著者
山田 光男 木下 宗七
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

我が国企業の中国での直接投資・現地生産が、日中経済の産業と貿易にどのような影響があるか、中国地域経済の特徴を考慮しながら、日中韓計量経済モデルや日中産業連関表の枠組みにより分析を行った。機械部門での日本企業の中国への進出は相互貿易を高め、輸出特化度を低下させてきた。日本から中国への生産シフトは、電気機械・一般機械部門の方が自動車部門よりも日本への影響が少ない。また、中国に於ける日系企業の省エネ活動は、他の企業にも普及しなければ中国全体の環境改善にはつながりにくい。
著者
東山 京子
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、近代統治史料のなかで本府・法院・監獄・軍隊・専売・企業・地方州庁(街庄)・評議会などのあらゆる機関を持った小政府組織として存在していた台湾の統治機関である台湾総督府の行政文書を対象としたものである。現存する台湾総督府文書は、文書課において管理される過程で、行政的に体系的に保存された文書群と、編綴される前または廃棄される前に接収された現用のままの文書群とで構成されていることから、当該文書はこの二つの異なる文書群が保存された、通常の文書管理制度では類を見ない文書形態が残されている。このように本研究では、日本の近代を担ってきた行政組織の文書であり、現存する希少で豊富な価値を持つ歴史資料である台湾総督府文書を、近代公文書学的視点からその構造を明らかにしようとするものである。
著者
栂 正行
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、市民の近代化の過程を映し出す指標としてのイギリス社会小説に個人の近代化と社会の近代化の過程が見いだしうるように、同様の過程がインド英語小説のなかでどのように展開したかを検証した。かつての宗主国大英帝国から独立し、英語による社会小説を排出した旧植民地でも、イングランドの社会小説のたどった道を反芻するかのような現象が起きた。ナイポール研究、オクリ研究、シン研究を通じ、かつての英国最大の植民地インドにおいて近代化がいかに表象されたかを明らかにした。
著者
尾入 正哲 岸田 孝弥 向井 希宏
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

高齢者の交通モビリティを高めるために、高齢ドライバーの運転実態の分析、ナビゲーション時の方向感覚の検討、新たな交通安全教育の開発といった複数の観点から研究を行った。高齢ドライバーや高齢自転車運転者については、一時停止や確認行動を促進する工夫が必要であることが示された。またグループワークの手法を用いた交通安全教育が高齢者にとって有効であることが確認された。
著者
野口 典子
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

東アジア包摂型福祉社会開発にむけてのソーシャルケアワークの実践方法と福祉専門職養成、とくに都市部の高齢者に生起している新たな「孤立」問題を追究する。地域(メゾレベル)で問題を共有化し、高齢者自身のエンパワーメントを軸に、地域の諸活動との連携を通じ、ニーズ発見システム、福祉専門職との協働によるソーシャルケアワーク実践の開発を意図している。
著者
近藤 健児 藪内 繁己
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題の一つのまとめとして、近藤と藪内の共同研究では、環境汚染を引き起こす工業材生産部門に汚染抑制装置を提供する産業部門が存在するという拡張された小国CopelandandTaylorモデルに、都市部門の最低賃金と失業を導入し、環境税や賃金政策、外国人労働の受け入れなどの経済効果について分析を行った。とりわけ労働受け入れは、一定の条件のもとでは、環境問題、失業問題、国内の経済厚生いずれにも好影響をもたらしうるという注目すべき結論が得られた。この共同研究はJournalofInternationalTradeandEconomicDevelopment(2012)に掲載された。
著者
宮川 正弘 巽 久行 村井 保之
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

