著者
佐藤 信 河合 知子 久保田 のぞみ 佐藤 信
出版者
市立名寄短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

現在、日本の学校給食は、成長期の多くの国民が経験するところとなっており、その食習慣形成に大きな影響を与えている。近年では、地元産や国内産食材料を使用する取り組みがすすめられている。牛肉も例外ではなかったがく2001年9月に日本国内で初めて発生したBSE(牛海綿状脳症)牛の結果、学校給食の現場では使用自粛などの対応を余儀なくされた。本研究はこうした状況の下で、和牛産地と乳用種肉牛産地を対象として、2001年前後における学校給食の地元産食材料、とりわけ牛肉およびその加工品の使用実態を明らかにし、今後の地元産食材料導入にあたっての諸条件、課題を実証的に明らかにすることを目的とした。その結果、次の諸点が明らかとなった。1.BSE問題の発生後、全国の約60%の学校給食が、牛肉および牛肉加工品の使用を自粛するようになった。もともと、1996年のO-157問題を契機として、学校給食現場では食品安全対策を強化していたとそこで、BSE問題後も迅速な対応をとった。しかし、使用自粛については地域によって強弱があった。2.ブランド和牛で知られる岩手県M地域においては、BSE問題が発生した直後、農協や自治体、獣医の協力の下でいち早く安全宣言を出した。乳用種肉牛産地の北海道においても、牛肉やその加工品など国産への切り替えが行われたが、その度合いは他の県よりも小さかった。学校給食関係者と地域農業との継続的な結びつきがこうした対応をもたらした。3.これからの学校給食に関わる栄養士は、地元産食材料を利用するための、生産者や農・漁協等との交渉・調整能力等が必要であるとともに、現場で食品安全問題が発生した際に迅速に対応できる能力も必要である。
著者
井上 文夫
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

肥満児の身体活動量を増加させるため、学校での健康診断、健康教育の授業を利用した介入プログラムを実施し、身体計測値、血清脂質、脈波速度による動脈硬化測定、生活習慣調査をO 市の公立学校で3年間実施した。まず、小児における腹囲値、脈波速度の標準値を得た。介入プログラム実施後、肥満だけでなくやせの頻度も減少した。生活習慣は56%に改善がみられ、改善した例では肥満度、血清脂質、動脈硬化度とも改善する傾向が見られた。生活習慣では、食習慣や運動習慣のみでなく、睡眠習慣の重要性が確認された。肥満予防のための健康教育プログラムの実施は、肥満改善ばかりでなく、生活習慣全体を改善する機会となり、運動能力や学習効果にも良い影響を与えると考えられた。
著者
伊崎 昌伸 笹野 順司
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

理論変換効率が約 28%となる 1.3eV のバンドギャップを有する p-CuOと n-ZnO から構成される新規な太陽電池を電気化学的に形成するために,化学熱力学に立脚した溶液組成の設計,電気化学ヘテロエピタキシャル成長による高品質化ならびに光電変換機能を有するダイオード形成について検討した。電気化学に形成した-CuO 層上に SiO 層と ZnOを堆積させたダイオードが良好な整流性を示すと共に,0.43V の開放電圧などの光電変換機能を示した。
著者
梅内 幸信
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

平成14年度から最終年度である平成17年度までの研究実績は,以下の通りである。(平成14年度〜平成15年度)ホフマン文学、グリム童話、エンデ文学に関するこれまでの研究成果に基づき、ファンタジー文学に関する定義づけを試みた。ファンタジーに関するトドロフの古典的な定義を踏まえ、最近のアトベリーの定義を加味して、5つの観点から吟味し、現在の段階で最も妥当的定義づけを提出した。1.語源(無意識のもの・不可視のものを可視的にする)、2.機能(以下参照)、3.内容(童話的)、4.源(出発点はホフマンの『幻想作品集』1814-15、18末のイギリス・ゴシック小説)、5.物語の長さ(長編小説から短編小説まで、童話は除外される)。(平成16年度)この定義に基づき、ホフマン文学とエンデ文学における具体的な作品分析を通じ、それぞれの文学におけるファンタジーの特質を総括した。ファンタジー文学の重要な特徴は、童話的内容と、長編ないし短編までのその物語の長さである。この意味において、きわめて短い物語である童話は、ファンタジー文学から排除されるのである。しかし、グリム童話にもファンタジーは存在している。(平成17年度)グリム童話におけるファンタジーは、その歴史が示すように、ミクロコスモスを反映している。このファンタジーを考慮し、ファンタジー文学のもつ次のような3つの機能を提出した。1.ユートピアをめざす非現実的描写によって現実世界を止揚する。2.人類の未来社会における不安への心の準備をさせる。3.死に至る病である不安に対する免疫力をつける同種療法的効果をもつ。
著者
伊勢 芳夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

