著者
梅垣 雄心 中村 雅俊 武野 陽平 小林 拓也 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101963, 2013

【はじめに、目的】臨床現場において、ハムストリングスのストレッチングは多くの場面で用いられている。近年、ストレッチングの効果に関して多く報告されているが、ストレッチング法について検討した報告は少なく、特に内外側ハムストリングスの選択的なストレッチング法について、科学的根拠は示されていない。理論的に筋のストレッチングは筋の作用と逆方向へ伸張すべきであり、ハムストリングスは股関節伸展・膝関節屈曲作用に加え、内側は股関節内旋、外側は外旋作用を有していることから、内側は股関節屈曲・外旋位から膝関節伸展、外側は股関節屈曲・内旋位から膝関節伸展の他動運動が効果的なストレッチングになると考えられる。その一方で股関節屈曲・膝関節伸展に股関節外旋を加えることで外側を、内旋を加えることで内側を選択的に伸張できるという報告もあり、統一された見解は得られていない。そこで、本研究では筋は伸張されると硬くなるという先行研究に基づき、超音波診断装置と弾力評価装置を用いて筋硬度を測定し、筋の伸張量の指標とした。本研究の目的は股関節屈曲・膝関節伸展に股関節の内旋と外旋を加えることが、内・外側ハムストリングスの伸張量に与える影響を明確にすることである。【方法】対象は下肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常男性17名(平均年齢24±3.4歳)の利き脚(ボールを蹴る)側の大腿二頭筋(以下:BF)及び半腱様筋(以下:ST)とした。ストレッチング肢位は、背臥位でベッド側方から非利き脚をたらし、ベルトで骨盤を固定した。試行は股関節90°屈曲、膝関節90°屈曲位(以下Rest)、股関節 90°屈曲・最大内旋からの膝関節伸展(以下IR)、股関節90°屈曲からの膝関節伸展(以下NOR)、股関節90°屈曲・最大外旋からの膝関節伸展(以下ER)の4試行とし,IR、NOR、ERでは痛みを訴えず、最大限伸張する角度まで他動的関節運動を行い、その時の膝関節伸展角度と筋硬度を測定した。 筋硬度の評価はテック技販製弾力評価装置(弾力計)と、SuperSonic Imagine社製超音波診断装置の剪断波エラストグラフィ機能 (以下:エラスト)を用いた。弾力計では圧力20NでRestのみ2回測定し、その平均値を算出した。IR、NOR、ERは1回の測定値を使用した。エラストでは全て1回の測定値を使用した。測定位置は,坐骨結節と外側上顆を結ぶ線の中点の位置でBFを、坐骨結節と内側上顆を結ぶ線の中点の位置でSTを触診しながら測定を行った。統計学的解析では、BFとSTにおける筋硬度値と膝関節伸展角度をそれぞれ各条件間でWilcoxon検定を用いて比較し、Bonferroni補正を行った。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には研究の内容を説明し、研究に参加することの同意を得た。【結果】BFでは、弾力計の値はRestに比べ、IR,NOR,ERが有意に減少し、エラストの値はRestに比べ、IR、NOR、ERが有意に増加しが、両筋硬度ともIR、NOR、ERの間に有意な差は認められなかった。STでは、弾力計の値はRestに比べ、IR、NOR、ERが有意に減少し、ERに比べ、IR、 NORが有意に減少したが、IRとNORには有意な差は認められなかった。エラストの値はRestに比べ,IR,NOR,ERが有意に増加し、ERに比べIR、NORが有意に増加したが、IRとNORには有意な差は認められなかった。膝関節伸展角度は、NORで-21.5±12.2、IRは-31.5±7.2、ERは-36.5±8.8であり、NORはIR,ERに比べ有意に高値を示し、IRはERに比べ有意に高値を示した。【考察】本研究では、 BFはIR,NOR,ERの間で伸張量に変化がなかったことから、BFの伸張量を股関節内外旋の動きにより、コントロールすることは困難であることが示唆された。一方、STはERに比べIR、NORの方が有意に伸張されたことから、大きな外旋の動きを加えた場合より、股関節内外旋の動きを加えない場合や大きな内旋の動きを加えた場合の方が、STは伸張されやすいことが示唆された。この理由として、内側ハムストリングスの股関節内旋作用、外側ハムストリングスの外旋作用というのは解剖学的肢位での作用であり、股関節屈曲や最大内外旋することによって作用が変化している可能性が考えられる。また、ERにおいて、NORやIRと比較して膝関節伸展角度が有意に小さく、BFが伸張されていないことから、ERではハムストリングス以外の要素が優先的に膝関節伸展を妨害しており、その結果としてBFが伸張されなかった可能性も考えられる。【理学療法学研究としての意義】ハムストリングスのストレッチングにおいて、股関節内外旋の動きを加えることでより伸張することは難しいことが考えられ、ハムストリングスのストレッチングにおいては股関節内外旋の動きを大きく加える必要はないことが考えられる。
著者
渡辺 光司 山口 和之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.H1057, 2004

【はじめに】<BR>当通所リハビリテーションセンター(以下通所リハ)ではマシントレーニングを特徴とするパワーリハビリテーション(以下パワーリハ)を導入した。導入前から利用者の活動性維持・向上を目標として行っていたが、十分な成果を出しているかが疑問であった。今回、導入前1年間とパワーリハ介入後のADL・身体能力の変化に着目しパワーリハの効果を検討したので報告する。<BR>【方法】<BR><U>調査1</U> 平成14年1月と同12月に第1回目と2回目のADL、身体能力調査を行った。対象は、歩行可能で研究協力に同意を得られた通所リハ利用者で継続して評価が可能であった81名(男性41名、女性40、平均年齢76±9.2歳)だった。調査項目はADL評価としてBarthel Index(以下BI)、身体能力評価として、Functional Reach(以下FTR)、片脚立位、Timed Up & Go(以下TUG)を行った。<BR> <U>調査2</U> 調査1の対象者からパワーリハを行った61名に、パワーリハ介入3ヶ月後のADL、身体能力調査を行った。<BR>【結果】<BR><U>調査1</U> 第1回目と2回目の調査の結果、ADL評価でBIは、88.4±11.8点から88.0±11.7点となり統計学的な差異はなかった。低下した人数の割合(以下、低下者率)は11.1%となった。一方FTR、片脚立位、TUGにおいては統計学的に優位な低下を認めた(p<.01)。低下者率はそれぞれ、69.1%、66.8%、74.0%だった。<BR> <U>調査2</U> BIは88.3±10.7点から88.6±10.7点で統計学的な差異はなかった。一方片脚立位、TUGにおいてそれぞれ優位な改善を認めた(p<.05)(p<.01)。またFTRは統計学的な差異はなかったが改善傾向があった。<BR>【事例】<BR>88歳、女性、要介護度1。5年前に大腿骨頚部骨折受傷し人工骨頭置換術を施行した。日常生活は歩行自立も転倒への恐怖感から屋外に出られない生活を送っていた。最近、易疲労やふらつきが多くなり室内に閉じこもる事が多くなった。パワーリハ導入前1年間のBIは90点で変化なかったが、TUGは26.1秒から37.2秒と低下が見られた。パワーリハ介入3ヶ月後、TUGは24.5秒に改善した。近くの店へ買い物に出かけるようになり、次はパーマ屋に行ってみたいと行動範囲や目標が広がっている。<BR>【考察】<BR>導入前はADLが維持されていても、身体能力は大きく低下していた。事例のように身体能力低下から行動範囲、生活意欲が低下している要介護者もおり、将来的にADL低下を引き起こす事が予測された。そのため通所リハではADLの維持のみならず、身体能力の低下を未然に防止する取り組みが極めて重要で、パワーリハは身体能力の改善効果が期待できると思われた。以上から身体能力への積極的なアプローチを行うことができるパワーリハは、今後、通所リハで極めて有用な手法と思われる。
著者
徳永 由太 高林 知也 稲井 卓真 中村 絵美 神田 賢 久保 雅義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.I-106_2-I-106_2, 2019