視覚障がい者の机上作業を支援するために,対象物のクロックポジション位置と手の速度を音で知らせる腕の誘導システムを提案した。手および机上の物体位置の認識は光景分析を避け,手や物に貼付されたマーカーと光学的位置追跡装置を用いて実時間で認識した。視覚障がい者の手の誘導は作業空間の認知地図創生を支援するためのもので,距離場空間モデルに基づいて得られた空間状況を積極的に提示した。手の誘導速度をファジィ制御で決定すること,ニューラルネット等による混雑度を提示することは有効であった。
著者
勝原 裕美子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.研究目的:看護管理者が直面する倫理課題を明らかにし、それらの倫理課題にどの程度対処しているのかを明らかにすること。2.研究方法:全国のランダムに選択した500病院を対象とし、同意の得られた140(28%)病院の看護師長総勢1039人を対象に全国調査を実施。472名(46%)から回答が得られた。質問紙は6分野(患者の療養環壌、職員の労働環境、サービスの質、人間関係、臨床教育、専門職としてのモラル)、39項目からなり、それぞれA「自分の管理する病棟で生じる頻度」、B「自分の管理する部署で生じた時の師長としての対応の程度」、C「対応しても不満足が残る程度」、D「自分の勤める病院内で見聞きする程度」の4側面を4段階のライカートスケールにてきくという構成である。3.研究結果:1)対象者の内訳は、女性450名、男性22名。平均年齢48.5才。師長の平均経験年数は8.8年であった。2)セクションAで平均点の高かったのは、1位から順に「人的資源が不足している」「仕事がどのように評価されているのかが不透明である」「サービス残業が行われている」であり、いずれも職員の労働環境に関するものが上位であった。逆に平均点の低い順は、「職員の間で暴力行為がある」「患者から内緒にして欲しいと頼まれた内容を、患者への配慮なしに他言する」「患者・家族から暴力行為がある」であった。3)セクションA, B, C, Dごとに平均点の高い順に並び替え、順位相関を検定したところ、AとC, AとDには非常に高い相関がみられた。また、AとB、BとCには逆相関がみられた。このことより、師長が自分の管理する部署でよく起きていると認知している倫理課題は病院でもよく起きていると認知しており、そのことにできるだけ対処しようとしているが、対処しても不満が残っているということが明らかになった。
著者
加藤 宏之 橋本 律夫 樋渡 正夫
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

脳卒中後の運動機能回復の機序を解明するために、fMRIと拡散テンソル・トラクトグラフィーによる錐体路の描出の同時計測を行った。脳卒中後の脳機能の再構築は動的であり、片麻痺の回復は運動ネットワークの損傷の程度に応じて、可逆性障害からの回復と、ネットワークの代償、動員、再構築を駆使して最良の運動機能の回復を得るための機構が存在する。この変化は脳卒中発症後の1、2か月以内に見られ、機能回復の臨界期の存在を示唆する。
著者
尾形 雅君 伊藤 恒敏 松谷 隆治
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

抗CD3抗体を生体マウス腹腔に投与するin vivo実験系を用いて、小腸絨毛上皮細胞にDNA断片化が誘導され、さらにその後核内の損傷部位にDNA修復関連分子が集積・動員されること我々は免疫組織化学的に観察した。DNA断片化を検出するTUNEL 法では、一旦断片化したDNAが抗体投与後60分以内に迅速に修復されることを確認した。DNA断片化それ自体だけでは細胞死を意味せず、DNA 断片化後にも絨毛上皮細胞は生きてDNAを修復することが判明した。DNA断片化はそれのみでは細胞死の徴候ではないことが明らかとなった。
著者
福良 薫
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

身体障害を抱えた脳卒中患者の生活の再構築を支援するために、すでに自宅退院している患者にどのように生活を立て直していったのか聞き取った結果、他者に自分の心情を説明しながら一度見失った自分の将来を立て直していた。そこで患者が自分の身体状況と折り合いをつけて生活できるよう、その時々の思いを語る機会を提供する介入手続きを作成し介入した。この看護介入は脳卒中患者の新たな生活の見通しを促進していた。
著者
豊岡 利正
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

