著者
三星 健吾 佐藤 伸明 高橋 洋介 前川 慎太郎 田中 敏之 安村 明子 大牧 良平 柳川 智恵 瀧口 耕平 古川 裕之 北河 朗 吉貝 香織 恒藤 慎也 中西 拓也 高見 良知
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】2008年に啓発部事業の一つであったスポーツ啓発事業を,より一層充実した活動を行うために独立した部としてスポーツ活動支援部(以下,スポ活部)が誕生した。今回,当部の活動実績と今後の課題について報告する。【活動報告】現在活動を企画・運営している部員は17名(男性12名 女性5名),サポートスタッフ(以下スタッフ)登録者は124名(男性95名 女性29名)である。サポートを行っている競技は,成長期および育成年代のサッカー,高校柔道,市民マラソンと,障害者スポーツとしてシッティングバレー・車いすテニスの5種目である。部員は,各競技に班長1人と班員3名程度の小グループを作り,年間の活動計画や勉強会の企画を作成する。その企画内容にしたがい,スポ活部全体でサポートする形をとっている。主なサポート内容は,試合中の選手に対するコンディショニングおよび障害予防につなげるためのメディカルチェックや,スタッフに対し各競技の特性や各現場で必要な知識および技術に関する勉強会である。年間の活動日数は5種目すべての,試合前の勉強会,当日のサポート,サポート後の反省会を含めると,年間30日程度となっている。【考察】選手および大会関係者からの我々に対する認知度は,サポートを重ねるごとに向上している。一方でサポートする競技が増えてくるに従い活動時期が重なり,スタッフの確保が困難な場合がある。スタッフの知識および技術の維持・向上を図りながら,現場活動へ継続的に参加するモチベーションをいかに維持していくかが大きな課題である。【結論】今後の方針として,社会貢献事業としての活動の継続と更なる発展はもとより,今までサポートしてきた選手の評価および治療効果をまとめ,各スポーツの特性を把握し発生しやすい外傷や慢性障害を啓発し,予防事業にも力を入れていきたいと考える。
著者
伊藤 麻子 草苅 尚志 大田 健太郎 下斗米 貴子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1041, 2007

【目的】脳血管障害患者の理学療法では早期から歩行獲得のため装具療法を用いるという報告が多くされている。しかし、その作製時期や種類の決定には様々な意見がある。そこで今回、装具作製からの経時的な変化、患者が感じている装具とはどのようなものなのかについてアンケート調査を行い、若干の知見を得たので報告する。<BR>【対象と方法】対象は平成18年10月10日から10月25日の間に協力を得られた当院に外来通院、または通所リハビリテーションを利用され、これまでに下肢装具(以下、装具)を作製したことのある脳血管障害患者46名(平均年齢64.6±17歳、男性26名、女性20名、発症からの経過7.3±26年)。方法は項目1.装具作製時期2.装具の種類3.使用状況4.満足度5.修理や再作製の有無6.今後の使用継続の有無について口述選択式によりアンケート調査を実施した。<BR>【結果】1.装具作製時期は発症から5~6ヶ月以内が約半数であった。2.装具の種類はプラスチック短下肢装具が67%と最も多かった。3.装具を現在も使用している(以下、使用者)83%、使用しなくなった(以下、不使用者)17%であり理由は装具を使用しなくても歩行が可能となったが最も多く、その他痛みや痺れ、靴の問題などが挙げられた。使用状況は常時使用58%、外出のみ34%、リハビリテーション時のみ8%、使用する理由は足部の内反を防ぐ、安心感があるという回答が多かった。4.現在の装具に不満を感じているのは26%、理由は装具の形や重量、靴の問題、装着の手間などであった。5.装具の再作製や修理は71%が行っていた。6.今後も装具を使い続ける87%、できるなら使いたくない13%、理由は合う靴が少ないや装着の手間などであった。<BR>【考察】当院では3年前より回復期病棟が開設され、以前よりも早期に歩行獲得のため装具が作製されるようになっている。医療制度の改定に伴いリハビリテーション実施日数が限られてきているため、今後もこれまで以上に装具の適合判定を入院後早期から定期的に考慮・検討し、移動能力、ADLの獲得を目指していくことが重要であると考える。今回の調査では使用者のうち装具を常時使用し、今後も使用継続を希望している患者が多く、装具が患者の生活の中でとても重要な役割りを果たしていることがわかった。しかし、装具に対して形や重量、靴の問題など不満を感じる使用者もいることから、それらの問題を改善していくためにも機能の向上、作製後のフォローアップの必要性を感じ、またそれを担うのも理学療法士の役目であると改めて感じた。
著者
松田 雅弘 大山 隆人 小西 由里子 東 拓弥 高見澤 一樹 田浦 正之 宮島 恵樹 村永 信吾 小串 健志 杉浦 史郎 三好 主晃 石井 真夢 岡田 亨 亀山 顕太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】加齢に伴う運動器障害のために移動能力の低下をきたし,要介護になったり,要介護になる危険の高い状態を「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」と定義し,中高齢者の運動器に起こる身体状態として知られている。子どもの発育の偏りや運動不足,食育などが原因となり,筋肉,骨,関節などの運動器のいずれか,もしくは複数に障害が起き,歩行や日常生活に何らかの障害を引き起こすなど,子どもでも同様の状態が起こりうる。さらに,転んでも手がつけない,片脚でしっかり立つ,しゃがみ込むなど基本動作から,身を傷害から守る動作ができない子が急増している。幼稚園児36.0%,就学児42.6%,小学校40%で片足立ち。しゃがみ込み,肩180度挙上,体前屈の4項目の検査で1つでも当てはまる児童生徒が存在する。【活動報告】千葉県浦安市の児童に対するロコモの検診を行政と連携し,千葉県スポーツ健康増進支援部中心に実施した。参加者は3~12歳の334名であった。検査項目は先行研究にある片脚立ち,肩180度挙上,しゃがみ込み,体前屈以外に,四つ這いバランス,腕立て・腹筋などの体幹筋力,2ステップテスト,立ち上がりテストなど,柔軟性・筋力・バランス能力など12項目とした。また,食事・睡眠などのアンケートを実施した。当日は理学療法士が子どもと1対1で検査することで安全性の確保と,子どもの集中力を維持させ,検診を楽しむことで計測が可能であった。【考察】この検診で成長にともなう運動発達が遅れている子の把握が可能であった。親を含めた検診を通じて家族の運動への関心が高まったことや,自分の子どもの運動能力の把握,日頃の運動指導にもつながった。【結論】今回の検診で子どもの運動機能の現状を把握するのに,この取り組みが有益なことが示唆された。今後は広く地域と連携して子どものロコモ検診を行い,健康状態の把握と運動の啓発を理学療法士の視点として取り組んでいきたい。
著者
内薗 幸亮 原 正文 緒方 隆裕 伊藤 平和 黒木 将貴 外間 伸吾
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CbPI2205, 2011

