著者
大森 斉 國安 弘基 北台 靖彦 藤井 澄 千原 良友 笹平 智則 佐々木 隆光
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

骨髄間葉系幹細胞 (MSC) は、癌組織に動員され癌細胞と相互作用を通じて癌の進展・転移に関与すると考えられ、がん研究の焦点の一つとなっている。報告者らは、MSCが癌細胞が産生分泌するサイトカインHMGB1により腫瘍内に誘導され、腫瘍内では腫瘍が分泌するTGFβを多量に含んだECMであるバイグリカンとHMGB1により幹細胞が維持されることを明らかにした。このような状態は大腸癌では粘液腫状間質として病理組織学的に認識され、糖尿病合併大腸癌肝転移症例に多く認められる。HMGB1の吸着・中和によるMSC動員阻害は腫瘍増大・転移を抑制し、MSC標的化の有効性が示唆された。
著者
森澤 佳三 小峯 光徳 山下 和洋
出版者
佐賀医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

過伸展ストレスが肩関節におよぼす影響を調査することで、肩関節痛が発生する機序について検討した。動物実験では、Lewis ratを用いて牽引負荷が腱板の血流に対してどのような影響をおよぼすかを水素クリアランス法とLaser doppler flowmetry(ADF21D Advance co.)を用いて調査したが、血流に関しては一過性に上昇して低下するものや、一定しないものがあり、血流だけでは明確な変化は捕えられなかった。しかし、4匹のratで交感神経の活動性をpower spector解析による高速フーリエ変換で測定すると、65gないし100gの負荷で交感神経の活動の亢進がみられるもののそれ以上の負荷では亢進はプラトーあるいは減少に転じているという興味深い結果が得られた。神経分布については、神経終末などの分布については、牽引ストレスを加えたことでの変化は認められなかった。実際の症例ではLaser doppler flowmetryを用いて28例の腱板の血流を測定したが、牽引ストレスを加えると一過性に血流の増加が起り、それに引き続きすみやかな血流の低下が認められた。血流はストレス前よりやや低下したが、すぐにほぼ安静時の血流に戻った。牽引をやめても血流の低下が改善しない例が4例あった。実際の症例で組織学的検索を行った6例では、神経終末などの分布の違いはあったが、血流の変化との関連性はなかった。不安定性との関連性も不明であった。腱板の血流が牽引ストレスで著しく変化することは証明されたが、そのことと肩痛発現の関連性は明らかでなかった。今後、腱板が人間により類似した動物を用いて、実験することでその疑問点が明らかになる可能性があるのではと思われた。
著者
志村 喬
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,欧米の地理教育学研究で台頭しているケイパビリティ・アプローチ論を,社会系教育に適用するための理論的解明を目指した。その結果,教育哲学論としてのA.Senのケイパビリティ理論を基盤にし,教科内容論としてのM.Youngの社会実在主義知識論と,教科指導方法論としてのD.Lambertのカリキュラム・メイキング論が統合された理論であることを解明した。さらに,臨床的国際共同研究が進展する中,日本の参画必要性が示された。
著者
金沢 創 山口 真美 北岡 明佳
出版者
淑徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、乳児の知覚を検討するプロジェクトの一環として、「錯視図形」をキーワードに、乳児の視知覚の発達を実験的に明らかにしたものである。平成18年度においては、(1)拡大運動と縮小運動の感度の非対称性、(2)正方形と円を重ねたとき、背後の円の輪郭を補完するアモーダル補完、(3)2つの重なった領域の明るさの順序により、2つの透明な領域が重なっていると解釈される透明視、のそれぞれについて、その知覚が発生する時期を実験的に検討した。それぞれの成果はInfant Behaviour and Development誌、Perception誌、などの国際的な学術雑誌に発表された。