著者
目 義雄
出版者
国立研究開発法人物質・材料研究機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ユビキタス元素のみからなるTi-Al(Si)-C(N)系MAX相を対象に配向積層体を作製し、強度、靭性の優れた材料系を提示することを目的とした。代表的なMAX相炭化物であるTi3SiC2およびAl2O3を添加したTi3SiC2の配向体を強磁場中コロイド成形およびパルス通電加熱により作製し、配向体化およびをAl2O3添加により強度・靱性は向上することを明らかにした。また、Ti2AlNについても配向化により、強度・靱性は向上し、摩耗特性も向上した。さらに、従来MAX相のXがBでも熱力学的計算により安定相が存在すること、MAX相の相関元素が溶出したMxenes2次元化合物の特性の可能性を示した。
著者
福満 正博 古屋 昭弘
出版者
明治大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、研究分担者で中国語学の専門家古屋昭弘氏の助言を受けながら行われた。中国近世の戯曲小説はその原文に、独特の俗字・異体字がよく使われている。本研究はこの点に注目して、各作品ごとに俗字・異体字の字形を示す索引の作成を主な目的とした。本研究では7種類の作品の索引を作った。近世の戯曲小説には、文言小説・平話・詩話・説唱詞話・話本・諸宮調・元刊本雑劇・南戯等のジャンルに分けられる。本研究では、これらすべてのジャンルにわたり一つずつ作品を選び索引を作成した。また、異体字を正確に読むための作品研究が必要があったので、関連論文を9本書き、国際学会で2回発表をし、7地点で関連する地域を調査をした。
著者
市瀬 浩志
出版者
武蔵野大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

本研究は、多様な生理活性物質の生産者として放線菌に注目し、代表的ポリケタイド二次代謝産物アクノロジン(ACT)を取り上げ、その生合成に必要な20段階の酵素反応を試験管内で完全再構成することを基盤とする。諸反応中には、単機能型縮合酵素による反復的炭素鎖構築反応、酵素反応中間体の支持タンパク質からの遊離機構および基本骨格修飾反応における酵素基質認識、単機能型酵素による多段階反応の制等が含まれる。本研究では、ACT生合成再構成系を材料として、酵素学的解析、各種機器分析を用いた酵素反応の精密解析、タンパクモデリング法を含む情報科学的解析を駆使した上記問題の網羅的解明を目的とする。本年度の研究計画として、ACT基本骨格形成反応(反復的炭素鎖構築反応)の再構成系の構築を設定し、以下の成果を得た。ACTの基本骨格形成に必須のタンパク群、すなわちActtI-ORF1(ケト縮合酵素α)、ActII-ORF2(ケト縮合酵素β)、ActI-ORF3(アシルキャリアタンパク)、ActIII(ケト還元酵素)、sfp(フォスホパンテニルトランスフェラーゼ)、fabD(アシルトランスフェラーゼ)の発現を放線菌および大腸菌の宿主を用いて実施し、組換精製タンパクとして調製した。これらのタンパクを用い、マロニルCoAを基質としたin Vitroでの生合成反応の再構築を試みたところ、7段階のケト縮合反応を経て生成するオクタケタイド鎖の閉環生成物であるSEK4/SEK4bとともにオクタケタイド鎖の炭素9位還元後の閉鎖生成物であるmutactinの生成がHPLCおよびLC/MSで確認された。この結果は、ACT生合成に関わる炭素骨格形成反応に関わる単機能縮合酵素による反復的炭素鎖構築反応を再現したものであり、本年度の研究計画の一部を達成することができた。
著者
甲斐 広文
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

