著者
伊藤 昭 寺田 和憲
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

心を読むことに基づくコミュニケーションを計算機に実装可能なアルゴリズムとして検討した。主要な成果は、次のとおりである。1.心を読むコミュニケーションの発生要件を「非零和ゲーム状況=利害が完全には一致しないが協調を必要とする状況」と定式化し、人工的にその状況を生成することで、嘘やだましを含む心を読むことによるコミュニケーションを創発させた。2.人が(人工物を含む)対話相手に心属性を付与する条件を、外見要因、行動要因の2面から調査した。また、心を読むことによるコミュニケーションの創発におけるメタ信号を役割を、身振りをコミュニケーションメディアとして用いて分析した。
著者
森脇 久隆 清水 雅仁 高井 光治
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1. リン酸化型RXRα蛋白発現がマウスES細胞に及ぼす影響:はじめに、doxycycline投与によってリン酸化型RXRαの発現調節が可能なクローニングベクターを作製し、リン酸化型RXRα誘導性ES細胞およびマウスの作製を作成した。リン酸化型RXRα蛋白がRARE, RXRE, PPREプロモーター活性に及ぼす影響について検討したところ、RXRE, PPRE活性の明らかな低下を認めたが、RAREへの影響は認めなかった。次に、マウスES細胞を分化培地で培養し、doxycycline投与の有無による細胞増殖への影響について検討したところ、リン酸化型RXRα蛋白発現群では、非投与群に比べて優位な細胞増殖の増加を認めた。また、リン酸化型RXRα蛋白発現群では、alkalinephosphatase染色に陽性を示す、比較的未分化な形態を保った細胞の出現を認めた。2. リン酸化型RXRα蛋白の肝発癌感受性に関する研究:我々が作成したトランスジェニックマウスを、リン酸化型RXRα mutant発現群(Rxrα/+; Rosa/+)と対照群(Rosa/+)の2群に分け、Diethylnitrosamine(DEN: 25mg/kg、生後15日腹腔内投与)で肝腫瘍を誘発した後、4週齢より0.2% doxycyclineを飲水投与し、月齢6ヶ月にて屠殺を行った。各群の肝腫瘍発生率、腫瘍最大径、総腫瘍数について肉眼的に評価を行ったところ、肝腫瘍は各群とも全例に認められたが、総腫瘍数についてはRxrα/+; Rosa/+群において、Rosa/+群と比べ明らかな増加を認めた。また、腫瘍最大径、肝重量についてもRxrα/+; Rosa/+群での増加を認めた。以上の結果から、リン酸化型RXRα蛋白はDEN誘発肝腫瘍形成の過程において促進的に影響しうる可能性が考えられた。
著者
大谷 滋 田中 桂一
出版者
岐阜大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

鶏における細胞レベルでの糖新生機序と脂肪肝の糖新生機序におよぼす影響を明らかにするため, 正常鶏, 実験的に作成した脂肪肝症鶏および肥育終了時のブロイラー鶏の肝臓からコラゲナーゼ灌流法により単離肝細胞を調製し, そのグルコース新生能について比較検討した.本実験で用いたin situで酵素液を灌流する方法により, すべての供試鶏において, 細胞収量および細胞生存率ともに良好な単離肝細胞を得ることができた. 単離肝細胞による種々の基質からのグルコース生成量は, すべての供試鶏において, 乳酸およびフラクトースからが最も高く, ついでピルビン酸, オキザロ酢酸であり, グリセロール, アスパラギン酸およびアラニンからのグルコース生成量は非常に低いかほとんど認められなかった. 正常鶏から調製した単離肝細胞では, グルカゴンおよびc-AMPの添加によりフラクトースおよび乳酸を基質としたグルコース生成量は無添加より明らかに増加し, グルカゴンあるいはc-AMPに対する応答能は単離細胞調製操作で損なわれなかった. 実験的に作成した脂肪肝症鶏から調製した単離肝細胞でのグルコース生成は正常鶏よりも明らかに低く, 肝臓に脂質が異常に蓄積した場合その肝細胞におけるグルコース生成能は阻害を受けることが認められた. 肥育終了時のブロイラー鶏より調製した単離肝細胞によるグルコース生成量は正常鶏とほとんど同じであり, 腹腔内に多量の脂肪が蓄積し, 肝臓も肥大して黄褐色の外観を呈していたのにも関わらずグルコース生成能の低下は認められなかった. 肥育末期に発生するブロイラーの突然死の原因が血糖値の急激な低下であるとしても, それが肝臓におけるグルコース生成能の異常によるものだけではなく, 他の要因との複合によるものであると考えられた.
著者
大谷 滋 田中 桂一
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.45-51, 1992-12-25