指定薬物の構造は、フェネチルアミン系、トリプタミン系、ピペラジン系に大別される。初めに比較的安価な装置を用いた指定薬物の一斉分析法の開発を目的として、酸化還元反応を利用した電気化学検出法を開発した。次に、蛍光標識試薬で誘導体化後、HPLCで分離し、質量分析計で検出した。本法は、蛍光標識しているため選択性が向上し、また、質量分析計で検出しているため、高感度で定量できるうえ、微量の未知化合物の定性分析を行うことができ優れた分析法となった。これらの分析法を用いて、市場に出回っていた各種形態の試料を分析し、薬物を特定しその含有量を測定することができた。さらに、フェネチルアミン系乱用薬物を中心とする違法ドラッグ成分のキラル誘導体化法を利用した光学異性体分離法および迅速かつ簡便な一斉分析法の開発を実施した。12種類のフェネチルアミン系違法ドラッグ成分の光学異性体が良好に分離された。本法により、過去に流通していた製品中の分析に適用したところ、フェネチルアミン系乱用薬物成分の各エナンチオマー成分を完全に分離定量できた。
著者
鹿毛 哲郎 大塚 友彦 小池 清之 柚賀 正光 青木 宏之
出版者
東京工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

東京工業高等専門学校では、プログラマブル・ロジック・デバイスであるFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いたHDL論理回路設計の教育に取り組んでいる。FPGAを用いると、HDL設計した論理回路を実装して、その場で論理動作を検証・確認することができる。本報告では、東京高専電子工学科4年生の電子工学実験で行ったHDL設計の導入の実習実験、専攻科1年生に対する電気電子工学特別演習、卒業研究において組み込みプロセッサを使ったシステムLSIの試作開発の取り組みについて報告する。
著者
白井 英俊 白井 賢一郎 有田 節子
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本語の談話を主たる題材として、談話理解、特に対話における情報のやりとりに関する理論を構築することと、計算機と人間との対話のモデルの構築を目的とした。理論的な枠組はSDRT理論(分節談話表示理論)のアイデアに基づきながら、言語学的な理論研究と、計算言語学的な応用研究の両面からアプローチした。日本語に特化してSDRT理論の提唱する談話関係を拡充し、談話構造の記述の可能性を明らかにした。ツィッターのような短い談話には特に有効であることが示唆された。
著者
南 優子 鈴木 貴 角川 陽一郎 大内 憲明 立野 紘雄 多田 寛
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

閉経後乳癌62名の血中・乳腺組織中ホルモン濃度と乳がんリスク要因との関連を解析した。ホルモンレセプター陽性の場合、エストラジオール(E2)の組織中濃度は血中濃度の43.7倍、陰性では14.5倍。また、ホルモンレセプター陽性では「授乳歴あり」で組織中E2濃度が高くなる傾向が認められた(p=0.01)。これらよりホルモンレセプター陽性乳癌組織内ではE2が生合成または血中から集積され、その機序に授乳歴が関与している可能性が示唆された。
著者
早坂 菊子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

専門家診断の実態から予防という観点で、近親者に吃音者がいる、あるいは両親、そのどちらかが吃音者である家庭を早期に抽出し、パンフレット等で、正しい吃音への対応を発吃前に知らせることで、吃音の発現、進展を防止できるのではないかと考えた。そこで1歳半検診において、近親者に吃音者がいるかどうかの調査を行う。さらに、いると答えた家庭には予防の事項が書かれているパンフレットを送付し、正しい知識の啓蒙を行う。また、2ヶ月おきに各家庭から日常場面での言語表出を録音したテープを送ってもらう。調査は茨城県内の保健所13箇所である。方法は、主に調査者が調査用紙を母親に配付するという方法をとったが、遠方の場合は保健所に配付、回収を依頼する。回収数936名中ありと答えたもの32名、3.4%であり、男子17名、女子15名であった。1親等6名、2親等21名、3親等以上8名であった。住所を明記した者が11名であり、彼等にパンフレットを送付し、必要以上に吃音を回避しないように、出現してもあわてないように指導をおこなった。言語症状は、溝上(1997)を参考とした。1999年6月までは症状はあらわれなかったが、2000年2月に2人の子供に症状があらわれたという連絡がはいった。新たにパンフレットをおくり、吃りはじめた子供への対応を教示した。現在、追跡調査中である。
著者
阿江 通良 藤井 範久
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,小学1年生から6年生までの児童284名(男子141名,女子143名)の歩行動作の計測を行い動作データを収集した.得られたデータをもとに小学生の歩行動作の標準的動作パターンを作成した.また青年および高齢者の歩行動作と比較することにより,小学生の歩行動作の特徴を明らかにした.1.小学生の歩行動作の特徴歩行速度,ステップ長,ステップ頻度に関しては,以下の特徴が見られた。(1)学年とともに歩行速度・ステップ長,歩行比が大きくなり,ステップ頻度は小さくなった.また男子の方が女子より歩行比が大きく,ステップ頻度が小さかった.(2)歩行パターンは,学年とともにステップ頻度依存からステップ長依存に変わり,小学生以降さらにステップ長に依存していくと考えられる.また男子の方が女子よりステップ長に依存していた.また、動作に関しては,以下のような特徴が見られた.(1)支持期の股関節は男子の方が女子より伸展しており,これは体幹が起きており,R-on時の大腿の後傾が小さく,L-on時の前傾が大きいためであった.(2)男子より女子の方が膝関節,下腿および足の動作範囲が大きかった.2.小学生の歩行動作に関するデータベースの構築ステップ長,ステップ頻度,歩行速度,歩行比(ステップ長/ステップ頻度),kinematics(身体重心の軌跡,関節および部分角度など),kinetics(回復脚の関節トルクおよび関節トルクパワー)などを算出し,学年,性別に着目してまとめた.そして,身体各部の2次元座標をもとに標準的動作を学年,性別ごとに作成し,stick picturesで表示できるようにした.
著者
宮島 大一郎
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