<p>【はじめに】膝関節周囲の悪性腫瘍による大腿四頭筋の広範囲切除によって膝関節伸展筋力は大幅に低下し,椅子からの立ち上がりや歩行などの日常生活動作に影響を及ぼすことが報告されている.一般的には,大腿四頭筋が膝関節伸展作用を発揮すると考えられているが,一部の先行研究ではハムストリングス(HAM)が膝関節伸展作用を発揮する可能性が提示されている.しかし,どのような姿勢でHAMが膝関節伸展作用を発揮するのかは明らかとなっていない.そこで本研究は,数理モデルを用いてHAMが膝関節伸展作用を発揮できる姿勢を明らかすることを目的とした.</p><p> </p><p>【方法】身長1.8 m,体重80 kgの対象者を仮定し,体幹,大腿,下腿から構成される矢状面リンクモデルを構築した. HAMの膝関節屈曲および股関節伸展モーメントアーム(MA)はOpenSimのGait2392モデルで報告されており,HAMの筋張力を決定すれば,HAMによる膝関節屈曲および股関節伸展モーメントは一意に決定できる.本研究では10Nmの膝関節屈曲モーメントが発揮されるようにHAMの筋張力を設定した.膝関節を屈曲0度~90度,股関節を伸展30度~屈曲90度の範囲内で変位させ,順動力学シミュレーションを実施した.なお,純粋なHAMの作用を確認するため重力の影響がない姿勢を仮定した.HAM機能の判定には,シミュレーション開始時と終了時の膝関節屈曲角度の差を用いた.先行研究において,HAMが膝関節伸展作用を発揮するためには,HAMの股関節伸展MAが膝関節屈曲MAに比較して大きい必要があると報告されている.そのため,股関節伸展MAを膝関節屈曲MAで除した値(MA比)も算出した.上記の解析はScilab 6.0.0によって実施した.</p><p> </p><p>【結果】HAMは膝関節屈曲7~0度かつ股関節屈曲2~62度(条件1),膝関節屈曲44~90度かつ股関節伸展30~屈曲50度(条件2),の2つの条件下で膝関節伸展作用を発揮した.条件1では膝関節角度が小さいほど,条件2では膝関節屈曲角度が大きいほど膝関節伸展作用が強くなる傾向にあった.また,MA比が大きい場合でも,HAMが膝関節伸展作用を発揮しないこともあった.</p><p> </p><p>【考察】本研究の結果より,HAMの膝関節伸展作用の発揮はMA比の大小だけでは説明できないことが明らかとなった.先行研究において,筋の力学的作用はリンクシステムの姿勢により変化することが報告されている.本研究においても,姿勢の影響によりHAMの力学的な作用が修飾されている可能性が考えられた.</p><p> </p><p>【結論】本研究は2つの条件下においてHAMが膝関節伸展作用を発揮する可能性を提示した.この結果から考えると,条件1・2におけるHAMの膝関節伸展作用をうまく活用することが出来れば,大腿四頭筋の機能不全を有する者であっても,椅子からの立ち上がりや歩行などの日常生活動作を円滑に遂行できる可能性が考えられた.</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は数理モデルを用いた順動力学シミュレーションによる検証のため,倫理的配慮および説明と同意に該当する内容は含んでない.数理モデルに必要なパラメータは先行研究で報告されたものや既存のモデルを参照しているため,個人を特定する内容は含まれていない.</p>
著者
清水 結
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.F-25-F-25, 2019

<p> 筆者は,これまでスポーツ医科学施設,国内トップスポーツチーム,日本代表,海外リハビリ施設と,様々な領域や立場でスポーツと関わってきた。</p><p> 理学療法士免許取得後に主に関わってきたのは,女子バスケットボールのトップリーグのチームであった。体育系大学においてトレーナー活動を経験してきたことと,医療施設での治療に携わった経験が,現場での活動においては大きな糧となった。同時に医療現場にも身を置くことで,医療現場とスポーツ現場をつなぐ道筋,反対に間にあるギャップにも目を向けることができた。また,トップリーグおよびジュニア世代における外傷予防のための外傷調査および予防介入を行い,チームを超えるリーグ・協会組織の一員としての活動も経験してきた。</p><p> その後,日本バスケットボール協会専任トレーナーとして,女子日本代表チームに帯同する機会を得ることができた。代表チームにおいては,他チームから集まる選手を管理する点で,一チームに所属して選手に対応する場合とは大きく異なる経験となった。また,リーグに所属するトレーナーや代表に関わるトレーナーの人材不足および育成の重要性を痛感した。</p><p> その後,韓国のリハビリ施設の開設を任され,施設運営やスタッフ育成を手掛けた。トップ選手の対応に従事しながらも,言語や環境,習慣や思考など,様々な面で日本との違いに戸惑いながら,また日本のスポーツ理学療法士の存在や役割について見直すきっかけとなった。</p><p> 今回はこれまでの私自身の経験をもとに,様々な活動場所における役割とスポーツ理学療法士として心がけていることをご紹介できればと思う。また,今後多くの女性理学療法士がスポーツ現場で必要とされる中,スポーツへ参加しやすい環境づくり,人材育成について議論したい。</p>
著者
廣瀬 美幸 森山 紋由美 鈴木 孝夫 李 相潤
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0231, 2008

【目的】最近、患者一人ひとりの栄養状態が極めて重要視され、栄養状態の管理・改善を院内栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)で取り組んでいる病院もある。そこで、ラットを用いて運動と食餌・カロリー摂取量の違いが骨格筋にどのような影響を及ぼすかを比較・検討した。<BR>【方法】実験動物は生後8週齢の雄性Wistar系ラット15匹を用い、普通食自由摂取+運動負荷(CT)群、普通食制限摂取+運動負荷(LT)群、高カロリー食自由摂取+運動負荷(HT)群の3群各5匹に分けた。実験期間を通して、CT群には普通食、LT群にはCT群の餌摂取量の60%、HT群には普通食比カロリー120%、脂肪含有率332.6%の高カロリー食を与えた。その間、1日1回45分同時間帯に、最高速度25m/minのトレッドミル走行を5回/週、2週間実施した。実験終了後、対象筋である左右のヒラメ筋、足底筋、腓腹筋外側頭を摘出し、通常の方法、手順により筋線維横断面積を測定し、統計処理を行った。なお、運動負荷のない通常飼育の対照(C)群は先行研究の同週齢ラットの値を参考とした。<BR>【結果】体重:実験開始時には群間有意差は見られなかったが、実験終了時にはLT群はCT群に比較し78.1%の低値と有意差を示した。一方、CT群とHT群間には有意差は認められなかった。平均餌摂取量:HT群はCT群の摂取量の83.5%であった。筋線維横断面積:3種の筋においてCT群はC群と比較し有意の高値を示した。LT群はCT群と比較し有意の低値を示したが、C群と比較すると有意の高値を示した。HT群はヒラメ筋においてCT群と有意差が認められた。<BR>【考察】3筋の筋線維横断面積において、LT群はCT群、HT群と比較し有意の低値を示した。従って、栄養不良状態では筋萎縮が進行することが示唆された。これは、1)低栄養状態で筋内蛋白質の合成不良によること、2)筋線維横断面積は収縮の強度に関係するので、LT群は各筋の収縮の強さが飢餓の影響を受け低下したことが考えられる。一方、LT群はC群と比較すると有意の高値を示した。これはLT群は週5回の運動を実施したため、低栄養状態であっても運動負荷により筋萎縮予防、筋肥大が得られたと考えられる。<BR> 今回、足底筋と腓腹筋においてはHT群とCT群間に有意差が認められなかった。これは筋肉の主要構成成分は蛋白質であり、運動時には蛋白質の必要量が増加するが、今回与えた高カロリー食は蛋白質含有量が普通食とほぼ同じであったためと考えられる。蛋白質を多く摂取することで、より効果的に筋力増強が得られると考えられる。<BR>【まとめ】低栄養状態であっても運動負荷により筋萎縮予防、筋肥大が得られ、また蛋白質を多く摂取することにより、より効果的に筋力増強が得られると考えられる。
著者
永岡 直充 今田 健
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100802, 2013