また、平成19年度は、(1)右方向と左方向に運動しているランダム・ドットを重ねると、2つの透明な面が見える運動透明視、(2)共同研究者である北岡が作成した、緑と赤の小さな領域が囲まれた色影響により彩度が低下する色誘導刺激、についてそれぞれ知覚発達を検討し、これらの成果をPerception誌やInfant and Child Development誌に発表した。さらに最終年度の3月までに、(1)静止しているランダムドットの一部の領域の色を、時間的に次々に変化させていくと、運動する輪郭が知覚されるいわゆるcolor from motion刺激や、(2)局所においてはバラバラに動いて見えるバーが、それを隠す領域を配置すると四角形が補完されるパターン、(3)輪郭と白黒の配置から、絵画的な奥行き手がかりが知覚されるパターンなどの知覚発達も検討し、(1)についてはInfant Behaviour and Development誌に発表され、後者2つについては、Journal of Experimental Psychology、およびVision Research誌にそれぞれ掲載されることが2008年4月現在、決定している。
著者
澤村 明 渡辺 登 松井 克浩 杉原 名穂子 北村 順生 加井 雪子 鷲見 英司 中東 雅樹 寺尾 仁 岩佐 明彦 伊藤 亮司 西出 優子
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、新潟県の中山間地域を中心に、条件不利地域での居住の継続に必要な要素のうちソーシャル・キャピタルに焦点を当ててフィールドワークを行なった。対象は十日町地域、村上市三面地域であり、他に前回の基盤研究費Cから継続して観察を続けている村上市高根地区、上越市桑取地区についても蓄積を行なった。十日町地域では2000年来3年ごとに開催されいている「越後妻有大地の芸術祭」のソーシャル・キャピタルへの影響を質問紙調査によって捉えた。その結果は2014年6月に刊行予定の『アートは地域を変えたか』で公表する(慶應義塾大学出版会)。
著者
佐野 理
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.粒状体中に空洞のような不均一な領域があると,そこに流れが集中して力学的な平衡状態が壊れ,流動化する可能性がある.本年度は,これまでの2次元の空洞相互作用の実験を再現する数値シミュレーションを行い,空洞崩壊の進行速度や崩壊領域の成長について実験との定性的な一致を得た.現在,これをさらに3次元空洞に拡張している.これらの素過程の土砂崩れ発生機構の解明や地下水による汚染物質の異常拡散の予測,あるいは肝臓等における腫瘍近傍に発生する血管新生の問題への応用について国内外の学会で発表した.2.粒状体界面の粒子が流れによって運ばれ,巨視的な界面が変形する過程の長時間観測を行った.とくに,流れ場と界面形状の時間変化を定量的に明らかにし,乾燥地域の拡大や海浜浸食などに伴う環境予測への応用も含め,関連学会の原著論文2編および研究所報1編で公表した.3.渦輪は運動量やエネルギーを携えながら粒子のように個性を保ったまま移動する流体運動であるが,これが粒状体の表面に衝突すると,渦輪の崩壊や界面の変形を起こす.本年度は,渦輪の強さと界面切削パターンの関係を定量的に観測した.渦輪を崩壊させる技術として,あるいはまた海底堆積物の撹拌による生物活駐化技術などへの応用が期待される.4.粒状体薄層を鉛直に加振すると,条件によっては層全体に弾性体の撓み波や流体的なさざ波が観測される.これはエネルギー散逸の大きな系でありながら粒子の配置変化と排除体積効果によって長距離秩序の現れる特異な挙動であり,ミクロな粒子間相互作用とマクロな流動を結びつけるメソスコピック物理構築の鍵となる現象である.本年度はとくに波長や加振条件,粒子の材質などを含む普遍的な関係式を模索し関連学会で発表した.
著者
市坪 信一 秦 正治 冨里 繁 西 正博 新 浩一
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