【目的】<BR> 当院ではプロ野球選手を対象に障害予防およびコンディショニング目的で、シーズン終了後にメディカルチェックを行っており、同時に超音波検査を用いた測定を実施している。当院山田らや松谷らは超音波検査を用いた先行研究において、投球動作の繰り返しが棘下筋厚に影響を及ぼすと報告している。超音波検査による棘下筋厚の量的側面からの報告は散見されるが、質的側面からの報告については少ない。<BR>また、プロ野球投手は先発投手と中継・抑え投手ではコンディショニング方法の違いから棘下筋にかかる負担が異なると考えられる。そこで今回は、先発投手と中継・抑え投手のシーズン終了時における超音波検査の結果より、棘下筋の質的評価を行ったので報告する。<BR><BR> <BR>【方法】<BR> 対象は2007年から2009年のシーズン終了後にメディカルチェック目的で当院を受診したプロ野球投手計53名中(2007年:16名 2008年:15名 2009年:22名)、シーズンを通して一軍で競技した37名とした。この37名を先発群16名と中継・抑え群21名(以下中継群)に分類した。<BR> 超音波検査は測定部位を肩甲骨内側1/4・肩甲棘下方30mmとした。安静時および収縮時の棘下筋厚を測定し、棘下筋の質的評価として、両者の比率より収縮率を計測した。さらに、安静時の棘下筋々腹層から、ヒストグラムのL値を計測した。ヒストグラムとは、硬い組織は明るく、軟らかい組織は暗く抽出される超音波の特性を応用し、指定した領域の組織の明暗を階調値に置き換えたもので、硬化度を数値化したものと考えている。L値は計測領域内にて最も多く含まれる階調レベルであり、L値が高くなれば水分量の低下を示す。 <BR> 肩関節理学所見は当院で実施している肩関節理学所見11項目テストを実施し、それぞれ陽性率を算出した。さらに肩関節可動域として2nd ER、2nd IRの計測を行った。<BR> 上記超音波検査の結果および肩関節理学所見より先発群と中継群の棘下筋の質的状態について比較、検討を行った。<BR><BR>【説明と同意】<BR> 対象には本研究の趣旨について説明し、同意を得た。<BR><BR>【結果】<BR> 収縮率は先発群:135.9%、中継群:127.3%であった。L値は先発群25.17、中継群:25.47であった。<BR> 肩関節理学所見11項目テストの陽性率は、1)SSD先発群:68.8%、中継群:85.7%、2)CAT先発群:87.5%、中継群:90.5%、3)HFT先発群:100%、中継群:90.5%、4)HERT先発群:6.3%、中継群:4.8%、5)Impingement test先発群:37.5%、中継群:33.3%、6)Loose test先発群:81.3%、中継群:47.6%、7)EET先発群:62.5%、中継群:42.9%、8)EPT先発群:68.8%、中継群:42.9%、9)ER先発群:50%、中継群:38.1%、10)IR先発群:25%、中継群:100%、11)SSP先発群:43.8%、中継群:42.9%であった。また、肩関節可動域として2nd ERは先発群:126.8°、中継群:122.2°。2nd IRは先発群:32.9°、中継群:27.2°であった。<BR><BR>【考察】<BR> 今回の結果より、中継群は先発群に比べL値は高く収縮率は低下していた。当院山田らは先行研究において、L値が高い状態での収縮率の低下は棘下筋委縮により線維化を起こし、水分量が低下した状態であると述べている。このことから、中継群は先発群に比べ棘下筋が線維化を起こしている状態ではないかと考えられる。<BR> また、理学所見との関連性をみると、中継群は先発群に比べ、肩関節可動域を示す2)CAT、3)HFTの陽性率が高く、2nd ER、2nd IRの可動域低下がみられた。しかし、筋機能バランスを示す7)EET、8)EPT、棘下筋の筋力を示す9)ERでは先発群の陽性率が高かった。このことから、先発群は収縮率、L値などの質的異常はみられないが、棘下筋の筋機能低下が生じていると考えられる。<BR>投球動作時に棘下筋にかかる負担について、投球動作におけるフォロースルー期の棘下筋遠心性収縮による筋自体の損傷などが棘下筋萎縮の原因と報告されている。さらに、松谷らはシーズン終了後のプロ野球投手の安静時棘下筋厚が変化する要因として登板数の影響が考えられたと述べている。これらの報告から、ほぼ毎日投球動作を繰り返す中継群は、ローテーションで登板する先発群とは異なり、棘下筋にかかる遠心性収縮による筋損傷が大きく、棘下筋の線維化が起こっているのではないかと考えられる。<BR> <BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 投球動作の繰り返しにより棘下筋にかかる負担について、プロ野球投手を先発群、中継群に分類し、理学所見と超音波検査から棘下筋の質的側面からの検討を行った。<BR>今回の結果より中継群は先発群に比べ棘下筋が線維化を起こし可動域の制限につながっていると考えられ、先発群は棘下筋の筋機能の低下が起こっていると考えられる。棘下筋の質的評価は投球障害予防、コンディショニングに応用できると考える。<BR>
著者
松尾 善美 Cahalin Lawrence Collins Sean 松谷 綾子 Caro Francis
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.G1129, 2007

【はじめに】理学療法(以下PT)の教育および専門職としての現状(以下PTEPI)に関する情報は、世界のあらゆる地域においても未だ少ない。PTEPIについて理解を深めることは、全世界のPT実践、教育・研究分野を刺激することになる。さらに、国際的な協力事業、世界的なPT実践、研究に関する指針の開発やわが国の今後のPTを考える際に有用であると考えられる。<BR>【目的】本国際共同研究の目的は、世界40カ国のPTEPIについての調査し、世界におけるPTの教育および専門職としての今後の展望を得ることである。<BR>【対象】対象は、世界理学療法連盟から情報の得られた40カ国のPT協会の連絡先代表者である。<BR>【方法】我々は、PT教育課程の認可制度、PTの資格取得制度、PT専門分野の認可制度、理学療法士の所得関連事項の4カテゴリー、全部で22項目からなる調査表を英語で作成し、5カ国語(日本語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、韓国語)に翻訳した。次に、40カ国の連絡先代表者に依頼文書と調査用紙を同時に電子メールで送付した。同意を得られた回答について記述的統計を行った。本研究は、財団法人ファイザーヘルスリサーチ振興財団の助成を受けて実施した。<BR>【結果】回答率は38%であった。回答の大多数は北欧およびヨーロッパ諸国であり、中央アメリカおよび南アメリカからは2カ国のみから回答を得た。PTEPIは、1カ国を除いて資格認定制度と理学療法士教育の認可課程を有しており、5カ国を除いてスポーツPTと老年PTが最も普及しており(80%)、専門職認定課程を有していたという点については共通点が見られたが、それ以外の多くの項目において各国間で明らかな相違点があった。養成校の認可再認可の頻度は、1回のみ(20%)、1年毎(20%)、5年毎(13%)、6年毎(27%)と広範囲の回答であった。理学療法士の資格取得に、53%の国では筆記試験、40%の国では実技試験、27%の国では口答試験を必要としていた。13カ国のPT平均年収は32,203±20,030USドルであった。<BR>【結論】PTEPIは、認可課程や資格取得、専門分野の確立について共通点が多かったが、それ以外については各国間で大きな相違点が確認できた。<BR><BR>
著者
熊谷 匡晃 岸田 敏嗣 稲田 均
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cd0839, 2012

【目的】 股関節疾患に伴う跛行としてよく経験するデュシャンヌ跛行は股関節外転筋力の低下で起こると定義されており,経験則的にそのように捉えてしまうことが多い。しかしながら,筋力に問題がないにも関わらず跛行がみられるなど,MMTの結果との不一致を感じることがあり,単なる股関節周囲筋の筋力評価では解釈に難渋することがある。実際には疼痛,関節拘縮(股関節内転制限),脚長差,大腿骨頚部の短縮や骨頭の外上方変位などの骨形態異常による力学的要因などの原因で起こっている可能性もある。本研究の目的は股関節内転制限および外転筋力が跛行に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】 対象は2010年7月~2011年6月までに当院を受診し,大腿骨近位部骨折および変形性股関節症により手術を施行され,転院または退院時に杖なし歩行が可能となった21名とした。疾患内訳は大腿骨近位部骨折16名,変形性股関節症5名であった。荷重時に体幹の代償が見られない正常歩行群をN群(男性1名,女性9名,平均年齢72.9±12.1歳),荷重時に体幹を患側へ傾けるデュシャンヌ跛行群をD群(男性1名,女性10名,平均年齢65.3±9.9歳)の2群に分けた。検討項目は,1)N群とD群における股関節外転筋力,2)N群とD群における股関節内転角度,3)股関節内転角度の違いによる跛行出現率,とした。股関節外転筋力については,徒手筋力測定装置(酒井医療社製,EG‐200)を使用し,側臥位での股関節外転筋力を最大等尺性収縮で3回測定し,平均値を体重で除して標準化(kgf/kg)した。