【はじめに、目的】大殿筋下部線維(以下,LGM)は歩行時における立脚初期の屈曲モーメントを制御し,同筋上部線維(以下,UGM)は中殿筋(以下,GMM)と共に立脚中期の骨盤落下を制御する筋として重要視されている。機能的に異なる作用を持つ大殿筋に対し,UGMの筋力強化を意識した股関節伸展外転運動を側臥位にて実施(以下,股関節外転位運動)している。本研究では,股関節外転位運動を伴う大殿筋筋力強化エクササイズ(以下,エクササイズ)を行い,UGM,LGMの筋活動を計測し,従来用いられている同筋の強化を目的とした異なるエクササイズとの比較を表面筋電図(以下,EMG)を用いて検討した。【方法】対象は,健常成人男性4例(年齢28.8±3.7歳,身長173.3±7.3cm,体重61.5±1.6kg,BMI20.6±1.3 kg/m2)であった。エクササイズ時に右側のUGM,LGM,GMMの筋活動を無線筋電計km-818MT(メディエリアサポート社)にて計測した。エクササイズは,腹臥位での股関節伸展運動(以下,腹臥位運動),片脚ブリッジ,股間節外転位運動,レッグプレス,フォワード・ランジの5通りとした。腹臥位運動は骨盤を固定した腹臥位にて,股関節伸展15°で膝窩から抵抗を加え2秒間保持した。片脚ブリッジは腕と左下肢を組んだ臥位にて,下肢90°屈曲,股関節内外転0°の肢位から体幹と大腿長軸が平行になるまで臀部を拳上し2秒間保持した。股関節外転位運動は膝関節90°屈曲位で固定した側臥位にて,足底をセラピストの骨盤に当てた。大腿骨に対し直角に抵抗を加えつつ,股関節屈曲,内転,内旋位から伸展,外転運動を股関節屈曲20°から-20°の範囲で行った。レッグプレスはシート角40°に設定したレッグプレスマシンに座り,下肢90°屈曲位から膝関節伸展0°まで伸展した。負荷量は1RMの60%とした。フォワード・ランジは両手を頭の後ろで組んだ立位にて,下肢90°屈曲位になるよう右下肢を踏み出し,2秒間保持した。運動回数は10回とし,運動開始から終了までの積分筋電図と最大随意筋力(以下,MVC)より相対筋電図(以下,%IEMG)を求めた。Tukeyの多重比較検を用いて5通りの%IEMGを筋ごとに比較した。独立変数は5通りのエクササイズ,従属変数は筋ごとの%IEMGとした。有意水準は1%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に従い,研究の目的,方法について説明し,研究の理解と同意が得られた上で実施した。参加は任意であり同意後もいつでも中断可能であること,それによる不利益を一切被らないこと,収集したデータは厳守されることを説明した。【結果】UGMでは股関節外転位運動,腹臥位運動,レッグプレス,フォワード・ランジ,片脚ブリッジの順に,LGMでは腹臥位運動,股関節外転位運動,レッグプレス,片脚ブリッジ,フォワード・ランジの順に,GMMでは股関節外転位運動,腹臥位運動,フォワード・ランジ,レッグプレス,片脚ブリッジの順に高い筋活動を示した。各筋(UGM/LGM/GMM)の%IEMGについて,腹臥位運動では62.7±14.9/68.4±13.5/38.9±29.1%,股関節外転位運動では84.7±41.6/61.5±26.5/54.1±48.9%であり,UGMにおいて股関節外転位運動は腹臥位運動に対し有意に高い値を示した(p<0.01)。さらに腹臥位運動と股関節外転位運動は,その他のエクササイズに対して有意に高い値を示した(p<0.01)。【考察】股関節外転位運動と腹臥位運動の3筋の%IEMGは同等の値を示し,その他のエクササイズとの比較において有意差を認めた。大殿筋は股関節伸展外転方向で最大の筋活動が発揮され,次いで伸展方向,外転方向の順に高い値を示すとの報告がある。股関節伸展と外転運動を組み合わせた股関節外転位運動においてUGMは高値を示したと考えた。一方,腹臥位運動は大殿筋本来の働きに即した抗重力肢位で行う運動として,UGM,LGMは共に高値を示した。この2つのエクササイズにおいて,UGMとLGMに対する負荷強度はMVCの60%を超えており,大殿筋の筋力強化を意識した運動として有効な方法と言える。さらに股関節外転位運動は,UGMに対し80%を超える負荷強度となり,UGM強化に特化したエクササイズである可能性が示唆された。臨床において,体幹および股関節術による禁忌肢位や片麻痺,円背など身体機能の変化に伴い,腹臥位を設定することが困難な場合が多い。本研究の結果から,患者の設定可能な姿勢に対応できるエクササイズ肢位の選択の幅が広がり,治療プログラム立案の一助になると考えた。【理学療法学研究としての意義】大殿筋は移動動作に重要な筋であり,幾多の筋力強化肢位が考案されてきた。今回の報告より,臨床で実施される代表的なエクササイズと股関節外転位運動について,EMGを用いて定量的に確認できた。股関節外転位運動は大殿筋の最大の筋活動を引き出しやすい肢位として,治療手段の1つとなり得ると考えた。
著者
高橋 利幸 大塚 雅恵 後藤 健太 天野 京絵 指方 梢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101691, 2013

【はじめに】訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)において、利用者とその利用者を取り巻く環境を調整することは必要不可欠な役割である。しかし、環境調整は様々な要因によりセラピスト本意のアプローチができないことも多い。いかにその必要性を伝え、利用者に適切な調整を行えるかが重要である。本研究では、環境調整の中でも手すりの設置に焦点を置き、利用者の家屋にある手すりと転倒との影響を調査した。同時に、より有効な手すりの設置を提案できるように現在の設置状況から比較検討を行った。【方法】対象は平成23年4月から平成24年10月までの期間に訪問リハを提供している利用者41名である。内訳は男性18名、女性23名、平均年齢は84.1±22.0歳である。p条件は、「訪問リハ実施期間中に利用者の使用しているベッドからトイレまでの動線内で起きた転倒」として、動線内に設置された手すりとの関連をみた。動線内を車椅子移動している者とトイレ移動を行っていない者は除外した。 手すりの有効性に関して、手すり設置の有無と転倒の有無でカイ2乗検定を行った。統計解析にはSPSS Statistics19を用い、危険率5%未満を有意とした。手すりの設置状況の検討は、転倒の有無から転倒群14名、非転倒群27名に分類し、各調査項目との関連性をみた。調査項目は、動線内の手すり設置(以下手すり項目)、認知症高齢者の日常生活自立度に1以上で該当しているか(以下認知症項目)、移動に見守り以上の介助が必要か(以下介助項目)、動線内の段差(以下段差項目)、歩行補助具の使用(補助具項目)を挙げた。各調査項目(カテゴリー)をそれぞれあり、なしで名義尺度に変換し、数量化3類を用いて統計処理し、両群のカテゴリースコアの散布図を比較検討した。【説明と同意】対象者には研究趣旨を文章と口頭にて説明し、本人・身元保証人の署名にて同意を得た。なお、本研究は国際医療福祉大学の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】利用者の家屋にある手すりの有用性に関して、手すり設置の有無と転倒の有無では有意差を認めた(p<0.05)。続いて、数量化3類で得られたカテゴリースコアから手すり設置と各調査項目との関係性を散布図で示した。転倒群では、抽出された成分1(横軸)と成分2(縦軸)から散布図を作成し、累積寄与率は62.15%であった。非転倒群でも同様に散布図を作成し、累積寄与率は56.61%であった。【考察】各利用者の家屋にある手すりは、既に設置されていたものや家族が取り付けたもの、セラピストが環境調整を実施して取り付けたものなど経緯は様々だが、本研究において転倒予防に関与していたことが明らかになった。手すりの設置に関しては、取り付け位置が一般的に定量化され、専門業者を介さずとも個人に適した取り付けが容易にできるようになっている。そこで、個人因子や環境因子を考慮しながら環境調整を提案することが、セラピストの専門性として求められると考える。カテゴリースコア散布状況から、転倒群では手すり項目と補助具項目をグループ化した。ここから、手すりと歩行補助具を併用する際はその使い分けを明確化し、移動を単純化させることが重要であると推察された。非転倒群では、手すり・認知症・介助項目をグループ化した。これにより、介助方法とそれに関わる手すりの提案が適切に行われている傾向にあると推察された。一方で、非転倒群の散布図では手すり項目と補助具項目において横軸と縦軸を介して対照的な位置づけとなっている。両群を比較検討し、手すりの設置に関して歩行補助具との併用を最小限にし、移動動作をより単純化させることが重要であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】訪問リハでは、在宅生活や社会参加まで多面的にかかわり、その能力を最大限に生かすために環境への配慮にも目を向けることが重要である。しかし、環境に対するアプローチは利用者とその周囲の意見に影響を受けやすいため、関わり方の工夫や、信頼関係を築き上げことも重要である。その上で、根拠に基づく妥当な指導や提案を提供し、訪問リハサービスの質の向上につなげていきたいと考えている。
著者
アルカバズ ユセフ 嶋田 智明 小川 恵一 有馬 慶美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P2159, 2010

