著者
北条 伸克 亀岡 弘和 嵯峨山 茂樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.308, pp.13-18, 2013-11-14

本稿は,高品質なテキスト音声合成を目指し,複合ウェーブレットモデル(composite wavelet model; CMW)と隠れマルコフモデル(hidden Markov model; HMM)の統合モデルに,フォルマント周波数軌跡のモデルを組み込む.ケプストラム特徴量による従来のHMM音声合成方式では,モデル学習時におけるケプストラム特徴量の平均化がスペクトルの周波数方向の平滑化の原因となり,一般にbuzzyな合成音声へ劣化する原因となった.これに対し,フォルマント周波数に相当する特徴量の平均化はスペクトルの平滑化をもたらさないと期待される.このような観点から,我々は,CWMとHMMの統合モデルによる音声合成方式を過去に提案した.一方で,従来のCWMとHMMの統合モデルは,スペクトル系列の区分定常な生成モデルであり,ダイナミクスのモデル化に課題があった.本稿は,CWMがフォルマント周波数に相当するパラメータを持つことに着目し,フォルマント周波数軌跡の生成モデルをCWMとHMMの統合モデルに組み込み,スペクトル系列のダイナミクスをモデル化する.本稿では,実験を通して提案モデルがフォルマント周波数軌跡を十分に推定することを定性的に確認した.
著者
安達 琢 赤穂 伸雄 浅井 哲也 本村 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.106, pp.65-70, 2011-06-23

メモリスタを用いた非対称の時間窓を持つSTDPシナプスデバイスを提案する。メモリスタ(抵抗変化型メモリ:ReRAM),キャパシタ,二つのpMOSFET,および四つのnMOSFETを用いてデバイスを構成した.まず,ReRAMの特性,および本研究で使用するバイポーラ型ReRAMのモデルについて説明する.次に,本研究を行う上で参考となった先行研究の回路動作(STDP特性における時間的因果領域のみを模擬する動作)を説明する.さらにこの回路を拡張したデバイス(STDP特性における時間的因果領域および非因果領域を模擬するデバイス)を提案し,各回路ブロックの詳細な動作を説明する.最後にHSPICEを用いた回路シミュレーションにより,ReRAMを介さずに流れる電流によりキャパシタが充電され,その後流れた電流によりキャパシタが放電され,ReRAMのコンダクタンスが元の値より減少する事を確認する.
著者
東浦 圭佑 Prasad Mukherjee Dipti 岡田 俊之 横田 太 堀 雅敏 高尾 正樹 菅野 伸彦 陳 延偉 富山 憲幸 佐藤 嘉伸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.37, pp.51-56, 2012-05-10

本研究は,臓器形状の正常と疾患を統計形状解析による自動識別を目的としている.疾患になると形状が変形しやすい肝臓,大腿骨の学習データをを用いる.従来,正常と疾患を組み合わせた統計形状モデルによるSVM識別が行われている.本実験では,正常症例群から構築される正常統計形状モデルと疾患症例群から構築される疾患統計形状モデルを求め,正常統計形状モデルに直交する疾患統計形状の疾患部分空間を導き,未知データの変形成分を疾患部分空間に射影することにより,疾患に起因する変形成分を求める.疾患部分空間における変形成分のSVM識別により,識別精度の向上が確認できた.
著者
塚本 悠 倉田 博之 大久保 海斗 山本 学
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPM, 電子部品・材料 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.113, no.231, pp.1-4, 2013-10-01

ホログラム多重記録再生方式として,球面参照光を用いてテラビット/平方インチの記録密度を越える記録再生方式を検討した.シミュレーションにより,球面参照光においては媒体シフトの3軸方向により多重記録が可能であるが,さらにペリストロフィック多重方式を複合することにより,容易に高密度記録が可能であることを実験およびシミュレーションにより明らかにした.
著者
安田 麗 林 良子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.451, pp.13-17, 2010-02-25

日本語音声の特徴的現象である母音の無声化は,聞き手が誰であるかという会話の状況によって,その出現が変化する要素の一つであると考えられている.本研究では,そもそも母音の無声化が少ないとされている近畿方言話者が、東京方言話者と話す場合,近畿方言話者と話す場合,そして外国人と話す場合にどのような発音がなされているのかについて,母音の無声化に焦点を当て実験を行った.その結果,近畿方言話者の会話における母音無声化の出現については,個人差があるものの、平均すると対東京方言話者,対外国人留学生,対近畿方言話者の順で,母音無声化率が高い傾向があることがわかった.この結果より,近畿方言話者は対話相手が誰であるかによって母音無声化を制御し,話し方を変化させていることが示唆された.
著者
梅野 健
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.250, pp.87-90, 2014-10-16