英領インドにおけるインド及び周辺地域への言語・文化政策を調査、およびアングロ・インディアン作家の小説を分析することにより、異文化に対するイギリス人の認識の特質を検証した。また、19世紀の人類学の著作を研究することで、人種主義に影響を与えた近代科学の特質や、白人優位的な世界観を明らかにした。上記の英領インドと、日本の「西洋」受容を調査することによって、西欧列強から直接支配を受けなかった国への「西洋」の影響を検証した。
著者
庄司 達也 山岸 郁子 中澤 弥 須藤 宏明 山口 直孝 平野 晶子 掛野 剛史 須藤 宏明 中沢 弥 平野 晶子 山口 直孝 和泉 司 杉山 欣也 松村 良
出版者
東京成徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

研究活動は、合計13回に及んだ勉強会の開催と、関西地方を中心とした実地踏査を2本の柱として展開した。また、本研究課題が対象とした改造社を取り上げ活動する他の研究グループとの連携を進め、情報交換や合同研究会の開催を行うなどした。これらにより、短期間に全国で斉に行われた宣伝活動の実態を広く把握することができ、改造社のみではない、他の出版社による同様の活動に対する広範な情報の収集とその分析の必要性を明らかにした。また、関連する資料の収集により、以後に反復される同種の出版企画についての考察を深めた。
著者
山田 浩之 斎藤 一郎 美島 健二 井上 裕子 小原 久実
出版者
鶴見大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

Superoxide dismutase(SOD)は、活性酸素種の一つであるスーパーオキシドを消去する抗酸化酵素である。本研究では、活性酸素種を介した唾液分泌機能障害におけるSODの予防的効果について検討したところ、唾液腺の分泌障害にはスーパーオキシドを介した機序が推察され、SODはスーパーオキシドを速やかに過酸化水素へ分解することにより唾液分泌機能障害に対し予防効果を有する可能性が示唆された。
著者
丸山 珪一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ルカーチは20世紀の世界的な思想家であり、日本でも多大の影響を受けてきたが、私たちはさらなる研究の出発点となるような、信頼に値するビブリオグラフィを持っていなかった。昨今の世界の大きな変化と新しくルカーチと取り組もうとする若い人たちの登場を念頭において言えば、正確なビブリオグラフィの必要性はますます高まっている。本課題はそれに応えようとするものである。彼のすべての著述についてその初出の現物に遡って確認・再確認することから始めなければならなかった。これはいくつもの国境を越えての難作業で、最終的に12の言語にまたがった。最難関のロシアの部分で歴史学者スティカリン氏の、イタリアの部分でハンガリーのイタリア思想研究者サボー氏の協力を得ることができ、この二年間の間にほとんどを終え、とりあえずしめくくりとして冊子にまとめた(項目1555、付録の定期刊行物索引とともに143ページ)。仕事の過程で、埋もれていたルカーチのいくつもの文献を発掘したことも後の研究にとって重要であろう。このビブリオグラフィに基づいて図書館を通じて間違いなくコピーを入手できるはずである。ただ公にして広く利用してもらうためには、一つにはなお残っている空白を埋めること(とりわけイタリアのインタヴュー)、いまひとつには文献相互の関係や多少とも内容への示唆をも含んだ注記などを工夫すべきと考えている。とくに日本の若い研究者を念頭にこのあと仕事を継続したい。それとともに、ビブリオグラフィの仕事は、文献という面からではあるが、ルカーチという思想家の全体を再考する機会でもあり、そのための少なからぬヒントをも得ることになった。とくに日本の思想界との関わりを焦点として全体像再考の仕事とも取り組むつもりである。
著者
吉田 勇
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1 平成の町村合併は各町村の入会権の調整にどのような影響を与えたかを検証するために、一の宮町・阿蘇町・波野村が合併した阿蘇市誕生のケースと、合併協議が行われながらも合併に至らなかった小国町・南小国町のケースを比較しながら調査研究した。2 阿蘇市のケースでは、一の宮町と阿蘇町では入会権をめぐる事情に違いがあった。最も大きな違いは、一の宮町には昭和の合併時に財産区が設置されていたが、阿蘇町には財産区は設置されていなかったことである。今回の合併に際しては、旧財産区はそのまま新市に引き継がれるが、新しい財産区は設置しないという方針が合意された。財産区は設置しないが、集落の入会権の使用・処分の権利関係については、実質的な変更が加えられなかった。阿蘇市は、入会原野の貸付についても分収についても、旧阿蘇町と牧野組合との旧来の配分割合をそのまま確認している。波野村の場合には、古くから草原は畑と一体的に個人分割的に利用されてきており、村有入会地がなかったために、今回の合併に向けた入会権の調整は必要ではなかった。3 小国町と南小国町のケースではこれまでの両町の入会政策に大きな違いがあった。小国町は1950年代に入会原野の払い下げ政策(近代化政策)を積極的に進め入会原野の経済的な高度利用(造林化)を目指したのに対して、南小国町は、入会地の集落による共同利用を尊重してきたことである。この政策の違いが、現在でも、南小国町の入会原野はほとんど町有地であるのに対して、小国町には共有地が多いことにうかがわれる。しかしながら、この違いは合併協議の過程では話題になったもようであるが、両町の合併協議を妨げたわけではないというのが関係者の証言であった。
著者
丹黒 章 宇山 攻 保坂 利男 清家 純一 山井 礼道 丹黒 章
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