統計処理は両群間の外転筋力と内転可動域の検定にはウェルチのt検定,股関節内転角度の違いによる跛行出現率にはχ<sup>2</sup>検定を用い,有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 被検者には,事前に本研究の主旨と内容について説明し,同意を得た。【結果】 患者背景として年齢,性別には両群間で有意差を認めなかった。1)股関節外転筋力は,N群0.17±0.04kgf/kg,D群0.15±0.07kgf/kgで有意差は認められなかった。2)股関節内転角度は,N群14±3.2°,D群6.8±5.1°であり,N群で有意に内転域が大きかった。3)股関節内転角度の違いによる跛行出現率は,股関節内転が5°以下では100%,10°では40%,15°以上では22.2%と内転域の増大とともに跛行出現率が有意に低下した。【考察】 股関節疾患の術後症例において,股関節内転角度の減少がデュシャンヌ跛行の出現に影響を及ぼすことが明らかとなった。一方,股関節外転筋力はデュシャンヌ跛行の直接的な関連因子とは言えなかった。しかしながら,徒手筋力計を用いた等尺性の筋力は時間的要素や空間的要素が考慮されていない出力のみの評価であり,必ずしも筋機能の低下を示しているとは言及できず,今後の検討を要する。股関節内転制限の原因として,変形性股関節症に対するTHAの場合は,骨頭を引き下げることによる外側軟部組織の緊張増大,手術侵襲による筋スパズムおよび術創部の伸張刺激,皮下の滑走性低下などが考えられる。一方,大腿骨近位部骨折の場合は,変股症とは異なり筋の変性はないため,基本的には術後の筋攣縮が考えられる。本研究の結果より,股関節内転角度が5°以下のケースで全例跛行を認めたことは,可動域とデュシャンヌ跛行が関連する可能性を示した上で意義深い。正常歩行における股関節の内転角度は踵接地から足底接地にかけて約4°必要とされているが,立位では外転筋の遠心性収縮の強要とともに筋内圧が高まるため,背臥位で測定した内転角度以下になる可能性が考えられる。デュシャンヌ跛行の原因を筋力の観点からみると,体幹を患側に傾けることは骨頭から重心線までの距離を短くし,弱い筋力で歩行する代償運動と言えるが,股関節内転制限の場合は,骨盤が外方移動できない状態を体幹の側屈で相殺しているという反応と解釈される。つまり,外観は同じでも原因は全く異なる病態であるため,それらを見極める理学療法士の観察力や適切な評価が大切であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 股関節は腰椎や骨盤アライメントとの関連の中で評価することが大切であるが,代償運動を見逃さず,局所としての股関節機能の評価が適切にできることも大切である。エネルギー効率がよく安定した歩行を獲得するためには,股関節内転制限も含めた適切な評価と運動療法を展開していくことが重要である。変形性股関節症に対するTHAと大腿骨近位部骨折に対する人工骨頭置換術では,手術内容はほぼ同様であるが,外傷と変性疾患の違いや年齢,脚長差など患者背景に影響を及ぼす因子が存在するため,今後は症例数を増やした上で疾患別の比較検討についても加えていきたい。
著者
師岡 祐輔 國澤 洋介 高倉 保幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】我々は,改良フランケル分類(改F分類)Cの頸髄損傷者において,受傷後早期(1ヶ月以内)の移乗動作獲得には早期より座位能力がある程度保たれていることが重要であることを報告した。しかし,移乗動作に大きく影響を与える下肢運動スコアとの関連や具体的な予測指標についての検討は不十分であった。本研究では,改F分類Cの頸髄損傷者における受傷後早期の移乗動作獲得状況を検討し,目標設定に有益な下肢運動スコアと座位保持能力を含めた予測指標を明らかにすることとした。【方法】対象は2010年から2014年までに急性期病院で理学療法(PT)を実施した改F分類Cの頸髄損傷者31例とした。方法は,診療録の後方視的観察研究とした。移乗動作獲得の判定は機能的動作尺度(0-4点の5段階評価)を用い,2点以上(見守りから自立)を獲得群,2点未満(全介助から一部介助)を非獲得群とした。下肢運動麻痺は,ASIA機能障害評価の下肢運動スコア(LEMS),座位能力(座位G)は,ISMWSF鷹野改変(0-5点の6段階評価)を用い,それぞれPT開始時に評価を行った。統計学的解析は,受傷後4週の移乗動作獲得可否におけるLEMSのカットオフ値はROC曲線を用いて算出した。また移乗動作獲得可否とLEMSのカットオフ値に基づいた群分けによるクロス集計表,さらに我々の研究を参考にLEMSのカットオフ値に加え座位Gに基づいた群分けによるクロス集計表を作成した。【結果】受傷後4週では,移乗動作獲得群は7例,介助群は24例であり,移乗動作獲得率は22.6%であった。4週後の移乗動作獲得可否におけるLEMSのROC曲線は曲線下面積0.80と高い予測能を示した(p<0.05)。移乗動作獲得を検出するLEMSのカットオフ値は27点であった。移乗動作獲得可否とLEMSの関係は,LEMSが27点以上で移乗動作獲得群は6例,介助群は7例であり,27点未満で獲得群は1例,介助群は17例であり,陽性的中率は46.2%,陰性的中率は94.4%であった。27点以上かつ座位G1で獲得群は5例,介助群は2例であり,27点未満で獲得群は2例,介助群は22例であり,陽性的中率は71.4%,陰性的中率は91.6%であった。【結論】先行研究では半年や一年などの長期的な移乗動作獲得についての検討は散見されるが,受傷後早期における移乗動作獲得に必要な具体的な指標は明らかとなっていない。今回の結果から,PT開始時から評価可能なLEMSのカットオフ値27点を用い,受傷後4週時点において移乗動作獲得が困難とされる例の予測に役立てることができ,獲得動作を視野に入れたPT介入の工夫の必要性が示唆された。また,LEMS27点かつ短時間の座位保持可能(座位G1)を指標とすることで,獲得可能となる例の予測する指標としての有用性が示唆された。
著者
小笠原 沙映 浦辺 幸夫 前田 慶明 沼野 崇平 藤下 裕文 福井 一輝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>足関節内反捻挫は発生頻度の高いスポーツ外傷であり,予防のためにテーピングが行われている。テーピングは,テープの走行や本数を変化させることで,関節の制動効果を高めている。テープの走行の違いにより,関節運動への影響が変化するが,1本のテープが関節運動にどのように制限を与えているかは明らかではない。本研究の目的は,後足部の内反制限のため,走行が異なる3種類のテープを施行し,サイドステップ動作時に,テープがどのように関節運動を制限しているのかを明らかにすることとした。</p><p></p><p>仮説は,距骨下関節軸に直交するテープの走行が後足部の内反制限に最も効果的であるとした。</p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,足関節捻挫の既往のない健常な女性8名(年齢21.4±0.5歳,身長157.3±5.6 cm,体重49.4±5.5 kg)とした。テープは日東メディカル社のEB-50を使用した。テープは対象の利き脚(ボールを蹴る脚)に,内果から足底を横切り,下腿遠位1/3まで貼付した。テープの張力を一定にするため,テープを徒手筋力計(アニマ社)のプローブに当てた状態で張力を加え,40 Nになった時点で貼付した。課題動作は,利き脚側の側方1 mへのサイドステップとした。課題動作の分析には,赤外線カメラ16台からなる三次元動作解析装置(Vicon Motion Systems社)を使用し,サンプリング周波数100Hzで記録した。赤外線反射マーカーをOxford foot modelに基づき下肢30箇所に貼付した。測定条件は,①テープなし,②足底面に垂直で,テープの後縁が外果の最突出部を通る走行のテープ,③足底面に垂直で,テープの前縁が外果の最突出部を通る走行のテープ,④足底面に対して後方に傾き,テープの後縁が外果の最突出部を通る(距骨下関節軸に直交する)走行のテープの4条件で行った。動作解析ソフトVicon Nexus1.8.5(Vicon Motion Systems社)を用いて,着地時の後足部内反角度とその後の最大内反角度を算出した。4条件間の比較には,Wilcoxon符号付順位和検定を用い,危険率5%未満を有意とした。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>足部接地時の後足部内反角度(平均±SD)は,①16.0±5.2°,②14.0±7.7°,③14.4±7.8°,④13.1±10.0°となり,④は①と比較して有意に低値となった(p<0.05)。最大後足部内反角度は,①19.5±5.7°,②18.8±8.9°,③17.1±8.2°,④16.0±9.2°となり,各条件間で有意差はなかったが,④が最も低値となった。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>サイドステップ時の後足部内反角度は,④が最も低値を示したことから,距骨下関節軸に直交した走行が後足部の内反制限に与える影響が大きく,仮説を支持する結果となった。さらに,②のように外果の前方を通るテープ,③のように外果の後方を通るテープでも,足底面に対して垂直に走行するため,一定の効果を示すことが分かった。今後は,1本ずつのテープの役割を考えて,さらに検討をすすめたい。</p>