温熱療法関連の研究から, 電流刺激が生体に与える作用についての研究に着手し, パルス幅(持続時間: 0.1ms) を有する短形波の微弱電流には, PI3K-AKT 経路の活性増強効果が認められること,さらに微弱電流がユビキチン/プロテアソーム経路の阻害効果を有していることを見出した(PLoS ONE 2008, 2012; J. Pharmacol. Sci. 2008,2010;Int.J.Hyperthermia 2009; J.Surg.Res. 2009 等で発表). 一般に,細胞膜は電気的抵抗が高いために,細胞内のシグナル分子に影響することはあり得ないことから,細胞の表層を流れる電流がどのようにして細胞内に刺激を伝えるのか, これまでの細胞生物学的アプローチの経験から(EMBO J. 2007; J.Biol.Chem. 2009; Mol.Cell.Biol. 2008; Mol.Cell 2012 など), 様々な角度から微弱電流が生体に与える効果を科学的に検証してきた. その結果, 持続パルス時間が0.1 ミリ秒の電流に対して何らかの受容体が存在すること, ラフトの関与があること等を明らかにした.
著者
金谷 健一 菅谷 保之
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

画像データからの高精度な幾何学的な推定(直線や楕円の当てはめ,複数画像間の対応の関係式の計算)には従来から最尤推定が用いられていたが,それより精度が高い「超精度くりこみ法」を導出し,さまざまな実際的な問題に応用した.同時に最尤推定解を補正する「超精度補正」の精密化を行い,同程度の精度が達成できることを実証した.また未知数間に拘束条件がある場合にも最適な推定ができる「拡張 FNS 法」の新しい定式化を示し,東日本大地震の GPS による地盤変形データの解析に適用した
著者
伊藤 克治 宮崎 義信 原田 雅章 長澤 五十六
出版者
福岡教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

新学習指導要領の化学的領域では,微視的である粒子の挙動と巨視的である物質の状態や化学変化を結びつけた理解が一層重要となった。そこで本研究は,児童生徒の物質概念育成を図るために,物質を微視的に捉えた上でイメージ化し,巨視的現象として理解するための教材開発を行った。このために,有機化学分野,物理化学分野,分析化学分野,無機化学分野において粒子をイメージ化しやすい教材の開発を行うとともに,児童生徒向けの実験講座や教員研修,本学の大学生対象の化学実験の授業において実践し,評価を行った。
著者
水之江 郁子
出版者
共立女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

カトリック国アイルランドでは、学校教育にも教会が様々に関与し、強い影響を及ぼしてきた。20世紀初頭のイギリスに対する抵抗を経て、勝ち得た共和国においても、女性の生き方に制約や抑圧を加える面が大きかった。しかし、一方でイギリスに比べても早い時期に男性と対等な高等教育を受け、混乱期に立ち上がり、強く戦った女性たちも少なくない。その中の著名な1人の一族で、日本では閉鎖的な印象を与えてきた女子修道会運営の中等教育の場に入って、社会正義と公正さを大切に、闊達な生き方で周囲を魅了したシスターシーヒーの女子教育への貢献などを理解し、本来修道会が目指す外部社会に対しても開かれた考え方を認識させられた。
著者
亀山 充隆
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

細粒度ダイナミックリコンフィギャラブルVLSIの小型化,高性能化,低電力化のため,多値Xネット,マイクロパケット転送方式,多値電流モード回路技術,不揮発ロジックなどを駆使したアーキテクチャを検討した.これにより,メモリ・演算部の転送に伴う遅延や消費電力の減少やコンフィグレーション/コントロールメモリサイズの減少を達成することができた.さらに,より少ないハードウェアリソースにより任意の論理関数を実現でき,マルチプレクサを用いたラッチ機能を活用することにより記憶要素としても動作できるという特長を有する,2入力マルチプレクサを構成要素とする新しいセル構成も提案することができた.
著者
秋山 学 秋山 佳奈子
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

