著者
王 立華
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.473, pp.563-568, 2009-03-02

1996年満保らが初めてプロキシ署名システムを提案して以来、プロキシ暗号システムについては充分に研究され、実り多い研究成果が得られている。プロキシ暗号システムはプロキシ(代理人)の役割より大きく三種類に分けられる。(1)代理復号:ユーザの公開鍵によって暗号化された暗号文を、プロキシ(Proxy decryptor)を介することで、このユーザに代わって暗号文を復号できる暗号手法;(2)代理署名:ユーザの秘密鍵を渡すことなく,プロキシ(Proxy signer)を介することで、このユーザに代わって署名を行うことを可能とする技術;(3)代理再暗号化:ユーザの公開鍵によって暗号化された暗号文を、プロキシ(Proxy re-encryptor)が仲介することで他のユーザの秘密鍵による復号が可能な暗号文へ変換する仕組み。既存の提案は全て単機能を持っているが、実社会の要望に応えるために、多機能を有することが望ましい。例えば、ボスの秘書さんが下記のことを行うとする:ア)受け取った日常仕事内容に関する暗号文をボスの代わりに復号する;イ)業務関係資料の暗号文を受け取った場合は、そのまま無ボスに渡す;ウ)ボスが不在の時、受け取った業務関係資料をボスが指定した方へ内容を読まず再暗号化して転送する。この場合、代理復号と代理再暗号化の機能を同時に有するプロキシ暗号システムが存在すれば、暗号理論的にも効率性がよく、また実社会における利便性も高い。そこで、このような実社会の要請に応えるために、代理復号、代理再暗号など機能を同時に有する二機能付きプロキシ暗号システムを提案する。多機能プロキシ付きセンサーネットワークはその一例である。
著者
田村 洋人 小川 恭平 竹内 俊貴 鳴海 拓志 谷川 智洋 廣瀬 通孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:21859329)
巻号頁・発行日
vol.112, no.106, pp.43-48, 2012-06-19
参考文献数
8

本研究は,ライフログを分析して未来のタスクの進捗状況を予測・提示するシステムを構築し,ユーザに円滑なタスクの進行を促すことを目的とする.ここではタスクを,予定以外の時間を割いて行う,努力を伴う作業とする.人々の行動を記録・分析した結果,行動を「予定・タスク・余暇・移動・食事・睡眠」の6項目に分類し,各行動に当てた時間をライフログとして取得することとした.また,長期間に渡り行動時間を記録した結果,行動時間を蓄積したライフログとスケジュール情報から将来タスクに費やせる時間を予測できることがわかった.そこで,人々に馴染みのある日記を模したインタフェースに未来のタスクの進捗状況を提示するシステム「未来日記」を開発した.被験者を対象とした評価実験により,予測を提示することで,タスクを円滑に進めるようユーザを促せたことが確認された.また,未来の情報は日常生活においてタスクを進める上で効果的に働き,未来日記の有効性は高いという評価を得た.未来のタスクの進捗を,見慣れた日記形式で直感的に把握することで,ユーザのタスクの進行が促進されたものと考えられる.
著者
山田 功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.53, pp.31-38, 2003-05-09
被引用文献数
1

小文では、まず、"凸関数列の漸近的最小化"を目的とする"適応射影劣勾配法"を提案している。"適応射影劣勾配法の基本定理"(定理1)は、NLMS法,アフィン射影法,射影NLMS法,制約埋埋め込み型NLMS法,適応並列外近似射影法など既存の射影型適応アルゴリズム群を一網打尽に理解する見通しのよい視座を提示しているばかりでなく、"制約付平均近似適応並列射影法",制約付Min-Max近似適応並列射影法","制約埋め込み型適応並列射影法"など複数の閉凸集合への射影の並列計算を基本演算とする多くの新アルゴリズムを導く指導原理となっている。これらの新アルゴリズム群は、本質的な解決が待たれる種々のロバスト適応信号処理問題への応用の中で、重要な役割を担っていくものと予想される。
著者
松本 豊司 瀬川 忍 末本 哲雄 竹本 寛秋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.453, pp.71-75, 2010-02-26

昨今、我々は情報関連の授業の実践を通じて、自主的な学習の組み立て、グループワークなどをうまくこなせない学生の増加を懸念しており、かつ、きちんと指導をすれば学生は伸びることも感じている。そこで、我々は平成19年度から開講している選択科目「1歩進んだPC活用講座」において、ブレンディッドeラーニングの色々な工夫を実践しており、その取り組みを通じて協調学習を含んだ授業の効果的な構成方法が見えてきた。授業の前半はICTのエキスパート教職員により複数のPCソフトウェア活用法を教え、後半は3, 4人のグループ単位で学習した技術を活用した課題を行う授業構成を考えた。グループ作業の過程でお互いが教えあい、競いあいながら成長することを狙った授業設計である。授業スタート当初はグループ課題は1度であったが、これを2度に増加することにより、はっきりと効果が増加することが確認できた。本論文では、平成19年度後期から平成21年度前期までの授業における協調学習の効果を高める取り組みとその効果について報告する。
著者
呉 双 川本 淳平 菊池 浩明 佐久間 淳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IBISML, 情報論的学習理論と機械学習 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.139, pp.67-74, 2013-07-11

