著者
ビダフ メリー 志村 喬
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.404-412, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
32
被引用文献数
2

本稿は,イギリスの教員養成改革の実態と課題を教科教員養成,とりわけ地理を事例に報告する.イギリスでは改革により教員養成ルートが分列化し,養成ルートの中心が大学主導型から学校現場主導型に転換した.その結果,教員養成から撤退する大学の発生,教員養成機関としての大学と学校との競合関係の発生,教員養成内容の汎用化・一般化などが問題化している.日本の教員養成改革では,イギリスの教員養成改革がしばしば参照されているが,教科の専門的力量の形成の観点からは,これら問題の発生は看過すべきではない.
著者
畠山 輝雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.29-43, 2020
被引用文献数
1

<p>本稿は,全国の地方自治体へのアンケート調査により,公共施設へのネーミングライツ(以下,NR)導入の最新動向を明らかにし,その特徴について考察する.またそれを踏まえ,関連する既存研究と併せて今後の地理学的研究の可能性を探る.日本のNRは,地方自治体の脆弱財政下において官民協働や自主財源確保を目的とした広告事業の一環として導入されている.しかし,その導入状況には地域差が生じている.この理由として自治体の保有する公共施設の種類やスポンサーとなりえる企業等の立地状況が関係している.また,NR導入により施設名が変更されることで,施設名から地名が消失する事例も生じている.さらに,NR導入に対して,議会承認をはじめとする合意形成が行われていないことも明らかとなった.これらの課題に対して,経済地理学,行政地理学,地名研究,政治地理学,社会地理学をはじめとする地理学的研究の蓄積が望まれる.</p>
著者
須貝 俊彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.793-813, 1990-12-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
49
被引用文献数
3 11

赤石山地・三河高原南部の小起伏面の性格と分布を示し,従来の“山頂小起伏面=隆起準平原遺物”説の再検討を試みた. まず空中写真判読により小起伏面を認定した.次に面の形態や構成物質の特徴などをもとに小起伏面を5タイプに分類した.さらに調査地域全域の小起伏面の分布を示し,面の起源を検討した.その結果,赤石山地・三河高原南部の小起伏面は,大半が侵食面であり,(1)山頂や高い尾根上に位置する面は,化石周氷河成平滑斜面の一部に含まれること,(2)厚い風化殻に覆われた丘陵状を呈する面は,山地の縁辺部ほど良く分布し,標高1,500~2,000mで消失することが明らかにされた.(1)は高位削剥面,(2)は隆起準平原遺物,とみなしうることが指摘され,従来の“隆起準平原遺物”説を再考する必要性が示された.
著者
阿部 一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.453-465, 1990
被引用文献数
5

Landscape can be considered as place in terms of phenomenological geography. In this paper, the author examines the concept of landscape with reference to that of place, and proposes a con-cept of &ldquo;story&rdquo; in order to prepare a framework for the study of landscape change synchronous with our consciousness change. The results are as follows:<br> 1) Landscape is the life-world on which our belief in objective reality is founded, and is a repository of meaning. Therefore, the concept of landscape coincides with that of place as a space with value and meaning.<br> 2) Place is not only an object of intentionality but also a process of intentionality. According to Nishida Kitaro's (1926) theory of place, place is the field of consciousness, which means that place is also the process of recognition. We call this aspect of place a &ldquo;meaning matrix&rdquo;, the implicit knowledge required for understanding meaning, such as a standard for judgment or a view of value.<br> 3) It is &ldquo;story&rdquo; that represents the meaning of landscape. A story is a discourse on objects-a legend, an article, or a picture and indicates the trend of history. The subject and landscape are changing together, influencing each other in parallel with a &ldquo;story&rdquo; (see Fig. 4).<br> 4) The task ahead for landscape study is to understand the self-understanding of a social group by analyzing its &ldquo;story&rdquo;, and to clarify the structure of the meaning matrix.
著者
海津 正倫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.53-59, 2019 (Released:2019-02-23)
参考文献数
7