糖新生物質の一つであるグリセロールからの糖新生について,実験的に作成した脂肪肝症雛で検討した。28日齢の雛を2群に分け,1群は対照区として市販配合飼料を給与し,他の1群には同飼料にdienestroldiacetateおよびpropylthiouracilを添加した飼料を12日間給与して脂肪肝症鶏を作成し脂肪肝症区とした。処理終了後,両区の雛にグリセロールを投与し,投与前,投与0.5,1,3および5時間後に翼下静脈より採血して全血中グリセロール濃度および血禁中のグルコースと遊離脂肪酸濃度を測定した。採血後,肝臓を採取し,肝臓組織中のトリアシルグリセロール含量を測定した。また,処理終了後の両区の雛を24時間あるいは72時間絶食した後,同様の測定を行なった。絶食前の脂肺肝症区の肝臓は対照区雛に比べ明らかに肥大し,明色化した。また,肝臓組織中のトリアシルグリセロール含量は脂肪肝症区で高く,対照区の10倍の値を示した。体重100g当りの肝臓重量は脂肪肝症区では絶食日数を延長するに伴い低下したが,対照区ではほとんど変化しなかった。グリセロール投与前の血漿中グルコース濃度は絶食前では両区に差は認められなかったが,絶食24時間および72時間では脂肪肝症区の方が低い値を示した。対照区では,全血中グリセロール濃度および血漿中遊離脂肪酸濃度は絶食により増加したが,脂肪肝区ではほとんど変化は認められなかった。グリセロール投与後の血漿中グルコース濃度は脂肪肝症区よりも対照区の方が上昇が速かった。脂肺肝症の鶏では肝臓からのグリセロール放出およびグリセロールからの糖新生は抑制されていると推察される。
著者
中谷 剛
出版者
岐阜大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本年度は長良川下流域の自然ワンドを対象に,生態系調査と熱環境調査を行った.対象としたワンドは、長良川下流部の距離標15.6kmの地点にある。長良川河口堰運用前は干満の影響を受ける汽水域であったが現在は淡水域へと変化していると考えられる。水域の長さは約800mの細長い形状のワンドで、入口部の平均水深が約1m、中央部で約1.8m、奥部で約80cmである。調査の結果,以下の知見を得た.(1)鳥類調査 文献^<1)>によると同じ季節に行われたH2.9.16の調査で,長良川下流域4ケ所総延長2km区間で30種の鳥が確認されている.今回の調査ではその3分の1がワンドで確認できた。対象ワンドは鳥類にとって重要な生息場所であることが確認できた。(2)底生動物と底質調査 クロベンケイガニ類の個体数密度の結果を1992年調査の結果^<1)>と比較すると,ワンドのカニ類個体数密度は増加していた.これは、長良川河口堰の運用で水位が上昇し,ワンドの陸地部分が減少しているので,一時的に避難しているのではないかと推測した.継続的な調査が必要である。ワンド周辺の底質について、7ケ所から土のサンプリングを行い、密度、粒径分布などについて調査した。ワンド水域の底質の平均粒径は,入口から奥部に向かうにつれ小さくなっている。土中微生物の活動状態は,木の根や植生の豊富なところ程活発であることがわかったが,土壌pHと微生物の活発度,およびカニ類の生息場所に関しては特に関係は見られなかった.(3)熱環境調査 秋期に2週間,冬季に4週間の水温変化をワンド水域3地点,5水深で行った.本川の水温に比べてワンドの水温は気温の影響を強く受け,湖沼や貯水池の水温環境と似た特性を示した.参考文献 1)長良川下流域生物相調査団編:長良川下流域生物相調査報告書
著者
丸尾 亜喜代 小松 万喜子
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

