著者
松原 小夜子
出版者
椙山女学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、住まいの各所を移動して行われる家事作業の特性に着目して、既存住宅と高断熱住宅の比較も念頭におきながら、家事作業時の暑さ感と防暑行為を捉えた。その結果、両住宅区分ともに、「暑さで困っている」との回答は多いが、作業の性質上、冷房利用の効果はあまり期待できないため、既存住宅はもとより高断熱住宅においても、くつろぎ時に比べると冷房利用は少なく、「窓開放」などの様々な防暑行為を行っていることがわかった。家事作業時の暑さ感を緩和するにあたっては、高断熱高気密化や、自然な方法による防暑の工夫などによって、内部空間全体の温度分布が小さくなるような住まいや住まい方が求められることが示唆された。
著者
林 英子
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

動いている電車の中で,ものを真上に投げ上げると同じ位置に戻ることは、日常生活で体験している現象である。この運動のイメージが,跳び箱運動の助走と踏切の過程と類似であることに気がつき,跳び箱を跳ぶ際に役立てることができるか調査をおこなった。跳び箱大の机をくぐりながらボール打ち上げる装置を作成して演示し,また,走る台車上から生徒・児童がボールを投げ上げる活動等を通して,運動のイメージを体験的に認識した。その結果,中学生では約4割,小学生では半数以上が,跳び箱が以前よりうまく跳べたと回答し,正の効果が見られた。
著者
小滝 一彦
出版者
日本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ベッカーによる人的資本論では、若い時は賃金が生産性より高く、訓練後は賃金より生産性が高いと考えている。一方、ラジアーらは賃金を後払いにすることで、若い労働者の賃金は生産性より低く、退職間近の労働者では賃金のほうが生産性より高いと考えた。この研究では標準的な生産関数を用い、賃金や生産性などの人的資本も標準的なミンサー型の関数を用い、両者を企業単位で線形関数として統合し、パネル固定効果分析を行える関数型を確立した。データ分析の結果、若い労働者の賃金は生産性よりも高いがまもなく逆転する。一方、賃金と生産性は中高年期の労働者で再び逆転し、退職間近の労働者では再び賃金が生産性よりも高くなる。
著者
具志堅 美智子 オムラー 由起子 宇都宮 典子 呉屋 秀憲 糸数 ちえみ 益崎 裕章 辻野 久美子 砂川 博司 与儀 洋和 比嘉 盛丈 喜瀬 道子
出版者
琉球大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究(1)では2型糖尿病者6名を対象としてCGMS装着者にインタビュを行い、グラウンテッド・セオリー・アプローチにて分析した。CGMS装着体験は自らの病と真摯に対峙する機会となり、偏った食行動の気づきを得ていた。気づきは食行動改善のモチベーションを高めていた。研究(2)では20名を対象としてCGMS前後の糖尿病負担感情調査(PAID)の測定にて検証した。PAID総点数の平均はCGMS前25.62±16.2後21.8±14.9で有意差は認められないものの負担感情は軽減傾向にあった。患者背景因子との関連では有職群において「糖尿病の治療」の負担感情が有意に軽減していた(p<0.05)。
著者
日野 晶也 河合 忍 出川 洋介
出版者
神奈川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究ではイトマキヒトデの精子中心体の分画から発見した新奇DNAが、ヒトデ以外の生物にも保存される中心体特有のDNAであり、中心体を有する多くの真核生物にも同様に相同な塩基配列のDNAが存在すると考えた。また、広く真核生物に共通の分子マーカーとしても貢献すると考えた。そこで、中心体を有する真核生物からの網羅的な探索を試みた。その結果、海綿動物から脊索動物まで、96%以上の相同性が検出された。また、アメーボゾアの粘菌からも96%以上の相同性のあるDNAが検出された。更にコケ植物など、植物からも95%以上の相同配列が確認されたことから、真核生物に広く保存されるDNAであることが示唆された。
著者
三宅 紀子
出版者
首都大学東京
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