携帯電話システムの無線回線設計のためにマイクロセル内にある傾斜地での伝搬損失の推定方法を検討した。基礎データを取得するために、岡山市内の2地区、広島市内の3地区、北九州市内の4地区で傾斜地の伝搬損失を測定した。送受信の角度をパラメータとした4つの推定法を提案した。測定データを用いて提案方法の有効性を検証し、大まかな推定ができることを明らかにした。今後の推定精度向上のためには実際の傾斜地の状況をさらに推定法に反映させることが必要であることも明らかになった。
著者
杉内 博幸 松嶋 和美 安東 由喜雄 安楽 健作
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々はカチオン系界面活性剤とポリエチレングリコール修飾酵素をコレステロール測定系に加えるとHDL3-Cを選択的に可溶化することを見いだし、分離操作が不要で簡便なHDL3-Cのホモジニアス測定法を開発した。尚,HDL2-Cは総HDL-Cから差し引いて求めることとした。本法の同時再現性は,HDL3-Cが10~30 mg/dlの範囲でCV%2.0%以下であり,本法と超遠心法との相関はn=20 回帰式y=0.884x+4.807,r=0.841となった。本法は自動分析装置を用いてHDL3-Cを微量検体で簡便・迅速に測定できることから,動脈硬化性疾患の治療・予防に大きく貢献できるものと考えられる。
著者
井上 知泰
出版者
いわき明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

Si(100)基板上の二酸化セリウム(CeO2)薄膜のエピタキシャル成長において、表面電位分布制御により成長面方位が選択可能な方位選択エピタキシの研究を進めた。電子ビームを照射して局所的に表面電位を変化させる方法を採用し、Si(100)基板上にCeO2(100)と(110)領域の複合面方位構造の形成に成功した。この2つの面方位領域間に両方位成分を含んだ遷移領域が存在し、その幅がSi基板の比抵抗の対数に比例して縮小することが分かった。この結果から、絶縁基板上Si層にリソグラフィーにより溝を設けてSi島を形成し、それらの間を電気的に絶縁し、複合面方位領域間を完全分離する手法の検討を開始した。
著者
宇沢 美子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は20世紀前半のアメリカ演劇・文学における東洋人表象の変遷を扱い、従来はハリウッド映画との関係のみで論じられてきたイエローフェイスの営みを広くアメリカ文化全般に開くことを目的とする。舞台からラジオ、映像へと多ジャンルへ展開したイエローフェイスは異人種装による社会批評、実験演劇、政治プロパガンダと同時にそれに対するパロディをも準備する手法としてアメリカ文化の主要な文化作用を担った。
著者
大塚 正之 井出 祥子 岡 智之 櫻井 千佳子 河野 秀樹 Hanks William. F.
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、主客非分離、自他非分離の場の理論に基づき、言語及び非言語コミュニケーションが場の影響を深く受けていること、日本語は、場の影響が大きく場内在的な言語であり、英語は場の影響が小さく場外在的な言語であり、それが日英翻訳を困難にしていることが明らかとなった。また日本語のコミュニケーションでは、複雑系における自己組織化現象が多く起きていること、当初場の影響を強く受けて活格、能格であった言語が場の影響が小さくなるに連れて対格言語化したこと、異文化コミュニケーションを行う上で、それぞれ文化が持っている場の違いがコミュニケーションの障害となっていることなどの点もある程度分かってきた。
著者
牧野 幸志
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は,現代の児童・生徒を対象とするコミュニケーション・スキル訓練を開発し,実施することにより,スキルを高め,不登校やいじめなどの問題が発生することを予防することであった。スキル尺度を作成し,児童・生徒を対象としたスキル訓練を行った結果,訓練後に,生徒の多くのスキルが向上していた。また,参加者の8割の生徒は,訓練前よりスキルが上がっていた。また,コミュニケーション・スキルの高い生徒ほど,友人関係が良く,友人関係に満足しており,精神的健康状態も良かった。
著者
町田 好男 森 一生 田村 元
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

