著者
山尾 敏孝 戸田 善統 友田 祐一 石子 達次郎
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

濃霧では通行止めとなる高速道路において,霧除去対策として防霧ネットが用いられているが効果が不十分である.そこで,改良策として,遠赤外線と高親水性を有する塗料をネットに塗布し,これを利用して霧除去実験を試みた.使用する塗料の種類や塗布の有無,ネットの種類を変え,室内実験により霧除去の効果を調べ,開発した.ネットが捕捉した水量の測定や捕捉状況を撮影し,水膜発生メカニズムを明らかにした
著者
居村 岳広
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

電磁共鳴方式のワイヤレス電力伝送は、負荷変動が激しく、素早い制御が望まれている。従来のコンデンサを機械的に切り替える方式ではスピードに限界があり、素早い制御を可能とするパワーエレクトロニクスと磁界共鳴技術の融合が必要とされていた。本研究では、(1)パワエレによるインピーダンスマッチングとして、インピーダンス変動による効率低下を防ぐために、パワエレによる素早い制御技術の確立を行ない(2)推定技術として、負荷変動が生じたことを把握する技術の確立を行ない(3)複数負荷への電力配分として、負荷の数が増減した際にも任意の配分で電力が送れる技術の確立を行った。
著者
奥田 隆史
出版者
愛知県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

我が国の大学においてもGPA制度が導入され,単位取得という学修の“量”だけに着目しがちであった成績評価を,その“質”も重んじるという効果をもたらした.一方でGPAを下げることにつながることを避けるために,学生がとる履修行動(成績評価が厳しい科目の履修回避等)が問題になってきている.つまり,GPA制度には,学修意欲向上インセンティブだけでなく負のインセンティブをも含んでいる.本研究では,野球における打者成績の質と学業成績の質とのアナロジーに着目し,野球選手評価数理理論セイバーメトリクスの着想を,大学における成績評価へ適用し,GPAに代わる新しい成績評価指標を提案するとともにその有効性を検証した.
著者
樽田 誠一
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、多量の金属AgあるいはCu粒子が析出した透明なマイカ結晶化ガラスの作製を目的として、Ag2OあるいはCu2Oを添加して調製した母ガラスの結晶化挙動および得られた結晶化ガラスの微構造について検討した。Ag2Oを1-40mol%添加すると、金属Agナノ粒子が析出した透明なマイカ結晶化ガラスが得られた。マイカ層間で析出したAgナノ粒子も観測された。しかし、金属Agの析出量はわずかで、伝導度は測定できなかった。そこで、還元剤としてCeF3を添加した。その結果、多量の金属Agが析出したが、Ag粒子は大きく成長し、透明性が失われた。一方、Cu2Oを添加しても、金属Cuの析出は観測されなかった。
著者
佐藤 寿倫
出版者
福岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

依然として上昇している要求性能に答えることが可能な,プロセッサ性能の向上が達成されている.しかしシステム全体を眺めると,十分な性能を提供できているとは言い難い.メモリが足枷となっている.加えて,メモリはエネルギー消費量が大きい点でも問題である.このような問題意識から,本課題を実施した.近い将来に磁気抵抗メモリ等の次世代メモリが利用可能になるという仮定の下で,アーキテクチャ上の工夫により高性能・低電力・高信頼なメモリシステムを実現するために,従来の記憶階層を解体して新たに構築することを目標とした.提案する記憶階層を用いると最良の場合で,エネルギー遅延積を49%改善できることが確認できた.
著者
土橋 一仁 松本 伸示
出版者
東京学芸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、温室効果を実験室で再現する実験器の開発に挑戦した。温室効果は地球温暖化の主要因として知られているが、その原理を正しく学習するためのモデル実験は存在しない。温室効果を実験室で再現するためには、温室効果ガスを封入する容器として、可視光から中間赤外線にかけて透明な素材が必要である。我々は、そのような素材として岩塩を用い、実験器を試作した。二酸化炭素を封入して実験を行ったところ、温室効果と思われるデータを得ることができたが、岩塩は脆弱で再現性に問題があり、研究期間内に温室効果検出の確証を得るには至らなかった。実験器の問題点は明らかなので、現在も引き続きその問題解決に取り組んでいる。
著者
渡辺 さつき 森田 せつ子 金井 章 野口 眞弓 稲垣 恵美 竹中 美 水野 妙子 西川 浩昭 高見 精一郎 奥村 潤子 小林 小綾香 大瀬 恵子 植田 和也
出版者
豊橋創造大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