不妊治療を終結し子どもを持たない人生を築いていく女性の主観的幸福感を促進する支援を明らかにする目的で,当事者及び看護職を対象として調査を行った結果,治療後の過程には治療中の対応が深く影響し,治療終結期の支援では,カップルとして捉えた支援の充実,終結後の生き方のモデル提示,終結後の心身の継続支援の保証と強化の重要性が明らかになった。また,不妊の理解と夫婦2人の人生を肯定する社会への提言が求められた。看護職によるケアでは,終結時期を査定し意思を確認し,決断を困難にする要因に関する情報提供と説明を行い,自身で決断に向かえるように支援する必要性が示唆された。
著者
西津 貴久
出版者
岐阜大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では,無菌充填・無菌包装された食品の微生物危害を誘起するパッケージ・シール部の細孔を振動法により検出する検査システムの開発を行うことを目的としている.変位制御式加振器とレーザー・ドップラー検出器から構成される計測システム(以下,レーザー式)と,加振器・検出器を兼ねた動電型スピーカー利用の計測システム(以下,スピーカー式)の試作機を用いて測定を行った.試料には,200mL容量のアルミ付き紙容器(ブリックタイプ)に蒸留水をアセプティック充填したものを用いた.細孔を模擬するためにストロー挿入口に1mm厚のセプタムゴムを接着し,そこに外径0.4mmのシリンジ針を突き刺し,2.5mLまでの範囲で空気を注入した.スピーカー式で得られる第1共振ピークはスピーカーと容器の1自由度の振動で,容器重しか反映していない.また第2共振(または第3共振)ピークは,レーザー式では検出されなかったが,レーザー・ドップラーの原理から,この共振はねじれ振動である可能性があると推察される.スピーカー式で検出された第2共振周波数と,レーザー式で検出された第1共振周波数は,容器内に空気が封入されると低周波側ヘシフトした.空気量が容器容量の1.25%までの範囲では,空気封入前の周波数を基準とした差率と空気封入量に線形相関がみられた.レーザー式(r2=0.89,n=37)の方がスピーカー式(r2=0.64,n=40)よりも高相関であったため,精度を高めるためにはレーザー式が有利である.これらの共振周波数は容器によって異なり,個体差と,空気が入ることによる差率は同じオーダーであることから,共振周波数の絶対値による細孔の有無の検出は困難であった.これを解決するためには,測定後,細孔からの空気流入を促すために容器を真空下においた後に一気に復圧する操作を行ってから再度測定し,圧力操作前後の差率を用いて閾値以上のものを有孔と判断する方法が有効であった.
著者
橋本 晃 工藤 忠明 奥田 恭之
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.403-412, 1988-12-25

ウサギ12羽(日本白種色8羽,ダッチ種4羽)を用い,超音波画像診断法による妊娠の経過における胎子及び胎盤の発育過程を観察し,併せてそれらの画像所見と肉眼的所見との比較も行った。胎包は妊娠8日目に,ほゞ円形のエコーフリーの嚢胞様画像として比較的容易に描出された。9日目には,胎芽に由来する点状エコーが胎包内に描出され,妊娠の確定診断が可能となった。胎子の四肢,肋骨弓及び胃を示す画像は,それぞれ妊娠14日目,17日目及び20日目から描出できた。心臓拍動は14日目からリアルタイム画像で明瞭に観察された。胎動は16日目からわずかに認められ,20日目頃から活発となった。頭蓋骨の画像には,化骨に由来する音響陰影が23日目頃から観察できた。28日目頃には,脊椎や肋骨も明瞭に描出され,胎子の開口動作も頻繁に認められた。一方,胎盤は最初,胎包腔内へ隆起する小エコーとして描出され,胎盤が発達するにつれて,円盤状ないし半円形の均質なエコーあるいは内部が低エコーの短冊状のエコーとして観察された。今回の検索成績から,超音波画像診断法は,ウサギの妊娠経過に伴って変化する胎子及び胎盤の観察に有用なことが明らかにされた。正常妊娠ウサギで観察された種々の画像所見は,妊娠中に生ずる胎子及び胎盤の病的変化を診断するための指標として利用できると思われた。
著者
横畑 泰志 杉村 誠 鈴木 義孝 中村 孝雄 阿閉 泰郎
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.185-191, 1985-12-15