観賞植物類においては主に花が育種の対象になり生殖が影響を受けている場合が多い.このことよりビンカ,パンジー,プリムラ・ポリアンサについて植物体構造変化による種子生産栽培を試みた.これらの生殖生態の解明を行った結果,いずれの植物種もミツバチが受粉媒介する典型的な植物と異なった生殖における生態を持っており,また受粉媒介昆虫の確保がいずれも難しいことがわかった.これらの植物において開花や種子稔実の負担を調べるためつぼみを摘除,開花のみさせる,あるいは人工授粉により全ての花を受粉させることにより種子生産量,植物体の生育を比較した.その結果,つぼみ摘除はいずれの植物においてもresource生産構造の生育を促進した.受粉後の花弁摘除はプリムラにおいてはresource消費軽減の有効な方法と考えられた.一方パンジーでは受精の成功の有無に関わらずほぼ枯れるまでの長期間に渉って受粉受精の能力があるため花弁摘除は昆虫訪花を排除して逆効果になることがわかった.いずれの植物においても花弁摘除がresource生産構造の遮光の軽減になるかどうかは明らかで無かった.ビンカにおいては開花の負担は小さく,また花によるresource生産構造への遮光の影響も小さかった.ビンカにおいては訪花昆虫の種子生産への寄与が大きく,また能動的自花受粉のメカニズムにより種子稔実における問題は小さく収穫労力の改善が必要と思われた.いずれの植物についても初期につぼみ摘除をする方法を試みた結果,つぼみ摘除終了後大きく肥大したresource生産構造に多くの花が集中して咲くことがわかり,受粉,収穫労力の集中化の点で有効な方法と考えられた.
著者
山木 朝彦 井上 由佳 塚田 美紀
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研修の機会などを通じた美術にたいする教師への教育と学校との連携という観点から俯瞰したとき、テイト・ギャラリーの教育普及活動全般が非常に質の高い内容を誇っていることを調査によって確認した。さらに、学校と連携して行われた実践的な教育プログラムであるバーバル・アイズ(Verbal Eyes)というプロジェクトの実施の方法と教育的意義の両面について、学芸員・教師・アーティストなど主要な関係者から聞き取り調査を行い、美術教育における美術館利用のあり方や表現活動と鑑賞活動を有機的に結びつける手法、そして、アーティストを媒介にした現代の美術の動向を学校に伝達する方法を明らかにした。
著者
杉村 孝夫 日高 貢一郎 二階堂 整 松田 美香
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

50年前20年前の大分県方言談話資料(1次2次とも実施したのは24地点)に加え、本研究では大分県内13地点の談話を収録した。それらは、少年層・青年層・高年層の3世代の男女1組の最大8つの場面設定の会話と自由会話からなる。50年間を通して同じ年代設定、同じ場面設定の談話を3回収録したことになる。これらの談話資料を比較し、文末助詞の抑揚と機能、辞去の場面の分析など50年間にわたる言語生活の変容を解明した。