著者
冨山 清升
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

南西諸島島嶼部における外来種陸産貝類の島の固有生態系に与える影響を調査した。アフリカマイマイの生息現況調査では、奄美大島においては、生息域が人家、畑付近、もしくは、道路沿いの草むらに限られ、自然林には侵入していないことが数量的に解明できた。ウスカワマイマイは亜種とされてきた、オオスミウスカワマイマイ、キカイウスカワマイマイ、オキナワウスカワマイマイ、ウスカワマイマイの4亜種がDNAレベルでは区別できないことが解った。また、ウスカワマイマイ類は人為的な分散をする傾向が強いが、DNAレベルで検討しても、人為分散の経路は解明が困難だと解った。
著者
川合 覚 保富 康宏
出版者
獨協医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

実験用ニホンザル4頭にサルマラリア原虫(Plasmodium coatneyi)を静脈内接種し、感染経過にともなう脳MRI解析および造影灌流強調画像解析を行なった。その結果、いずれの感染個体においても微小出血や梗塞巣、浮腫等の器質変化を疑うMRI所見は認められなかった。また造影灌流強調画像解析では脳血液量(rCBV)、平均通過時間(MTT)および血流量(rCBF)を測定し、感染前と重度発症時の比較を試みた。その結果、前頭部、側頭部、後頭部および小脳において感染前と発症期との間に明確な違いは認められなかった。各感染個体は最終MRI撮像の直後に剖検し、脳の病理組織学的観察をおこなったところ、大脳および小脳血管内に多数の感染赤血球接着像(sequestration)が認められたが、神経細胞の変性や脳組織の器質的変化は認められなかった。これらの結果を総合すると、脳血管内で発生するsequestrationの形成は、脳マラリアにおける中枢神経症状の主要な要因であると思われるが、単純に脳内の虚血性変化や脳の血流障害を誘発するものではないことが明らかとなった。
著者
矢部 博 成島 康史 M. Al-Baali 五十嵐 夢生 稲葉 洋介 大谷 亮介 小笠原 英穂 加藤 惇志 小林 宏 菅澤 清久 中谷 啓 中村 渉 中山 舜民 林 俊介 原田 耕平 平野 達也 柳田 健人 山下 浩 山本 哲生 渡邉 遊
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

大規模な無制約最適化問題に対する3項共役勾配法ならびに微分不可能な関数を含む非線形方程式系に対する共役勾配法について新しい解法を提案し、その大域的収束性を示した。また、無制約最適化問題を解くための準ニュートン法に関してメモリーレス準ニュートン法および目的関数値のみを利用する準ニュートン・パターンサーチ法も研究した。制約付き最適化問題に対して実行可能方向を生成する新しい非厳密逐次二次制約二次計画法を提案しその大域的収束性・超1次収束性を示した。さらに、画像処理などの応用分野で扱うトレース比最適化問題に対する新しい解法も提案した。以上の提案解法について数値実験を行って、実用的な有効性を検証した。
著者
酒井 健夫 伊藤 琢也 鈴木 由紀
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

南米では吸血コウモリが狂犬病ウイルス(RABV)を家畜やヒトに伝播している。しかし、分子進化学的な解析から、吸血コウモリは、食虫コウモリであるTadarida brasiliensisからRABVが伝播され、その後、南米に生息する吸血コウモリの集団間で感染が拡大した可能性が示唆されている。本研究は吸血コウモリ由来RABVの詳細な疫学に用いるRABVゲノムの全長塩基配列の決定を、次世代シーケンサー(NGS)を用いて進めている。しかし、NGSによる解析の過程で全長の塩基配列を決定することができない検体も存在したため、サンガー法によりシークエンスを行い、今年度は新たに4検体の全長配列を決定した。さらに、吸血コウモリ由来RABVと遺伝的に近縁な食果コウモリ由来RABVゲノムの全長配列の決定も行った。また、これまで9組のプライマーペアを用いたマルチプレックスPCRのアンプリコンシークエンスを行っていたが、より簡易に塩基配列を決定する為にプレイマーペアの再検討を行い、4組のプライマーペアを用いたアンプリコンシークエンスに切り替えて、ブラジルの広範囲の地域で採取された吸血コウモリ由来RABVのライブラリ調整を進めた。さらに、吸血コウモリおよびTadarida brasiliensisから分離されたRABVのN遺伝子領域を用いて分子系統樹解析を行った。その結果、Tadarida brasiliensisは北米から南米にかけて広範に分布しているが、吸血コウモリは、北米と中南米に分布する2つのT. brasiliensisの集団からRABVが伝播され、その後、RABVは中米から南米にかけて南下しながら吸血コウモリに拡散し、その過程で食果コウモリ(Artibeus属)にもRABVが伝播したことが明らかになった。
著者
曲 寧 伊藤 正裕 善本 隆之
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

