著者
植野 真臣 吉田 富美男 石橋 貴純 樋口 良之 三上 喜貴 根木 昭
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.115-128, 2001-09-20
被引用文献数
8

本論では,多人数の複数クラスにおける遠隔授業の特性を明らかにし,その授業方法論の構築に貢献することを目的とする.具体的には,複数の工業高等専門学校に対する遠隔授業の実施とそれに伴うアンケート結果,客観データを数量化III類法を用いて要因分析を行った.本分析の特徴は,5段階の順序性を持つ授業の好ましさに係わる質問項目とその理由を聞く名義尺度項目を同一尺度上で数量化したことにある.その結果,複数クラスにおける遠隔授業の特性として授業の好ましさに関する項目の重要度は,「遠隔授業という授業方法について」,「教育テレビに比較してよかったか」,「実感が持てたか」,「教師との親近感」,「学校間の違い」「質問ができたか」,「授業回数」,「授業内容の理解」の順であり,評定の理由に関する項目として,「学習者が教師に認識されているかどうか」が主な要因となっていることが示された.すなわち,質問などの顕在的な双方向性以上に,まず認識的な教師との双方向性(相互作用)が重要であり,複数クラスにおける遠隔教育でも,教師-学習者個人の関係が要求されていることが示された.
著者
吉崎 静夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.17-22, 1999-08-20
被引用文献数
3

2002年から小・中学校の教育課程に新設される「総合的な学習の時間」には, 指導書も教科書もない.したがって, 各学校は総合的学習のカリキュラムを独自に開発し, そのカリキュラムにもとづいて, 総合的学習の授業設計を行う必要がある.では, どのような考え方や方法で, そのカリキュラム開発と授業設計を行ったらよいのだろうか.本稿では, 文部省研究開発学校の実践事例を取り上げながら, その考え方と方法を具体的に提案する.
著者
牧野 由香里 永野 和男
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.225-235, 2002-03-20
被引用文献数
7

新しい教育課程ではコミュニケーション能力の育成を重視しているが,理論的な枠組みや具体的な教育方法は十分に検討されていない.著者らは,理論と演習体験を結びつけたコミュニケーション教育カリキュラム(スピーチ演習パッケージ)を間発した.平成9年度から平成11年度の3年間に大学生を対象に行ったカリキュラム開発の分析結果から,次の3点が明らかになった.(1)論理体系と説得表現の活用能力(日本と欧米に発達した論理体系および説得表現を場面や聞き手の状況に応じて使い分ける能力)の育成に成果を得た.(2)自己評価の能力(スピーチが含む要素を論理体系のカテゴリーごとに分類し,優れた点や問題点を判断する能力)の育成に成果を得た.(3)自己評価能力の育成は,論理体系の活用能力の育成に貢献し,その学習効果は教師の評価を一方的に受ける体験を上回った.
著者
中原 淳 八重樫 文 久松 慎一 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.437-445, 2004-03-20
被引用文献数
7

近年,多くの高等教育機関がeラーニングに注目している.一般的なWebベースのeラーニングシステムには,学習者同士が相互作用を行うための電子掲示板が実装されている.学習者は,それを活用し,相互に情報交換や討論を行い,協調的な問題解決に取り組むことができる.本研究では,電子掲示板における相互作用の状況を,個々の学習者が所有する携帯電話の待ち受け画面に可視化することで,電子掲示板における学習者の諸活動を促進することを目的とした携帯電話ソフトウェア「iTree」を開発した.iTreeは,「木の成長をメタファとした表現」を用いて,電子掲示板の相互作用を携帯電話の待ち受け画面に可視化する.この画面を見ることで学習者は,PCから電子掲示板の様子を,頻繁にチェックしなくても,そこで進行している相互作用の状況を把握することができる.評価の結果,iTreeを利用する学習者は,電子掲示板のメッセージを,より積極的に閲覧する傾向があることがわかった.また,iTreeの機能全般に関して,多くの学習者が肯定的な主観的評価をよせていた.
著者
齋藤 昇 中浦 将治
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.215-225, 1999-03-20
参考文献数
14
被引用文献数
10