妊婦が耐震性のある建物の中で緊急地震速報を見聞きしたと仮定し、揺れに備える7つの姿勢を実際にとってもらった。各姿勢において安定感・移動のしやすさ・実施可能性について妊婦へ質問紙調査を行った。285名の結果から、安定感は、お尻をついてかがむであり、避難行動への移りやすさは、立ったまま机を支えにする、実施可能性は、膝をついてかがむ姿勢であった。起震車を用いた模擬妊婦の実験では、四つん這いの姿勢が、腰部の加速度は低く、負担の少ない姿勢であることが示唆された。
著者
佐野 淳
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

スポーツの動きは言うまでもなく人間の運動であり、そこにはフォームが現れる。このフォームはゲシュタルト(運動ゲシュタルト)を意味している。そしてこのゲシュタルトとしての人間の動きは自然科学的法則だけではなく、言語学的規則にも従うものである。ここに本研究の問題意識がある。本研究の目的は、スポーツ技術の新しい分析方法の開発にある。それゆえ、この研究のオリジナリティーは言葉の文法規則とスポーツ技術の関係を検討することにある。3年にわたって言語の文法規則とスポーツ技術の資料(文献、映像)が収集され分析された。本研究を通じて、言語学的文法規則の観点からスポーツ技術を分析する可能性が考察された。
著者
青木 多寿子 橋ヶ谷 佳正 宮崎 宏志 山田 剛史 新 茂之
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

東京都のA区が取り組み始めた人格の完全を目指した品性・品格教育を、研究者で支援するのが本研究の目的である。本研究の3年間の目的は、(1)品性・品格教育の全国初の実践に向けて、取り組みの理念や教育的意義を、教員や保護者に向けて正確に伝えるため、教育委員会の活動を支援すること、(2)品性に関する教育の成果を、well-beingとの関係を中心にアンケートで調査し、この取り組みをエビデンス・ベースの展開にすること、(3)アメリカで教員達に品性・品格教育を教え、全米で学校を支援しているボストン大学の先生をお招きし、A区の品性・品格教育にコメントしていただき、旧来の教育と違った新しい視点を取り入れることである。本年度はまとめの年なので、(1)、(2)を中心に行った。(1) 地域の保護者向け講演会、校内研修会、教育委員会主催の研修会等で、交通費、講演料なしの講演を行い、全区実施に向けて教員研修等のお手伝いをした。また、教育委員会は、全学区で使用する教師用手引き書を作成したが、これを作成する際、知識提供、翻訳した資料の提供を行った。(2) アンケート調査は、A区が取り組みを始める前の段階から毎年、2月に調査を行っている。今回で4回目のアンケートを実施した。3回目までのまとめは、アンケートに協力してくださった学校と教育委員会にお伝えした。この分析の結果、規範意識は確かにwell-beingと関わっているが、その教育の成果の様相は内容(根気、活力、寛容など)によって多様であることが窺えた。(3) 昨年のボストン大学の教授による講演の逐語録をまとめ、多くの方に配布できるようにした。
著者
小林 宏明
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