【目的】本研究の目的は,重さの異なるリュックサックを背負った際の,体幹姿勢と体幹・下肢の筋活動の変化について分析することである.この領域の先行研究においては,リュックサックを背負うことと腰痛の関連性が指摘されている.しかしながら,多くの研究が学童児を対象としたものであり,成人を対象としたものは少ない.そこで本研究においては成人におけるリュックサック負荷の影響を確認することとした.<BR><BR>【方法】対象は1 9名の健常男子大学生(平均年齢は21±3歳)であった.方法は,4つの異なる重量のリュックサックを負荷した立位で筋活動および姿勢を測定した.4つの立位肢位は,(1)リュックサックを背負わない立位,(2)被検者の体重の10%に相当するリュックサックを背負わせた立位,(3)15%のリュックサックを背負わせた立位および(4)20%のリュックサックを背負わせた立位であった.筋活動は両側の腹直筋,脊柱起立筋,内側広筋および大腿二頭筋を表面筋電計で記録した.一方,体幹姿勢はVICON250を用いて,矢状面,前額面および水平面で記録した.なお,データの記録は開始から10秒後の5秒間行った.また,疲労の影響を考慮しすべての測定の間に1分間の休憩を挿入した.得られたデータの統計処理はRepeated ANOVAを用い,有意水準を5%未満とした.<BR><BR>【説明と同意】対象者には,口頭および書面にて研究趣旨,方法および実験に伴うリスクについて説明し,書面にて同意を得た.<BR><BR>【結果】脊柱起立筋,内側広筋および大腿二頭筋の筋活動はリュックサック重量の変化に伴う増加率に差は生じなかった.一方,腹直筋の活動は,リュックサック重量の増加に伴い増加した(P<0.05).しかしながら,そのリュックサック重量の増加に伴う筋活動の増加率は直線でなく,負荷なしの立位肢位と体重の10%に相当するリュックサックを背負わせた立位肢位の間で最も高い増加率を示し,15%,20%では緩やかな増加率であった.一方,体幹姿勢の変化は,リュックサックを背負わない立位肢位を0°とした場合,体重の10%に相当するリュックサックを背負わせた立位肢位で3.37°伸展し,その後の15%,20%でもそれぞれ3.02°,3.90°とリュックサック重量の増加に伴う変化は確認されなかった.しかしながら,リュックサックを背負わない立位肢位と比較した場合,すべての重量で有意に伸展した(P<0.05).<BR><BR>【考察】リュックサックを背負わない場合と比較して,リュックサックを背負うことにより腹筋群の筋活動と体幹伸展角度が増加した.しかしながら,筋活動はリュックサック重量の増加に伴って増加したのに対して,伸展角度はリュックサックを負荷した際には増加したが,その角度はリュックサック重量に左右されなかった.これは,リュックサック重量が増加しても一定の姿勢を保つための身体の生理的反応と考えられる.この傾向は,体重の20%に相当するリュックサックを背負わせた際に最も顕著となったため,腰部へのリスクという観点から避けるべきであろう.しかしながら,今回の研究においては,リュックサックの使用頻度,使用時間,種類そして使用者の幅広い年齢層に関する因子については言及できないため,今後,それらの因子の影響について検討すべきである.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】本研究は理学療法研究の中でも疾病および傷害予防に属するものである.近年,リュックサックの使用頻度は増加傾向にあり,それにより発生する腰痛を未然に防ぐことは,筋骨格系疾患の予防,治療およびリハビリテーションを担う理学療法士にとって重要な使命である.したがって,本研究はリュックサックに由来する問題のメカニズムを明らかにする一助となると考える.
著者
山田 修 安藤 貴洋 西 友美 布施 まどか 新田 裕志 瑞慶山 良松 松田 康孝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.G1142, 2007

【目的】在院日数の短縮化で入退院が激しいことや高齢化に伴い、認知症や視力・聴力機能低下の患者が増えていることなどから転倒などのインシデントが発生しやすい状況になってきている。平成16~17年の2年間の当院リハビリテーション科(以下リハ科)でのヒヤリハットの内容を調査した結果、その科別患者や内容にいくつかの傾向が見られた。そこで、今回ヒヤリハットの中で最も多かった転倒に関して、その発生状況や原因を詳しく調査し、事故を未然に防ぐ対策を提示したい。<BR><BR>【方法】上記2年分のヒヤリハット報告書を集計し、得られたデータを基に分析し、過去の文献との比較・検討を行った。<BR><BR>【結果】リハ科のヒヤリハット件数は整形外科が15件(55%)を占め、神経内科8件(30%)、脳神経外科3件(11%)となっていた。内容別の件数では、転倒が67%と全体の2/3を占め、点滴抜去が11%、私物破損と膝折れ、しゃがみこみが7%となっていた。年齢別での転倒件数は、70代が5名と最も多く、次いで50代が3名と続いていた。科別患者ごとの転倒割合をみると、神経内科が1/1000回と頻度としては最も多かった。また大阪府内の同規模病院と比較して、当院のセラピストの人数が1/2~1/3程度となっていた。転倒の要因で最も多かったのは、介助方法や介助位置によるもので、9件だった。次いで疾患、機能レベル、合併症考慮が5件となっていた。その結果、スタッフから出された転倒発生防止のための教訓として、介助方法や介助位置の再考が7件、患者の疲労考慮が3件、抑制帯を利用、練習方法の再考が2件となっていた。<BR><BR>【考察】対策として、まず治療者ファクターでは、できるだけリスクが高い患者はマンツーマンで訓練を行う。次に患者ファクターでは、患者個人の全身状態、性格を把握し、ミーティングでスタッフ全員が情報を共有する。さらに施設・システムのファクターでは、リハ開始時に転倒注意喚起のためのパンフレットの作成を予定しており、またリハスタッフの増員も必要と考える。転倒のリスクアセスメントにおいて現在各セラピストの主観的評価に頼っているのみで、統一した方策を行うには至っていない。アセスメント項目として文献に挙げられていたものは、転倒経験、歩行レベルや可動性、精神(知的)状態、歩行補助具や車椅子の使用、排泄等であった。今後データを蓄積し、リハ科独自のアセスメントツールを作成することで転倒予防の効果を挙げることが可能と思われる。<BR><BR>【まとめ】上記2年間の当院リハ科でのヒヤリハットの内容を調査した結果、その科別患者や内容にいくつかの傾向が見られた。そこで、今回ヒヤリハットの中で最も多かった転倒に関して、その発生状況や原因を詳しく調査した。また文献との比較も行い、事故を未然に防ぐ対策を提示した。今後ハイリスクの患者をアセスメントで抽出し、マンツーマンで訓練を行うなどの対策を行っていく。
著者
梅澤 慎吾 岩下 航大 坂井 優之 大野 祐介 宮永 豊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O2155, 2010

【目的】<BR>昨今、立脚期油圧制御を備えた高機能膝継手が多数開発され、その代表格C-LEG(OttoBock)の研究報告は以前から行われている。しかしそれらは健常側で運動制御が可能な片側切断の症例や、両側切断では限られた環境での杖歩行が多数を占める。一方、両大腿切断者の二足実用歩行をゴールに据えた場合、高機能膝継手を選択する意義や活用のポイントはこれまで議論されていない。今回の報告では両側切断と片側切断で運動制御の違いを比較し、両切断者に高機能膝継手を処方した場合に歩行自立度に及ぼす影響を検証することを目的とした。<BR>【方法】《症例》30歳、男性、身長170cm。鉄道事故による両膝離断。H19年7月切断術施行。左右断端長45cm、両股関節に可動域制限なし、荷重痛により断端末荷重不可。H19年9月3日より当センター入所。床から車椅子の移乗がプッシュアップ台利用にて自立。訓練期間(4ヶ月)を区分すると内容は次の通り。《C-Leg試用前2ヶ月》開始1ヶ月がソケットと足部のみのスタビー義足を使用し、立位バランスと歩行訓練。後の1ヶ月で段階的に義足長を本来の身長に合わせ、同様の訓練を実施しながら膝継手の変更を試みる。<BR>《両側C-Leg変更後2ヶ月》遊脚期の膝屈曲による足部クリアランスの確保を念頭に置き、平地で杖なし持続歩行が可能となった段階で応用歩行へ移行。坂道の下り・歩行時の減速・方向転換など立脚期油圧制御(イールディング機能)を最大活用することに重点を置き習熟を図る。<BR> 【説明と同意】 研究の目的、方法、予想される臨床上の利益、協力者が不利な扱いを受けないこと、データ管理に注意を払うこと、結果の公表の仕方などを本人に説明し、可能な限りで個人情報の開示を行う旨を了解済みである。<BR>【結果】《C-Leg変更前》固定膝と遊脚期油圧制御膝継手(OttoBock3R60)の組み合わせで約1kmの持続歩行を獲得。これは平地や両側に手摺りのある階段など条件付きの環境にて両T字杖で行っている。一方、屋内外を問わず、坂道の下りは杖使用でも動作獲得は達成されなかった。<BR>《C-Leg変更後》約2ヶ月で屋外杖なし歩行自立、片側手摺りを利用しての階段交互昇降と杖なしでの坂道歩行自立。また約3kmの屋外持続歩行や公共交通機関の利用が杖なしで自立となる。最終では実際に職場で訓練を実施。想定される様々な動作を行い、車いすを用いず遂行可能であることを確認。一方、車での通勤を可能にする環境整備(車の改造、駐車場の確保)も進めた後に退所。復帰後半年間はパートタイム、後にフルタイムで職場復帰を果たす。<BR>【考察】これまでの両大腿義足の訓練は「転倒の恐怖感」が自立への障壁になっていると推測される。片側大腿切断の場合、1.坂道の下り2.歩行時の減速や方向転換など日常生活で頻回に繰り返される動作の多くは、速度調整や安定性の保障などを健常側下肢によって行っている。これに対して両大腿切断者は1.2の動作で転倒しない為の保障を得られず、積極的な動作獲得への取り組みが行えないと考えられる。一方でC-Legの特筆すべき機能として1.強力な油圧抵抗で大腿四頭筋の遠心性収縮を代用し、一方の膝を緩やかに屈曲させながら他方の足部接地を行う時間的猶予を与える(坂道の下りが自立する可能性) 2.歩行時踵接地から爪先離地まで、一連の歩行動作を行わなければ油圧抵抗がキャンセルされず不意な状況で膝折れを起こさない(方向転換時の安定性向上) 3.C-Legをエネルギー効率の面で優位とする報告があり、義足歩行を継続しながらも過負荷にならず、実生活を視野に入れやすいなどの特長がある。今症例のC-Leg使用前、使用後を比較すると坂道下り動作の獲得が達成されたこと、また持続歩行距離に決定的な違いを見出すことができる。この結果は恐怖感が軽減され、省エネルギー歩行が可能であれば、多様な動作のチャレンジが可能となり訓練過程で身体能力がさらに向上し、より高い目標を掴める可能性があることを意味する。訓練で重要となるのは、膝折れを起こさないように立脚期股関節伸展を行う通常歩行、意図的に膝折れする方向に荷重する坂道の下り、この相反する動作の仕組みを説明し、膝継手の特長を義足ユーザーとセラピストが共通理解のうえで反復・習熟を図ることが重要である。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>両膝を失った状況で公の環境に順応するには、たとえ残存機能を最大限発揮したとしても、ある程度義肢に依存しなければならない側面がある。このようなケースでは膝継手の特長を理解し、調整を適宜セラピストが行うことも求められる。膝継手の特性が両切断者の身体面・精神面にいかに影響を及ぼすかについては、同様の症例でC-Leg並びに、他の膝継手を比較し、定量的・客観的な評価を行っていく必要がある。<BR><BR>
著者
工藤 紗希 小島 慎一郎 佐久間 博子 町田 明子 杉本 諭 丸谷 康平 伊勢崎 嘉則 室岡 修 大隈 統 加藤 美香 小林 正宏 三品 礼子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P2246, 2009