コンピュータを利用した個別学習支援システムの開発に際しては,個々の学習者の学力に応じた問題をどのように選定し,与えるかが重要である.そこで,本研究では,学習者の学習の進捗状況を評価し,次時点に与える最適な問題レベルを選定する新しい方式を以下にしたがって開発した.1)問題の回答に対する部分点の数値化の手法.2)得点の変動傾向を計量化する手法.3)得点の変動傾向を算出する際,現時点からいくつ前までの得点データを使用するかを決定する使用得点データ数打ち切り方式.4)平均点に得点の変動傾向を加味して総括評価値を算出する手法.5)総括評価値に基づいて,次時点に与える問題レベルを選定する手法.最適問題レベル選定方式は,ファジィ理論を利用しており,次の特徴がある.(1)得点の変動傾向を算出する際,得点のゆれを加味できる.(2)個々の学習者の学力に適した問題を選定し与えることができる.
著者
森田 健宏
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.87-94, 2002-09-20
被引用文献数
7

保育所におけるパソコン利用の問題点について,保育士を対象に評定尺度を用いた調査を行い,その内容から保育士の抱く問題点の因子構造について検討した.因子分析の結果,解釈可能な4因子(第1因子「子どもの心身の発達への影響」,第2因子「保育実践利用の意義・方法」,第3因子「職員間のコンセンサス」,第4因子「職員のメディアリテラシー」)を抽出した.さらに,各因子を構成する項目の評定について検討したところ,子どもが自然とふれあうなどの直接経験の機会が少なくなることや人間関係の発達に影響を及ぼすことなど,従来の研究から多く述べられてきたことに加え,実際に保育で利用するための環境構成が困難であることや,職員のスキル習得及び実践事例研究のための研修機会が持ちがたいことなどについても,高く支持されていることが明らかになった.
著者
伊藤 求 鳩野 逸生 稲垣 成哲
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.113-116, 2004-03-05
被引用文献数
1

本研究では,学習者が簡単に取り扱える定点観測教材ビデオクリップ作成システムの自動化を実現した.Webカメラを観察対象に向け設置するだけで,時間軸を縮めたmpeglビデオクリップを作成し,かつ,それらをパソコンのWebブラウザで閲覧できるようにする.さらに,インターネット経由で公開することもできる.導入コストが低く,かつ安定性のあるOSを用いているので,季節変化などの長期間の観察に対しても利用できる.本システムを導入することにより,学習者自らが興味を持つ観察対象をビデオクリップとして観察することができる.その結果,彼らの意志で主体的に取り組んだビデオクリップ教材を作成および公開することができる.
著者
高橋 参吉 松永 公廣
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.155-165, 1999-12-20
被引用文献数
12
著者
近藤 智嗣
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.73-84, 2001-09-20
被引用文献数
2

仮想空間を用いることで,大規模空間の表現における従来の映像メディアの問題点を改善することが可能となってきた.本研究で使用した仮想空間は,パノラマ画像を円筒形状に表示する手法であり,実写画像を素材に使用できることや制作が容易なこと等から教育応用においてもその実用性と効果が期待できる.本研究の目的は,この仮想空間を効果的に教育へ応用するために,1)利用者の空間定位から学習環境としての適切性を検討する,2)そのナビゲーション過程を分析することで利用者の特徴や問題点を抽出する,3)迷子の発生しやすい空間構造を分析する,ことであった.本研究では,ある公園の仮想空間を作成し,小学生を被験者として,指定されたルートをたどる移動課題と,公園内のベンチを探す探索課題の実験を行った.実験結果からは,抽出した問題点の改善方法を提案した.
著者
伊藤 崇達 神藤 貴昭 高嶋 重行 竹内 温子 菅井 勝雄 前迫 孝憲
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.377-385, 2004-03-20
被引用文献数
4

本研究は,自己効力感,不安,自己調整学習方略,学習の持続性に関する因果モデルの検証を行うことを目的とした.自己効力感尺度,学習時の不安感尺度,認知的側面の自己調整学習方略尺度,自己動機づけ方略尺度,学習意欲検査(GAMI)の下位尺度である持続性の欠如が,中学生449名に対して,試験の1ヶ月前と1週間前の2回にわたり実施された.共分散構造分析によって検討を行った結果,以下のことが明らかとなった.(1)自己効力感が高いものほど,認知的側面の自己調整学習方略と内発的調整方略をよく用い,外発的調整方略は用いていなかった.(2)学習時の不安感が高いものほど,認知的側面の自己調整学習方略,内発的調整方略,外発的調整方略をよく用いていた.(3)内発的調整方略の使用は,学習の持続性の欠如と負の関連を示し,外発的調整方略の使用は,学習の持続性の欠如と正の関連を示していた.
著者
成瀬 喜則 宮地 功
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.217-220, 2004-03-05
被引用文献数
10