化学療法や放射線療法などの抗癌治療の副作用として精子形成障害が起こることがある。近年、抗癌治療副作用の軽減に漢方薬が注目されているが、抗癌治療後の精子形成障害の改善効果に関する報告は未だ少ない。申請者らは、抗癌剤投与或いは放射線照射後のマウス精子形成障害に対する牛車腎気丸の治療効果を調べた。抗癌剤投与や放射線照射後のマウス精子形成障害に牛車腎気丸が共に有効な治療効果をもつことが明らかとなった。また液性因子や細胞因子への影響について明らかにし、牛車腎気丸による精子形成障害の改善作用機序を明らかにした。補中益気湯および八味地黄丸による精子形成障害の改善効果も比較検討した。
著者
大槻 勤 菊永 英寿
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

軌道電子捕獲崩壊[EC崩壊]は,核位置に存在する軌道電子を核内核子に取り込んで崩壊する現象で,その確率は核位置での電子密度に比例する.本研究の目的は加速器による量子ビーム(陽子や電子)を用いてBe-7を製造し,温度・化学形・結晶形等の因子を変えて,半減期を大きく変化させることである.Be-7@C60の温度変化(室温と5K)で半減期変化をみる実験をおこなった.その結果,室温のベリリウム金属中Be-7と5Kに冷却されたC60 内のBe-7の半減期を比較すると1.5%以上も短くなることを見出した.C60,C70を特殊な環境下でのBe-7の半減期測定を行い,大きな半減期変化を実現させるに至った.
著者
原田 誠一 岡崎 祐士
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

研究代表者らは、幻覚妄想体験に対する新しい精神療法(認知療法)を考案した。気分障害・不安障害における認知療法の治療効果はすでに広く立証されているが、統合失調症の認知療法は国の内外を問わず十分確立されていないのが現状である。研究代表者らが認知療法の適応を統合失調症に広げる試みを行っている理由は、従来の治療法にあった以下のような重大な問題点・課題に対応するためである。(1)病識がなく通院・服薬を拒否する患者の治療導入を円滑にすすめる方法論の開発が不十分。(2)薬物療法抵抗性の幻覚妄想体験に対する治療法を開発する必要。(3)従来の治療では再発予防が不十分であったため、新しい再発対策が必要。(4)幻覚妄想体験によって生じるスキーマの変化への対応が必要。本年度は欧米における本分野の研究状況をレビューし、代表的な英国の専門書を翻訳・出版した(「統合失調症の認知行動療法」)。また、従来からある他の精神療法と認知療法の比較・検討を行い、認知療法が他の精神療法を補完する役割を果たしうることを示した(原田・臼井・岡崎:ことばの処方.岡崎編.統合失調症の診療学.中山書店、2002)。そして、以上の内容を学会誌に発表し(「都精協雑誌」2002)、初診の場における本法の利用法を述べ(「精神科」2002)、薬物療法との関連にも触れた(「精神科臨床サービス」2002)。加えて、認知療法の内容を当事者・家族に普及する啓蒙活動にも力を入れ、第35回全国精神障害者家族大会(2002.9)で教育講演を行い、家族会の機関紙(「ぜんかれん」2003)で内容の紹介を行った。
著者
石橋 明浩
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本年度は、まず、超弦理論のような高次元理論のコンパクト化から導かれる様々な有質量ボソン場のブラックホール時空上のダイナミクスの理解、特に有質量ベクトル場やテンソル場が回転ブラックホールとの相互作用で引き起こす超放射不安定性の理解を目指し、その第一段階として、静的臨界ブラックホール上での有質量ベクトル場の波動方程式の簡略化を行った。本研究の大きな特徴は、(1)最大荷電(臨界)ブラックホールのホライズン近傍領域がスケール変換により拡大された対称性を持つこと、(2)スケール変換のパラメーターを摂動パラメーターと見なして、力学自由度を摂動展開すること、の2点に着目したことである。一般に、波動方程式を扱い易い常微分方程式系へと帰着するための課題は、(A)変数分離、(B)力学自由度の脱結合、である。本研究では、静的ブラックホールの場合を扱うことで、(A)については自明に遂行し、(B)の問題点は上述の(1)(2)の組み合わせにより解決できることを示した。最大荷電静的ブラックホールは、その厳密解として多体系を形成することができる。ブラックホール連星合体からの重力波を理解する動機のもと、ブラックホール連星のスナップショットとも見なせる最大荷電静的ブラックホール多体系における測地線の振舞いを調べた。また、量子重力の文脈で最近研究されている、量子的光的エネルギー条件(QNEC)の成立条件について、AdS-CFT対応を応用して議論した。特にQNECが破れるようなワームホール時空の例を構成して見せた。この研究結果の興味深い点として、ワームホール時空上でのエンタングルメントエントロピーを評価するさいに取る正則化として、紫外発散とともに赤外発散の正則化の仕方が、QNECの評価と関係することが分かった。
著者
白石 晃司 大川 恭行
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヒト精巣組織から次世代シーケンサー(NGS)によるトランスクリプトーム解析を行った。23,616の遺伝子のmRNAについて解析を行ったところ、cell cycle, nucleic acid bindingなどの遺伝子群が高発現の上位を占めた。非閉塞性無精子症症例との比較においてその発現は特にヒストンH3.5などのエピジェネティック関連遺伝子に認められた。また精索静脈瘤症例においてcell cycle関連遺伝子の発現が低下し、精索静脈結紮術の効果と関連することが判明した。NGSによるトランスクリプトーム解析は造精機能障害の病態解明において有用な方法であることが示された。
著者
山内 裕
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