多様な教育・支援ニーズがあり、勉学や部活動などで多忙な吃音のある中学・高校生の実情にあった教育・支援方法について、(a)「吃音のある中高生のつどい」の実施、(b)「吃音スタディーブック中高生版」の開発をした。「吃音のある中高生のつどい」は勉学や部活動などの影響が最小限となる夜間や休日に、2014年度に6回、2015年度に5回実施し、毎回1~7名の参加があった。「吃音スタディーブック中高生版」は、中高生が興味を持って取り組めるように、タブレット端末などを用いるマルチメディア自学教材とし、吃音の基礎知識クイズ、吃音動画クイズ、吃音の中高生へのメッセージ(吃音との付き合い方の提案)で構成された。
著者
伊藤 しげみ 田沼 延公 佐藤 郁郎
出版者
地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

解糖系酵素ピルビン酸キナーゼM(PKM)の選択的splicing制御の蛍光可視化に取り組んだ。蛍光タンパクを用いたレポーター遺伝子を染色体に組込んだマウスを作製し、発がん実験を施行した。発がん型Krasを誘導発現させることにより、上述マウスに短期間で効率よくて肺がんを誘導できた。それら肺がんでは、期待通り、M2型PKMの発現が著しく上昇していた。しかし、それに対応するレポーター遺伝子由来の蛍光を検出することができなかった。従って、当初目的のためには、さらなるレポーター遺伝子の改良、あるいはトランスジェニックマウス作製法の変更が必要と思われる。
著者
吉川 清次
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

EMTレポータースクリーニングにて、EMTを誘導因子としてSnail・Twist2を、EMTと協調してHMLEに軟寒天コロニー形成能を付与する遺伝子としてミトコンドリア電子伝達系構成因子、シグナル伝達ハブ遺伝子が同定されノックダウン実験では、SUM159間葉乳癌細胞のコロニー形成を抑えることが分かった。METスクリーニングでは、E-cadherin発現を強力に誘導するshRNA(shP1と命名)を同定した。軟寒天コロニー形成能の解析から、SUM159細胞にはshP1に感受性をもち軟寒天コロニー形成能が低下する集団と、shP1によりコロニー形成能が変化しない細胞集団が存在することが判明した。
著者
上田 しのぶ 黒田 雅彦 高梨 正勝 大野 慎一郎 土田 明彦
出版者
東京医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

microRNA(miRNA)はがんの発生や抑制に関与しており、血中ではエキソソームによって運ばれている。また、がん幹細胞は現在の治療法では残存し再発や転移を起こす可能性がある。我々はがん幹細胞に結合する分子をエキソソーム膜上に発現させ、がん幹細胞の増殖を抑制するmiRNAをエキソソーム中に取り込ませて血中に投与することで、がん幹細胞を標的とした治療法を確立できると考えた。乳がん細胞のEGFRに結合するペプチド(GE11)を発現させたエキソソームにlet-7aを内包させ (let-7a/GE11エキソソーム)、担がんマウスに尾静脈接種すると効率よくがん細胞へ到達し増殖抑制効果を示した。
著者
柴崎 亮介
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

GPSに加え多数の測位衛星システムが2020年までにサービスを開始する。位置情報の重要性は一層重要になる。たとえば、自動車の走行ルートに従って課金することができれば、柔軟な料金政策が可能になるだけでなく、料金所などの建設費用、混雑費用などを削減できる。しかしながら、位置情報の重要性が向上するにつれ、偽の位置情報を利用して課金を免れるなどの「位置騙し」が行われる可能性がある。そこで認証された位置情報を既存のインフラの大幅な改良や新規開発なしに生成する方法を開発した。具体的には、我々はGPS(QZSS)信号のリザーブビットに認証レファランス信号(RAND:Referance Authentication Navigation Data)を新規に定義して挿入、送信することで、それを受信して測位を行うケースには、真正な位置であることを証明できる。これは現行のGPSの信号構成に影響を及ぼさない。それをシミュレータを利用して実証した。なお衛星を利用して実証実験は地上からの信号送出のための地上局システム改良が間に合わず、実現できなかった。
著者
飯島 正
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