インターネットやISDN回線を利用したテレビ会議を使った遠隔地との交流学習が可能となり,距離や時間の制約を受けない学習が可能となっている.今日,テレビ会議を利用して,大学生が卒業研究の内容について説明し,高専生がそれを聞いて質問することによって,双方の学習者がより深く学習を進める実践を行った.アンケート結果から,高専生は学習に対する意欲が向上し,進路に対する意識が高まることがわかった.一方,大学生は,発表する力,情報を整理する力,他人にわかりやすく説明する力などがついたと感じ,満足感や達成感を味わうことができた.
著者
柴田 好章
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-21, 1999-06-20
被引用文献数
8

本研究では, (1)量的データである発言語の出現頻度によって,授業の分節構造を特徴づける手法を開発すること, (2)手法の適用をとおして,話し合いを中心とする授業の展開過程に関与する要因を明らかにすること,を目的としている.そのために語の出現パターンによって授業の分節化・構造化をおこなうアルゴリズム,分節ごとの特徴をグラフ・表によって表現する方法,語の出現頻度にもとづいて授業の分節構造を図示する方法を開発し,小学校6年社会科の授業に適用している.
著者
長尾 尚 小林 直行 市川 隆司 黒上 晴夫 稲垣 忠
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.125-128, 2004-03-05
被引用文献数
1

本論文の目的は,「匿名性」と「即時一覧性」機能のある電子掲示板システムを活かした授業方法を開発し評価することにある.高校の学級という比較的規模の小さな日常空間においても「授業中」には,自由闊達に発言できない状況が生じる.その克服には,複数の相手に対面した状態で自分の意見を表現しやすい環境の支援が必要となる.そこで上述した2つの機能を備えた電子掲示板を開発しそれを組み込んで授業設計をすることで議論を活発にし新たな意見を導けないかと考えた.2回の授業実践の結果,匿名の電子掲示板上では,匿名性によって少数意見を導き出しやすく,即時一覧性により議論が活性化されるという2つの効果が明らかになった.
著者
森田 健宏
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.159-164, 2000
参考文献数
6
被引用文献数
1

幼児向け教育テレビ番組(NHK教育)を対象に, ショットの種類と構成比率, 注視対象の提示様式についての調査を行った.その結果, 幼稚園教育要領の「環境」領域を主なねらいとした番組では, 他番組よりもショットの構成数が少なく, 特にクローズアップやミディアムショットの継続時間が長く構成されていること, また, 「うたっておどろんぱ」や「たっくんのおもちゃ箱」などショー的に展開されるジャンルの番組では, ロングショットの比率が高く, クローズアップされたショットの継続時間が短いことが明らかになった.また, 注視対象の提示様式については, ショットの構成パターンなど番組ジャンルの影響を受けて, 構成比率が異なっていることが明らかになった.
著者
岡本 竜 矢野 米雄
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.61-71, 1995-09-20
参考文献数
11
被引用文献数
10

従来の会話シミュレーションに基づく英会話学習システムでは,典型的なモデル会話を繰り返すスキット学習が多く,教育的支援は会話中断による教育的対話への切り替え方式が中心であった.この方式は,学習者は受動的な学習を余儀なくされ動機付けの面からも好ましくない.また,会話文脈が固定的であるため,システムのシミュレーション介入による積極的な教育支援も困難である.我々は明示的な教育的対話への切り替えを行わず,学習者に試行錯誤による現実感を伴った学習を行わせる対話グラフによる知識表現を提案する.本知識表現によるシミュレーションでは,学習者主導の対話進行のなかで,システムによる対話進行制御による教育的支援が可能である.本論文では,英会話学習を対象とした環境型知的CAIシステムにおける会話シミュレーションの実現のための,会話の構造化と知識表現について論ずる.
著者
福田 洋
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.29-35, 1988-04-20

言語がわかりやすく,子供にも理解できるということぱ,その言語が次の世代に伝わってゆくための必須の条件である.コンピュータ言語についても同様のことがいえる.PROLOGは非常に強力かつすぐれたコンピュータ言語なのだが,子供にはほとんど使えない,といってもよい.それは,難かしい数学の述語論理の知識が必要なこと,また,子供が学んでゆくための,簡単な導入部分をもっていない等の理由からである.一方,LOGOでは,数学的な基礎は,記述のわかりやすさの下に隠れ,またタートルグラフィクスという言語を学んでゆくための良い導入部分をもっている.LOGOが4,5歳の子供でも使える,ということには既に多くの報告例がある.本稿は,LOGOシステムの中で書いたPROLOGの報告である.従来のPROLOGに記述をわかりやすくするための"キーワード",またPROLOGへの簡単な導入部分としての"つみ木のグラフィクス"等を追加した.