この研究は、文化を構築することで価値創造を行う実践を明らかにし、そのための理論と方法論を構築することである。特に、サービスという文化が深くかかわる領域に着目し、経験的調査を行いつつ、文化構築のための理論を探究する。下記の3つの活動を計画していた。まず最初に、当初の計画通り、サービス場面における相互行為の経験的分析を進めている。具体的には、バーやアパレル場面での相互行為をビデオに記録し、エスノメソドロジーの視座から分析している。バーの調査はセンスメイキング理論に相互主観性を導入する理論的枠組みを提案し、英文ジャーナルに投稿し査読の過程を経ているところである。アパレルの調査は、サービスにおける店員の視線という相互主観性の水準での行為について分析し、その結果を2018年7月の欧州の国際会議(European Group of Organization Studies, EGOS)で発表することが決まっている。次に、計画にある通り、鮨屋に関する文化表象に関するメソレベルの調査も進んでいる。鮨にまつわる言説を整理し、二次データの分析をベースにした研究を7月の国際会議(Consumer Culture Theory)で発表しフィードバックを得た。さらに、それを踏まえて、鮨おたくと呼ばれる方々数名へのインタビューを実施した。今後このデータを分析しつつ、追加でインタビューを計画している。最後に、計画にある理論構築に関しては、バーやアパレルデータの分析にともない、相互主観性を基礎としたサービスの価値共創を概念化している。2月には南洋理工大学の消費者文化の研究者、12月と3月にはコペンハーゲンビジネススクールの組織論・哲学の研究者2名と国内で議論をする場を持ち、理論構築を進めた。この内容を論文として完成し、2018年中に公刊されるサービス科学の中心的ハンドブックに含まれることが決まっている。
著者
坂田 敦子 平島 光臣
出版者
尚絅大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