著者
関根 康浩 河原 常郎 土居 健次朗 大森 茂樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】我々は第48回日本理学療法学術大会で下位胸郭の動きが体幹動作に影響する可能性を報告した。生体内では腹腔内圧を高める事で体幹が固定され上下肢筋力発揮は高まるとされる。意図的に腹腔内圧を高めやすくするものとして骨盤コルセットがあるが,自動で腹腔内圧を高める一つのパターンとして横隔膜を上昇させ肋骨下角を減少させる事がある。肋骨下角とは左右の肋骨弓の間にできる角度である。肋骨下角減少・下位胸郭の動きを制限するものとしてDainae Leeが提唱したChest Gripping(以下,CG)があり,これは上部腹筋の過緊張により肋骨下角が減少している(下位胸郭横径拡張不全)状態である。しかし前記の通り自動で肋骨下角を減少させる事で腹腔内圧は高まる事から,CGではなく骨盤コルセットのように他動で肋骨下角を減少させる事で腹腔内圧を高めやすくする事が可能ではないかと考えた。本研究の目的は,肋骨下角を他動および自動で減少させる事による上肢の筋発揮に対する影響を明らかにし,肋骨下角を減少させる事の意義を見出す事とした。【方法】対象は,整形外科的疾患がなく,呼吸器疾患を有さない,非喫煙者である健常成人男性11名(年齢23.4±2.1歳,BMI22.1±1.5)とした。肋骨下角は胸骨下端と両側の乳頭からの垂線と下位肋骨の交点がなす角度と定義した。計測は上肢は体側に下垂した立位にて安静時・最大吸気時・最大呼気時の角度をゴニオメーター(OG技研)にて計測した。筋力測定は肩関節外旋筋力を採用した。測定は,徒手筋力測定器IsoforceGT-310(OG技研)を用いた。端座位で測定側肩関節中間位・肘関節90°屈曲位・前腕90°回外位にて橈骨茎状突起にセンサーパッドが当たるようにした。被験者の正面には床に垂直なテープを貼った全身鏡を用意し,代償を抑制した。測定肢位は安静呼吸での正常群(以下,N群),バンドにて肋骨下角を他動で減少させた群(以下,P群),努力呼気とdrow-inにて肋骨下角を自動で減少させた群(以下,A群)の3肢位とした。P群では強制呼気最終での最小肋骨下角まで減少させた肢位で締め付けた。A群では努力呼気により胸椎が後弯しないよう指示をした。計測は5秒間かけて行い,各肢位で3回ずつ計測(休憩30秒間)を行った。各群間の差の有無は対応のある一元配置分散分析を用いて検証し,多重比較はBonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。【結果】肋骨下角角度は安静時で87.9±7.9度,最大吸気で101.6±11.1度,最大呼気で79.8±7.8度であった。被験者の肩関節外旋筋力の平均値はN群で66.1±6.2N/kg,P群で62.1±11.0N/kg,A群で69.4±9.6N/kgであり,P群とA群との間で有意差を認めた(p=0.0089)。【考察】腹腔内圧を高めるには腹横筋,骨盤底筋群,横隔膜,多裂筋等が協調して働く必要がある。骨盤コルセットにより腹部を締め付ける事で主に体幹前後の筋(腹横筋・多裂筋)の代わりをし,圧迫された腹腔内圧は垂直方向へ逃げようとし骨盤底筋群・横隔膜を刺激する事で効率よく腹腔内圧を高める事ができる。また脊柱の良肢位の保持をする事でも腹腔内圧を高めやすくしていると考えられる。本研究でのP群は肋骨下角を減少させる事で胸椎後弯位になりやすく,横隔膜が弛緩しやすい状態であった為,腹腔内圧が高まりにくく肩関節外旋筋力発揮も有意に低下したのではないかと考える。A群では被験者に努力呼気の際に胸椎が後弯しないよう指示をしていたが,P群にはそのような指示をしていなかった事からも胸椎後弯姿勢になりやすかったと推察される。逆にP群で胸椎伸展を意識させて行わせる事で背部の多裂筋への刺激が高まり腹腔内圧の上昇が見られたのではないかと考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究により肋骨下角を他動で減少させる事は腹腔内圧を高める事を制限する可能性があり骨盤コルセットのような効果は得られない事が示唆された。肋骨下角を指標とした事については体表からのマニュアル計測とレントゲン画像上での計測結果でマニュアル計測での有意性を出す必要がある。
著者
菅田 由香里 上内 哲男 矢部 裕一朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0908, 2008

【はじめに】<BR>脳卒中片麻痺患者における大腿骨頚部骨折はしばしば発生し、その手術後の理学療法に関しての報告はいくつかある。しかし骨折治療後、再度同側の大腿骨骨折を起こした症例の報告は少なく、さらにステム周辺での骨折例はほとんど見当たらない。今回我々は、脳卒中片麻痺患者の人工骨頭置換術後に、同側のステム中間部での大腿骨粉砕骨折の症例に対する理学療法を経験したので報告する。<BR>【症例紹介】<BR>69歳、男性。診断名:右大腿骨骨折。現病歴:平成19年7月、外出先にて居眠り中椅子から転落し受傷。右大腿骨骨折と診断され、当院入院。保存療法にて経過観察となった。既往歴:44歳で脳梗塞右片麻痺(Brunnstrom Recovery Stage上下肢4)、失語症。61歳で転倒により右大腿骨頚部骨折にて右人工骨頭置換術施行。入院前レベル:屋外T字杖歩行自立。ADLはすべて自立。週5回作業所に通っていた。<BR>【理学療法経過】<BR>受傷後翌日より、ベッドサイドにて開始。骨折部の安静のため、麻痺側股関節周囲の筋収縮と股関節回旋の動きは禁忌であり、麻痺側下肢への積極的なアプローチは困難であった。そのため離床にむけてのアプローチとして、ギャッジアップによる起立性低血圧の予防、脱臼予防に対してのポジショニング、麻痺側の関節拘縮予防、非麻痺側下肢の筋力強化を行った。受傷5週で仮骨形成を認め、全荷重で平行棒内歩行練習を開始し、7週よりT字杖歩行練習開始した。16週で良好な骨癒合が得られ、自宅退院となった。退院時レベル:屋内T字杖自立、屋外T字杖歩行見守りレベル。院内ADLは見守りにてすべて可能。<BR>【考察】<BR>今回、脳卒中片麻痺を合併した人工骨頭置換術後のステム中間部での大腿骨粉砕骨折という症例を経験した。本症例では、保存療法にて長期間の臥床を余儀なくされ、さらに骨折部の安静のため早期リハを積極的に行うことができなかったものの、仮骨形成後スムーズに離床することができ、退院時には受傷前に近い機能を再獲得して自宅退院することができたことは良好な結果であったといえる。臥床期間中では安静のためできることが限られている中で、離床への働きかけができたことはよい結果に繋がったのではないかと考える。また、脳卒中片麻痺患者の骨折では、片麻痺の存在や長期臥床による合併症を予後悪化因子の1つにあげている報告があるが、本症例では保存療法による長期臥床という悪条件の中良好な成績であったことは、麻痺の程度が比較的よかったこと、受傷前の歩行能力が高かったことなども影響したと考える。<BR><BR><BR>
著者
北村 弘幸 高井 美帆子 舟木 一夫 岡村 秀人 西嶋 力 古桧山 建吾 梶藤 いづみ 佐野 和幸 阿部 忍 森 範子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.G-142_1-G-142_1, 2019

