著者
尾内 理紀夫 岡部 誠
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

効果音を対象とする無音動画の有音化の研究を行った。効果音を、繰り返し音、瞬間的な音、持続性のある音の三種類に分類し、瞬間的な音と持続性のある音について研究した。瞬間的な音はミリ秒単位で発音位置を調整し、動画内の物体の動きと効果音の発音タイミングを一致させる必要がある。そこで音付き動画から効果音の合成に使用する特徴量と音データを切り出し、動画と独立なオブジェクト化を図ることとし、瞬間的な音の貼り付け技術を確立した。爆発音など数ミリ秒から5秒程度持続する音は、広周波数帯域にわたり不規則に音成分が現れる。このため無音動画内の物体の動きに合わせて持続性のある効果音を低劣化で伸長させる技術を確立した。
著者
大隅 清陽
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本古代における内陸交通の特色について、甲斐国における駅制の運用を題材に考察した。また、日本と唐の律令法のうち、馬匹生産について規定した養老廐牧令と、北宋天聖令から復原される唐令を比較することにより、日本における馬の生産のあり方の独自性を明らかにした。特に共著書『古代山国の交通と社会』では、中央政府による山岳地域での駅制の施行が、大規模な人口の移動や土地の開発などの大きな影響を地域に及ぼしたことを解明した。
著者
星加 良司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日本の実定法の体系に初めて明文化された「合理的配慮」の概念について、(a)その導入に当たっての理論的・実践的課題を明らかにするとともに、(b)企業等において合理的配慮が有効かつ円滑に運用されるための研修プログラムの内容開発を行った。この成果は、(a)について書籍『合理的配慮』(有斐閣)、(b)について研修教材『障害者と共に働く職場づくり(基礎知識編)』及び『同(ケーススタディ編)』(株式会社富士通ラーニングメディア編)として公表される。
著者
森尾 昭文
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

色や食感などが現在主流の既存品種とは異なる特徴を持つ野菜新品種は、消費多様化に対応して開発されている。しかし、そのような野菜新品種は変わった特徴があるがために普及していない例が多い。そのような品種を普及させるために、農産物では不十分になりがちな販売促進を製品開発で補う方策を、ニッチマーケティングの視点から解明した。
著者
増子 正 李 在檍 高橋 信二 大澤 史伸
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

韓国における共同募金特徴を、①韓国共同募金会の組織、②募金プログラムの開発と事業支援、③説明責任 の3つの視点から整理して、韓国における共同募金のマネジメントの体系化を試みた。単に募金を集めて配分するだけでなく,配分を受ける組織が事業を遂行するための相談支援体制を持っていること。募金事業のマネジメントに関しては,募金戦略の作成から評価にいたるまでのPDCAサイクルが確立していることがわかった。
著者
佐藤 可奈 高尾 公矢 赤羽 克子
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、都市郊外団地に住む高齢者の買物弱者の買物行動を含めた食生活の実態及びニーズを明らかにし、買物弱者への支援策を提示することを目的として、埼玉県三郷市M団地において質問紙調査、インタビュー調査を行った。質問紙調査の結果、性別と年齢で違いがみられ、相対的に体力的な衰えが買物を困難にさせ、人間関係や食生活に影響を及ぼしている可能性が示唆された。インタビュー調査の結果、社会的に孤立している高齢者は食生活に変調がみられ、低栄養のリスクが高く、BMIが低くなるという知見が得られた。団地での生活を継続するためには、団地の知縁による支え合いがセーフティネットとしての機能を果たすことが期待される。
著者
澤田 秀之 中村 祐
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、形状記憶合金ワイヤの微小振動子をアクチュエータとして用いた触覚呈示デバイスを構築し、指先感覚の喪失の程度を数値化する、指先触覚感度測定手法を開発した。まず高出力触覚アクチュエータの研究開発をおこない、皮膚の微小部位に様々な周波数の振動刺激を与えることで、触覚の高次知覚の呈示が可能であることを示した。更に指先触覚感度を定量的に測定するシステムを構築し、糖尿病などで引き起こされる末梢神経障害に起因した指先感覚の喪失程度を数値化する測定法の実装をおこない、被験者実験により有効性を示した。糖尿病の症状の進行度を定量的に計れることは、早期の診断や的確な治療に大きく貢献できる。
著者
磯部 兼嗣
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

溶接などで生じる不均質領域が水素透過挙動に与える影響を調べるため、複数箇所にTIG溶接施したSUS304ステンレス鋼試験体を用いて、523Kから673Kの温度域での重水素透過流量を測定した。その結果、不均質領域のある試験体と溶接を施していない試験体の定常透過流量はほとんど一致し、この温度領域では溶接で生じる不均質領域は定常透過流量に影響を与えないことを明らかにした。このことから、核融合炉においてSUS304ステンレス鋼で構成された機器、配管等の水素透過は、溶接による不均質領域には影響されず、これまで報告されているSUS304ステンレス鋼の水素透過を元に評価して良いことが明らかとなった。
著者
杉浦 真弓 尾崎 康彦
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