U937細胞およびヒトPBMCを用いて、ガレクチンファミリー分子の中で、特に多様な免疫調節作用をもつガレクチン9の発現調節活性を指標に、食品の機能性成分の探索を行った。結果、フコイダンは強い炎症性サイトカイン誘導活性と同時にガレクチン9発現抑制活性を有することがわかった。レイシ抽出液やカテキンにはガレクチン9発現調節活性は認められなかった。本研究により、フコイダンが、免疫抑制的機能をもつガレクチン9の発現を低下させることにより単球/マクロファージ系細胞を活性化へ誘導している可能性が示唆された。
著者
蒲地 正幸 重松 昭生 渡辺 浩行
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.フォスファチジルコリンとコレステロ―ルとを用い,ロータリーエバポレータ(Haake-Buckler社)にてCL2MDPリポソームを作製した.2.CL2MDPをラットの気管内に投与して肺胞内MFを枯渇させた群とCl2MDPを含まないリポソームを気管内投与した群とにわけて,エンドトキシンによる肺血管透過性の変化について調べた.エンドトキシンの腹腔内投与による肺血管透過性亢進はCl2MDP投与群において抑制されることをエンドトキシン投与後24時間目に^<125>Iと^<51>Crを用いたdouble isotope methodで肺血管外水分量を測定することで確認した.3.次にCl2MDPを血管内投与した場合,肺胞MFの数には影響を与えず,血管内MFはほぼ完全に枯渇する事を確認した.しかしエンドトキシンの腹腔内投与による肺血管外水分量の増加は,気管内投与した場合と逆にCl2MDP投与群おいてコントロール群に比較して高度であった.4.今回の実験においてエンドトキシンショック時の肺障害には肺胞マクロファージが強く関与していることが示唆されたが,Cl2MDPを全身投与することによってエンドトキシンによる肺血管外水分量の増加が増強されたことの理由は不明である.現在,血中のサイトカインやエンドトキシンの動態,またマクロファージ以外の細胞の関与について研究中である.
著者
松永 修一
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では自然度の高い音声データ収集を行い、音調の世代差と変化の方向性を探索した。特に、若年層の自然談話の収集に力を入れ、その中で出現する方言語彙、アクセントなどを抽出し分析を行った。また、高校生100人に対して、伝統的方言の残存度、宮崎方言の浸透度、帰属意識、方言意識などの項目を調査した。また、都城市内の高校生、中年層、高年層の方々を対象に、自分たちの方言を考えるワークショップを都城市教育委員会との共催で開催した。自分たちの方言の多様性について考え、地域づくりのリソース、また、帰属意識の醸成のためにどのように活かせるかなどを考え、対話型の研究手法についても試行した。
著者
勝山 稔
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

中国白話小説の受容に多大な貢献を果たした支那愛好者の文化受容の研究の一環として、先行研究で「謎の男(三石善吉「後藤朝太郎と井上紅梅」)」と称されていた井上紅梅の受容活動の全貌を把握するため、日本各地に散在している井上紅梅に関する著述の収集を行った。彼の著述活動の大半は上海・南京・蘇州という当時で言うところの「外地」で行われたこと。一部の活動は戦中期に重複しているため、保存状況は劣悪でしかも少数の記録しか残されていなかった。そのため資料収集を実施し、特に神戸大学や国会図書館(東京本館・関西館)などでは従来誰もその存在を知らなかった井上紅梅に関する著作や記録を発見することが出来た。
著者
前野 弘志
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

第一に,2010年にレバノン南部の都市ティール郊外の地下墓で発見された呪詛板の解読と研究成果を,レバノン文化省考古総局が発行する学術雑誌に掲載した(現在印刷中)。第二に,呪詛を含む魔術がなぜ「効く」と考えられたのか,その理論を,ギリシア語魔術パピルスを史料として,実証的に明らかにした。第三は,ローマにおける戦車競技の持つ豊穣呪術的機能とローマ国家の起源との関係を明らかにした。
著者
大川 玲子
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

