- 著者
-
西津 貴久
- 出版者
- 岐阜大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2009
本研究では,無菌充填・無菌包装された食品の微生物危害を誘起するパッケージ・シール部の細孔を振動法により検出する検査システムの開発を行うことを目的としている.変位制御式加振器とレーザー・ドップラー検出器から構成される計測システム(以下,レーザー式)と,加振器・検出器を兼ねた動電型スピーカー利用の計測システム(以下,スピーカー式)の試作機を用いて測定を行った.試料には,200mL容量のアルミ付き紙容器(ブリックタイプ)に蒸留水をアセプティック充填したものを用いた.細孔を模擬するためにストロー挿入口に1mm厚のセプタムゴムを接着し,そこに外径0.4mmのシリンジ針を突き刺し,2.5mLまでの範囲で空気を注入した.スピーカー式で得られる第1共振ピークはスピーカーと容器の1自由度の振動で,容器重しか反映していない.また第2共振(または第3共振)ピークは,レーザー式では検出されなかったが,レーザー・ドップラーの原理から,この共振はねじれ振動である可能性があると推察される.スピーカー式で検出された第2共振周波数と,レーザー式で検出された第1共振周波数は,容器内に空気が封入されると低周波側ヘシフトした.空気量が容器容量の1.25%までの範囲では,空気封入前の周波数を基準とした差率と空気封入量に線形相関がみられた.レーザー式(r2=0.89,n=37)の方がスピーカー式(r2=0.64,n=40)よりも高相関であったため,精度を高めるためにはレーザー式が有利である.これらの共振周波数は容器によって異なり,個体差と,空気が入ることによる差率は同じオーダーであることから,共振周波数の絶対値による細孔の有無の検出は困難であった.これを解決するためには,測定後,細孔からの空気流入を促すために容器を真空下においた後に一気に復圧する操作を行ってから再度測定し,圧力操作前後の差率を用いて閾値以上のものを有孔と判断する方法が有効であった.