【目的】<BR> 近年では在院日数の短縮化に伴い、介護老人保健施設(老健)を経て在宅復帰されるケースが増加している.一方在宅復帰した者の中には、機能低下により在宅生活が困難となり、施設入所となることも多い.従って通所者の在宅生活の継続、入所者の在宅復帰を目標とした際に、在宅生活に必要なADL能力及びバランス能力を把握することは、理学療法を進める上で重要であると考えられる.本研究の目的は、通所・入所者のADL自立度の違いを明らかにし、その違いをバランス能力に焦点を当てて分析することである.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は通所リハサービス利用者及び老健施設入所者のうち本研究に同意の得られた高齢者247名(男性75名、女性172名、平均年齢79.1±8.8歳)で、通所者188名、入所者59名であった.疾患の内訳は、脳血管疾患95名、神経疾患20名、整形疾患87名、内部障害27名、その他18名であった.ADL自立度の評価にはFIMの運動項目を、バランス能力の評価にはBerg Balance Scale(BBS)を用いた.なおFIM下位項目のうちの階段昇降は、運動能力の違いに関わらず使用している者が少ないため、階段を除く12項目の合計(FIM12項目合計点)及び各下位項目の素点を用いた.BBSは合計点及び14の下位項目を用いた.分析方法は、まず通所者と入所者のFIM12項目合計点及び下位12項目の得点の違いをMann-Whitney検定を用いて分析し、有意差のみられた下位項目の分布と臨床的意味合いをもとに、各下位項目を良好・不良の2段階に分類した.次に抽出されたFIM下位項目を独立変数、利用状況(通所・入所)を従属変数として、Stepwise法による判別分析を行った.更に判別分析により最終選択された下位項目を従属変数、BBS下位項目を独立変数とし、Stepwise法による重回帰分析を行い、バランス能力との関連について分析した.<BR>【結果および考察】<BR>FIM12項目合計点の中央値は通所者78点、入所者61点、BBSは通所者44点、入所者27点であった.Mann-Whitney検定の結果、FIM12項目合計点、FIM下位12項目のうち食事と移動を除く10項目に有意差がみられ、判別分析ではトイレ動作と浴槽への移乗が最終選択された.この2項目が良好と判断される境界点は、トイレ動作は6点、浴槽への移乗は5点であった.重回帰分析によるBBS下位項目との分析では、トイレ動作では着座、リーチ、起立、浴槽への移乗では一回転、リーチ、タンデム立位、車いすへの移乗が最終選択された.以上より、在宅復帰の可否にはトイレ動作が修正自立、浴槽への移乗が見守りで可能であることが関連し、このような動作の獲得には、着座、起立、リーチ、一回転、タンデム立位、移乗動作のようなバランス能力の向上が重要であることが示唆された.
著者
谷川 直昭 石川 大樹 露木 敦志 前田 慎太郎 高橋 奏衣 小宮山 幸子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C1023, 2004

【目的】<BR>近年、関節鏡視下手術の進歩は目覚しく、半月板損傷の手術療法は鏡視下縫合術や部分切除術が広く行われている。また、円板状半月板障害に対しても鏡視下半月板形成的切除術が主流となっている。半月板損傷に対する縫合術や部分切除術後のリハビリテーションに関する文献は多いが、円板状半月板形成的切除術後のものは散見する程度であり、さらにスポーツ選手の術後スポーツ復帰に関するまとまった報告は、我々の知り得た範囲では存在しなかった。そこで今回我々は、スポーツ選手における円板状半月板形成的切除術後のスポーツ復帰の実際を報告する。<BR>【対象および方法】<BR>当院において1997年5月~2003年10月までに膝円板状半月板障害に対し、鏡視下半月板形成的切除術を行ったスポーツ選手26例34膝{男性18例24膝、女性8例10膝、手術時年齢は11歳~51歳(平均23.8歳)}を対象とした。これらの症例に対し、スポーツ種目、スポーツ復帰時期および術前後のスポーツレベル、術後合併症の有無とその対処方法について調査した。なおスポーツレベルについてはTegner activity scoreを用いて評価した。<BR>【結果】<BR>スポーツ種目は、サッカーが14例(53.8%)で最も多く、次にテニス3例(11.5%)、ダンス2例(7.7%)と続いた。スポーツ復帰時期は術後7週~18週(平均11.1週)であった。スポーツレベルは、術前のTegner activity score 7.6±1.6点が術後Tegner activity score 7.6±1.6点であり全例、元のスポーツに復帰していた。術後合併症は、疼痛、関節水腫がスポーツ復帰前1例、復帰後(術後3~6ヵ月)5例に見られた。<BR>【考察】<BR>スポーツ種目でサッカーが53.8%と半数以上を占めていたが、これは当院が横浜の某Jリーグチームの指定病院となっているため患者数におけるサッカー選手の割合が多かったことが要因であると考えられる。スポーツ復帰時期にはばらつきがあるが、両側同時手術例や中高年による変形性関節症性変化(以下OA)を合併しているケースの場合は復帰に時間のかかる傾向にあった。しかし、術後のスポーツレベルは全例で元のレベルまで戻っており、OAを合併していても慎重な後療法を行うことによってスポーツ復帰は可能であることがわかった。またスポーツ復帰を果たしても術後3~6ヵ月で関節水腫を合併する症例が見られたが、ヒアルロン酸の関節内注入と2~3週間の運動制限によって症状は消失した。<BR>【まとめ】<BR>1.スポーツ種目、年齢に関わらず、術後平均11.1週でスポーツ復帰が可能であった。2.全例、元のスポーツレベルに復帰可能であった。3.術後、関節水腫に対しては、ヒアルロン酸の関節内注入と運動制限が有効であった。
著者
森田 正輝 永吉 由香 木村 淳志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ce0121, 2012