<p>【目的】医療の高度化と地域包括ケアシステムの構築に対応するために、保健医療福祉サービスに関わる職種と協働する機会が増えている。多職種が連携するにあたり情報の共有が必要不可欠である。本調査は、多職種間の連携実態を把握するために、リハ職の栄養職間との相談意識とその実態を調査した。調査目的は良好な連携を目指すため、栄養に関するリハ職と栄養職の連携実態をリハ職種間で比較し、その課題を明確にすることにある。</p><p>【方法】対象はPT230名、OT91名、ST27名、計308名で、所属機関は病院勤務232名、施設勤務36名、在宅系勤務40名であった。方法はアンケート調査としてWeb net調査にて実施した。調査期間は2017年10~12月、回収率(会員数対)は15%であった。設問1は「日ごろの活動で管理栄養士・栄養士(栄養職)に相談したいと思ったことがあるか」に対し「よくある」「たまにある」「ない」で回答した(相談期待意識)。設問2は「身近に協働できる栄養職はいますか?」に対し「たくさんいる」「少しいる」「いない」の3件法で回答を得た(協働の実態)。回答を「たくさんいる」「少しいる」を合わせて「いる」と判定した(協働の有無)。リハ職の所属により連携実態(連携率)を比較し、統計学的解析はχ<sup>2</sup>検定を使用し有意水準5%未満とした。</p><p>【結果】相談期待意識について、病院勤務では「よくある」31%、「たまにある」56%、「ない」13%、施設勤務では31%、64%、6%、在宅系勤務では35%、55%、10%であった。所属施設による差異はなかった。協働の実態について所属別に比較すると、病院勤務では「たくさんいる」13%、「少しいる」69%、「いない」18%であった。施設勤務は14%、78%、8%、在宅系勤務は3%、43%、55%であった。病院勤務と施設勤務では「少しいる」が最も多く、在宅系勤務では「いない」が最も多かった。協働の有無について所属別に比較すると、病院勤務では「いる」82%、「いない」18%であった。施設勤務は92%、8%、在宅系勤務では45%、55%であった。病院勤務82%と施設勤務92%は有意差なく高値であった。在宅系勤務では相談できる栄養職がいる45%で、施設勤務より47ポイント、病院勤務より37ポイント有意(p<0.01)に低値であった。</p><p>【結論】リハ職の約9割が栄養職と「相談したい」と思っており、その程度は所属施設による差異がなかった。しかし、病院や施設勤務のリハ職は、栄養に関して相談できる栄養職がいるが、在宅系勤務では、相談意識が高値にも拘らず身近に相談できる栄養職の不在が大きな問題であることが解った。在宅では対象者個人の食事環境により栄養状態は左右される。病院や施設のような専門的管理が困難な生活場面であるため相談が必要と考える。本県では、県内5圏域に栄養士会が主催する「栄養ケア・ステーション」が設置され、個人の栄養指導や特定栄養食事指導、料理教室案内が運営されていることを紹介し、利用の認知度を向上させる必要があると考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】調査研究にあたり、「リハビリテーションにおける多職種連携調査研究事業」の一環であること、調査の目的と趣旨を書面に記した。加えて調査結果は本事業開催研修会ならびに報告書として公表することを文書で説明した。アンケートの回答は統計学的に処理し、集団として取り扱うため個人が識別されないこと、回答情報が特定できないよう十分配慮した。</p>
著者
篠塚 美穂 林 太郎 渡壁 晃子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Db1226, 2012

【はじめに、目的】 がん患者リハビリテーションという診療報酬項目も設置され、がんのリハビリテーションが注目されているが、医療者全てにはまだ浸透の浅い分野である。今回、全身病状が悪化したため、化学療法が中止となったが、理学療法介入にて化学療法実施判定基準の一つであるPS(Performance Status Scale、以下PSと表記)が向上、再度化学療法適応となり、在宅復帰を果たした症例を報告する。また、当院では、理学療法士が緩和ケアチームのメンバーとなっており、一般病棟における緩和ケアチームの関わりも踏まえて報告する。【方法】 (緩和ケアチームの特徴)当院は電子カルテ採用にて、文書管理システム内に「緩和ケアスクリーニングシート」を作成。緩和ケアチームにコンサルトを希望する場合、職員のどの職種の誰もが発行できる。チームメンバーは随時シートを確認。アドバイス、介入につなげる。(症例)20代男性。進行胃癌(Stage4)。X年-2年、食べた物を嘔吐繰り返し近医受診。胃癌と診断。家人(両親)には余命1年と宣告。1st Line化学療法効果あり、経口摂取可能となるも、X年-1年、経口摂取困難。2nd Line化学療法へ変更。X年、経口摂取困難、緩和療法目的にて当院に紹介受診。受診当時、がん悪液質に近い状態。胃噴門部癌の食道浸潤部に対し、食道狭窄拡張術(ステント留置)施行。PS0。X年+2月、3rd Line化学療法実施。X年+6月上旬、左肩疼痛増強、熱発継続、膿胸にて入院。PS2。化学療法中止。左大量胸水(膿胸)にて呼吸困難出現。一時はO2 5Lまで増量。チェストドレーン留置し、持続ドレナージ開始。左肩甲骨疼痛には放射線治療(36Gy/12fr/2.5W)施行。緩和ケア病棟転棟も視野に入れ、主治医より緩和ケアスクリーニングシート発行あり。緩和ケアチーム介入。X年+7月、リハビリ依頼。理学療法介入。介入時、左側胸部よりチェストドレーン留置中。疼痛に対し、プレペノン持続皮下注実施中。リハビリ前にはレスキューとして看護師により早送り実施。約1か月の臥床にて、筋力低下著明(MMT下肢2レベル)。PS4。呼吸苦は安静時にはなく、Room Airで経過。立ち上がり困難。車椅子移乗も介助必要な状態であった。余命が月単位、急変もありうることから、できれば外出でも一度自宅に帰ることを目標に、リハビリ強化介入開始。また、病状から精神面での不安強く、リハビリ実施時に、想いの傾聴、緩和ケアチーム看護師と連携を図り、病棟看護師との報告も密に行い、精神面でのケアとしても介入。【倫理的配慮、説明と同意】 今回の発表に伴い、ご本人に、個人が特定できない状態での情報の提供を依頼し、理学療法の発展のために役立てて欲しいと同意をいただいた。【結果】 介入から4週間(14回介入)で、PS2まで改善。MMT2であった両下肢は、4まで回復。理学療法介入し、詳細評価で左下肢下垂足が判明。今回の臥床で生じており、Dynamic AFO導入。装着後は、介助下歩行器歩行を経て、チェストドレーン抜去後は、両松葉杖介助歩行、介入2週間で車椅子外出を果たし、退院が視野に入る。精神面でも、介入当初は、車いす座位で「しんどい。もう死ぬかもしれない」と発言されていたのが、日常生活に介助量が減少してくる頃には、「目標がいろいろできた。何をするにしても歩けるようになりたい。がんと共存していかなくてはいけないこともわかっている」という発言が聞かれるようになった。リハビリ開始から4週にて、両松葉杖歩行自立。室内独歩近位監視、段差昇降見守りとなり、自宅退院を果たした。その後も、外来で週2回リハビリ継続。独歩訓練強化。X年+3月には、PS1となり、下垂足も改善。屋内装具除去歩行訓練実施。PS向上、化学療法再開となった。【考察】 体力的消耗、全身状態より、化学療法継続適応ではないと判断され、緩和ケアを主体として緩和ケア病棟転棟への見通しが立っていたが、本人の強い化学療法再開希望にて、理学療法介入、PS回復と遂げ、再度化学療法の適応となった1症例である。がん治療における化学療法適応は、患者自身がどの位動くことができ、身の回りのことが一人で行えるかというPS値で判定されることが多い。PS値を保つことができれば、がん治療の選択肢が増え、理学療法の関わりにより、生命予後を変えることができ、患者の希望を支持できることを改めて感じた症例であった。【理学療法学研究としての意義】 がんと共存する時代の到来で、2015年にはがん患者は533万人に達すると予想されている。今後、積極的に理学療法士としてがんの分野に介入することで、がん患者の「人生」の、QOL向上として関わることができると確信する。今回、この症例を報告することで、がんのリハビリの取り組みが、さらに社会に浸透するように願う。
著者
鵜飼 建志 林 典雄 細居 雅敏 田中 幸彦 篠田 光俊 笠井 勉