既に社会基盤として広く活用されている情報システムのトラブルは,社会的に大きな混乱を引き起こしかねない.しかし,企業や自治体で長く運用されている情報システムも大規模化し,トラブルを未然に防いだり,トラブル発生後の復旧が難しくなってきている.利用者を取り巻く環境の変化から,次第に使い勝手が悪くなることもある.そこで,利用者と開発者,異なる立場の利用者間や開発者間で,相互理解を深めるための共通の土台が必要である.本研究は,情報システムに,それ自身の挙動を説明するための説明文や深い理解をもたらすゲームなどを生成する機能を与える基礎技術を構築したものである.
著者
錦戸 典子 坂本 光司
出版者
東海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、中小企業における健康的な職場環境の普及推進に向けて、産業保健分野のみならず経営分野と協働することにより新たな知見を得て、革新的かつ実践的な推進モデルを開発することを目的に実施した。良好実践事例の分析により、職場のコミュニケーションの活性化や適切な労務管理・評価などについては経営分野でも重視されているが、健康診断結果の活用や健康を維持しながら働ける職場環境づくり、保健医療専門職・機関の活用などに関しては経営者等に殆ど認識されていないことが明らかとなった。中小企業従業員を対象とした質問紙調査結果からは、企業として健康と仕事の両立が可能な職場づくりに取り組む必要があることが示唆された。
著者
大渡 伸 山内 正毅
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

地球温暖化の進行に伴い、熱中症による緊急入院患者が増加している。屋外における熱中症対策と共に紫外線対策が必要である。しかし、熱中症対策と紫外線対策は二律背反する。本研究は、紫外線対策を考慮した熱中症対策に有効な衣服や熱耐性の獲得に関する情報を提供し、熱中症と紫外線障害を回避する健康情報を公開する事で社会貢献を目指す。
著者
植草 一世 大木 みわ
出版者
植草学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

この研究は,保育者養成で,ロール・プレイングと同様に絵本作りの楽しさやメッセージ性を学生に気づかせ内面性の成長を助けることを主眼とした。結果を見ると,絵本作りによって自分の経験の振り返りと統合が促進された。子どもの絵本作りを手伝うことで,学生は子どもの内面に触れることができ,子どもの理解が深まり,関わり方に自信を持つことができた。子どもにも,内面性の成長に役立つことが分かった。さらに幼児の絵本に表現された内容や素材の分析を行い,3つの個性を把握した。幼児の絵本作りを手伝う時に,その個性に合わせた援助が幼児の成長にとって大切であり,学生の保育者としての資質もさらに高まるものと考えた。
著者
高野 晋吾 上羽 哲也
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

膠芽腫の増殖制御を考え、血管新生因子FGF2特異的な抑制物質としてFGF2受容体に対するアンチセンスホモロジーボックス(AHB)に注目した。コンピュータープログラムによるすべての可能なAHBの探索により、FGF2受容体の標的ペプチドに対応する相補ペプチドを13種類合成した。合成ペプチドの血管新生抑制効果をin vitroヒト血管内皮細胞の増殖試験で確かめた。予想に反して、合成ペプチドに非常に強い内皮細胞増殖効果、FGF2シグナルの増強を認めた。FGF2受容体に対するAHBペプチドの血管新生促進効果の特異性を確実なものにして、さらにin vivo脳梗塞モデルでの血管新生療法を考案した。
著者
多賀谷 昭 那須 裕 北山 秋雄 深山 智代
出版者
長野県看護大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

里山の環境の健康への影響を明らかにするため、里山の環境の評価尺度の開発を試みた。現地調査と面接により質問項目を作成し、26集落510戸を対象に調査を実施した。242人の回答を分析し、27項目の6下位尺度(人々との絆、地域への愛着、自然の恩恵、共同体運営への関心、共同体の構造的強度、人間関係の窮屈さ)を得た。これらの健康への影響を検討するため、健康尺度SF-8を目的変数として重回帰分析を行った結果、共同体の構造的強度と地域への愛着が高く人間関係の窮屈さが低いほど精神的健康が良好であることが示された。自然の恩恵は直接的な寄与を示さなかったが、濃密な人間関係の逆機能を減じる効果が認められた。