【はじめに、目的】 ランニングやボールキック等により、脛骨前方移動量(以下、移動量)が増加するという諸報告がある。しかし、それらは単的な運動にすぎず、実際のスポーツ活動中に測定した報告は無い。また、前十字靱帯(以下、ACL)損傷が試合・練習の後半で発生しやすいという報告もあり、その原因の解明は意義があることだと考える。今回、女子バスケットボールにおいて、ACL損傷についての教育を受け予防トレーニングを行っているチームと教育・トレーニングを行っていないチームに対して練習中の移動量を経時的に測定し練習量と移動量の関係を中心に調査することでACL損傷予防を検討した。【方法】 高校女子バスケットボール部のチームC(19名・平均年齢15.9±0.7歳)とチームN(14名・平均年齢16.5±0.5歳)の2チームに所属する部員で、当日の練習に全て参加し、且つ膝に愁訴の無い者を対象とした。測定は、利き足・非利き足の移動量をロリメーター(日本シグマックス社製)にて3回ずつ測定した。以上の測定を、練習前・練習中間・練習後(以下、前・中・後)にそれぞれ実施した。チームCは当院スタッフが帯同し、ACLについての講義を受け予防トレーニングを行い3年間ACL損傷が発生していない。チームNはACLについての知識が無く予防トレーニングも行っておらず3年間で2例2膝のACL損傷が発生している。当日はこの2チームが4時間半の合同練習を行った。得られた測定値はWilcoxon符号付順位和検定を用い有意水準を5%未満として統計学的処理を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者にはヘルシンキ宣言に基づき、あらかじめ本研究の内容・個人情報の保護を十分に説明し、参加に同意を得て行った。【結果】 チームCの利き足は、前4.39mm・中5.31mm・後5.42mm、前-中(p<0.01)・中-後(p=0.60)、非利き足は、前4.16mm・中5.41mm・後5.66mm、前-中(p<0.01)・中-後(p=0.27)であった。チームNの利き足は、前4.14mm・中5.31mm・後5.55mm、前-中(p<0.01)・中-後(p=0.37)、非利き足は、前4.33mm・中5.29mm・後5.61mm、前-中(p<0.01)・中-後(p=0.08)であった。いずれのチームにも同様の結果が得られた。【考察】 移動量はACLの緊張だけでなく関節包・筋などの軟部組織の柔軟性も関与している。バスケットボールに多いダッシュ・ターン・ジャンプ動作は、膝関節に前後方向・回旋ストレスを与え、それらに対し直接的なストレッチとなることで、軟部組織の柔軟性が向上し、移動量の増加が認められたと考える。しかし、どちらのチームも同様の結果であったにも関わらずチームCにはACL損傷が発生していないことから、選手に対しACLについての教育や予防トレーニングを行うことが重要であることを示唆している。また、今回の研究では練習中間までの移動量の増加が著しく、中間からは時間経過とともに起こる上昇はゆるやかになるが、頭打ちにはならなかった。試合・練習の後半に受傷が多いという報告もあり、移動量の増加がこの一因となっている可能性が示唆されるため、これを念頭に置いて予防トレーニングをする必要がある。【理学療法学研究としての意義】 我々理学療法士としてはACL再建術後等の患者に対し動作指導を行う際に、疲労を起こさないように配慮することが多い。しかし、今回の研究結果により練習・試合の後半を見越しての確実な動作を獲得するためのアスレチックリハビリを実施し、競技復帰を許可することの重要性を示した。
著者
本間 憲治 八反田 葉月 篠原 悠人 鈴木 康太 杉原 俊一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>近年,脳血管疾患(以下,CVA)死亡数は減少傾向にあるが,要介護状態となる主原因疾患とされている。一方,心不全(以下,HF)は高齢化に伴い患者数は増加傾向にあり,今後はCVAとHFなど重複障害例の増加が予想される。</p><p></p><p>当院は脳神経外科に加えて循環器科,心臓血管外科を併設した141床の一般病院で,回復期病棟も併設しており,急性期から在宅まで一貫したリハビリテーションを提供している。当院の地域は脳卒中地域連携パスによる医療連携が積極的に行われており,生活期との連携については,退院時の申し送りを中心に行っている。</p><p></p><p>そこで今回,CVAとHFの重複障害例の申し送り内容に特徴がないか後方視的に検討する事を目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象はH26年9月からH28年9月に当院回復期病棟から自宅退院したCVA症例中,退院前に申し送りを行った者110例とし,既往にHF及び入院中にHFを併発したHFあり群29例とHFなし群81例の2群に分類し,申し送り書の内容について比較検討した。</p><p></p><p>分析方法は退院時申し送り書より抽出した年齢,退院時の合計FIM,運動FIM,認知FIMの2群間比較には対応のないt検定,性別,高次脳機能障害,及び認知機能の低下の有無の2群間比較にはχ二乗検定を用い有意水準を5%未満とした。また,退院時申し送り書の項目より,「予想される問題点」と「依頼事項」の記述内容を,計量テキスト分析ソフト「KH-Coder」を使用し,2群の上記各項目に対し共起ネットワーク分析(サブグラフ検出・媒介)を用いjaccard係数を0.2以上とした。共起ネットワーク抽出語数,線の数,グループ数を抽出した。なお,共起ネットワークとは,テキスト中の単語間の出現パターンが類似したものを線で結んだ図で,結びつきの強さをjaccard係数で表している。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>年齢,性別,退院時の合計FIM,運動FIM,認知FIM,高次脳機能障害の有無,認知面低下の有無の全てにおいて,両群で有意差を認めなかった。「予想される問題点」について,共起ネットワーク抽出語数はHFあり32,HFなし98,線の数はHFあり46,HFなし77,グループ数はHFあり8,HFなし11で,HFありで全てにおいて少なかった。「依頼事項」について,共起ネットワーク抽出語数はHFあり41,HFなし126,線の数はHFあり73,HFなし117,グループ数はHFあり12,HFなし11で,HFありでグループ数を除き少なかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>「予想される問題点」「依頼事項」について,共起ネットワーク抽出語数,線の数はそれぞれHFありで少なく,障害が重複し,問題点の細分化が難しく,抽象的で個別性の低い内容となる傾向が示唆された。</p><p></p><p>HFありでは「予想される問題点」に比べ「依頼事項」のグループ数は増加しており,HFありの抽象的で個別性の低い内容から具体的な依頼事項を絞り込むことが困難なため,依頼事項が散在化した可能性が示唆された。</p><p></p><p>今後の展望として,重複障害例の申し送り時には身体活動の増加や予防を目的とした個別性の高い内容を伝え,生活期との連携を行いたいと考える。</p>
著者
今泉 有美子 杉原 俊一 鈴木 康太 市場 友梨 八反田 葉月 本間 憲治 篠原 悠人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】脳卒中片麻痺者において,一時的な移動手段として車いすを利用することは多い。その際,非麻痺側上肢ではハンドリムを回し,下肢では床面を蹴り駆動するため,非対称な動作を助長している場面を多く経験する。片麻痺者の車いす座位について,先行研究では殿部荷重パターンの報告は散見されるが,車いす駆動中の座圧の変化について言及している報告は少ない。本研究の目的は,健常成人にて片麻痺患者を模した環境を設定して片手片脚駆動を実施し,前額面上で座位姿勢の影響を明らかにすることである。【方法】対象は健常成人6名(性別:男性3名・女性3名,年齢:25.7±0.8歳)とした。計測にはモジュラー車いす(松下電工株式会社製)を使用し,前座高は下腿長+2cm,後座高・フットサポートの長さは下腿長,アームサポートの高さは肘頭高+2cmに調整した。課題は右上下肢での片手片脚駆動による直進走行とし,座クッションを外したシートの上にベニヤ板を水平に設置(以下,水平条件),ベニヤ板を右側が高くなるよう5°傾斜させて設置(以下,傾斜条件),座面の中心がたわむように調整した張り調整シートのみ(以下,たわみ条件)の3条件で,10秒間の安静座位を保持した後,任意のスピードで5メートル駆動するよう指示した。計測項目は,静止状態からの座圧中心の変化と,体幹の前額面上での傾斜角度とした。座圧中心には,3条件の座面にSRソフトビジョン数値版(東海ゴム工業製)を設置して測定した。体幹の傾斜角度は,胸骨部の高さで巻きつけた加速度センサーと,デジタルビデオカメラで撮影した正面画像から,両肩峰を結んだ線と水平面のなす角をImage Jを使用して測定した値を使用した。分析方法としては,右手でハンドリムを掴んだ瞬間からハンドリムから手を放した瞬間までを1駆動周期とし,1駆動周期中と安静状態の座圧中心の差の平均値と,1駆動周期の駆動開始時と駆動終了時の体幹傾斜角度の差(以下,体幹傾斜角度の変化)の平均値を各条件で比較した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究の実施にあたり,被験者に研究の趣旨と測定の方法について説明を行い,協力の同意を得た後に測定を行った。【結果】座圧中心の安静状態と1駆動周期中の差の平均は,水平条件で右方向へ6.9±2.2mm,傾斜条件で右方向へ9.6±2.2mm,たわみ条件で右方向へ3.5±1.0mmであり,傾斜条件で駆動側への偏倚が大きく,たわみ条件では小さかった。加速度センサーで測定した体幹傾斜角度の変化の平均は,水平条件で右方向へ0.5±2.8°,傾斜条件で右方向へ1.1±1.0°,たわみ条件で左方向へ1.1±1.2°であり,傾斜条件で駆動側への傾斜が大きく,たわみ条件では駆動側と反対側への傾斜がみられた。画像から計測した体幹傾斜角度の変化の平均は,水平条件で右へ10.1±0.7°,傾斜条件で右へ11.7±1.0°,たわみ条件で右へ8.0±1.5°であり,傾斜条件で駆動側への傾斜が大きく,たわみ条件では小さかった。【考察】水平条件と傾斜条件では,駆動中の座圧中心の駆動側への偏倚,体幹の駆動側への傾斜を認め,いずれも傾斜条件で大きかった。健常者であっても,片手片脚駆動では体幹の前額面上での非対称性が生じると考えられた。また,傾斜条件は片麻痺者に見られる麻痺側股関節周囲筋の筋緊張低下や股関節外旋などによる骨盤の麻痺側への傾斜を模擬的に設定していることから,片麻痺者の片手片脚駆動では,骨盤の傾斜角度により体幹の非対称性が増強することが示唆された。今回たわみ条件では,座圧中心の偏倚と体幹傾斜角度ともに他の2条件に比べ小さかった。座面がたわんでいる環境では,駆動方向の重心移動が困難であることが考えられた。【理学療法学研究としての意義】脳卒中片麻痺者では,将来的に歩行を獲得する場合においても一時的に車いすを移動手段として利用する症例は多い。歩行獲得に向けて理学療法を進めていく上でも,車いす駆動中の身体の非対称性を軽減していくことは重要であると考えられる。車いすの片手片脚駆動での体幹の非対称性を明らかにすることで,車いす駆動の指導方法を検討する一助となると考えられる。
著者
杉原 俊一 鈴木 康太 八反田 葉月 松村 亮 三浦 いずみ 田中 敏明 加藤 士雄 棚橋 嘉美 宮坂 智哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに】今後の介護予防・日常生活支援総合事業では,元気な高齢者と二次予防事業対象者を分け隔てることなく,高齢者のニーズに応じた介護予防の取り組みが求められ,リハビリテーション専門職(以下リハ職)による互助活動を支援する仕組み作りが重要となる。そこで本研究では,二次予防事業終了者の自主体操グループにアセスメント訪問を実施し,今後の互助活動のリハ専門職の関与について検討することを目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象は,T区地域包括支援センターが後方支援している自主体操グループ参加者のうち(10グループ),リハ職によるアセスメントを実施した4グループ28名(平均年齢76.4±6.1歳,69~86歳)とした。調査項目は生活空間の評価としてLife space assessment(LSA),日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J,cut-off値26点),ハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性膝伸展筋力の体重比(下肢筋力),Timed Up And Go Test(TUG),開眼片脚立位時間(片脚立位),CS-30とした。更に携帯型加速度計(AYUMIEYE,GE社製)により,垂直・側方・前後方向の体幹部の加速度の二条平均平方根(root mean square,以下RMS)を算出し,RMSを歩行速度の二乗値で除して正規化した後,TUG,片脚立位,CS-30との各指標の関連性についてピアソンの相関係数を求め,危険率5%未満を有意とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】LSAは70.5±26.7点,MoCA-Jは20.7±4.4点,下肢筋力は31.9±12.4%BW,TUGは7.1±1.6秒,片脚立位は17.8±9.6秒,CS-30は16.5±4.2回で,MoCA-Jでは参加者の86%が,下肢筋力及び片脚立位では50%以上が転倒リスクのcut-off値以下であった。加速度との関連性は前後方向のRMSで相関を認めず,上下及び左右方向のRMSでTUG,CS-30,片脚立位時間で有意な相関を示した。</p><p></p><p></p><p>【考察】対象者の多くがMoCA-JによるMCIのスクリーニングでcut-off値以下を示し,生活機能において多面的な低下が危惧されることから,MCIの早期発見に向けたリハ職による関与の必要性が示唆された。LSAの結果より町内レベルの外出を行う対象者を含む場合,TUGやCS-30のみでは,転倒スクリーニングは困難な可能性が考えられた。一方,TUG等の各評価指標と歩行加速度については関連性を認めており,多様な参加者のアセスメントには,鋭敏に転倒リスクを捉えうる可能性がある加速度歩行指標の組み合わせが必要と考えられる。</p><p></p><p></p><p>【理学療法の意義】リハ専門職による互助活動の包括的な訪問アセスメントによる介護予防データの蓄積により,各地域における介護予防のスクリーニング法の確立に繋がる可能性がある。</p>
著者
大西 智也 橘 浩久 武田 功
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】国家試験に向けた学生指導について,過去に出題された国家試験問題(以下,過去問)を分析し,その傾向を知り,過去問を何回も見直しながら知識の習熟を図らせる。過去問を繰り返し学習していると,解答が自然と覚えられる。過去問を模擬試験として活用しずらく,学習の成果,その時々の実力を把握しずらい。その対策として,業者の模擬試験問題の活用,過去問が利用された簡易的な模擬試験問題(Webサイト)の活用などがある。そのようなことを,本学で導入しているGoogle for Education™上で実施できる可能性がある。そのシステムを開発するはじめの段階として,過去問を基にした問題集出力を自動化する独自のプログラムの作成を試みた。【方法】方法(1):国家試験問題の編集について,第40~50回の理学療法士国家試験過去問題の3095題(五択問題)を,1題ずつ,1.分野,2.設問,3.図の有無,4.解答選択肢1つ目,5.解答選択肢2つ目,6.解答選択肢3つ目,7.解答選択肢4つ目,8.解答選択肢5つ目,9.ID(任意)をカンマで区切った。1について,専門分野の理学療法評価,臨床運動学,中枢性疾患,などの13分野,基礎分野を解剖学,生理学,運動学,内科学,など11分野,計24分野に任意で分類した。3について,設問や解答に図がある場合,別ファイルに図を保存した。2および4~8について,設問および解答のとおり保存した。1~8を一組にして,9のIDを与え,CSV形式でコンピューターに保存した。方法(2):新たに作成したい問題の指定について,24分野ごとに出力したい問題数をそれぞれ指定したデータ(CSV形式)で保存した。そして,方法(2)で指定した分野別の問題数をもとに,方法(1)で作成したファイルから分野ごとにランダムに問題を抜粋し,次に,抜粋したすべての問題の解答選択肢順を自動で並べ替えて,問題とその解答を別々にコンピューターに保存(CSV形式)させる,という自動化したプログラム(オブジェクト指向)をPython 3.4.3で作成した。そのプログラムに指定しなければならないコマンドは,方法(1)で作成した過去問のデータファイル名と,方法(2)で作成した分野別に指定した問題数が保存されたデータファイル名,実行コマンドとした。【結果】過去問データから,指定した分野別の問題数をもとに,解答選択肢がランダンムに並べ替えられた状態で新たな問題とその解答が自動的に出力され,それをコンピューターに保存することができた。【結論】今回作成したプログラムで,自動的に再編集した過去問を出力させることができた。各々の学生が,必要に応じて,簡単に過去問から模擬的な試験問題を作成できる状態となった(現在は学生の要望に応じて著者が作成)。Google for Education™に,今回作成した独自のプログラムが組み込まれるように,また,国家試験対策の一環として学生が自由に使用できるようにすることが今後の検討課題である。
著者
佐倉井 紀子 古閑 さやか 芦田 朋子 佐倉 伸夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.B0665, 2008