圧縮センシングMRIとは、情報技術を用いて少ない計測データから画像を取得する新しいMR高速撮像法である。技術開発が進展する中、臨床応用の立場から見た画像の得失を見極めることが重要であり、適切な画質評価指標が求められている。今回種々の条件で画質評価実験を進めた結果、個々のアプリケーション固有の評価も重要であることが分かった。本研究では特に、臨床上重要なMR血管描出法(MRアンギオ)について、脳血管を模擬した数値モデルを用いて血管描出能の再構成およびノイズ条件依存性を半定量的に評価する方法を提案した。
著者
桂 良太郎 安斎 育郎 池尾 靖志 阿部 敦
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は世界の平和博物館同士のネットワーク構築にむけた基盤整備その活用(応用)に主たる目的がある。第6回国際平和博物館会議(2009年)で21世紀にふさわしい平和博物館のあり方を検討することとし、「世界の平和博物館情報ネット」を立ち上げることを試みた。立命館大学国際平和ミュージアムの協力のもとで、ウェブサイト情報に基づき、各国の平和博物館の動向を検索できるCD-ROMの作成に取り組んでいる。目下、235件の入力が終わった。2011年5月にはバルセロナ(スペイン)で「第7回国際平和博物館会議」、2011年5月「IPRA」にて本研究の成果を発表し、さらに2012年11月の「IPRA」(於:三重大学)においては、ほぼ完成したCD-ROMを参加した内外の研究者や実戦者から高い評価を得ることができた。さらに充実した情報ネットワーク構築のために努力したいと考えているところである。この世界の平和博物館情報を検索できるウェブサイトを、立命館大学国際平和ミュージアムのホームページ上に立ち上げるべくその調整を図っている。本年度の目標であったアジア太平洋の平和博物館会議(ベトナム)は本国の都合により延期となるが、2012年8月の「韓国ノグンリ平和セミナー」およびベトナム平和博物館関係者との2014年開催予定の「第8階国際平和博物館会議」にむけた、アジア地域の平和博物館ネットワーキングに関する「研究会議」を無事ホーチミン市にて行うことができた。韓国、ベトナム以外に中国ロシアの平和博物館関係者及び、東南アジア諸国、インドやパキスタンなどの南アジアの平和博物館関係者も招聘し、本研究成果の発表とさらなるネットワーク構築のための準備を行っているところである。
著者
白木 琢磨 五十嵐 和彦
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

細胞外シグナル分子は膜結合型受容体を介したシグナル伝達に加え、その細胞内代謝物がリガンドとして働くにより直接PPARγを制御している。申請者自身のこれらの研究結果から、「膜型受容体と核内受容体のクロストーク」の解明を目指した。細胞内シグナルと、リガンドによる作用を時間的・空間的に分離し定量化するために、最大6つの転写制御について時間的な制御を視覚化するシステムを開発した。細胞内リン酸化シグナルによる核内受容体PPARγの活性制御を解析し、PPARγ蛋白質の安定化の変化と細胞内局在変化という、代謝物リガンドとは別の次元での制御機構でPPARgの活性調節を行っていることを明らかにした。
著者
中道 仁美
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