食道癌術後、急性期(術後1週間)の栄養管理について臨床例について経静脈的栄養と経腸栄養を比較、検討したところ、術後合併症発症ならびにThl/Th2バランスに代表される免疫能には差を認めなかった。術前栄養投与に関する検証が必要であることが示唆された果実や樹皮に多く含まれるtnterpenoid(以後 ; TT)の抗腫瘍効果と抗癌剤との併用効果を食道癌cell line(yes-2)を用いたinvitroならびにin vivoで検討を行った。TTのうちbetulinic acid(BA)、ursolic acid(UA)、oleanolic acid(OA)について調べたところ、単剤のIC50はBAで13, 9μM、UAで33.3μM、OAで121.3μMで、BAが最も低く、OAが最も高かったさらに、抗癌剤(CDDP, 5-FU, CPT-11)との併用効果についても検討したところ、BAと5-FUでは相乗効果、BAとCPT-11、UAと5FUで相加効果を認め、supplementの併用投与は一部の組み合わせで、相乗、相加効果があり、抗癌剤減量の可能性が示唆された
著者
伊賀瀬 道也 三木 哲郎 田原 康玄
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

大腿筋肉量を測定すれば断面積のみであっても筋肉量の推定が可能になり、高齢者のバランスがわかる。このことから転倒のしやすさにつながる指標であることが明らかになった。つまり比較的簡便にかつ非侵襲的なCT検査を行うことで大腿筋肉量の変化が高齢者のQOLを評価しうる指標である。大腿筋肉量を維持・増加させることが骨折の予防に繋がること、高齢者の寝たきり予防につなげていくことができる。
著者
久田 由紀子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ゲリラ豪雨の発生特性を明らかにするため,福岡都市圏に 14 個の雨量計を設置し観測を行い,次のことが明らかとなった.福岡都市圏においては,ゲリラ豪雨は午後 1~2 時の時間帯,および午後 5 時~6 時の時間帯に多く発生する.一地点での降雨持続時間はおよそ 20~60 分であり,10 分間雨量は,平均で 10mm 程度,最大で 40mm ほどに達した.降雨の発生地点は,福岡平野南部であり,降雨帯はそこから北北東方向に進むパターンと,北西方向に進むパターンの 2 種に大別できた.
著者
長嶋 豊 志久 修 真部 広紀
出版者
佐世保工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

近年の気候変動の影響により、水産資源の枯渇、海洋環境汚染の拡大等の問題が一層深刻になっており、海洋調査の必要性は高まるばかりである。本研究では、自律型海中ロボットと遠隔操縦型海中ロボットのハイブリッド化をめざして研究に取組んだ。まず、表層域では無線式(Wireless Remotely Operated Vehicle、以下WROVと略す。)、浅海域では光ケーブル式(Untethered Remotely Operated Vehicle、以下UROVと略す。)として使い分けることのできるハイブリッド型海中ロボットを開発した。UROVとして使用する場合には小型ブイを使用し、海中ロボットの機動性を向上させた。(1)WROV及びUROV用にPSoCマイコンを用いて、電子コンパス、GPS、深度、ソナーからのセンサ信号を統合、抽出し操縦に必要なデータを伝送するコンパクトな専用コントローラを開発した。(2)海中ロボット運用時の操縦者の負担軽減を図るために、位置、深度、針路等のセンサデータを見ながら操縦できるような操縦支援ソフトを開発し、実海域で実証した。(3)可変ベクトルプロペラの可変翼を従来のステンレス製矩形型から樹脂製7角形翼へ改善し、プロペラ効率を約6%向上することができた。(4)海中ロボットの脚部に取り付けて底質の泥や砂を自動的に取り込む採泥器を開発した。(5)河口表層域の海洋環境データや浅海域での水中遺跡調査で性能評価を行い良好な結果を得た。(6)光ケーブルの伸張具合をセンサで感知して、ケーブルを自動的に繰出し・巻取り可能な小形ブイを開発した。(7)FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いた小形測距装置を開発した。(8)ROVとAUV(Autonomous Underwater Vehicle)とのハイブリッド化に備えた制御ソフトウェアの開発を行った。
著者
孫 正明 橋本 等
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