放香腺として知られるニホンカモシカ眼窩下洞腺の脂腺について,組織学的倹素と脂質分析を行った。脂腺にはI型とII型が区別される。I型脂腺は外皮の脂腺と同様の形態であるが,II型脂腺はヘパトイド様の大型脂腺で雄0歳と雌にのみ出現し,その腺胎内の嚢胞形成は大卵胞や黄体をもった雌及び雌0歳子において著明であった。硅酸カラムクロマトグラフィーによる脂質分画の重量比では,脂腺域では汗腺域より炭化水素及びステロールエステル分画が多かった。特に後者は他動物で既知の性誘引物質が多いとされるステロイド化合物に相当する分画で,ガスクロマトグラム上でもこの分画から脂腺域に特有のピーク群が検出された。このピーク群は性成熟・妊娠などの性的状態に関連して変化することが示された。以上の所見はII型脂腺が一種の性誘引物質を分泌することを示唆するものと考えられる。
著者
石黒 直隆 村瀬 哲磨
出版者
岐阜大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

日本には本州、四国、九州にニホンイノシシが琉球列島にリュウキュウイノシシが生息する。最近、西日本を中心にニホンイノシシの固体数の増加と生息域の拡大が顕著である。それにより、中山間村地域での農作物被害や人的被害が拡大している。本研究の目的は、野生イノシシ中に拡散が懸念される家畜ブタ由来遺伝子の分布と家畜由来感染症の広がりを検出する検査手法を開発することである。さらに、開発した検査手法を用いて、日本に生息するイノシシ中での家畜ブタ由来遺伝子の浸潤動向を調査することである。その結果、以下の成績を得た。また、一部の成績を公表した。1.野生のニホンイノシシと家畜ブタとを区別するマーカーとして、ミトコンドリアDNA(mtDNA)574bpと核GPIP遺伝子多型を改良し、母系遺伝と父系遺伝の両方から家畜由来遺伝子を検知した。2.和歌山県下での現地調査:農作物被害が深刻な和歌山県をモデルに、生息するニホンイノシシ中の家畜ブタ由来遺伝子の浸潤状態を検討した。その結果、2005年と2006年の2年間で129サンプルを調査し、4型のmtDNA(J10,J15,J21,J22)を得たが、家畜由来のmtDNA型は検出されなかった。核GPIP遺伝子型別でもGPIP1,GPIP3,GPIP3aが検出されたのみで、家畜由来GPIP遺伝子型は検出されなかった。3.感染症の抗体価調査:2004年に調査した四国4県のイノシシ血清115サンプルに関して、ブルセラ菌の抗体価を調査した。その結果9サンプルで陽性であり、野生イノシシの中にブルセラ症に感染したイノシシが存在することが明らかとなった。今後、イノシシ肉を食する上で注意が必要である。本研究により、野生イノシシ中へのイノブタの浸潤頻度は、少ないものと考えられる。ただし、全国的にみて、イノシシの個体数は増加していることから今後とも注意深く調査する必要があろう。
著者
桜井 宏紀 田畑 幸司 照屋 匡 小濱 継雄
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.31-38, 1996-11-28