原因不明連続2回以上の6例の流産患者及び16例の人工妊娠中絶患者の流産時の子宮脱落膜組織を採用した。児の染色体異常による流産例は検討から省いた。それぞれの脱落膜組織からリンパ球を分離し、CD^<16+56+3->細胞(NK細胞)を解析した。また、6例の反復流産患者及び5例の中絶患者の脱落膜を用いてマクロファージ-を分離し、TGF-βも測定した。いずれも流産群とコントロール群の差を認めなかった。現在原因不明習慣流産の治療として夫リンパ球による免疫療法を施行しているが、感染などのリスクがあるため、これに変わる免疫刺激剤としてOK-432の投与を試みた。3回以上の流産歴をもつ患者に妊娠初期にOK-432の皮内注射を行い73.9%(17/23)が成功した。夫リンパ球の免疫療法では75.1%(154/205)が成功であり、OK-432の皮内注射は従来の免疫療法と同じ効果を示した。OK-432による免疫療法中、NK細胞活性を測定した症例のうち成功例ではNK細胞活性が低下する傾向がみられた。以前、NK細胞活性が高いと流産の危険性が3.5倍高いことを報告したが、OK-432のはNK細胞活性を抑制することで流産を予防する可能性が示された。また、NK細胞活性は精神疾患とも深く関わっている。ストレスが流産をひき起こすことは既に証明されており、原因不明の流産における精神的要因についても調査した。29組の2回の流産歴のあるカップルに半構造面接を行った。1回目、2回目のemotional impactはそれぞれ-74.5、-80.0(妻)-59.7、-65.0(夫)であり、2回目のが強かった。流産の予知をしていない人ほど強かった。また、61人の妻のNK活性について、低い神経症的性格、抑鬱状態、高い自尊心は高NK活性と関係した。つまり、これらの性格が流産と関係する可能性が示された。
著者
梅原 英一 諏訪 博彦 小川 裕樹
出版者
東京都市大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究ではYahoo!株式掲示版と株式市場の関係を分析した。第1に株式リターンを説明する新たなファクターを発見した。自然言語処理を用いて単語出現頻度(TF/IDF)を計算し、上位700単語の主成分分析でファクターを抽出した。その結果、投資戦略・株式保有・金融経済の3ファクターを抽出した。第2に日経平均VI指数(恐怖指数)との関係を分析した。掲示板にトピック分析(LDA)を行った。トピック投稿率とVI指数に相関があることが分かった。本研究で開発した手法を用いてTwitterとTV深夜アニメ番組の次週視聴率を分析し、投稿数・実況ツイートのネガティブ単語数と有意な相関があることが分かった。
著者
穐山 直太郎 福田 智美
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

難治性口腔潰瘍は摂食障害・栄養状態悪化から生活の質の低下を招く。難治性口腔潰瘍の治療は未だ不十分な場合も多く、新規治療開発を目標に、ラット口腔潰瘍モデルを用いた粘膜再生過程におけるDNAメチル化制御及び上皮幹細胞/前駆細胞の分化誘導因子Wnt5aの発現解析を免疫組織学的に行った。結果、DNAメチル化レベルは再生上皮で細胞増殖活性の上昇がピークに近づくと低下し、新規メチル化酵素Dnmt3a、3bに制御される可能性が示された。再生粘膜上皮細胞の分化誘導にDNAメチル化制御が強くかかわっている可能性が示唆され、上皮幹細胞/前駆細胞の分化誘導因子Wnt5aの発現様式と一致する傾向が示された。
著者
狩野 充浩 市川 博之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

筋萎縮症モデルマウスでは、頸部の筋肉に異常が発見された。一部の喉頭に付着する筋にエオジンの濃染が認められ、筋線維の萎縮も観察された。この筋肉は輪状甲状筋であることが同定できた。また輪状甲状筋の運動終板におけるCGRPの発現は非常に強く、この筋での運動終板の変性が確認された。一方、感覚神経の分布は正常マウスの分布と同様であった。また、ALSモデルや加齢マウス及びラットの軟口蓋、咽頭及び喉頭粘膜におけるP感覚及び運動終板の分布は正常動物と大きな変化は認められなかった。本研で観察された筋線維の萎縮や運動終板の変性の原因の同定は不十分であり、今後は、さらなる検討が必要とされる。
著者
渡辺 邦夫
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