統計的分析を行う際に個人情報を保護することは,機械学習やデータマイニングにおいて多くの注目を集めている.この研究において我々は,異なる人間がそれぞれデータを持っている時に,実際にデータを合わせることなく予測を行うためのプライバシー保護ロジスティック回帰の提案を行う.ロジスティックシグモイド関数は非線形関数であるため,暗号上で扱えないという問題がある.そのため,我々の提案ではロジスティックシグモイド関数の近似として多項式フィッティングを用いている.
著者
今村 孝 原田 光 章 忠 三宅 哲夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.223, pp.29-33, 2013-09-17

本研究では,VR技術の基礎となる錯覚現象の一つとして,視覚誘導性身体動揺を取り上げ,その定量計測と解析,およびVR機器や身体運動の制御応用を検討している.本報告では,その定量解析における,身体動揺の誘導性の有無判定に資する心拍変動解析について述べる.
著者
田村 慶信 斉下 純也 山本 詩織 山田 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.44, pp.43-48, 2013-05-17

近年,低コスト・短納期・標準化といった観点から,AndroidやBusyBoxに代表される組込みオープンソースソフトウェアが積極的に採用されている.オープンソースソフトウェアは,世界中の誰もが開発に参加でき,ソースコードが公開され,誰でも自由に改変可能なソフトウェアであることから,急激に普及が広まっており,最近では,組込み機器に対してもAndroidやBusyBoxに代表される組込みオープンソースソフトウェアが積極的に採用されつつある.本論文では,iOSのApp StoreやAndroidのGoogle Playのようなインストーラの振る舞いを考慮したハザードレートモデルに基づく信頼性評価法を提案する.さらに,提案モデルに基づく信頼性評価ツールをAIRアプリケーションとして開発し,実際のオープンソースソフトウェアのソフトウェア故障発生時間間隔データに対する信頼性評価例を示す.
著者
益冨 文男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性
巻号頁・発行日
vol.93, no.370, pp.33-38, 1993-12-10

今回,偶々水槽内に出目金と水藻と茶褐色の水苔を育成した。この水中には体膜の電気絶縁抵抗が高く,且つ紫外線を反射する多数のプランクトンが共生している事を知った。その淡緑色の水を用いて,透明なガラスやプラスチック製品の表面等を観測すると,三次元空間の全体の方向から照明用光を与えたのと同様な液内状態と成って表面の見落としが少ない観測法が得られる。また,そのプランクトンが居る水を合成ゴムホース内に入れてU文字やS文字など様々な屈曲した通路を経由して光線を必要な箇所に誘導する事も出来る事を知った。簡単な観測例を報告する。応用は今後だが,人体内部鶴察簡易化へ向け一歩前進し得る技法を見出した事と成る。
著者
菅野 伸 平澤 徳仁 秋山 佳春
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.335, pp.13-17, 2011-12-09

現在、国際無線障害特別委員会(CISPR)において、照明器具の放射妨害波測定(30MHz〜300MHz)の代替として、CDNE (Coupling and Decoupling Network for Emission)を用いた伝導妨害波測定(CDNE法)を適用することが検討されている。世の中の省エネ要求に後押しされ急速に市場導入が進むLED照明ではあるが、一方で、電波受信障害発生の報告例もあり、その要因である放射妨害波を再現性良く評価することは、非常に重要であると考えられる。そこで本報告では、LED電球4機種を供試装置とし、CDNE法とCISPR16-1-4に準拠したアンテナや測定設備を用いた放射妨害波測定法との比較を行い、両者の相関係数が0.22〜0.60と小さいことを示している。また、相関性が弱い要因の一つとして、電源ポートのインピーダンスの違いに着目し、その安定化による相関性改善について検討した結果を示している。
著者
竹上 健 後藤 敏行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理
巻号頁・発行日
vol.97, no.509, pp.15-22, 1998-01-23

本論文では, 1台のカメラで入力した画像を処理することにより, 被験者に非接触でかつ頭部の固定や眼鏡等の装着なしに高精度な視線検出が可能なアルゴリズムについて述べる. 本手法は, 視線方向の変化に伴って角膜における光源の反射像の位置が虹彩領域 (黒目部分) 内で変化することに着目したもので, 虹彩領域内の角膜反射像の相対位置と視線方向との関係式に基づき, 画像処理により視線方向を推定するものである. 従来の瞳孔像と角膜反射像を利用する方法や頭部の方向を基準として視線方向を推定する方法と比較して, 照明系の光学条件が緩和でき, また安定な特徴として得られる角膜反射像や虹彩領域を利用することにより, 頭部に固定や指標等を装着することなく高精度な計測が可能になる. 評価実験の結果, 頭部が±30mm程度揺らいだ場合でも±15deg.の範囲で±0.5deg.の精度で視線方向の検出が可能であり, 本手法の有効性が検証できた.
著者
松本 和也 櫻井 孝平 山根 智
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MSS, システム数理と応用 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.493, pp.25-30, 2015-02-26