慈雲の『法華陀羅尼略解』には唯識学的注記が認められる.彼は『雙龍大和上垂示』において,唯識は八識を説くが,密教では「菴摩羅識」をも説くと述べる.慈雲は,天御中主尊が菴摩羅識に当たるとするが,この尊は高天原の神であり,彼の『神儒偶談』には「高天原虚空観」が述べられる.「菴摩羅識」は法界体性智に当たるが,『論語』15-42には,孔子が瞽者を敬ったとある.孔子は瞽者を儒教尚古主義の体現者と認識していたが,瞽者は眼識をも欠くため,彼らの生は「菴摩羅識」に基づく.こうして慈雲は,儒教尚古主義と「高天原虚空観」「法界体性智」に通底する地平,つまり儒・仏・神・密の結節点を『法華陀羅尼略解』に説いたと言える.
著者
山越 健弘 山越 憲一 松村 健太
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

光電容積信号を用いた容積振動法に基づき,血圧,脈圧,心拍数,血管緊張度,および血管弾性度の5生理指標を,指一本から同時かつ簡便に取得可能なプロトタイプを開発した。そしてこの動作性能評価を行い,次いで上記5指標から体調の善し悪しを判別可能かどうかのパイロット・スタディを行った。また,飲酒運転防止を目的とし,光電容積信号を利用した血中アルコール濃度計測の可能性をin vitro(アルコール吸光特性試験)及びin vivo(飲酒負荷試験)下で予備検討した。
著者
田中 求 大久保 実香
出版者
高知大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

国内の和紙原料生産は激減しつつある。本研究は山村の変容と問題点を明らかにするとともに、和紙原料栽培の多面的機能の活用策を検討することが目的である。和紙原料栽培は、生業と買い取り価格の変化により衰退していた。焼畑でのミツマタ栽培も植林により激減した。雇用労働が収入源となり栽培者が減る中で、栽培作業も雇用労働化した。輸入コウゾが増加し、高齢化で管理が不十分な畑が増え、買い取り価格の買い取り価格は下がり、獣害で農家の栽培意欲が削がれていることがわかった。その一方で、和紙原料栽培が景観形成・獣害回避・蜜源・庇陰植物機能を有していることも明らかになり、今後はその具体的な活用策の普及が重要である。
著者
荘林 幹太郎
出版者
学習院女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、連坦化促進のための手法として集落コミュニティによる農地所有の「一体化」が有効である可能性を検証することを主たる目的とした。事例地区に関する詳細な実証分析及び概念分析等を行った結果、土地所有者が協調して個別の所有権を大きく超える利用に対して規律をもたらす非農家主体土地所有者組合モデル(「新海モデル」)が、その規律がもたらす正の外部性が存在するときに土地利用効率上の大きな意味をもつことを明らかにした。それは「共有資源」の個別利用を主たる対象としたコモンズ論的に新たな視点を加えうるものであることも確認した。さらに、新海モデルの普及のために必要な政策的枠組みについての提案も行った。
著者
竹内 靖子
出版者
桃山学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

キャンプ活動が知的・発達障がい児・者の「生活の質」「自立」「発達」にいかに貢献できるのかアメリカと日本のキャンプについて実証的に研究した。①知的・発達障がい児・者対象キャンプ関係者への聞き取り ②大阪市とその近郊のキャンプ実態調査 ③知的・発達障がい児・者対象キャンプ実践を行い、「参与観察」ならびに参加者とその家族への「質問紙調査」によりデータを収集し検討した。結果、キャンプ活動は、①参加者の「生活の質」「自立」「発達」に良い影響を与えていること。②参加者に加え家族やキャンプ関係者も「成長」する機会を得ること。③良い影響を継続するためには個別支援や運営に工夫が必要なことが明らかになった。
著者
小脇 光男
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

教養科目「中東の文化と歴史」において、異文化理解の視点から教育実践を行ないながら、教養教育にふさわしい教材および効果的な教授法の開発に向けた基礎的調査研究を行なった。日本と中東の関わりにも視点を置き、リアルタイムの中東情報を多用した教材は中東を身近な存在として意識させることに意義があった。さらに、授業の中に基礎的なアラビア文字の学習を導入する方法は異文化としての中東への関心を高めることに大きな効果があった
著者
浅井 博 朝日 透
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