ガンマ線照射によるウリミバエ(Dacus cucurbitae Coquillett)雌の不妊化機構を解明するため,卵形成と中腸に及ぼすガンマ線照射の影響を超微形態学的に検討した。正常虫では羽化後直ちに第1卵胞が交互栄養室型卵管の生殖巣より分化した。栄養細胞と濾胞上皮細胞は卵母細胞の成長に関連した形態学的変化を示し,羽化後8日以降に成熟卵が形成された。一方,照射虫の卵巣小管では卵原細胞は核濃縮や核融解を起こした。ライソブームは前栄養細胞の崩壊,凝縮,融解に関与し,生殖巣は空隙化した。観察結果から,70Gyの線量のガンマ線照射によりウリミバエの卵形成が完全に抑制され,雌の不妊化を引き起こすことが示された。正常虫の中腸の上皮の円筒細胞は分厚く,細胞の上縁部より腸の内腔に向かって微絨毛が密生していた。腸内には棹状の細菌が少数存在したが,それらは囲食膜によって吸着され溶解した。一方,照射虫の中腸上皮の円筒細胞は日令の経過に伴い薄層化し,中腸後端部の腸内には棒状の細菌が退化した囲食膜にそって多数存在した。観察結果から,ガンマ線照射によって中腸上皮細胞と囲食膜に障害を生じ,栄養欠乏を起こして最終的に成虫の寿命が低下することが推察された。
著者
吉野 純
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,可能最大規模の台風上陸を想定した台風災害外力を評価することを目的とする.台風予測に特化した高効率で高精度な台風災害外力モデリングシステムを新たに構築することで,温暖化の進行に伴い北西太平洋上の「強い台風」の勢力と頻度が一層増す傾向にあることが明らかとなった.また,温暖化の進行に伴い,全国的に可能最大高潮が徐々に増大するトレンド(傾き:約+0.5m/100年)にあり,一方で,年々変動によるばらつき(標準偏差:+0.7m~1.0m)も大きく,温暖化の進行の度合いに関わらず近い将来であっても悪条件が重なれば可能最大規模の高潮災害が発生する可能性があると結論づけられた.
著者
大屋 賢司 福士 秀人 奥田 秀子 原崎 多代
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

主要な人獣共通感染症の原因となるChlamydia psittaciの、細胞内増殖性と多様な宿主域に関して、Pmpの多様性を通じて明らかにすることを目的とし以下の成果を得た。1)Pmpファミリーの比較ゲノミクス:クラミジア種間だけでなく、株間でも、pmpの多様性が確認された。2)Pmpファミリー発現プロファイル解析:恒常的に発現しているPmpファミリー分子の他、PmpG11のように感染中期以降に発現するファミリー分子が明らかとなった。3) C. psittaci特異的なPmpの機能解析:PmpG11について、病態形成にへの関与は不明であったものの、診断用抗原としての有用性を明らかにした。
著者
別府 哲
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

高機能自閉症児における社会性障害の基底にあると考えられる、情動表出や情動理解の障害について、以下のことを明らかにした。(1)情動理解を意識的な情動処理と、無意識的な情動処理に分けた際に、自閉症児は、意識的な情動処理は高い言語能力の補償によって可能になるが、感情プライミングや表情の自動模倣にみられる無意識的な情動処理には障害を持ち続けること、よって無意識的な情動処理が一次障害と考えられることが示唆された。(2)不安な情動のコントロールは、アタッチメント関係を形成することによって可能になる。自閉症児のアタッチメント関係形成を縦断的に検討した結果、自閉症児もアタッチメント関係形成は可能であること、しかしそれが定型発達児より高い言語能力によって成立し、その際アタッチメント対象を心理的安全基地ではなく道具的安全基地と把捉するという障害による特異性も存在することが示された。(3)就学前の高機能自閉症児における自己表情写真の情動理解を検討した結果、知的に遅れのない就学前の障害児はその理解が可能であったのに対し、高機能自閉症児は障害を示すことが明らかとなった。(4)高機能自閉症児は小学生から中学生の時期にかけて、孤独感が増大し社会的コンピテンスが減少すること、定型発達児と比較すると、9,10歳の節で有意な差がみられるようになることが示された。
著者
杉山 陽子
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

培養気道上皮細胞においてTNFα刺激で産生されるIL-8が麻酔薬プロポフォールによりGABAA受容体を介して増加した。GABAB受容体作動薬はIL-8産生量を変化させなかった。TGFα刺激における分泌型ムチンMUC5ACの産生を麻酔薬ミダゾラムが抑制したがGABAA受容体拮抗薬はその作用を抑制しなかった。気道炎症に重要なIL-8の産生過程をGABAA受容体が修飾している可能性があり、今後新しい治療ターゲットとなりうる。