各種鉛黄銅合金を切削等の加工表面から室温において鉛ウィスカーの自然発生現象が確認された。加工面に残留応力が確認されたが、ウィスカーの発生状況との関連性が薄い。熱分析により銅合金には加熱中に鉛の融解吸熱ピークが確認されたが、冷却中に明白な放熱ピークが見られなく、鉛は過冷却状態に存在し、ウィスカーの発生原因になっている可能性を示唆している。長時間60℃の空気に晒されても、ウィスカーの発生が影響されなかった。
著者
西嶋 康一 高野 健二 平井 伸英
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

わが国ではmethamphetamine (METH)などのアンフェタミン類の流行が社会問題となっている。その過量投与は高熱を呈し死亡の危険があり、またその作用機序は十分に解明されていないため、本研究を実施した。その結果、METH 10 mg/kg の投与によりラットは42℃以上の高熱を呈した。Risperidone の前投与、後投与群ではMETH による体温上昇は有意に抑制された。5-HT_<2A> 受容体拮抗薬の前投与、後投与はMETH による高体温を有意に抑制したが、5-HT_<2B/2C>受容体拮抗薬の前投与はMETH による高体温を抑制しなかった。また、5-HT_<1A> 受容体拮抗薬もMETH による高体温は抑制しなかった。D1 受容体拮抗薬は前投与、METH による高体温を有意に抑制したが、D2受容体拮抗薬の前投与はMETHによる高体温を抑制しなかった。METHと、同じアンフェタミン類であるMDMA の投与により、視床下部のglutamate 投与300 分後から上昇した。それに対して、risperidone の前投与はglutamate の後半の上昇を有意に抑制した。ラット視床下部の一酸化窒素代謝物(NO)-はMETH を投与すると徐々に増加し基礎値の約180%まで増加したが、risperidone を前投与するとその上昇は有意に抑制された。またMETH はMDMA との合剤で使用されることが多く、以前我々はrisperidone はMDMA による高体温を抑制したことを報告した。これらを考え合わせるとrisperidone はMETH による体温上昇に対し臨床上有効な治療薬になると考えられる。その作用機序は、5-HT_<2A> 受容体、D_1受容体拮抗薬作用によるものと考えられた。またMETH によるNO, glutamate などのフリーラジカル上昇を抑制することも体温上昇を抑制している機構である可能性が示唆された
著者
中島 淳 垣見 和宏 村川 知弘 深見 武史 倉知 慎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

