著者
奥村 曉
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では紫外透過ガラスを使ったレンズアレイを製作することで、多画素のアレイ型半導体光検出器の実効的な光検出効率を改善することを目指した。市販のアレイ型検出器は隣接する画素間に不感領域があるため、入射光子の約15%は損失する。レンズアレイを前面に取り付けることで不感領域に落ちる光を有感領域に導光し、半導体光検出器を使った地上ガンマ線望遠鏡のガンマ線検出能力を高めたり、光検出器の製造費用を低減することができる。我々はレンズアレイを試作し実際に光検出器に取り付けて性能評価を行った。0~70度の入射角度で相対的に10~20%の光検出効率の向上を確認した。
著者
小澤 正直
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

量子論理に基づく集合論である量子集合論の研究は,論理学的方法で量子論を再構築し,量子論の確率解釈を拡張することを目指している。量子論理には含意結合子の選択に任意性があり,その標準化や個別化が長年の問題とされてきた。本研究では,含意結合子の選択による量子集合論の差異に着目し,量子集合論の移行原理が成立する多項式定義可能な2項演算がちょうど6種類あることを証明し,そのうち実質含意と呼ばれる3種に対して,量子集合論で定義される量子物理量の順序関係の確率解釈の差異を明らかにし,実験的検証可能な特徴付けを与えた。この研究により数学基礎論と物理学の新しい境界領域の展開と量子情報技術への応用が期待できる。
著者
中村 哲 岩坂 英巳 根來 秀樹 サクリアニ サクティ 戸田 智基 Neubig Graham 田中 宏季
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

自動ソーシャルスキルトレーナと題して,ソーシャルスキルトレーニング(SST)の過程を人間と対話エージェントの会話によって自動化する研究を進めてきた。これまでに開発したシステムは、自閉スペクトラム症での効果測定をしていなかったという問題があった。最終的な実験的評価として、自動ソーシャルスキルトレーナを使用し、10 名の自閉スペクトラム症者における訓練の効果を調査した。50 分間のシステムを使用した訓練実験により、有意に話のスキルが向上していることを示し、自動ソーシャルスキルトレーニングが有効であることを示してきた。これからも希望者がいつでもどこでも手軽に使用できる SST を目指していく。
著者
福島 孝治
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、データ駆動型の研究方法を物性物理の分野で展開することである。まず磁化曲線の観測データを入力として、これまでの経験的な理論モデルの構築に機械学習の技法を援用する方法を提案した。複数の候補から適切なモデル選択が可能となった。その結果、スピン構造など実験的に観測が難しい情報へのアクセスが可能となり、その後の実験計画に役立てられるようになった。さらに、扱う系を量子系に展開するためにはベイズ最適化の手法が有力であることがわかった。一方、大規模施設からのデータを想定して、中性子散乱実験のスペクトルから緩和時間分布を推定する問題に着手し、実データ解析も含めた新しい方向性を示すことができた。
著者
松井 圭介
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では,茨城県大洗町を事例にコンテンツ・ツーリズムの影響に注目し,ツーリズム形態の転換に伴う観光空間への影響,及びその変容の解明を試みた。大洗町は観光施設を数多く有する県内でも有数の海浜観光地であり,2012年以降はアニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台として新たな観光現象が生じている。大洗町においては,当初は店舗・組織におけるアニメファンへの対応は個別的であったが,来訪者が増加するに連れて,商工会の主導により積極的にコンテンツを地域の資源として取り入れ,多くのアニメファンを取り込み,聖地が共創されていったことが明らかにされた。
著者
宮原 ひろ子 門叶 冬樹 堀内 一穂 横山 祐典
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

マウンダー極小期(西暦1645-1715年の黒点消失期)において発生していた約28年に一度の宇宙線の1年スケールの異常増加の正確な年代を決定するため、山形大学高感度加速器質量分析センターに導入された加速器質量分析計を用いて、樹木年輪中の炭素14の測定精度を向上させるための基礎実験を行った。多重測定によって加速器質量分析計の安定性の検証と測定精度向上のためのメソッド開発を行い、従来の1/4以下の測定誤差を達成することに成功した。
著者
高西 淳夫
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,人間とロボットの社会的インタラクション,特にロボットから人間の心理への積極的な働きかけの実現を目的とした研究を行った.研究期間を通じ,等身大2足ヒューマノイドのハードウェアとソフトウェアを開発し,センサ入力に対し大げさに反応を返す視覚刺激を通して人間に面白い印象を与えるロボットを実現した.さらに,触覚刺激によって人間の笑いを誘発するくすぐりロボット,人間の笑い状態を定量取得するセンサを開発した.
著者
鎌倉 稔成 庄司 裕子 渡邉 則生
出版者
中央大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

