかった。プレガバリン・ガバペンチンが青斑核を介して鎮痛効果を発揮していることが報告されてきたが、青斑核ではなく近傍の三叉神経中脳核に作用し、その結果として青斑核を活性化し鎮痛効果を発揮する可能性が示唆された。
著者
小林 秀行
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ヒトの代替え種での研究を行なうためにまずは、マイクロミニピッグのiPS細胞の誘導を試みたが、完全なiPS細胞は樹立することはできなかった。そのため、生殖細胞への分化の実験は断念した。2016年の年末に電気工事の影響で、-80℃の冷凍庫が故障したため、それまでに冷凍庫内に保管していたTESEおよびmicro-TESEにて採取した精巣組織や、マイクロミニピッグの組織や細胞、その他試薬などすべてを失った。そのため、実験継続はできず、予定していた実験は施行できなかった。
著者
千葉 浩彦
出版者
淑徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

被虐待経験によるPTSD症状に有効とされる、感情コントロール訓練を含むTF-CBT等は、児童福祉職5年未満の初心者専門家期に普及させるには時間コストが大きい。そこで、感情コントロール訓練の研修だけで、彼らの臨床スキルがどの程度向上し、PTSD症状のある子ども等のPTSD症状にどの程度効果的かを検討する。基本研修段階では、児童相談所において支援マニュアルに従った研修を行い、その臨床スキル向上を検討する(研究1)。感情コントロール訓練では、研修修了後の人材が所属機関で感情コントロール訓練を行い、PTSD症状等への効果を検証し(研究2)、児童福祉現場における研修時間の算定根拠となることを目指す。
著者
高田 寛子 大牟禮 治人 永山 邦宏 宮脇 正一
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

健康な男性患者に対して、咀嚼が消化管ホルモンの血中濃度や胃の活動(胃排出能、胃電図)、自律神経機能に与える影響を調べることとした。消化管ホルモンの項目はグルコース、インスリン、ガストリン、グレリン、CCK, GLP-1とした。5時間かけてデータの採取を経時的に行い、採決済シリンジは各ホルモンに応じて処理を行い、実験終了後にすべての資料はサンプルボックスに入れて保管し、データ解析を行った。4人の被験者に対して、咀嚼ありなしの条件で、これらの実験を行ったが血中ホルモン濃度に有意な差は認められなかった。今後、被験者を増やすと同時に咀嚼筋障害を持つ患者に対しても調べる予定である。

1 0 0 0 OA 検閲と日本人

著者
山本 武利
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

GHQは1945年9月1日から1949年11月31日まで検閲を行った。CCDとCIEを使って巧みに日本人を統治した。郵便など通信やメディアの検閲で日本人の諜報活動を把握した。CCDの雇用者は日本人であったが、検閲の存在の公表を許さなかった。そうしながら、日本では新憲法で言論の自由が保証されているといった巧みな戦術・戦略を実行した。左翼メディアや少数の右翼メディアは巧妙な検閲体制に批判しが、多くのメディアは軍事裁判、発行禁止、没収、、パージ、用紙統制のしたがった。こうして日本人とメディアを使った日本のアメリカ化が促された。
著者
山本 武利
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

CCDはコミュニケーションの監視とインテリジェンスにつながる情報の獲得を目的としていた。監視の目的は、軍事的な安全の確保と治安を乱すコミュニケーションの排除であった。日本政府の降伏条件への服従の度合いを探る工作を行った。とくに日本の民主化に注視していた。そのために郵便、電信、メディアの検閲に力を入れた。そのために多数の日本人を採用して検閲者にした。能力のある日本人を現場で教育し、役に立つものは抜擢し、能力がないと見た者は整理した。日本人は次第に協力的になり、検閲者として重宝されるようになった。とくに日本人女性の能力を評価し、管理職DACに採用した。日本での検閲は成功したとGHQは判断した。
著者
木下 正史 木村 茂光 木村 茂光
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日本では、本格的な尺度の導入は6世紀末の飛鳥寺造営時に、百済から高麗尺を導入した時に始まる。7世紀中頃に至り、百済大寺や難波宮、水落遺跡など宮都中枢施設の造営に際して唐大尺が導入され、史料上は大宝令によって制度化されたとされる大尺・小尺制が成立した。一方、権衡制は隋制が導入され、平城京時代まで、その骨格として継承された。こうした度量衡制の展開は飛鳥への宮都の定着、そして京制の成立、都づくりの本格化と相関する。
著者
大月 隆寛 岡田 顕宏 坂梨 夏代 武井 昭也 横田 久貴 飯田 俊郎 菊地 暁 赤川 智保 吉岡 精一
出版者
札幌国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

メディアコンテンツと「地域」の関係について、従来の人文社会系諸領域からのアプローチを方法的に概括し、激変しつつある現在の情報環境において有効な新たな視角を学際的・領域横断的に模索する考察を行った。文化資源としてのメディアコンテンツの視点から、富良野市および近郊にある「文化資源(文化財資産)」の調査を行い、富良野が持つ文化資源の掘り起こしと、それが町の活性化-町おこしにどう利用されているのかを歴史的に捉え現在の問題点の抽出を試みた。官民連携についての住民の意識についての調査も行い、『北の国から』がどのように記憶されているのか、当時実際に関わった人たちなどへの聞き書き取材もできる限り行った。
著者
長谷川 毅 西脇 宏樹 矢嶋 宣幸 大田 えりか 野間 久史
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