【目的】治療困難・予後不良な肺癌再発例に対して自己活性化γδ-T 細胞(γδT)による免疫療法を試み、安全性および有効性について明らかにする。【対象と方法】原発性肺癌、非小細胞肺癌治療後再発例、本研究に同意された方。評価可能病変を有し、除外基準を持たないことを条件とした。【結果】腺癌8例・扁平上皮癌1例・大細胞癌1例計10例を対象とした。γδTは3-12回投与された(中央値6回)。全有害事象はGrade1のべ3回、Grade3のべ2回(細菌性肺炎・放射線肺炎)であった。いずれもγδT 治療と関連は無かった。投与後240-850日(中央値445日)観察され、最終観察時生存6、死亡4例であった。γδT投与中死亡は見られなかった。死因はいずれも肺癌再発増悪であった。RECICS 判定では5回投与後CR/PR/SD/PD=0/0/5/4であった。後観察期間では0/0/3/5判定不能2であった。CR+PR+SDの割合を病勢コントロール率とすると5回投与後では50%,後観察期間では30%であった。投与後末梢血中のVγ9-γδT 細胞数は次第に増加傾向にあった。FACT-BRM total score の経時的測定においてはGrade 3有害事象症例をのぞき、投与期間中はスコア値が安定ないし上昇し、治療期間中のQOLは良好に保たれた。【考察】非小細胞肺癌表面に過剰発現するMICA/B0を認識するNKG2DをγδTは発現しており、isopentenyl pyrophosphate をTCR/CD3のリガンドとして認識し、癌細胞に接触・破壊する。体内に多量の自己γδT を投与した場合の安全性ならびに有効性について明らかにしたが、さらに今後はこの細胞障害活性をより効果的に体内で発現させるための方策について検討を進めたい。
著者
佐野 好則 MALCOLM Davies
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究においてはヨーロッパ文学中の冥界場面描写の観点から重要な『オデュッセイア』、『アエネーイス』、『神曲』、『失楽園』を主に取り上げ、各作品の冥界場面を比較作品論的観点から先行作品のモティーフの受容と改変に特に注目して分析した。さらに比較文化論的観点から、それぞれの作品の冥界場面描写の特徴を、文化的、思想的、宗教的、政治的背景との結びつきに注目して検討した。
著者
北脇 秀敏 藤野 毅 押谷 一 藤田 賢二 御船 直人
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.廃棄物の鉄道輸送状況調査国内・国外の廃棄物の鉄道輸送状況調査を行い、鉄道輸送における技術的・制度的問題点を検討した。2.廃棄物の広域輸送の経済学的視点からの検討これまでの廃棄物処理の基本的な考え方は排出者費用負担の原則を踏まえて、排出域内処理を基本とされてきた。本研究では経済学的な視点から広域処理の問題点を示すとともに、地域計画論の視点から広域輸送方法の選択および処理施設の立地についても基本的な考え方を整理した。3.大規模処分場が環境に与える影響の検討廃棄物によって大規模埋め立てが生じた場合、従来の舗装では微気候が変化し、温暖化がもたらされるが、保水性ブロックや舗装を適用すると自然の土壌と同様な熱環境を維持することや、現在の都市表面が修復された場合のエネルギー効果についても明らかにした。この他、様々な利用法の1つとして家屋の屋根材としての適用場合の効果についても示した。4.わが国の廃棄物鉄道広域輸送のあるべき姿の検討鉄道による廃棄物の広域輸送が健康と環境の保全に果たす役割を整理し、鉄道広域輸送のあるべき姿を検討した。
著者
片山 博昭 星 正治 グラノフスカヤ エヴィゲーニャ シンカレフ セルゲイ アプサリコフ カズベック グロシェ ベルン 武市 宣雄
出版者
(財)放射線影響研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究協力者であるロシア連邦医学生物庁ブルナシヤン医学生物物理学センター・グラノフスカヤ研究員と線量推定のためのデータについて協議を行い、1949年1月1日から1962年12月31日までの核実験場周辺住民(14, 826人)の居住歴・職歴等の情報を疫学解析用データベースから抽出しグラノフスカヤ研究員に提供した。グラノフスカヤ研究員はこのデータを用いて個々の線量推定を開始した。2012年1月にグラノフスカヤ研究員を広島に招聘し、線量推定方式に関して再度打ち合わせを行った。また、広島大学主催の国際シンポジウムで疫学解析用データベースから抽出した被曝者の個人被曝線量推定に関してグラノフスカヤ研究員が発表を行った。
著者
金子 毅
出版者
東京基督教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、まず米国における技術文化スローガン「safety-first」の構築過程を解析し、そこに内在する精神性と、その輸入概念としての日本語の「安全第一」活動との相違を明示することにあり、具体的には自動車工業都市デトロイトの成立事情とプロテスタント教会及びこれを取り巻く信仰の変質の問題を論じる。考察の軸としたのは信者である事業経営者と牧師との間に生じた、信仰をめぐる葛藤とその局面である。具体的な考察対象としたのは、フォード社における信仰実践に与した人物として、S.S.マーキュス及び着任間もない若きラインホルド・ニーバーである。そこから明らかとなったのは信者である経営者の意図に沿った道徳へと信仰が左右され、さらに従業員の私的生活をも包摂する「奉仕」を容認する「経営宗教」による独自の経営倫理意識の構築と、これによる「フォーディズム」という生産管理の実態であった。そこには時代をめぐる二つの社会的要因が作用している。第一に、労働を取り巻くカトリックを含む移民と禁酒運動による米国市民化という教会外部からの要因である。第二に、教会と信徒教育を取り巻く内的要因であり、これは聖書に依拠したテキスト化に動機付けられた教育の変質を示唆する。以上より、プロテスタンティズムに内在する資本主義の精神性という仮説に依拠せずに労働をめぐる「奉仕」観の変質を捉え、そこから生じた「safety」という理念へと肉迫することが可能となる。「フォーディズム」成立の時代のもとでは、聖書における主体的な「safety」の構えは失われ、空洞化されたスローガン「safety-first」と化したといえよう。