株市場を予測しようとする試みは数多くあるが,実用的なものは未だに発表されていない.その理由として,株価の推移には単純な法則は存在せず,また法則があったとしてもニュースなどの影響により法則通りにならないということが挙げられる.そこで本研究では,最新の機械学習手法であるDeep Learningと,世間の動向に対応できるようにTwitterなどのSNSビッグデータ解析を組み合わせた個別株価の予測手法を提案する.
著者
渡邉 俊平 片山 統裕 辛島 彰洋 田中 徹 虫明 元 中尾 光之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.113, no.314, pp.13-18, 2013-11-15

本研究では,脳への電極埋め込み手術中に観測される細胞外電位信号と電極の位置情報を統合し,脳内の構造と状態の時間的変化を可視化する手法(脳内LFPマッピング)を提案する.この手法では,コンピュータ制御された電動マニピュレータで位置決めされたシリコン製多点リニア電極で細胞外電位信号を記録し,各記録点の多細胞活動及び局所フィールド電位の時空間ダイナミクスを解析する.その結果を時間及び空間を軸とする平面上にマッピングする.本手法をウレタン麻酔下のマウスの大脳に提案法を適用することにより,ニューロン活動,海馬θ波,γ波,シャープ波およびシャープ波リップルの時空間的パターンを視覚化する.これにより,本手法が脳内の構造と状態の時間変化を把握するために有用であることを示す.
著者
湯浅 晃 斎藤 忍
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.449, pp.25-30, 2009-02-26

ChecklandによるとSSMの7ステージモデルでは第4ステージの概念モデル構築においてForresterのシステムダイナミクス(SD)モデルやBeerの生存可能システムモデル(VSM)などを用いることができる.我々はSSMにおける概念モデルとしてシステムダイナミクスモデルを用いた要求獲得手法を提案する.提案手法では概念モデルを用いて獲得した要求に対してゴール指向分析を行い,IT機能レベルの具体化された要求を導く.またシステムダイナミクス・シミュレーションを行うことで要求の妥当性の検討を数値的な観点から行う.本稿では提案手法のプロセスとその意義,そして小売業の情報システム開発プロジェクトにおける適用結果について述べる.
著者
高嶋 和毅 藤田 和之 横山 ひとみ 伊藤 雄一 北村 喜文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.176, pp.49-54, 2012-08-11
被引用文献数
2

本研究では,複数人会語中に話者が感じる場の盛り上がり「場の活性度」を自動的に推定する手法の確立を目指し,会話中の発話量,手の動き,頭部方向や身体の移動などの非言語情報と,場の活性度との相関を実験的に調査した.実験では,初対面で同世代の6人(男3,女3)による会話を扱い,非言語情報は各種センサにより取得した.重回帰分析を用いて,参加者が主観的に評定した場の活性度と取得した非言語情報との関連を調査したところ,発話時間,クロストーク,手の加速度,会話の輪の大きさ,等が強く場の活性度に影響することが分かった.また,これを用いてモデル化を行い,3人会話におけるモデルと比較を行った.
著者
中田 亮太 仲地 孝之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LOIS, ライフインテリジェンスとオフィス情報システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.306, pp.15-20, 2012-11-14

本報告では、Shamirの秘密分散法を利用した秘密計算の提案を行う.Shamirの秘密分散法は秘匿にしたいデータを複数に分散・暗号化する暗号アルゴリズムで,復号を実行する為にはしきい値以上の分散暗号文を集める必要がある[2].このShamirの秘密分散法は暗号化の際に線形性を保つ為、分散暗号文のまま加減算を実行する事が可能であり,その計算結果は復号した平文に反映される.秘密分散法ではこの性質を利用してマルチパーティプロトコルを実現可能である事が知られている.本報告ではShamirの秘密分散法を利用して加減算が成り立ち、乗法が一度だけ可能な秘密計算の方法と,当アルゴリズムで運用可能なクラウドサーバ上での計算モデルを併せて提案する.
著者
鄭 玉良 今井 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ
巻号頁・発行日
vol.97, no.380, pp.55-62, 1997-11-19

Signcryption は公開鍵暗号技術の新たなプリミティブであり、公開鍵暗号化とディジタル署名の両機能を効率的に実現する。すなわち、従来通り署名してから暗号化をするという2ステップを経て両機能を達成する場合 (signature-then-encryption方式) と比較して、コストを極めて低くすることができる。本稿では、この Signcryption を有限体の楕円曲線上で実現する方式について述べる。さらに、楕円曲線上の signature-then-encryption 方式との効率比較を行い、Signcryption によって計算コストが58%、通信オーバーヘッドが40%削減できることを示す。