質の高い「チーム医療」の実現には、「多職種連携教育」が重要である。「根拠に基づいた医療」を実践するために「臨床研究リテラシー」は全ての医療者に必須の能力として求められている。「臨床研究リテラシー」の習得のためには、知識の学習だけでなく実際にデータを用いて臨床研究を実践することが非常に効果的であるが、データの入手、整備や構築が困難なことが少なくない。本研究は「多職種連携教育」の一環として情報通信技術を活用した「臨床研究リテラシー」修得のための実践研究である。「系統的レビュー」英文原著臨床研究論文出版活動を継続的に支援し、「臨床研究リテラシー」の普及と次世代の指導的人材育成を行う。
著者
小椋 聡子 赤沼 潔 桐野 文良 塚田 全彦
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

研究の概要美術工芸、特に「金属工芸(金工:鋳金技法、鍛金技法、彫金技法)」の分野において、着色技法は作品表面を色彩豊かに表現する手法として重要な役割を担う。そのひとつに各地で伝承されてきた「おはぐろ(お歯黒)(鉄漿)」着色がある。現在も美術金工作品の色調表現として使用されているだけでなく、文化財美術品の保存修復や復元においても重要な要素となる。本研究では、各地の 「おはぐろ」着色液の組成および着色工程を系統的に調査するとともに、分析技術を用いて着色層の色調発現機構を解明する。さらに得られた知見を活用し、銅合金試料への着色再現を実施する。
著者
分部 哲秋 長島 聖司 佐伯 和信
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

形質人類学的側面から九州地方から出土している弥生人骨の地域的特性に関する研究を遂行した。調査対象人骨は長崎大学に保管されている資料を用い、縄文時代と同様に漁労・採集に生活基盤をおいていた西北九州地域の弥生人骨、南九州離島群出土の弥生相当期人骨と大陸からの渡来系と考えられる北部九州地域の弥生人骨について骨計測、頭蓋小変異観察を行い、次の結果を得た。1.西北九州及び南九州離島弥生人の計測的特徴(1)西北九州弥生人は、北部九州弥生人と比較して脳頭蓋がやや小さく、特に高径が小さい。頭型は西北九州弥生人の方がやや短頭に傾く。顔面頭蓋では幅径はほぼ同じであるが、顔高、上顔高の高径にはかなりの差が見られ、北部九州弥生人よりも著しい低顔傾向を示す。また、西北九州弥生人の顔面は平坦ではなく、立体的である。(2)南九州の弥生相当期人は、大局的には西北九州弥生人と同類で縄文系の弥生人と考えられるが、頭型が短頭に傾くことと顔面の平坦性がやや強い点で西北九州弥生人とは違いが見られる。(3)各遺跡ごとでの男性の平均推定身長値は、北部九州弥生人が162cm以上あるのに対し、西北九州及び南九州弥生人は160cm以下であり低身長である。2.西北九州及び南九州弥生入の頭蓋形態小変異形質の特徴(1)西北九州弥生人の出現頻度は、北部九州弥生人と比較して眼窩上孔が低頻度で出現し、逆に舌下神経管二分、翼棘孔、頬骨後裂、横後頭縫合残存は高頻度で出現する。この傾向は縄文人に酷似している。(2)南九州弥生人の出現傾向は西北九州弥生人に類似するが、舌下神経管二分と顎舌骨筋神経管が低頻度である点でこれと異なる。(3)外耳道骨腫は、西北九州及び南九州弥生人に高率で出現しており、形質のみならず生活様式が北部九州地域の弥生人と異なっていたことが示唆された。
著者
坂本 文徳 香西 直文 鈴木 義規
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ウランを特異的に集めるタンパク質を効率的に特定する新規の手法を開発した。この方法は、サイズ排除カラムを利用した液体クロマトグラフィーと質量分析器を組み合わせた検出系を利用している。実際に、この方法を利用して、酵母タンパク質からウランを集めるタンパク質特定を試みたところ、46キロダルトン程度の大きさのタンパク質がウランを集めることを明らかにした。そして、そのタンパク質は硫黄を含むアミノ酸(メチオニンとシステイン)を構成要素としないことが示唆された。
著者
平泉 隆房
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

白山信仰と日吉(山王)信仰が、中世にどのように全国に広まっていったかを、現在の白山神社・日吉神社の分布図を作成し、それを参照しつつ検証した。中世前期までに成立した日吉社領が近江や北陸道を中心に全国に散在してみられ、その付近には現在でも多くの日吉神社が鎮座していることを確認した。白山神人と日吉神人、言い換えれば両信仰が対立することなく、協調して信仰圏の拡大につとめていたことも明らかとなった。なお、これらの勢力が、衰退した延喜式内社に入り込み、それぞれの地域の拠点としていた事例を多く検出することができた。あわせて、古代中世について、白山信仰に関するこれまでの研究史をまとめた。