アリストテレスの倫理学と心の哲学が心身関係論を回避せず積極的に荷担したことを示した。かれは徳の説明において感情の状況に応じた「量」にかかわる主張を提出し、状況に応じた直観的認知としての実践的知性から行動が起こると説明したと解釈した。意志の弱さの問題をめぐってもかれは心身因果にかかわる解明を遂行した。心の哲学ではアリストテレスが、欲求を補佐して行動を生む認知の問題に取り組み、行動における人間の認知を、規範という視点から考察しつつ、心身一元論を守ったと解釈した。またかれはスキルや知識や道徳性の学習成果が付帯的知覚としても知性認識としても現れると考えており、知性主義的で一元論的であったと解釈した。
著者
吉田 二美
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

天体の衝突破壊現象の素過程を現在まで良く保存していると思われる形成年代の新しい3つの小惑星族の小惑星を約50個観測し、自転周期分布、形状分布、自転周期と形状の関係を明らかにした。また、形成年代の新しい小惑星族の小惑星と古い小惑星族の小惑星の表面カラーの比較から、小惑星の表面年齢とカラー変化の関係を確認できた。
著者
森島 繁 村松 郁延 鈴木 史子 西宗 敦史
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

G蛋白共役型受容体はダイマーで機能していると信じられている。我々は、α1A受容体と相互作用するSnapinを発現させた細胞を用いて、研究を行った。Snapinはα1A受容体と結合するが、Snapin自身も2量体を作る。我々はSnapinの2量体形成に伴い、α1A受容体も2量体を形成していることを示唆するデータを得たが、Hill係数の解析から、驚くべきことに、従来の受容体とは異なり、2量体の受容体にたいして1つのアゴニストが結合することが明らかになった。
著者
Kim Minseok 青柳 貴洋
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,人体周辺の無線センサネットワーク(BAN)において,複数のセンサから取得した伝搬路の時間変動と人体の状態(動作や姿勢)との関係を実験的に明らかにし,人体の状態を高精度で同定する手法の開発を行った.また,人体の状態と伝搬路の状態との関係性(通信品質を決定する特徴量)を具体化し,人体の状態に応じたコーディネータの送信電力の最適化するコンテキストアウェアネス通信法を開発し評価を行った.具体的な実施内容は次のようである.「伝搬路測定系の構築」,「信号設計と伝搬路測定法の開発」,「伝搬路の時間特性による人体状態の同定法の確立」,「人体状態による伝搬路状態の分類とモデル化」などを実施した.
著者
濱中 春
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

18世紀後半のドイツの物理学者・著述家ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク(1742-99)の諸活動(美術史、観相学、自然科学、スケッチ、雑誌メディア)を通して、この時代の知の形成と伝達における言語とイメージの相互作用を考察した。近世から近代への移行期のヨーロッパにおいては多くの領域で知の枠組みの変化や転換が起こったが、それは言語とイメージの機能および相互関係にみられる多様性と変動の中で展開したものであることが明らかになった。
著者
皆川 卓 Horst Carl
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

神聖ローマ帝国に属するドイツ・イタリアの諸領邦は、17世紀に多くの占領・進駐を経験し、平時の統治者である領邦君主はしばしば不在となった。軍と交渉当事者となったのは、なお自律性を保っていた官僚集団や貴族、都市、農村であり、主権のメルクマールの一つである外交権、すなわち他者の制約を受けない対外的交渉権は彼らにも開かれていた。そうした軍との交渉の機会が、その後の帝国における各領邦の外交権の成立にどのように影響したかを分析したのが本研究である。本研究の結果、邦属団体が占領軍と展開した交渉の形態によって、領邦の外交権のあり方が規定されたことが明らかになった。
著者
菅野 正泰
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

マクロ経済の景気循環性が,ミクロとしての企業の信用力変化に与える影響を計量モデル化した。このモデルを使用した実証分析の結果,マクロ経済変数そのものよりも,フィルターで当該変数を要素分解して得たトレンド項やサイクル項を変数として導入したモデルの方が,日本企業の信用力をより良く説明することを示した。また,景気変動のストレスを企業の信用リスクのパラメーターに変換するモデルを開発し,従来,財務指標中心に評価していた企業の信用リスクをマクロ経済変数と業種相関の影響を考慮して評価することが可能となった。以上の研究成果は,査読論文2本他に収録された。更に,1本投稿予定である。
著者
伊藤 英一 谷田 林人 神尾 裕治 梅垣 正広
出版者
長野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

大学に障害学生が就学する割合は年々上昇している。聴覚障害の場合、講義において要約筆記やノートテイクを導入することで教員の音声情報を視覚化でき、ある程度の情報保障は可能となる。しかし、大学の講義では、教員は単に音声で解説することに留まらず、板書やスライドを利用しながら、さらにはそれぞれを連動させながら授業を展開している。そのため、聴覚障害のある学生は視覚化された音声情報に注視するだけでは情報が欠落してしまうため、必要に応じて注意喚起を促す必要がある。本研究では、注意喚起の必要な状況が発現した際、聴覚障害学生に対して注意を促す振動を呈示する無線通信システムを開発し、その必要性を実験により確認した。