【はじめに】重症心身障害児(者)の緊張の緩和、体幹や下肢のストレッチを行う場合、対象者の姿勢としては背臥位で頭部と体幹を床につけたまま臀部を挙上する、または腹臥位を取ることが多い。しかし、臀部挙上では、伸展パターンの強い障害者は緊張が増してストレッチが難しく、また腹臥位を取る方法では、酸素吸入中、人工呼吸器装着中、体が大きい、骨粗鬆症などの障害者にとっては体位変換が困難で、すぐさま行いにくい。そこで背臥位でプラットフォームより膝下を下垂する肢位を取ってアプローチをしたところ、全身の緊張が軽減し、体の左右対称度も増していることに気がついた。更に股関節外転位の蛙状変形についても、正中方向へのストレッチ効果があった。そこで、筋緊張の非対称によって体幹下部、股関節に変形が生じている重症心身障害児(者)に対して、背臥位から膝下下垂肢位を取った場合の対称性の改善率をみて比較検討を行うこととした。<BR>【対象】重症児(者):大島分類1;21名 (風に吹かれた股関節;14名、 蛙状肢位;7名)<BR>【方法】対象者の床上での背臥位と、膝下下垂肢位の6点評価を行い、各測定角度の左右非対称性の改善率を出して効果をみた。風に吹かれた股関節の測定では両角の平均値からの差を偏位とし、蛙状肢位の股関節部は90度との差を偏位として次の式にて改善率を計算した。改善率(%)={(背臥位の偏位-膝下下垂の偏位)/背臥位の偏位}×100<BR>【結果】膝下下垂肢位にて対象者全員に非対称改善の効果が見られ、背臥位と比較して風に吹かれた股関節の体幹下部は約47%、股関節部は約56%、蛙状肢位の股関節部は約52%の改善を認めた。<BR>【考察】単に膝下を下垂する姿勢をとるだけで、体幹と股関節の非左右対称性が50%ほどに改善する。腹臥位姿勢での管理は体幹部の非対称性改善に効果的であるといわれているが、膝下下垂肢位においても対称性が改善される理由として、背臥位では屈曲位になりがちな股関節を腹臥位と同様に伸展するためと考える。股関節屈筋群が足の重みで無理なく伸張されて、全身の対称性も増し、背面にかかる圧力も均等化されるためリラックスを得やすい。人工呼吸器装着中の方にも取り入れやすく、膝下下垂したまま上肢のアプローチを行えば体幹と上下肢を同時にストレッチすることになり効率も良い。更に対称性が改善されることで治療姿勢として次のような有効性がある。1)風に吹かれた股関節の下側下肢のストレッチが行いやすい2)風に吹かれた股関節のねじれ型も下肢正中位でもねじれが増さない3)蛙状肢位の腰椎後彎を前彎方向にストレッチしやすい4)座位姿勢への移行も良好である5)伸展パターンが抑制されアプローチしやすい6)下肢の交叉が強い場合も寝返りできる。膝下下垂肢位を日常的なポジショニングとして使用し、経時的な変化を見ていくことが今後の課題である。
著者
青山 倫久 綿貫 誠 内田 宗志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.F-66-F-66, 2019