映像コンテンツに関する評価履歴データに対してパラメトリックな潜在因子モデルを適用することによるレコメンドシステムにおける予測精度の検証と,評価性能の向上化を目指した統計モデルの改良を行った.ここで考えているレコメンドシステムは,評価データに基づいて消費者(ユーザ)に対して商品やサービス(アイテム)を個々に推薦をするというものである.ユーザとアイテム間の関係を確立するために,評価履歴データのようなユーザのアイテムに対する過去の行動情報を分析する手法として潜在因子モデルと近傍モデルの2つが挙げられる.潜在因子モデルがユーザとアイテムの両方を直接プロファイルするのに対し,近傍モデルではユーザとアイテム間の類似性を解析している.本年度は潜在因子モデルに注目し,Ho and Quinn(2008)が提案している潜在因子モデルを利用したパラメトリッグな回帰モデルを基礎としたベイズモデルの方法を利用した.映像コンテンツに関する評価データとして,「キネマ旬報」の評価データおよび米国のDVDレンタル会社Netflixの評価データを用いていた.キネマ旬報における総合評価とモデルによって推定した作品の潜在品質にはほとんど差異なく,その作品の潜在品質は,その作品を評価した評価者間の系統的差異すなわち評価者の評価における特徴(評価基準や品質識別力)をもとに決定されるということが分析結果として得られた.また,評価者の特徴は大きく2つ,多くの評価者がベスト10に選んでいる作品に対して,高い評価を与えるという識別力がある平均的な評価傾向の評価者と,多くの評価者がベスト10に選んでいる作品に対しては低い評価を与え,選んでいない作品に対しては評価をするという識別力がない個性的な評価傾向の評価者とに分類できることが判明した.
著者
駒田 雅之 伝田 公紀
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

1)PTEN阻害タンパク質CSIGがNrk結合分子として同定され、NrkがAkt経路を抑制して胎盤スポンジオトロホブラストの増殖を抑制することが示唆された。また、Nrk欠損スポンジオトロホブラストで細胞周期停止因子p27の発現低下が見出され、Nrkがp27の発現誘導あるいは分解抑制を引き起こすことが示唆された。2)乳腺腫瘤を発症したNrk欠損♀マウスにおいて血中および卵巣のエストロゲン・レベルが上昇していることを見出した。また、授乳期および高齢の野生型マウスの卵巣でNrkの発現が検出され、Nrkが卵巣でエストロゲン産生を負に制御することにより、乳腺上皮細胞の過増殖を防いでいることが示唆された。
著者
岸 利治 岩城 一郎
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

デジタルマイクロピペットを用いてコンクリートの鉛直面に一定量の水を一定時間間隔で複数回流下させ,所定の回数だけ流下させた後に流水距離を測定するという極めて簡易なコンクリート表層品質の評価手法(繰り返し流水試験)の開発を行った。コンクリート鉛直面を流れる流水は蛇行や分岐をしがちであることから、適当な流水ガイドについて検討し、コンクリート表面に鉛筆で平行な二本の直線を約5mm間隔で罫書いたものが最も理想的な流水ガイドとなると結論付けた。測定者一人で簡便に測定ができるように更に治具を工夫することで、表層品質簡易測定方法として活用できると考えている。
著者
富田 賢吾
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

1. 磁気流体計算コードAthena++の高速化を目的として、並列プログラミング言語Unified Parallel CとXcalableMPによる並列化の難易度や性能を従来のMPIに基づく並列化と比較した。どちら言語でも適切に記述すればMPIと同等程度の通信性能が得られるが、解適合細分化格子のような複雑な通信パターンが必要な場合には結局MPIと同レベルに通信を意識する必要があること、平易な記述が可能な一方通信の柔軟性には制約があることが分かった。どちらの言語でも現時点で最も高性能な実装はコードをMPIまたは通信ライブラリを含むC言語のコードに変換するトランスレータ形式のものであった。生成されるC言語の中間コードを解析した結果、自身で同等以上の並列化を実装することは可能であり、現時点ではAthena++コードを並列プログラミング言語に移行するメリットは十分ではないと判断した。一方、これらの言語内で利用されているRDMAによる通信は高速化に有望であり、今後の開発に取り入れることを検討する。2. Athena++コードのためにFull-Multigrid法に基づく一様格子上の自己重力ソルバを開発し性能評価を行った。その結果数千並列以上でも磁気流体部よりも数倍程度高速であり、大規模な自己重力流体計算が可能な高い性能と良好なスケーラビリティを達成した。今後これを解適合細分化格子に拡張する。3. 超大規模並列計算を行うためXeon Phiを搭載した大型計算機に向けたAthena++の最適化と性能評価を行った。Xeon Phiは通常のCPUと良く似た最適化が適用可能であり、最小限の調整で高い実行性能が得られた。最先端共同HPC基盤施設のスーパーコンピュータOakforest-PACSを用い、2048ノード・524288スレッドの大規模並列計算でも83%以上という高い並列性能を実現した。
著者
水内 郁夫 林 宏太郎
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