従来の擬似ランダム符号やカオス符号とは異なる概周期関数に基づくスペクトル拡散通信を提案する。干渉雑音が従来の全てのスペクトル拡散通信と比較して桁違いに減少していることを示す。
著者
Asada Kunihiro Akita Junichi
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
IEICE transactions on electronics (ISSN:09168524)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.436-440, 1995-04-25
被引用文献数
7

Some CMOS gates are topologically asymmetric in inputs, even though they are logically symmetric. It implies a possibility to reduce power consumption by optimizing signal assignment to the inputs. In this study we theoretically derive power consumption of 2-input NAND gate based on transition probability of input signals, with taking into account charging current due to an internal node. We also propose a signal assignment method to input terminals for reducing power consumption reduction by extending our method for large circuits, and demonstrate the effect of power consumption reduction by the present method.
著者
神原 浩平 光山 和彦 中川 孝之 池田 哲臣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.164, pp.79-84, 2009-07-27
被引用文献数
1

800MHz帯FPU(Field Pick-up Unit)システムは,マラソン中継などの移動映像伝送に用いられている.現在,筆者らはより高画質で途切れにくい次世代システムを目指してMIMO伝送技術および誤り訂正技術の研究を行っている.直列連接LDGM(SCLDGM:Serially-Concatenated Low-Density Generator Matrix)符号はLDPC(Low-density Parity-check)符号の短所である符号化演算量とエラーフロアの両方を低減可能な符号としてFPU用の誤り訂正符号として着目しており,これまでに連接に適したLDGM構造の提案などを行い,シミュレーションによる評価を行ってきた.今回,野外移動伝送実験によりSCLDGM符号の特性を現行システムの畳込み+RS(Reed-Solomon)連接符号などと比較した評価を行った.さらに,FPUシステムへのLDGM符号の導入に向けた観点から符号についての考察を行った.
著者
鈴木 陽一 橋本 明記 小島 政明 田中 祥次 木村 武史 斉藤 知弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.212, pp.19-24, 2009-09-22

今後の放送の大容量化や通信との親和性を考慮した方式として,高度衛星デジタル放送伝送方式がARIB STD-B44として国内標準規格となっている.本方式では,誤り訂正符号としてLDPC符号を採用するとともに,ロールオフ率0.1の採用により現行BSデジタル放送方式と同じサービス時間率を確保しつつ,伝送容量が約30%増加した.本方式には,「今後の周辺技術の進展により利用可能となる方式」として,さらなる大容量伝送が可能な振幅位相変調方式も採用されている.本方式ではπ/2シフトBPSK,QPSK,8PSKに加え,16APSK,32APSKの5種類の変調方式が選択可能である.本方式で用いるLDPC符号の検査行列は符号長44880ビットのLDGMタイプであり,11種類の符号化率が利用可能である.本報告では,まず初めに,高度衛星デジタル放送伝送方式に適用する誤り訂正符号の要求条件を述べる.次に,高度衛星デジタル放送伝送方式の構成について述べ,LDPC符号を設計する上で必要な伝送フレーム構成を示す.続いて,高度衛星デジタル放送伝送方式用LDPC符号に用いる検査行列の設計指針として,サイクル4,6の除去方法について述べ,11種類の符号化率に対する検査行列パラメータを明らかにする.また,計算機シミュレーションによるBPSK,QPSK,8PSK変調を用いた場合の白色雑音下での伝送特性結果を示す.次に,16APSK,32APSKについて,LDPC符号を用いた場合に白色雑音一定の元で最小BERを満たす最適半径比の設計指針を示し,最適半径比を16APSK,32APSKに適用した場合の伝送特性結果を示す.
著者
北村 匡彦 白井 大介 藤井 竜也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CS, 通信方式 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.279, pp.31-36, 2008-10-30

本稿は,LDPC符号の一種であるLDGM符号の復号並列化を検討する.LDGM符号は,符号長および符号化率を自由に設定でき,符号・復号がシンプルに構成可能なブロック符号である.特にマルチキャストをはじめとするUDP/IPを想定した場合には,下層の機能により誤り検出が完了しているため,LDGM符号では誤り訂正のみを行えばよい.このため,高速かつ効率的にFEC処理が可能である.LDGMの復号処理は超多元1次の検査方程式を解く過程に相当し,その解く順序を決定することが求めれる.本稿では,まずはじめに処理コストの軽い検査方程式順序の走査を行い,その後で処理コストの重い誤り訂正処理を実行する2パス処理手法を提案する.これにより,受信ホストでは単位ブロックのパケットを受信した瞬時に,つまり,誤り訂正処理を行う前に,消失したパケットの回復の可/不可を判別することができる.また,同時に,検査方程式の集合全体の依存関係を知ることができるため,並列処理が可能になる.
著者
古村 隆明 岡部 寿男 中村 素典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SITE, 技術と社会・倫理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.437, pp.153-158, 2010-02-22