<p>【はじめに,目的】</p><p> 股関節唇損傷を合併した寛骨臼形成不全(DDH)に対し股関節唇修復術を併用した内視鏡下棚形成術を行った女性新体操選手の臨床成績を検討し,競技復帰に向けたリハビリテーションについて報告すること。</p><p>【方法】</p><p> 当院で股関節唇修復術および内視鏡下棚形成術を施行した女性新体操選手6例(平均年齢20.4歳)を対象とした。術後は当院のプロトコルに従い,4週目から段階的に荷重を行い,可及的に股関節可動域および股関節周囲筋力と体幹筋力の改善を図った。患者立脚型スコアとしてModified Harris Hip Score(MHHS),iHOT12,Vail Hip Scoreを用い,術前および術後最終フォローアップ時の臨床成績を比較した。</p><p>【倫理的配慮】</p><p> 対象にはプライバシー保護に充分配慮することを説明し,本学会の演題登録に関して同意を得た。</p><p>【結果】</p><p> 6例とも受傷前と同等の競技レベルまで平均8.5ヵ月で復帰した。iHOT12は術前42.2±24.1点から最終フォローアップ時92.9±16.1点へ有意に改善した(p<0.05)。同様にVail Hip Scoreも術前47.7±19.9点から最終フォローアップ時85.6±10.2点へ有意に改善した(p<0.05)。MHHSは術前後で有意差をみとめなかった。</p><p>【考察】</p><p> 本邦ではDDHの高い有症率が報告されている。股関節唇修復術を併用した内視鏡下棚形成術は,DDHを呈する女性新体操選手に好ましい臨床結果および高い割合での競技復帰をもたらす可能性がある。</p>
著者
木戸 聡史 須永 康代 廣瀬 圭子 宮坂 智哉 田中 敏明 清水 孝雄 佐賀 匠史 髙柳 清美 丸岡 弘 鈴木 陽介 荒木 智子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P1197, 2010

【目的】本研究目的は、トイレ内の転倒者の検出による迅速な発見と保護を可能とするため、トイレでの転倒状態をより正確に検出するための解析アルゴリズムを構築することである。そのため、我々は静止画熱画像パターンを用いて健常被験者を対象に、正常なトイレ動作と、模擬的に再現したトイレでの転倒姿勢を16パターンのアルゴリズムで判別分析した。各アルゴリズムにおいて求めた判別率を検証し、より有効な転倒検出方法を検討した。<BR>【方法】被験者は歩行及びトイレ動作が自立できる健常成人男性5名とした。身体特性は、身長172.5±5.5cm、座高93.1±2.2cm、胸囲91.2±3.9 cmだった。熱画像センサはTP-L0260EN (株式会社チノー製)を用いた。熱画像センサの特性は解像度0.5 &deg;C、視野角60°、frame time 3 Hz、data point 2256 (47×48)で、地上から2.5mの高さに設置した。被験者が腰掛けるADL(日常生活動作)練習用便座の高さは0.4mとし、便座から0.4m離れた床面5か所に、印をつけた。被験者は模擬的な正常トイレ動作(NA)を1回実施した。NAは、トイレへの入室、便座への着座 、便座からの立ち上がり、トイレからの退室からなる動作とした。その次に、転倒を想定した姿勢変換(FA)を1回実施した。FAは、あらかじめ印をつけた5箇所の位置で、長座位(開脚・閉脚)、仰臥位(開脚・閉脚)となり、便座に対して着座する方向を変更して実施した。それらの動作および姿勢変換を熱画像センサで記録した。記録した熱画像のデータは47×48=2256 pointの温度データで、3Hzの間隔で取得した。被験者1人あたり、NAから20個、FAから60個の熱画像データを任意に抽出した。抽出した熱画像データは、熱画像のエリアを4、9、16、25、36、49、64、81エリアに分割し、分割した各エリアの分割内平均温度(Avg)と分割内最高温度(Max)を求めた。8×2=16個のデータ処理パターンごとに、被験者5名分のNAの100データとFAの300データを用い、判別分析を実施して、正常/転倒の判別率を求めた。統計解析ソフトウェアはSPSS Ver.17.0を用いた。<BR>【説明と同意】対象者に対して、ヘルシンキ宣言に基づき研究の趣旨と内容について口頭および書面で説明し同意を得た後に研究を開始した。なお本実験は、植草学園大学倫理委員会の承認を受けて行った。<BR>【結果】実験時の周囲温度は24.8±0.2&deg;Cで、被験者がいない状態の熱画像パターンの温度は最低23.9&deg;C、最高26.9&deg;C、25.1±0.3&deg;Cだった。NAの100データの温度は最低24.2&deg;C、最高31.5&deg;C、26.0±1.1&deg;Cだった。FAの300データの温度は最低24.2&deg;C、最高31.8&deg;C、26.0±1.0&deg;Cだった。熱画像パターンから被験者の表情は判別できなかった。4分割でMax(4Max)の判別率は75.0%、4Avgは88.0%、9Maxは90.8%、9Avgは90.5%、16Maxは94.0%、16Avgは94.3%、25Maxは96.8%、25Avgは96.0%、36Maxは96.3%、36Avgは95.5%、49Maxは95.0%、49Avgは96.3%、64Maxは96.8%、64Avgは97.3%、81Maxは96.3%、81Avgは97.8%で最大だった。81Avgでは判別分析で用いた81分割エリアのうち、判別率を導くための判別式の係数となった領域は21箇所だった。判別分析に使用したNA+FAの400データのうち、誤検出した数は、NAをFAと判別したものが1個、FAをNAと判別したものが9個だった。NAをFAと判別したものは判別式に使用しない領域に被験者の最高温度の領域があった。またFAをNAと検出した例は、便座に近接した領域で被験者の最高温度の領域がある場合が多く、便座に着座したパターンとの判別が困難だった。<BR>【考察】本研究は健常者をモデルとして、転倒を検出するためのアルゴリズムを検証した結果、熱画像センサのデータを81分割して各エリア内平均値を判別分析すると、トイレ動作の転倒を97.8%の判別率で検出した。誤検出した2.2%をさらに減らすためには動作や姿勢変換の加速度などの変化を転倒の判定に加えることが有効と考えられた。現状では、誤検出の部分を有人による看視で補助すれば転倒の判定は可能と考えられる。また本実験では、被験者の最高表面温度は約32&deg;Cで熱画像センサの温度分解能は0.5&deg;Cのため、室温31&deg;C以下で使用する条件下であれば、1秒以内に転倒が判別できる、被験者のプライバシーに配慮できる特性が得られた。今後は転倒判別に時系列的な要素を加えてより実用的な転倒判定を目指す。並行して病院や施設のトイレに熱画像センサを設置し、フィールドによる試験を実施する。<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究では、高齢者・障害者のADL支援に関するニーズを理学療法士として見極め、現場に必要なシステム開発への発想・着眼とシステムの検証を実施した。研究結果は病院および介護老人保健施設に必要な機器開発のための重要な基礎的データである。