芸術やスポーツの動きを美しいと感じる、ホスピタリティを感じる、未知のものに興味をひかれる、などの人の主観的プロセスを、ロボットの動作生成・行動選択・創造活動などに活用することができないかという観点で、様々な対象(場)において、人間の主観的評価データに基づき機械学習を用いた主観的評価器を生成した。人の主観評価は本質的に揺らぎがあるが、推定結果を用いて、人が受ける印象を良くするようなロボット等の行動・振る舞いの選択や生成や、新規な絵画の生成、等に成功した。これらの成果は、国内外の学会及び展示会等で発表した。非人型ロボットへの印象操作や、高スキル動作の自動生成等への取り組みも開始した。
著者
水内 郁夫
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

ロボット化した植物群により、限られた日照面積と日照時間を最大限有効活用し光合成量を大幅に増加させるような行動決定アルゴリズムを提唱し、シミュレーションによりその効果を確認した。更に実際の植物ロボット(プラントロイド)を複数設計製作し実世界において、日向に移動する実験に成功した。また、広く感覚運動系の発達の仕組みを探求する研究を行い、ロボットの好奇心の研究、他者の意向に沿う行動や動作を行うアルゴリズムの研究、人の感覚運動系の計測結果に学びロボットアルゴリズムを考察する研究などに関し成果を得た。
著者
内藤 健 相良 慎一 佐藤 茂
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

多重衝突パルス噴流圧縮に基づく新燃焼方式エンジンについて、サイクル理論とシミュレーション検討、及び、航空機と自動車用の2つの試作エンジンによる燃焼実験を行い、以下の2つの結果が得られ、新燃焼方式の有効性を示すことができた。(1)理論とシミュレーションでは、ガソリン自己着火で50%レベルを超える熱効率の見通しを得た。(2)自動車用小型試作エンジンの燃焼実験では比較的低騒音でガソリン自己着火することが示され、かつ、従来型エンジンと同等か、それ以上の熱効率の可能性を得た。航空用の燃焼実験では、安定な燃焼を実現する方策を見出した。
著者
後藤 貴文 平山 紀友 上野 英雄 岩崎 渉
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

ウシの正確なバイタルデータの検出および最適な牛の健康状態管理を実現するため、ウシの体内埋め込み型のセンシングデバイス、いわゆるインプラントセンサー/アクチュエータの実現に向けた研究開発を行った。従来の外付けの機器ではなく、体内に埋め込み可能なインプラント型の機器を実現することで、ウシにも人にも優しいスマートな畜産営農を実現させる繁殖牛管理や放牧牛等管理の礎とする。本研究は、IT関連の民間企業と協力して開発したものであり、工業用の温度センサ-を活用してインプラントにより,牛の体温をリアルタイムにPCで把握することが可能となった。本成果は、ウシ管理の省力化と効率化に貢献するものと強く確信する。
著者
長田 年弘 篠塚 千恵子 中村 るい 河瀬 侑 小堀 馨子 坂田 道生 高橋 翔 田中 咲子 中村 友代 福本 薫 山本 悠貴
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

古代ギリシア・ローマ美術史における、広義の「祈り」(「嘆願」、「崇拝」、「オランス」)図像について、作例を検証した。特にギリシア時代の「嘆願」と、ローマ時代の「オランス」に、女性を「祈り」の主体とする作例数が多いことに着目し、社会的弱者の「祈り」と、道徳等の社会規範との関わりに目を向けた。小堀馨子(古代宗教史)は専門的見地から参加し、「命乞い」などのネガティブな価値判断を与えられた「嘆願」図像が、「敬虔さ」を表すポジティブな「崇拝」および「オランス」図像に転用された現象について検討を行った。期間中に5回の研究例会を開催し、最終的な研究成果に関して報告書を編集、刊行、専門研究者に配布した。
著者
北居 明 山田 幸三 伊藤 博之 河合 篤男 吉村 典久 井上 達彦 石川 敬之
出版者
大阪府立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