過疎地の地域再生については、活動を起こす・継続する基盤として、住民の意思疎通を図る集会が重視されねばならない。高齢化が進行した限界集落では、集会も開催できず、活性化への取り組みも頓挫する。高齢化した農業の補助労働としての外国人研修生は、今や欠かせないものとなりつつある。外国人研修生の母国での農業教育も重要であり、特に帰国後の研修生支援とともに、彼の地の農業者支援体制の構築が求められる。過疎地では女性起業に期待されているが、女性の起業への住民の理解は十分ではなく、それゆえ、女性起業が十分育成されないなどの課題が残る。
著者
風間 信隆 松田 健 清水 一之
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,近年のドイツの企業システムとコーポレート・ガバナンスの動向を検討し,その結果,1)1990年代以降,ドイツの株式市場が外国人機関投資家の株式保有の増加とともに変容し,株式市場による外部コントロールが増大してきたこと,2)「株主価値重視経営」(「選択と集中」によるリストラと短期的利益重視による企業価値の極大化)が経営者に支持されてきたが,これが逆に長期的視点に立つ能力構築を妨げるとともに,業績連動報酬による経営者の高額報酬と社会的格差の拡大に結び付くものとして批判されてきていること,3)1990年代末から2000年代初頭にかけてドイツ工業連盟(BDI)会長ロゴウスキーの「共同決定は歴史の誤り」発言に見られるような,労使共同決定批判が展開されてきたが,今日ではむしろ共同決定に対する再評価が起きていること,4)しかし,グローバル化に伴い,ドイツの伝統的企業システムを支える諸制度(共同決定や労使関係,株式市場,会社機関等)も大きく変化しており,これによってドイツの企業統治の在り方も進化を遂げていることを明らかにした。
著者
影山 悦子 吉田 豊 島津 美子
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、法隆寺・東大寺宝物に見られる「イラン文化」の実態を明らかにすることを目的とし、「イラン文化」=西アジアのササン朝ペルシアの文化という従来の捉え方を見直し、5世紀後半から6世紀前半に中央アジアを支配したエフタルや、ソグドの影響も及んでいることを、具体的な事例を挙げて証明することを試みた。中央アジアや中国で発見された図像資料を検討することにより、東大寺正倉院に伝わる大刀の佩刀方法にはエフタルの影響が認められることや、伎楽面の酔胡王のモデルが北朝期の中国のソグド人聚落の首領であることを示した。
著者
秋林 こずえ 宮城 晴美
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

米軍による性暴力の問題に取り組んできた基地・軍隊を許さない行動する女たちの会を沖縄フェミニズムの中核と位置付け、検討した。会は米軍が長期駐留する韓国や、米国本土、国連などで市民社会でのトランスナショナル・ネットワーク構築を目指す傾向が強くなってきている。そこでは新たな基地建設に抵抗する連帯とともに、基地の移設ではなく脱軍事化が追求されている。軍事占領下での米軍の性暴力については、沖縄県立公文書館で資料を見つけ、1945年以降の沖縄での米兵による性犯罪の年表を改訂した。国際的な平和構築政策に関しては、紛争下の性暴力が軍隊組織の問題という視点がさらに後退していることが明らかになった。
著者
松本 恭治
出版者
高崎健康福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

多くの地方都市で中心市街地の空洞化が進行している。既存マンションの足元の店舗も閉店・休業が多い。シャッター街、空き家群の中に新築の分譲マンションが建てられると市街地の再生を望む地域の人々は、これで活気が取り戻せるのではないかと淡い期待を持つ。しかし、期待を込められた新築マンションがたとえ完売しても、さして時間を置かずに低価格化し不良住宅化する懸念を抱かざるを得ない。一方目を郊外に転じると、市街化調整区域と隣接町村では官民が競って宅地造成と戸建て住宅建設に長く邁進してきた。大都市圏に比べて戸建ての敷地は広く価格も安い。住宅市場における分譲マンションの人気が低く、多数の住宅が賃貸住宅に転じている。20年経っても多くのマンションの修繕積立金は当初の低い金額に据え置いたままで大規模修繕を先送りしている。廃墟に等しいマンションも生まれた。群馬県では大都市圏より遅れて分譲マンション開発が進み、大都市圏より早く問題住宅化するが、個人資産の問題としてこれまで行政が積極的に対応したことはない。このような状況では健全な街づくりが困難である。そこで本研究は地方都市における分譲マンションが都市崩壊のキーワードとなるか、都市再生のキーワードとなるかを確認すべく実施した。願うべくは都市再生である。なお従来の分譲マンション研究の大半は大都市圏内で行われてきた。地方都市ではマンション戸数そのものが少ないだけでなくマンション研究者すら殆どいない。地方のマンション実態を明らかにすることはマンションと都市計画との関係を検証する機会となろう。群馬県における分譲マンションの状況について政府統計等の分析結果と現地確認等で得られた情報の分析結果を報告する。