この研究は、カンボジアの少数民族であるチャム人ムスリム(イスラーム教徒)が、2011年に初めて聖典クルアーンをクメール語(カンボジア語)とチャム語に翻訳したことに着目し、クルアーン訳が成立した経緯やその理解(解釈)に焦点をあて、調査研究を行った。その成果として、クルアーン翻訳事業が二つの異なる集団によってなされたこと、カンボジア以外のムスリム国の援助を受けていること、人々による理解はクルアーンの呪術的使用や学校教育の場と通して行われていることが明らかになった。
著者
酒井 大輔
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、物理的・化学的に安定しており、高い透過率を有するガラスの中で、世界的にもっとも普及しているソーダライムガラスに対し、微細な屈折構造を形成し、光学機能を付与する方法の確立と実現を目的とした研究を行う。従来、ガラスに対する微細構造形成には、大掛かりで高価な装置が必要であったが、本研究では、より安価な装置で処理が可能な独自の電界プロセスによる構造形成を目標としている。4年間での研究遂行に向け、・電圧プリント法の確立・選択堆積法の発展・微細屈折構造の光学機能計算・実装・評価の3点に着目した研究を計画している。初年度となる2018年度は、まず、電圧プリント用実験装置を作製した。電圧印加プロセスにおける昇圧タイミングを制御し、その際に流れる電流値を収集する必要があったため、LabVIEWを用いた機器制御プログラムとデータ収集プログラムを開発した。必要となる高圧電源などは過去の研究で用いた装置を流用し、ヒーター並びに徐冷機構を備え、温調も可能とした。作製した装置を用い、電圧プリント実験を行った。正極には荒い周期構造を加工した金属を用い、ソーダライムガラスとの間に微細な凹凸構造を形成した樹脂をはさみ、電圧印加を行った。電圧印加後、ガラス表面をレーザー顕微鏡により観察した結果、ガラス上には正極の荒い周期に応じて、樹脂上に形成されていた微細な構造を転写できていることが明らかとなった。加工の容易な樹脂上に形成した構造を加工の困難なガラスに転写できる新たな手法となり得るため、特許出願を行い、国際会議などで発表を行った。
著者
米野 史健
出版者
国土技術政策総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

民間非営利組織(NPO)が一定の公益性を有する住宅の供給事業を立ち上げて継続的に運営するのに必要となる、資金調達とコスト負担の方法及びそれを経済的に支援する仕組みを検討するため、NPOによる住宅の供給・管理事業の実態と、住宅供給・管理事業における資金確保の状況を、事業報告書等の公開資料を基に把握・検討した。その結果、高齢者などの住宅確保要配慮者向けの住宅供給が志向されているが、介護保険等の公的制度に基づくサービスを付加する形でないと経営は成り立ちにくく、整備資金の調達も難しい状況が示された。あわせて、東日本大震災後の住宅供給等の取組についても実態を把握した。
著者
辻野 彰 松本 武浩 前田 隆浩
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

遠隔医療への期待が高まっている昨今、ビデオカンファレンス方式による遠隔診療の診断精度や治療効果(質)に及ぼす影響については十分に検討されていないのが現状である。本研究では、専門医が不在の離島にカメラ付きスマートグラス(MOVERIO Pro:エプソン)を利用したDoctor To Doctor To Patient(D to D to P)のバーチャル専門外来を開設して、その有用性を質に重点を置いて検討するものである。本年度は離島の基幹病院にバーチャル神経専門外来を開設し、慢性神経疾患診療、特にパーキンソン病における治療効果に重点を置いて、D to D to Pの遠隔診療支援の有用性を検討する。専門診療介入前後でパーキンソン病の治療効果や診療満足度が向上するかどうかの評価を開始した。診察プロトコール:1ヶ月に一度の外来受診(年12回)を基本として、同意取得後の6カ月間は通常診療を行う。この期間の診療をコントロール期間として、その後に引き続いてバーチャル神経専門外来を実施する。通常診療時とは別の現地の専属医師が大学の専門医のアドバイスを受けながらパーキンソン病患者を診療して抗パーキンソン病薬の薬物調整を行う。評価項目:PD統一スケール改訂版(MDS-UPDRS)、ウエアリング・オフ現象のオンとオフ状態の時間、ジスキネジアの有無、PD特異的QOL尺度質問票(PDQ-39)、臨床的全般印象度の変化(CGI-C)、認知機能(MoCA)、レボドパ換算総薬物投与量、入院回数、併存合併症(骨折など)、慢性疾患患者ケアシステム評価(PACIC)、アンケート調査を開始前から3カ月ごとに評価する。
著者
鶴田 滋
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、民事訴訟において、第三者が、係属中の民事訴訟の当事者の一方にどのような場合に補助参加をすることができるのか(これを補助参加の利益という)についての判断基準を再検討することを目的とする。本研究では、補助参加の利益の判断基準は、参加的効力(これは、第三者が補助参加した訴訟の判決効であり、その訴訟の当事者と補助参加人〔補助参加した第三者〕の間に生じる)と関連があるとの仮説を立て、これを母法ドイツ民事訴訟法における議論を参照しながら論証することを試みる。