前年度の研究成果を踏まえ、中部地方を中心に蔵元へのヒアリング調査を行った。また、丹波杜氏記念館へのヒアリング調査も併せて行った。研究者グループが全員集合した研究会を、神戸大学と大阪府立大学中之島キャンパスで計2回行った。中之島キャンパスの研究会では、静岡県立大学の尹大栄准教授を研究会に招聘し、静岡県における酒造りについて研究発表をお願いした。このような研究活動の結果、まず杜氏と蔵元の関係の地域ごとの違いが明らかになった。桶買いが主な製造方法となった灘においては、主な杜氏供給元であった丹波は徐々に杜氏の数を減らして行き、平均年齢も高くなっていることがわかった。また、蔵元へのヒアリング調査からは、桶売り依存度が高い蔵元は、衰退する傾向があることも明らかになった。一方、蔵元の地域にこだわらない杜氏供給によって、南部杜氏は杜氏の数をあまり減らしておらず、若い杜氏も育ちつつあることがわかった。また、杜氏も、複数の蔵元を経験しつつ、ある蔵元での在籍期間が長い方が品評会で高い評価を受けることが明らかになった。その一方で、独自の酵母や発酵技術の開発により、杜氏を用いない蔵元も出現しつつあることが明らかになった。前述の尹准教授による静岡における酒造産業の研究からは、近年独自の酒造りによって品評会で高い評価を受けたり、国内での売上を伸ばしつつある蔵元には、このような蔵元が多いことも示唆された。このように、日本酒産業全体の衰退の中で、伝統的な事業システムである杜氏と蔵元の関係は、近年変貌を遂げつつあり、このような変化が次世代の酒造りに対しても、杜氏への依存度が低い事業システムへの圧力となりうることが予想される。
著者
吉田 聡
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

アルゴフロートのモニタリング情報と水温塩分プロファイルから鉛直流成分を抽出するアルゴリズム開発に取り組んだ。数値シミュレーションの結果から大きな鉛直流が期待される爆弾低気圧の通過を経験したアルゴフロートの観測結果を重点的に解析した。2015年から2017年の冬季に得られた1148プロファイルのうち、爆弾低気圧の通過を経験したものは73プロファイルあった。このうち、最も急発達した2016年3月1日の事例では、水温塩分プロファイルは低気圧通過に伴って、混合層の深さが100m程度深くなっていた。この事例について鉛直流の推定を試みた。しかしながら、計測ノイズの処理と段階的なピストン変動の処理が難しく、鉛直流速の推定には至っていない。
著者
板谷 厚
出版者
北海道教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は,組体操を「不安定な相手の身体とのかかわり合いの中で姿勢を維持する活動」と捉え,発達学的・体力学的観点から評価し,教材的価値を多面的に捉え直すことで,組体操の多様な行い方と評価観点を新たに提示することを目的とする.当該年度は,当初,組体操の姿勢制御にかかわる感覚統合機能に対するトレーニング効果およびコアトレーニングとしての効果を検討するために,健康な大学生を対象者とするトレーニング実験を実施する予定であった.しかし,旭川市立保育所の要請で幼児対象の運動遊びを実施する機会に恵まれたこともあり,三年目に予定していた組体操の多様な行い方と評価観点の提示についての研究を前倒しして実施した.組体操の多様な行い方のひとつとして運動遊びプログラム「ぼうけんくみたいそう」を開発した.「ぼうけんくみたいそう」は,ごっこ遊びの要素を強く打ち出したストーリー仕立ての組体操であった.物語の進行とともに,ひとりで行うポーズ(9種類)から2人組(5種類),3人組(2種類)へと段階的に複雑になるよう全16種類の組体操による演技を構成した.また,イメージをふくらませるために効果音や音楽を適宜用いた.組体操の効果を評価するために,保育所の年長児を対象にバランスの測定を実施した.プログラムのはじめと終わりに木のポーズ(閉眼片足立ち)を30秒間行い,その様子をビデオ撮影した.動画から30秒間の制限時間内に木のポーズを最大で何秒間維持できたかを測定した.対応のあるt検定の結果,木のポーズ持続時間は終わりではじめよりも高い値を示した(はじめ: 8.17 ± 8.33 s, 終わり: 11.07 ± 9.01 s, P = 0.022).したがって,「ぼうけんくみたいそう」は,幼児の閉眼片足立ち時間を即時的に向上させると考えられる.また,閉眼片足立ち時間は,組体操の効果を評価する方法として有用である.
著者
根本 彰 白石 さや 高橋 亜希子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

探究型学習は学習指導要領上はきわめて重要な位置づけになっているが,現実的にそれを実施する方法はきわめて多様である。本研究では,東京大学教育学部附属中等教育学校で行われている卒業研究に焦点をあてて,探究型学習の進め方について,研究のテーマ設定,研究の方法の選別と実施,研究の執筆と口頭発表の3つのプロセスを解明することを行い,そのなかでとくに,テーマ選定と図書館を利用した研究支援を中心とした。3年間の研究期間中の毎年度終わりに,執筆者への質問紙調査を行い,これらの支援がなかったときと支援が行われたときとを比較して,執筆者に一定の効果があったことを明らかにしている。