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.C1331, 2007

【目的】<BR> 内側型野球肘における尺骨神経症状があるものは上腕三頭筋内側頭(以下MHTBとする)の圧痛やspasmを有するものが多く、MHTBのrelaxationやtransverse方向への柔軟性改善を主体とした運動療法により、順調な改善を示す例を数多く経験している。本報告の目的は、このような臨床経験から、MHTBが尺骨神経症状に対しどのような影響を及ぼしているのか、その発症メカニズムを考察することである。<BR><BR>【方法】<BR> 平成14年7月から平成18年10月までに当院を受診し、野球肘と診断されたケースの内、尺骨神経症状が主体であった16例を対象とした。<BR> 尺骨神経症状の判断基準は(1)Tinel sign陽性(2)尺骨神経の腫瘤(3)左右差のある尺骨神経の圧痛(4)尺骨神経領域におけるしびれ(5)尺骨神経伸張肢位での症状の再現(6)屈曲角度増大に伴う外反ストレス時痛増強(7)尺骨神経脱臼、の7項目の内3つ以上認めるものとし、その割合を検討した。<BR> またMHTBの尺骨神経症状への直接的な関与を確認する目的で、我々が考案したMHTB shifting test(以下MSTとする)を実施した。これはMHTBを徒手的に後外側へよけた際の外反ストレス時痛の変化をみるものである。<BR><BR>【結果】<BR> 尺骨神経症状判断基準(1)は16例(100%)、(2)は4例(25%)、(3)は16例(100%)、(4)は4例(25%)、(5)は6例(37.5%)、(6)は14例(87.5%)、(7)は9例(56.3%)であった。<BR> MSTでは13例で陰性化し、2例で軽減した。1例は変化がなかった。軽減にとどまった2例は改善に時間を要する傾向にあった。変化のなかった1例は初診時所見でMHTBの圧痛、spasmを認めなかった。<BR><BR>【考察】<BR> 投球時、肘は外反・屈曲強制を受けるが、MHTBはその制動に働くdynamic stabilizerとして重要である。投球動作の繰り返しによりMHTBに負荷がかかり、圧痛やspasmが生じる。その結果、MHTBの過緊張は尺骨神経を深部より押し上げ、浅層を走行するStruthers' arcadeに圧迫を生じさせる。加えて上腕内側を走行する尺骨神経はMHTBにより前方(腹側)に押し上げることで神経自体の緊張が高まり、尺骨神経溝との摩擦力も増大する。また、神経の緊張増大は尺骨神経脱臼の誘因となり、friction stressの増大を招く。また尺骨神経脱臼例では肘部管での尺骨神経過屈曲が生じ、肘部管症候群の引き金となる。以上のように、MHTBのspasmは尺骨神経に対し、圧迫、伸張などといった、神経症状誘発の根底となるrisk factorである可能性が高い。また、我々が考案したMSTは、MHTBによる尺骨神経への押し上げstressを、筋腹全体を後外側へshiftさせることで軽減させるテストである。尺骨神経症状におけるMHTBの関与を知る上で有用なテストであると思われた。
著者
藤井 奈穂子 小野 玲 米田 稔彦 篠原 英記 中田 康夫 長尾 徹 石川 雄一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.E0241, 2005

【目的】 現在高齢社会である日本では、今後さらに高齢者人口の増加・総人口の減少により平成27年には超高齢化社会に入ることが予測されている。この中で老後の時間をいかに過ごし、いかに生活の質(Quality of Life:QOL)を向上させるかということが重要になる。高齢者のQOLに影響を与える因子としては家族構成・友人関係・健康状態・身体活動習慣等が報告されており、周囲との関わりや活動への参加がQOLの向上に深く関わっていると考えられているが、QOLの概念を細分化し余暇活動習慣との関連を検討した報告は少ない。本研究の目的は地域高齢者の余暇活動の実施状況を把握し、余暇活動とQOLとの関連を検討することである。<BR>【方法】 対象は大阪市内の2ヶ所の老人福祉センター利用者で、質問紙調査に参加した132名(平均72歳、女性96名、男性36名)とした。調査内容は余暇活動の実施状況として活動内容と頻度、QOLを細分化し抑うつ度としてZung Self-Rating Depression Scale(SDS)得点、生活満足度としてLife Satisfaction Index-Z(LSI-Z)得点、健康関連QOLとしてEuroQoL(EQ-5D)効用値である。解析は週1回以上余暇活動を実施している群(実施群)と、週1回未満または実施していない群(非実施群)に分け、各群とSDS・LSI-Z・EQ-5Dとの関連にMann-WhitneyのU検定を用い、活動内容(種目)とSDS・LSI-Z・EQ-5Dとの関連にKruskal-Wallis検定を用いた。危険率は5%未満を有意とした。<BR>【結果】 132名中71名が何らかの余暇活動を1週間に1回以上の頻度で実施していた。実施・非実施の比較では、実施群の抑うつ度が有意に低く、生活満足度が有意に高かったが、健康関連QOLについて有意差を認めなかった。実施者の多かった活動種目は「ダンス」・「歩行」・「卓球」・「グラウンドゴルフ/ゲートボール」で、これらの種目間について抑うつ度、生活満足度、健康関連QOLの比較では有意差は認められなかった。<BR>【考察】 抑うつ度は不安等の精神面の状態を示し、生活満足度は主観的幸福感を示すもので生きがいや幸福といった広義のQOLに含まれる概念である。健康関連QOLは身体機能に起因し医療行為に影響される領域に限定された概念である。本研究の結果より定期的な余暇活動習慣の有無は身体機能との関連よりも精神面での満足感との関連が強いことが明らかとなり、余暇活動の習慣化が精神面および主観的幸福感を良好にすると考えられた。また実施者の多かった活動種目として、高齢者にとって実施しやすい活動や老人福祉センターで実施されている種目があがっており、地域高齢者の身体活動動習慣における老人福祉センターの役割の重要性がうかがわれた。
著者
堀本 ゆかり 山田 洋一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.G0043, 2007

【目的】<BR> 理学療法士の需要拡大に伴い、養成校は急増している。判によると臨床能力は知識・情報収集能力・総合的判断力・技能・態度とある。卒前教育の流れをよくし、臨床実習を経て、臨床能力のある理学療法士を育成することが早急に望まれる。そこで、特に認知領域に着目し、学力の定着に寄与する性格的指標を検討する目的で、主要5因子性格検査を用い、学力テストの総合得点から傾向を分析したので報告する。<BR>【方法】<BR> 対象は常葉学園静岡リハビリテーション専門学校1期生(2クラス編成)84名(男性46名・女性38名)平均年齢19.6±3.0歳とクラス担任2名(男性2名・平均年齢41.5歳)である。<BR> 方法は各クラスで一斉に主要5因子性格検査を実施した。また、各クラス担任は受け持ちクラス全員に対して同様の検査を実施し、いずれも5因子ごとに総点を算出し比較した。また、学力テストの総合得点と5因子の関係の検討を行い、特性を検討した。<BR> 統計解析は日本科学技術研修所製 JUSE-StatWorks/V4.0を用いて処理した。<BR>【結果】<BR>1.学生自己評価とクラス担任の評価の相関関係<BR> 学生の自己評価とクラス担任の評価という2変数間の相関係数では外向性0.788・協調性0.719・勤勉性0.779・情緒安定性0.652・知性(開放性)0.709と5因子いずれも高い相関が得られた。<BR>2.学力テスト総合得点に影響を及ぼす因子<BR> 次に数量化1類を用い、学力テスト総合得点に影響を及ぼす変数を抽出したところ重相関係数0.709で外向性と勤勉性が選ばれた。特に勤勉性は5因子の中でも分散比が大きく特に強い影響を示している。また、主成分分析でも総合得点と勤勉性は関係が強いことがわかった。<BR>3.勤勉性を修飾する因子<BR> 勤勉性では、気まぐれ-計画性のある・いい加減-徹底的・怠惰-勤勉・浪費的-節約的といった項目が特に勤勉性を強く修飾していた。<BR>【考察】<BR> 情意領域・精神運動領域・認知領域をリンクさせた問題解決手法の導入に先立ち学生の性格を把握し、学力を定着させることは重要である。主要5因子性格検査は、文章の意味が大体理解できれば実施できる評価ツールであるため性格の基本的な特徴が把握し、学生指導に用いるには簡便といわれている。<BR> 今回の調査で学生の自己評価とクラス担任の評価の強い相関は、担任の評価にある程度の信頼がおけることがわかる。また、学力テスト総合得点に関しては、勤勉性・外向性の影響が強く、情緒安定性・協調性・知性に関係はなかった。この結果より学生は主体性を持ち計画性のあるくり返し学習を徹底的に行うことが重要であると思われる。<BR> 本校ではこの傾向を臨床実習の情報提供や縦割り少人数授業(ゼミ授業)活用している。<BR><BR>