今年度は身体描画法の量的指標以外のその他の指標を深層心理学的に分析する活用法について検討した。個別の事例を取り上げ、身体描画法により得られた描画の質的な分析結果と被検者との面接により聴取された情報との対応・一致の程度を吟味し、身体描画に表出した被検者の身体に対する感情や態度等を検討した。事例を挙げると、不安定な対人関係の経験があり、病的痩せにより無月経となり、婦人科の処方薬を飲んで月経を起こさせている被検者Aさんは、大きな頭、細く長い首、異常に長い脚を描いた。面接では「お腹が空いた感じがわからない。」「私は時間で食事をしている。」と話した。この事例は、自然に感じられる空腹感がわからず、大きな頭で食事をコントロールしているが、頭を支える首が細いために頭がグラグラとして、頭のコントロールも不安定になりがちなAさんの様子が描画に反映されたものと考察された。また、体重増加の懸念や痩身願望が強く、大食や自発嘔吐を繰り返すという非常に不安定な摂食態度を持つBさんは身体の輪郭が曖昧で、足部(正面画、横向き画の両方)と腕および手(横向き画)がない不完全な身体を描いた。面接では、「食べちゃいけない、という反動で食べちゃう。」「夜にたくさん食べてしまい、これではいけない、吐かなきゃ、と毎日のように吐くこともある。」と話した。先行研究より、腕なしは不適応感や無力感を表わし、足なしは自立心の欠如を表わすとされるが、Bさんの描画はBさんの摂食に対する不適応感や食欲に抵抗する無力感、摂食コントロールの自律性の無さを表わすものと推察された。このような事例より、描画には被検者が意識しているか、否かに関わらず、被検者の身体に対する感情や態度などの内面が表出していることが認められた。これにより一般的に身体像を測定するために身体描画法を用いるだけではなく、言語による自己表現能力が低い生徒や学生を理解するための方法、あるいは恣意的な回答を避けるための身体像測定方法として身体描画法が適用可能であることが確認された。
著者
保坂 毅 濱渦 亮子
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究代表者はこれまでに、リボソーム攻撃性抗生物質を活用した遺伝学的および生理学的に異なる二つのアプローチがバクテリアの潜在能力を引き出す手法として有効であることを明らかにしてきた。本研究において、その手法がバクテリアのみならずカビや酵母(真核微生物)の潜在能力活性化にも有効であることを実験的に証明した。加えて、ハイグロマイシン B 耐性変異および同抗生物質によるホルミシス効果でカビの潜在的二次代謝能が向上する現象に着目して、その仕組みについて詳しく解析したところ、リボソーム攻撃性抗生物質を用いた同じ手法でも、カビと細菌とでは異なる仕組みで潜在能力が引き出される可能性があることを見出した。
著者
林 文男 上村 佳孝
出版者
首都大学東京
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

昆虫類のオスの交尾器の多様性は顕著である.そうした多様性は,雌雄の交尾器の接合を通して進化してきたものである.しかし,交尾器のそれぞれの部分の機能については,その方法上の問題からほとんんど解明されていない.そこで,本研究では,新しい手法として,微細蛍光ビーズをオスの交尾器の各部に塗布し,交尾後にその蛍光ビーズがメスの腹部末端のどこに付着するのかを調べることによって,交尾器の接合部を明らかにした.大型昆虫であるカマキリ類を用いて,この手法を確立し,カマキリ類のオスの左右非対称な交尾器の機能が,メスの産卵弁を持ち上げることにあることを明らかにした.この手法は交尾器の機能解明に広く応用できる.
著者
高岡 昌子 中西 利恵 岩口 摂子 蘆田 宏
出版者
奈良学園大学奈良文化女子短期大学部
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