平成30年西日本豪雨災害における岡山県倉敷市真備町の水害では小田川や支流の末政川,高馬川などが破堤し,洪水氾濫によって大きな被害が発生した.顕著な破堤が発生した末政川の700 m地点では,洪水流は破堤箇所から左岸側,右岸側共に堤防横の建物などを破壊し,さらに細長く伸びる押堀を形成して流れ,その先は障害となる建物をよけながら空き地や畑などの空閑地を流れた.下流側の破堤地点である400 m地点とこの700 m地点との間は顕著な天井川となっており,また,河道がS字状に屈曲していて,小田川との合流部からのバックウォーターに加えて,このような河川の特性が破堤に影響した可能性が考えられる.一方,高馬川・小田川の破堤地点では,破堤箇所からの洪水流が広がった地域でそれとは反対方向からの洪水流も存在し,破堤地点からの洪水流が流れたあとに末政川方向からの流水も到来し,浸水被害を増大させた可能性がある.
著者
筒井 一伸 澤端 智良
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.35-49, 2010 (Released:2010-08-23)
参考文献数
18
被引用文献数
3 4 1

日本国内におけるグリーン・ツーリズムの展開が始まってから15年以上が経過したが,その主たる顧客対象は国内都市住民に限定されてきた.その結果,「ありのままの地域資源」を活かしたグリーン・ツーリズムでは地域間の差別化が十分に図れず,都市住民という共通の市場を奪い合う「グリーン・ツーリズムのジレンマ」と称される事態に陥っている.一方,2003年からの「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の展開によって国際的な観光立国に向けた動きが始まり,外国人観光客を対象としたグリーン・ツーリズムの萌芽もみられ始めている.本報告ではマーケティング分析の視点から,グリーン・ツーリズムにおいてどのような外国人市場が考えられるのかを分析するとともに,先発事例である富山県立山町と青森県十和田市の事例分析からその背景と課題を明らかにする.
著者
植木 岳雪
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.251-272, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
29
被引用文献数
2

2017(平成29)年8月に,千葉科学大学における教員免許状更新講習の一環として,地理の内容を含む講習を実施した.その講習は,「ブラブラ歩き」を含む千葉県銚子市内の野外観察,新旧地形図の比較,地形断面図の作成,空中写真判読などの室内実習,イラスト表現による修了試験という体験型の活動からなり,受講者は保育園,小・中・高等学校の教員20人であった.受講者の講習に対する満足度は非常に高く,講習の内容は今後の授業に役に立つと判断された.このような体験型の活動からなる教員免許状更新講習は,地理を専門としない学校教員に地理を普及・啓発するアウトリーチとして適当であり,今後の拡大が望まれる.
著者
駒木 伸比古
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.127-139, 2018 (Released:2018-04-13)
参考文献数
23

本稿は,マイクロジオデータである「商業集積統計」を用いて,中心市街地活性化計画認定都市の基本計画区域内における商業・サービス業の集積状況を業種に基づき分析・検討したものである.その結果,人口規模の小さな自治体ほど,基本計画区域内への商業・サービス業の集積が高まる傾向にあることが明らかとなった.また業種によってその集積状況は異なっており,高次の業種は集積する一方で,日常的に利用される業種の集積は低かった.さらに,基本計画区域内での業種構成は地域性がみられてグループ化が可能であること,自治体の人口規模とも関連していること,そして地理的分布にも特徴がみられることが明らかとなった.
著者
小森 次郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.84-87, 2014-03-31 (Released:2014-04-23)
参考文献数
19
被引用文献数
1

ジオパーク利用者にとって現地でのリスク情報とその的確な提供は重要である.日本の山岳遭難事故の統計を参考に,ジオパークの利用者が被りうるリスクを検討した.その結果,転落,滑落,転倒,動物との遭遇,落石が主な危険要素として考えられた.ジオパークに関する出版物を見たところ,これらのリスクを注目・議論したものは見つけられなかった.また,各ジオパークの公式Webサイトを調べたところ,2/3のジオパークにはリスクや安全対策に関する記述は見当たらなかった.残りの1/3のサイトでも,その記述は簡単なものであった.利用者の安全を考えると今後はこれらのリスク情報がジオパークの魅力などと一緒に効果的に公開されていく必要がある.
著者
川本 博之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2010年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.94, 2010 (Released:2010-11-22)