著者
田宮 創 田村 由馬 餅 脩佑 赤澤 祐介 伴場 信之 安 隆則
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.A-109_1-A-109_1, 2019

<p>【背景および目的】糖尿病性腎症(DMN)患者における座位時間の延長が新規心血管イベント発症リスク及び腎機能に及ぼす影響を明らかにすること.</p><p> </p><p>【方法(または症例)】平成25年9月から39ヶ月間の前向きコホート研究である。対象は外来DMN患者173例(男性101例,71±11歳,CKDステージⅠ期41例,Ⅱ期93例,Ⅲ期30例,Ⅳ期7例,Ⅴ期2例)であり,国際標準化身体活動質問票(IPAQ)の回答が得られた方である.新規イベントの定義は,全死亡,入院を必要とする脳卒中および心血管疾患,新規透析導入とした.IPAQ座位時間からイベント発症に対するカットオフ値をROC曲線により算出した.また,観察開始時の年齢,HbA1c,eGFR,Alb/Cre比,座位時間,既往を共変量としたCOX比例ハザード分析により,新規心血管イベント発症に対するハザード比ならびに独立変数を抽出した.座位時間のカットオフ値から座位高低値群に分け,2群間における39ヶ月間のeGFRを対応のないt-検定で比較した.</p><p> </p><p>【結果】座位時間のカットオフ値は525分/日であった(AUC:0.74、感度:0.71、特異度:0.67、p<0.001).新規心血管イベント発症に対する有意な独立変数としてHb(HR:0.697、95%CI:0.53-0.91、p=0.008),座位時間(60分/日)(HR:1.26、95%CI:1.00-1.59、p=0.049)が抽出された.座位時間を高値群と低値群に分け,eGFR(ml/min/173m<sup>2</sup>)を比較すると,開始時で61.5±2.5vs65.5±1.7と有意差はなかったが,39ヶ月後で42.2±4.0vs.59.6±2.0と高値群において有意に低値を示した(p=0.016).</p><p> </p><p>【考察および結論】座位時間が延長したDMN症例は腎機能の低下を加速させ,心血管イベント発症のリスクとなる. 1日当たりの座位時間が60分延長すると心血管イベントを増加させる可能性がある.座位時間延長要因を評価し,PT介入による検討も必要である.</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】「ヘルシンキ宣言」及び「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守し実施した.本研究は,獨協医科大学日光医療センター倫理審査委員会の承認を得ており(承認番号:日光27001),紙面を用いた説明と書面による同意を得て実施した.</p>
著者
木下 信博 崔 正烈 荒木 滋朗 志堂寺 和則 松木 裕二 日高 滋紀 戸田 佳孝 松永 勝也 小野 直洋 酒向 俊治 塚本 裕二 山崎 伸一 平川 和生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0761, 2005

【目的】 <BR> 整形外科病院におけるリハビリ診療の中で、中高年齢者において変形性膝関節症(以下膝OAと略す)は頻繁に見られる疾患である。膝関節の主な働きとして、歩行時に支持性と可動性で重要な役割があり、現在、理学療法士の行う関節可動域訓練や四頭筋訓練及び装具療法などが治療として行われており、予防的視点からのアプローチが行なわれているとは言い難い。<BR> 膝OAは老化を基礎とした関節軟骨の変性が原因で、軟骨に対するshear stressは軟骨破壊に大きく作用すると考えられている。<BR> 新潟大学大森教授らによると、より早期に起こると考えられる、3次元的なscrew home 運動の異常が膝関節内側の関節軟骨に対する大きなshear stressになっている可能性が大きいとの報告がある。<BR> そこで我々は膝OA予防の視点から、歩行立脚時のscrew home 運動を正常化出来る靴を、久留米市の(株)アサヒコーポレーションと共同で作成し、九州大学大学院の松永教授らとの共同研究で、膝OAの予防の可能性を検証したので報告する。<BR>【方法】 <BR> 歩行時の踵接地より立脚中期に、大腿部から見た下腿部の外旋であるscrew home 運動を確保する為に、靴の足底部に下腿外旋を強制するトルクヒールを付けた靴を作成し、患者さんに使用してもらった。<BR> 方法として、(1)約7ヶ月間に亘りO脚傾向のある患者さんに日常生活で、はいてもらい靴底の検証。<BR>(2)九州大学大学院システム情報科学研究所製作の位置測定システムで、下肢の荷重時での下腿外旋運動出現の検証。<BR>(3)トレッドミルにおいて、骨の突出部にマークして、高速度撮影での歩行分析。などを実施した。 <BR>【結果及び考察】 <BR> 大森教授らによると、膝OAの進行に伴い、screw home運動の消失もしくは、逆screw home 運動(膝最終伸展時の脛骨内旋)の出現との報告がある。<BR> そこで、(株)アサヒコーポレーションとの共同開発による、トルクヒールを靴底に装着した靴を作成し検証した。<BR>(1)での検証結果は、通常靴の踵は外側が磨り減り、今回の靴では内側が磨り減り、膝が楽になったとの報告があった。<BR>(2)では、歩行時の踵接地より立脚中期に大腿部から見た下腿部の外旋をとらえる事が出来た。<BR>(3)では、歩行時の立脚期に、前方からの撮影でlateral thrust が3度抑制された結果となった。<BR> 膝OAは、高齢化社会の中でも大きな問題となっている、もともと内反膝の傾向にある人にとっての歩行訓練は、かえって有害であることもあり、今回の靴は、歩行時の立脚時において、下腿部に外旋の力を伝えることで膝OAの発症予防に有用であると考えられた。
著者
帖佐 梨菜 早崎 奈央 永田 直樹 吉留 直希 鮫島 啓太郎 高田 和真 田口 光 川元 大輔 横山 尚宏
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】ヒトの運動機能を定量的に評価することは,臨床において効果判定やプログラム立案に極めて重要となる。多用途筋機能運動評価装置バイオデックスシステム3(以下:BIODEX)はヒトの筋力を正確に測定し,数値が可視化できるため数多くの研究機関で使用されている。ただし,場所が制限される事や高価であるため,使用する施設は限られている。一方,Hand Held Dynamometer(以下:HHD)は,測定方法が簡便であるため,理学療法領域において幅広く使用されている。一方,体重計はどの家庭にも存在する。体重計はBIODEXやHHDと比較し,鉛直方向にしか計測ができない。しかし,測定方法を工夫することで,等尺性収縮を定量的に評価することが可能ではないかと考える。本研究は,BIODEXで表された数値がHHDや体重計と相関関係があるかを三角筋とハムストリングスで実施し,自宅で簡便に筋力測定が可視化できるかを検討することを目的とした。【方法】対象者は本校に在籍する学生20名で,整形外科的,神経学的に既往のない学生を選出した。平均年齢は20±1.92歳,平均身長は166.5±8.7cm,平均体重は61.2±8.9kgであった。測定肢は三角筋,ハムストリングスともに右上下肢で統一した。三角筋・ハムストリングスの計測課題はBIODEX上で端座位とし,大腿部・骨盤部・体幹をベルトにて固定,両上肢は胸の前で交差して手掌面を胸郭上部で固定するように指示した。膝関節90°屈曲位でアーム回転軸と膝外側裂隙中心部が一致するようにシートの高さ・前後長を調整した。筋力はisometricで測定し,最大筋力を5秒間保持,3セット実施した。各セット間のインターバルは30秒とした。