2Dゲームよりも3Dゲームで臨場感をより感じていたが、2Dの方を好む者が多く、2Dよりも3Dの方で疲労感が高かったが、いずれにおいても重篤な気分の悪さは生じなかったことから、小さい画面の場合には危険性が少ないと示唆した。また実験協力者が初めてゲーム機で遊んだ年齢の平均は約6.5歳で、ゲーム早期開始群よりも非早期ゲーム開始群のほうが3Dゲームをした後に疲れやすいことがわかった。この結果から早期のゲーム経験の影響について考察した。さらに本研究で大学生から得たデータと現在の子どもたちが大学生になったときのデータを比較していきたい。また3Dゲーム経験のある子どもの縦断的研究中である。
著者
米田 昌代 吉田 和枝 曽山 小織 島田 啓子
出版者
石川県立看護大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

この研究の目的は、周産期の死(死産・新生児死亡)を経験した母親・家族を社会全体で支えるシステムを開発することである。今回、全国の主要な医療機関(産科・NICU)、行政(県・市区町村)、赤ちゃんを亡くした方の自助グループに対して各々の退院後のグリーフケアの現状と関係機関の地域連携の現状・課題・新たな提案について調査を実施し、その結果をもとに連携システムのモデル案を作成した。その後、母性看護学・助産学の研究者から意見を聴取し、さらに吟味を重ね、周産期のグリーフケアにおける地域連携システムモデル案Ⅰ案を完成するに至った。
著者
川口 潤
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は,エピソード記憶がもっている,過去の記憶を再体験するかのごとく想起する機能を,過去の体験をありありと感じる状態であるノスタルジア(なつかしさ)との関係から明らかにしようとした。近年のエピソード記憶研究においては,単に過去の出来事を思い出すということではなく,自分が経験した出来事をあたかも再体験しているかのごとく思い出す(mental time travel)という意識状態(autonoetic consciousness)が重要であると考えられている。ノスタルジアを非常に強く感じた際には,そうでない場合にくらべて再体験感が強く感じられることが明らかとなった。
著者
小林 廣美
出版者
兵庫大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、リウマチ患者の笑いを生みだす要因として重要な「地域における患者同士の支援体制」に関して、「リウマチ患者同士が語る会」で参加者の語りを分析し効果を明らかにすることである。方法は、A町役場と連携をとり、リウマチ患者同士の交流会を開催した。結果、リウマチの「悪化・進行」、「日常生活動作の低下」、「薬の副作用や合併症」に関して、関節保護の工夫、薬の飲み方、最新の生物学的製剤に関する情報を共有していた。リウマチ患者の笑える要因に関連していた「痛みのコントロール」においては、好きなことや楽しいことをしている時は痛みを感じないことがわかり、笑いの効果と同じ結果となった。研究結果は「あなたと共に歩むリウマチ看護-痛みの緩和と笑いの効用-」のタイトルで書籍を出版した。今後は地域における患者同士の交流会の効果を、行政、プライマリ医師と連携し広めていく必要がある。
著者
安藤 真次郎 野村 竜仁 岡本 信照 立岩 礼子
出版者
龍谷大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、ルネサンス思想という観点から、一般にいう「スペイン黄金世紀」という時代の文化事象を捉え直すことにより、15・16世紀のスペインの独自性を明らかにするとともに、当時のスペインが直面していた問題をヨーロッパおよび新大陸との関係性において考察することで、ヨーロッパ思想史とラテンアメリカ思想史におけるスペイン・ルネサンス思想の位置づけを再検証している。
著者
齋藤 正博 飯島 恵 西尾 温文 込山 洋美 東山 峰子
出版者
順天堂大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

家族機能評価尺度(FACESIII)及び家族イメージ法(FIT)が小児がんの家族評価に有用か検討した。6歳以上の患児とのべ14家族を対象に入院の異なる時期に調査を実施した。FACESIIIでは欧米の報告とは異なり家族機能が不安定な家族が見られた。FITでは臨床で見られなかった家族の力動や特徴を捉えることができた。時期による家族関係の変化も捉えられた。これらの家族機能評価は多様な家族に対する有効な支援につながると考えられた。
著者
日臺 滋之
出版者
玉川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