本研究は検証確認できる多くの実在関係の提示と相互関係性の存在発見の指摘である、日本史に重要事物位置に古代国家により永代続く作為により国家的価値観とした位置性に拘る関係性が巨大古墳から現代皇室施設にある。建築学会他で「神社鎮座法の実証的検証研究」として21題発表他している。沖ノ島、宮島、大三島の神島三島が同緯度で、宗像大社沖津宮と厳島神社の祭神が同じに作為を思い全国四千社の神社位置探究から始め、国土地理院の世界測地系変更から有名有力古社約350社と名山に研究対象を限定し、多段階を経て富士山を第一基点山に真西の大山を第二基点山とした国土の名山、宮等と相互関係性で、出雲と富士山と熊野の三角構成の間中に近畿地方を中心性とし、淡路島のイザナギを祀る伊弉諾神宮とイザナギの姫神で皇祖神アマテラスの伊勢神宮を東西関係にし真中に古代国家大和朝廷発祥地の飛鳥がある。各基点地域間の名山名社等に組や対での作為的関係が様々あり、古代国家が成しただろう一元管理的で神社と帝都、官寺が一体の国家的価値観の原理のある位置性を神社鎮座関係と名称化した。富士山と大山の間中に飛鳥、藤原京、平城京、平安京と主要三都は北上し、他京も論証できる関係は古代に信じ難く常識外の高精度方位関係で、多学界の既成観を覆す内容を認識し、数千を超える多数の明確で意図的な関係に多様な神社実態との対応と、構成的な関係が事例毎にあり、記紀や風土記、神社由緒等を含む文献対応を確認し、検証研究から関係性を確信する。古代国家創生と関係した歴史事物間の位置性は、記紀等を逆検証できる自明の事実で、学界の事物と整合しない推論を駆逐する明確な史実の物証である。本論は三都や三天下城(安土城は俗称の天下城)の位置関係が、富士山、大山、出雲、熊野、房総、大和の特に基点性の高い有名霊山、有名神体山の名山や高社格、有名有力古社との明確な関係の存在を提示している。学界は三都や一部の神社や城などに風水の四神相応説で論じ、特に平安京については四神相応説が定説化している。だが、論拠の風水の古典は本家中国でも明代以降にしかなく、学界が唱える中国風水と違うと云う日本風水の古典はない。後代の帝都と関係のない「作庭記」などが典拠とされるが文献記事に付会した説で、そもそも明確な具体的関係がないが多くの学界で様々論じられ通説となっている。神社に関しても、土着的な山などの自然信仰から祖霊信仰などが習合し神社神道になったとする通説がある。独立峯や主峰でない支尾根が何故選択され信仰対象になるのか、自然信仰から記紀の人格神を祀る祭神が変更になる事等を論証せず、国が編纂した記紀を神典とし、記紀神を祀り、国が社格を付け神名帳に記し管理し、国が幣を与え、国司が参る存在が高社格社であるが、国の強い関与性や本宮別宮摂末社等の多様な神社実態が解明されていない。神社神道の自然信仰発祥発展説と多様な神社実態とは多くが整合しないが、学界はその解決を希求せず、神の事、神代の事は不明が当然とした不合理な推論を国家国民に供してきた。歴史学、国文学、民俗学、宗教学、歴史学の下位の建築史学等が認め看過してきた二つの通説に明確な根拠がなく事実と整合しないが学界権威故か既成観である。明らかな不合理を関連学界の全てが認めた状態で疑問を思わない不思議がある。帝都も神社も記紀に書かれた事物で、記紀の神々を祀る神社、宮等には推論では導出できない多くの作為的事実関係がある。古代に国土形状を把握し構想し実現された関係は、古代国家大和朝廷の飛鳥が計画首都である事を示す明確な神社鎮座関係がある。本研究の指摘関係は自明の事実で作為的関係で偶然でない史実である。
著者
市川 康夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.115-126, 2015 (Released:2015-12-29)
参考文献数
7

本研究の目的は,産地競争下にあるフランス山間地域の畜産において,地理的表示制度の認証を獲得したローカル産品が地域においてどのように生産され,いかにしてその伝統性や品質が保持されているのかを,ファングラ牛のブランド化過程より明らかにすることである.ファングラ牛は,地域の記憶にあったかつての伝統的飼育をあえて現代に導入し,伝統性と固有性を地理的表示範囲と伝統飼育に求めることでブランド化が実現した.極めてローカルな範囲で消費および流通するファングラ牛は,ラベルが乱立する現代において他地域においても示唆的な事例といえる.
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.33, no.12, pp.636-642,1_2, 1960-12-01 (Released:2008-12-24)
著者
戸所 隆
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.42-51, 2006 (Released:2010-06-02)
参考文献数
6
被引用文献数
1