HDDと体重計による測定課題として,三角筋はベッド上端座位の肢位で肩関節屈曲90°,肘関節伸展位とした。前腕遠位部に抵抗を加え,5秒間保持するように指示した。被験者が代償動作を起こさないように最大限留意した。ハムストリングスの測定肢位はベッド上腹臥位とし,体重はベッドに預け,股関節45°屈曲位,両下肢は下垂させ,足底が接地しないように指示した。HDD,体重計の計測ともに,被験者は両下腿を地面と平行に保持し,検者は下腿遠位部に鉛直方向へ抵抗を加えた。HHDと体重計の筋力測定は検者が体重計に乗り,被験者に重力方向に抵抗を加えた時の体重と,抵抗を加える前の体重との差を重力(9.8N)で除して算出した。統計学的解析は相関係数を用いてBIODEX,HHD,体重計で測定した筋力の一致度を分析した。また,3者の関係については回帰分析を用い,回帰式を算出した。有意水準は5%未満とした。【結果】三角筋の最大収縮はBIODEXで31.9±14.9N,体重計は81.3N±30.9N,HHDは79.9±27.4Nであった。ハムストリングスの最大収縮はBIODEXで60.6±22.9N,HHDで221.5±80.3N,体重計は217.6±76.8Nであった。三角筋の相関係数はHHDと体重計(r=0.99;P<0.01),BIODEXとHHD(r=0.98;P<0.01),BIODEXと体重計(r=0.97;P<0.01)すべてに有意な相関関係が示唆された。ハムストリングスの相関係数はHHDと体重計(r=0.98;P<0.01),BIODEXとHHD(r=0.85;P<0.01),BIODEXと体重計(r=0.91;P<0.01)と,すべて有意な相関関係が示唆された。回帰式において,三角筋のBIODEXとHHDの関係はy=2.382x-9.752,BIODEXと体重計の関係はy=0.251x-5.956を示した。ハムストリングスのBIODEXとHHDの関係はy=3.572x+7.184,BIODEXと体重計の関係はy=3.526x+1.576となった。【考察】本研究の結果,全ての項目において有意な相関関係を示唆した。先行研究において,HHDと体重計は相関関係があるという報告がある。本研究は先行研究を支持する結果となり,HHDと体重計の相関関係があることを証明した。BIODEXは筋力測定において正確な数値を表す装置として認知されている。臨床で広く使われるHHDと一般家庭にも存在する体重計が,BIODEXと相関関係を示唆した。今後は症例の自宅においても,体重計を使用することによって,工夫次第で筋力を数値化し正確に測定できると考える。筋力の数値化はMMTのような主観的な筋力評価と違い,治療の効果判定や症例の目標設定など,臨床で有用な客観的評価となるのではないだろうか。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果,BIODEXとHHD,BIODEXと体重計ともに高い相関関係がみられた。HHDは施設に,体重計は施設や自宅にほぼ存在する。筋力の可視化が可能となれば症例自身が筋力向上を確認でき,目標を持ちやすく,心理面にも好影響を与えるのではないかと考える。
著者
事柴 壮武 浦辺 幸夫 前田 慶明 篠原 博 山本 圭彦 藤井 絵里 森山 信彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】膝前十字靭帯(anterior cruciate ligament;ACL)損傷はストップやジャンプ着地動作,サイドステップカッティング(sidestep cutting;SSC)動作で多く発生している。一般的に"Knee-in & Toe-out"という下肢アライメントの組み合わせが,マルアライメントの代表的なものとしてあげられる。SSC動作の筋活動について,Xieら(2012)はストップ期において大腿四頭筋に対するハムストリングの比(H/Q比)は,側方移動期よりも低値を示したとしている。また,ACL損傷のリスクである膝関節の過度の外反を制動するためには,大腿四頭筋とハムストリングの同時収縮をタイミングよく行う必要がある。よって,ACL損傷のメカニズムや予防を考慮すると,筋活動量だけでなく筋活動のタイミングを検討することは重要であると考える。SSCは足部運動との関連が示されており,足部の外側接地(Dempseyら,2009)や後足部での接地(Cortesら,2012)がACL損傷のリスクになるとされている。しかし,足部の方向(Toe-out)とSSCの関連を調べたものはみあたらない。本研究は,Toe-outでのSSCが膝関節運動学,筋活動様式に及ぼす影響を検討することを目的とした。仮説は,Toe-outでのSSCはNeutralと比較して膝関節外反角度が大きく,H/Q比が低いとし,さらに筋電位ピーク到達時間が遅延するとした。【方法】対象は下肢に整形外科的疾患の既往がない,健常な女性バスケットボール選手6名(年齢20.0±1.4歳,身長158.0±3.5cm,体重49.3±5.3kg,競技歴9.3±5.3年)とした。対象は5m離れた地点から最大努力速度で助走し,軸脚の左脚で踏み切り,右90°方向へSSCを行った。その際,着地条件として足部Neutral(条件N)と足部Toe-out(条件TO)の2条件を設定し,3試行ずつ実施した。なお,反射マーカーを対象の左下肢8ヶ所に貼付し,ハイスピードカメラ(フォーアシスト社)5台を用い,サンプリング周波数200HzでSSCを撮影した。撮影した映像を動作解析ソフト(Ditect社)に取り込み,DLT法で各マーカーの3次元座標を求め,膝関節屈曲,外反角度を算出した。本研究ではSSCを足部接地から膝関節最大屈曲位までのストップ期,膝関節最大屈曲位から足部離地までの側方移動期の2期に分割し,各期の膝関節最大外反角度を分析に用いた。筋活動の記録には表面筋電図(追坂電子機器社)を用いた。被験筋は外側広筋(VL),内側広筋(VM),大腿二頭筋(BF),半膜様筋(SM)とした。筋電図は生波形からRMS(root mean square)に変換して解析した。本研究ではVLとVMの活動量の平均値を大腿四頭筋の活動量,BFとSMの活動量の平均値をハムストリングの活動量とした。Initial contact(IC)を基準(0)とし,筋電波形の振幅がピークに達する時間をピーク到達時間と規定した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号1327,1335)。対象に本研究の趣旨を十分に説明し,書面にて同意を得た。【結果】膝関節最大外反角度はストップ期の条件Nで7.0±3.8°,条件TOで8.8±5.5°であった。側方移動期の条件Nで4.6±3.9°,条件TOで7.9±5.4°であり,条件TOで有意に高値を示した(p<0.05)。H/Q比はストップ期の条件Nで0.33±0.08,条件TOで0.33±0.13であった。側方移動期の条件Nで0.67±0.22,条件TOで0.48±0.12であり,条件TOで有意に低値を示した(p<0.05)。各筋のピーク到達時間は,条件NでVMは119.9±49.1msec,VLは114.3±49.6msec,SMは102.1±76.1msec,BFは175.4±79.5msecであった。条件TOでVMは145.2±26.2msec,VLは151.9±24.8msec,SMは88.6±62.6msec,BFは194.1±58.8msecであった。条件TOでVMのピーク到達時間が有意に遅延していた(p<0.05)。【考察】本研究の結果より,Toe-outでのSSCはNeutralと比較して,側方移動期の膝外反角度が高値となり,H/Q比が低値を示した。膝関節外反角度が大きく,H/Q比が低いことは大腿四頭筋優位となりACL損傷のリスクが高いことを示している。さらに,VMのピーク到達時間の遅延を認めた。また,有意差はなかったもののSMのみピーク到達時間がNeutralよりも早期であった。VMは内側ハムストリング(SM)と協同して内側機構の支持に働き,膝関節の安定性に関与している(Myerら,2005)。したがって,内側安定機構であるSMとVMのピーク到達時間のずれは,過度の膝関節外反の制動を困難にしていることが考えられる。【理学療法学研究としての意義】Toe-outでのSSCが膝関節運動学,筋活動様式に与える影響を明らかにすることは,ACL損傷メカニズムを解明する一助になるだけでなく,スポーツ現場やリハビリテーション場面において,ACL損傷の予防につながると考える。