中学、高校の英語の授業でALTとのインタビューテストやクラスメートとのチャットを実施し、活動後に、生徒に英語で表現したかったけれど英語で表現できなかったことを日本語で書いてもらった。次に、その日本語を、英語母語話者の協力を得て、英語に訳し、Excel上で日本語と英語を左右一対一対応に整理し、日英パラレルコーパスを構築した。最後に、日英パラレルコーパスを分析し、日本人中学生、高校生が、なぜ英語で表現したかったのにできなかったのか、その要因について分析した。
著者
櫻井 成一朗
出版者
明治学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

法的アブダクションでは、仮説選択による説明だけでは結論の正当化には不十分であり、当該仮説をなぜ選択するのかという説明が重要であり、その仮説選択を正当化してはじめて結論が正当化できる。仮説選択の正当化のためには、さらにアブダクションを行う必要がるので、教師が適切にガイドしなければならない。すなわち、IRACにおけるA(あてはめ)の場面において、更にアブダクションが必要になるので、選択仮説を正当化するように学生の思考を導く必要がある。その結果、学生の条文や判決文の理解が深められることが確かめられた。
著者
森永 千佳子 平見 恭彦 浦尾 充子 日高 庸晴 高橋 政代
出版者
公益財団法人先端医療振興財団
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、現在のところ治療法が確立されておらず、治療研究の進歩の過渡期にある網膜色素変性(RP)の患者の状況に即した支援の検討を目的としている。①RPの患者対象の個別半構造化面接と②RPの医療や患者支援に関わる専門家・医療者へのヒアリングを実施した。①②で得られた情報を元に、③より広くRPの患者の実態を知るために質問調査項目の設定とWEB調査実施のための検討を重ね、WEB調査システムを構築し、④RPの患者対象にWEBによる質問調査を行った。患者の視点に配慮した支援体制と情報提供のあり方の検討の土台となるデータが得られたことは、RPを取り巻く医療の発展において、患者‐医療者双方に有用である。
著者
片岡 正和 池田 治生
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

プロトプラスト融合法を応用した放線菌と枯草菌の細胞質混合法を開発・最適化した。また、放線菌ゲノムをホストゲノム、枯草菌ゲノムをゲストゲノムとして組み換える系を構築した。選択した放線菌の組み込み部位の周辺を調べたところ、プラスミドを組み込んだ場合はプラスミドが狙ったとおりに組み込まれていることがわかった。しかし、ゲノムが組み込まれているはずの選択株のゲノム上には、選択に用いた薬剤耐性遺伝子存在は認められたが、500kbから2Mbの組み込み点から離れた領域は含まれていなかった。視点を変えて、接合を利用した大腸菌-枯草菌間のゲノム工学を目指し、両者の接合による遺伝子交換技術を開発した。
著者
藤原 すみれ 光田 展隆 木越 景子
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、一年生植物であるシロイヌナズナにおいて、ある転写因子を強く発現させた際に見られる多年生的形質やその関連因子に着目し解析することで、一年生植物と多年生植物の違いを生み出す未同定の因子を発見・解析するとともに、分子育種等に役立つ知見を得ることを目的として実施した。その結果、当該転写因子は日長や温度といった外的環境による制御およびスプライシングパターンの制御などの内的制御を受けながら多様な役割を発揮し、植物が適切に一年生植物として生長できるように機能することが示唆された。さらに、これらの制御に関与すると考えられる新規の因子を同定した。
著者
田村 幸子 新谷 恵子 佐々木 栄子 元雄 良治
出版者
金沢医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

平成23年は全国がん診療連携拠点病院で外来化学療法を受けるがん患者を対象に、実態調査を行った。回収できた826名のデータから、身体側面では痛みやその他症状の実態、精神・心理側面では不安・うつの実態、社会側面では就業・同居家族の実態が、それぞれ明らかになった。またQOLの実態も明らかにした。平成24年は回収データの統計分析を行い、QOLと各問題との関連に基づいてケアの方向性を考察した。平成25年は具体的なケア方法を探求し、身体症状への看護介入として「症状マネジメントの統合的アプローチ」、不安・うつへの予防的看護介入として「がん体験の語り」が有用であると考察した。今後の課題は有用性の検証である。