eduroamは,802.11b/g等の無線LANで,802.1x認証を利用した国際無線LANローミング基盤で,国内外の数多くの教育研究機関で導入が進んでいる.ローミング時に訪問先機関や国や地域に設置されている複数のradiusサーバにアカウント名を含む認証情報が記録されることで,ロケーションプライバシが侵害される危険性がある.そこで我々は,SAML連携を用いて発行した仮名アカウントでeduroamを利用する手法を提案する.この手法では,平常時は,個人の特定だけでなく利用者の所属組織の特定もできなくなる.また,インシデント発生時などには,radiusサーバとSAML連携組織の情報を合わせることで個人を特定することが可能である.
著者
黒澤 秀太 金岡 晃
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.502, pp.197-202, 2014-03-27

パスワード設定時にパスワードメータを配置することで設定されるパスワードが強化されることが知られている。UrらはUSENIX Security'12においてさまざまなパスワードメータを用意しそれらの違いによるパスワード強度を評価した。本稿ではパスワードメータの改良として、ユーザの属性に応じたメータ表示を行い、属性に応じたインセンティブをメータ表示で与えることにより設定されるパスワードを強くする効果が期待できる手法を提案し、ユーザ実験によりその効果を評価した。
著者
田部井 靖生 津田 宏治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IBISML, 情報論的学習理論と機械学習 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.87, pp.103-110, 2011-06-13

近年,データの大規模化に伴いバイナリコードを用いた類似度検索はますます重要度を増している.従来の空間分割に基づく手法(e.g., cover tree)とは異なり,数値ベクトルはハッシュテーブルにより効率的に扱うことができる離散シンボルへと変換され処理される.しかし,ハッシュテーブルに基づく手法はベクトル空間の幾何的性質を扱うことが困難であり既存の手法は必ずしも効率的とは言えない.そこで,本稿ではウェーブレット木(Grossi et al., SODA'03)によるバイナリコードの効率的な検索手法を提案する.提案手法は幾何的制約により探索空間を効率よく枝刈りすることができ,ハッシュテーブルを使った手法よりも効率的である.実験により,提案手法は約8000万の大規模画像データに対しても適応可能であることを示す.
著者
ラハマン モハマッド サイドゥル 中野 眞一 西関 隆夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション
巻号頁・発行日
vol.98, no.380, pp.1-8, 1998-10-30

平面グラフGを整数格子上に次の(1)-(3)を満たすように描画したものをGの箱-矩形描画という.(1)各点は矩形として描画する.(この矩形を箱と呼ぶ.)(2)各辺は水平もしくは垂直線分として描画する.(3)各面の輪郭は矩形として描画する.平面グラフGの描画で, 各点を格子点として描画し, 各面の輪郭を矩形として描画したものを, Gの矩形描画という.箱-矩形描画は, 通常の矩形描画の自然な一般化である.本論文では, 平面グラフGが箱-矩形描画を持つための必要十分条件を与える.また, Gが箱-矩形描画を持つならば, その描画を求める線形時間アルゴリズムも与える.求められた描画の高さと幅の和は, m+2以下である.ここで, mはGの辺数である.
著者
小林 祐喜 島崎 秀昭 荻久保 佳伸 溝口 健二 相原 威 塚田 稔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.686, pp.31-36, 2000-03-15
被引用文献数
1 1

近年、軸索を逆伝搬する発火活動が報告されており、海馬における学習則を考える場合、入力同士の同時性以外に入力と軸索を逆伝搬する発火活動(出力逆伝搬)の同時性も考慮する必要がある。そこで本研究は、電気刺激をCA1野へのびるshaffer側枝と出力層であるstratum oriensに刺入し、その入力と出力逆伝搬の位相をτ=0ms, ±5ms, ±10ms, ±20ms, ±25mS, ±50ms, ±100ms, ±500ms, 1000msと変化させたときのLTP(長期増強), LTD(長期抑圧)の空間分布を光計測法を用いて計測した。結果としてLTP, LTDは位相差に依存して空間的に異なった分布として引き起こされることが明らかとなった。
著者
小川 勝 松沢 晋一郎 佐藤 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.203, pp.17-20, 2013-09-05

ADAS (先進運転支援システム)とは,ドライバの認知/判断/操作を繰り返し支援してドライバを危険な状況に近づけないためのシステムである.そのシステムのいくつかには77GHz,24GHz帯のミリ波,準ミリ波レーダ(以下,ミリ波レーダ)が主要なセンサとして利用されており,ADASのさらなる高機能化にはミリ波レーダの性能向上が重要と考えている.ミリ波レーダの課題の1つとして方位分解能の向上に着目し,その実現方法の提案と動作確認を行った結果について報告する.