工業化社会から情報化社会への転換を受けて,新たな国のかたちを創るために,市町村合併が進んだ.しかし財政力強化の視点からの合併がほとんどであり,現状のままでは,ますます地域間格差が拡大し,国際競争力を高める国づくりはできない.新しい国づくりには,首都機能移転を実現し,小さな自治と財政的にもマンパワー的にも地域力の向上する「大都市化分都市化型都市づくり」に資する市町村合併が求められる.新しい国のかたちづくりの第二幕はこれからで,地理学界は空間的視点から社会に対して発言すべき時である.
著者
大西 宏治
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.25-33, 2007 (Released:2010-06-02)
参考文献数
12
被引用文献数
1 3

近年,児童が被害者となる凶悪な犯罪が増加しつつある.子どもたちにこれらの犯罪が降りかかる危険性を減らすために,全国各地で「地域安全マップ」づくりが盛んになっている.様々な地域安全マップが全国各地で作成されている.地域安全マップのねらいは,犯罪が発生しやすい景観の特徴や犯罪の発生する空間的要因を子どもに理解してもらうことにあり,そのためにフィールド調査を行い地図の作成をする.そこで,地理学がこれまで培ってきた地理学の研究成果を応用したり,Web-GISを活用した地域情報の共有をサポートするなどを行って「地域安全マップ」づくりをサポートしていくことで,これまで以上に有益な「地域安全マップ」が作成されることになるであろう.
著者
南雲 直子 久保 純子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.141-152, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
14
被引用文献数
2 8

2011年8月~10月に大規模洪水が発生したカンボジアのメコン川下流平野を対象とし,首都プノンペンを中心とした地域で洪水と微地形に関する調査を行った.衛星画像を用いて浸水範囲を把握し,水文データ等を入手するとともに,2012年3月の現地調査では洪水痕跡より浸水深を測定した.その結果,微地形と浸水範囲・浸水深の対応が良好に見られた.洪水はメコン川の氾濫原を利用して流下するとともに,トンレサップ川沿いでは深く湛水し,通常の雨季には浸水することのない高位沖積面にまで洪水が達した.これは近年最大規模といわれた2000年洪水に匹敵する規模であった.また,浸水域に比較すると相対的な被害は大きくなかった.カンボジアのメコン川はほとんど築堤が行われておらず,伝統的な地域に住む人々は毎年の洪水を経験しながらも,その環境に適応し,洪水リスクを最小限にするような土地利用や生活様式を続けている.
著者
川瀬 久美子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.411-435, 1998-06-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
56
被引用文献数
12 13

中部日本の矢作川下流低地において,ボーリング資料の整理,加速器分析質量計による堆積物の14C年代値の測定,珪藻分析,考古資料の整理を行い,完新世後半の三角州の離水過程と地形環境の変化を明らかにした.縄文海進高頂期以降, 3000~2500年前に三角州の離水が広範囲で進行した.これは相対的海水準の低下(弥生の小海退)の影響と推定される.また,この時期に離水した地域およびその上流では,約3000年前以降は安定した後背湿地的環境であったが,約2000年前頃から洪水氾濫の影響が強くなり(河川氾濫期I),古墳時代には顕著な自然堤防が形成されるようになった(河川氾濫期II).この一連の堆積環境の変化には,気候の湿潤化による洪水氾濫の激化と,人為的な森林破壊による土砂供給量の増大とが関与している可能性がある.
著者
久保田 尚之 塚原 東吾 平野 淳平 松本 淳 財城 真寿美 三上 岳彦 ALLAN Rob WILKINSON Clive WILKINSON Sally DE JONG Alice
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.412-422, 2023-11-21 (Released:2023-11-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

日本で気象台が開設される以前の江戸時代末期に,外国船が日本近海に気象測器を搭載して往来していたことに着目し,気象観測記録が掲載された航海日誌を収集し,気象データを復元した.18世紀末には探検航海する外国船が日本近海に現れ,19世紀に入ると米国海軍の軍艦等が日本に開国を求めるために日本近海を航行するようになった.これらの航海日誌に記録された日本近海の気象データの概要を示し,江戸時代末期に外国船が日本近海で遭遇した台風事例について,経路等の解析を行った.1853年7月21~25日にペリー艦隊6隻が観測した東シナ海を通過した台風の解析事例,1856年9月23~24日に蘭国海軍メデューサ号が観測した安政江戸台風の解析事例,1863年8月15~16日の薩英戦争中に英国海軍11隻が観測した東シナ海における台風の解析事例について報告する.