琵琶湖の烏丸半島の湖岸において,原生動物ツリガネムシ種の Zoothamnium arbuscula Lake Biwa の大量採集を行った。Ca2+駆動収縮の本体タンパク質のsupaconnectin のcDNA 分析用ペプチッド一次構造解析のためである。最終年度の2014年にやっと大量採集に成功した。ツリガネムシの採集が不可能な期間には,赤血球のCa2+ 依存膜変形,特に,収縮の研究を始めた。牛赤血球においては,顕著な収縮や変形は観察されなかった。しかし,より原始的なジェノパスの赤血球を用いたところ,Ca2+添加によって顕著な赤血球収縮が起きることを発見した。
著者
小林 俊雄
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

エネルギー約300MeV/u、質量数約100の重RIビームを用いた不変質量法による実験では、同じエネルギー/質量領域の入射核破砕片の質量分離が必要不可欠である。この為には約0.1%の分解能を持つ全エネルギー検出器が必要であり、アルゴンにゼノンを少量混合した液体又は固体検出器を開発した。液体窒素を用いた冷却により、単体ガス又は混合ガスを液化/固化する試作機を製作し測定を行った。アルゴン単体の液化と部分的な固化の段階まで進んだ。
著者
安達 真由美 水上 尚典 半田 康 多賀 昌江
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

一般に、外部の音は子宮に届きにくいが250 Hz(真ん中のドあたり)以下の音は届く。本研究では、チェロの曲を用い、妊婦がヘッドフォンを通して聴いている時と、妊婦が波のような音を聴いている間にスピーカーを通して音楽が提示された時の胎動の様子を、聴覚システムが完成する以前(27週齢以前)と以降(28週齢以降)で、18組の妊婦と胎児を対象に縦断的に比較した。その結果、28週齢以降において、ヘッドフォン提示時よりもスピーカー提示時の方が、安静時よりも頻繁に四肢が動いていた。また、28週齢以降には、妊婦がヘッドフォンで楽しい音楽を聴取しているときよりも優しい音楽を聴取しているときの方がより動いていた。
著者
一杉 太郎
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

超伝導体は金属光沢か黒色を呈する、というのが常識である。BCS理論に従うと、高い超伝導転移温度を有する物質はキャリア濃度が大きいため、可視光透明性が失われるはずである。しかし、我々は超伝導転移温度13.3 Kを示す、スピネル型LiTi2O4透明超伝導薄膜(可視光を透過する超伝導体)の合成に成功した。この物性を活用することにより、光エレクトロニクスと超伝導を組み合わせた新奇デバイスの構築が期待される。そこで本研究では、透明超伝導メカニズムの解明に取り組んだ。光学特性、電子状態評価、電子輸送特性評価を行い、高いキャリア濃度を有するにもかかわらず可視光透明性を示す理由を検討した。
著者
細羽 竜也 金子 努 越智 あゆみ
出版者
県立広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は,若年層の精神科医療へのアクセスの実態を明らかにし,支援プログラムを作成することであった.大学生の精神科医療への態度を検討したところ,そのイメージは否定的であり,専門性の高さには期待が高いが,家族や友人にくらべると利用には回避的であった.また,相談支援の場で共感性が低い対応を受けると開示意欲が低下することもわかった.最後に支援プログラムを評価させたところ,支援についての自己決定が尊重れることが精神科医療へのアクセスを高めるために重要であることが示唆された.
著者
岩隈 美穂
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

13人の研究協力者にインタビューを行った。日本の先進国としての生活スタイル、インターネットを通じての母国とのつながりの保持、日本にはさまざまな外国人たちが多様な目的で来日、長期・短期に渡って滞在し、受け入れ社会についての知識などが、研究参加者の適応に大きな影響を与えていることが明らかになった。さらに研究参加者たちの適応には、身体的、社会的、態度的レベルがあることも本研究で示された。