著者
井上 芳光 米浪 直子 小倉 幸雄 久保田 豊司 芳田 哲也 中井 誠一
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.235-243, 2002-04-16

本研究では, 夏季スポーツ活動時における子ども (少年野球・ミニバスケットボール) , 若年成人 (女子ソフトボール・男子野球) , 高齢者 (ゲートボール) の発汗率 (TSR: g/m2/h) ・体重あたりの発汗量 (%TSL) ・水分補給率 (総発汗量あたりの水分補給量: %FIV) を調査し, それらの年齢差, 子どもにおける性差および種目間差 (屋内種目VS.屋外種目) , 飲料差 (スポーツ飲料VS.お茶) をそれぞれ検討した.なお, いずれの場合も水分補給は自由摂取とした.子どものバスケットボールにおいて, TSR, %TSL, %FIVには有意な性差はみられなかった.少年野球時のTSRおよび%TSLは, 高いWBGTに起因してバスケットボール時より有意に高かったが, %FIVには有意な種目間差は認められなかった.なお, 少年野球時のTSRはほぼ400g/m2/hに達し, 先行研究で報告されているその最大値に相当した.スポーツ飲料を補給した場合, 子どもの%FIVは両種目ともほぼ100%であり, %TSLが同等であった若年成人より有意に高かった.子どもの%FIVはスポーツ飲料摂取時がお茶摂取時より有意に高かったが, 若年成人の%FIVには飲水物の影響はみられなかった.高齢者のTSR, %TSL, %FIVは, 若年成人や子どもより有意に低かった.これらの結果は, 夏季スポーツ活動時において, 子どもにスポーツ飲料を自由摂取させれば, 性・環境温度に関わらず, 自発的脱水を予防できることが示唆された.しかし, 子どもの炎天下スポーツ活動時の発汗率が先行研究で報告されている最大発汗率に相当したことから, 深部体温がかなり上昇していることが推測され, 夏季スポーツ活動時には熱中症予防に向けた積極的休息, 練習時間の短縮, 運動強度の軽減の必要性がうかがえた.高齢者はスポーツ活動時の水分補給率が低いことから, 積極的な水分補給を奨励することが熱中症予防に重要であることが示唆された.
著者
倉掛 重精 菅原 和夫 三上 靖隆 中路 重之 長内 剛 岡村 典慶 大下 喜子
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, 1990-12-01

日本ナショナルチーム女子選手の試合中の心拍数は、勝敗によって影響を受けることはなかったが、試合内容や対戦相手によって大きく影響を受けるのではないかと考える。試合中の心拍数はゲーム数の違いによって、差が認められ、ファイナルゲームになると心拍数が低下を示した。又、個人別には、試合間で心拍数に差が認められたが、この差が試合中の集中力の差であるのかは、今後の検討課題である。
著者
久野 譜也 村上 晴香 馬場 紫乃 金 俊東 上岡 方士
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.17-29, 2003-08-01
被引用文献数
9 6

The ability to walk is just as important for the elderly as it is for young people. In fact, in the elderly, decreased mobility limits function in daily life and can lead to more serious situations (e.g., becoming bedridden). The elderly population has increased over the last decade, and many researchers have studied the mobility of the elderly. However, the focus of most studies has been to facilitate recovery of bedridden individuals and prevent the elderly from becoming bedridden, and particularly to prevent fall-induced fractures, which often cause the elderly to become bedridden. However, about 70-80% of the elderly population do not require care, and it is necessary to conduct research on the maintenance of activities of daily living to make it possible for the elderly to work or volunteer. From this perspective, mobility is an important physical factor. Mobility is dependent on muscle activity and it has long been known that aging reduces muscle mass. Therefore, it is feasible to assume that reduced muscle mass leads to decreased ability to walk, and we have proven that there is a close correlation between the two. When presenting the idea of strength training to the elderly, it is appropriate to focus on the maintenance and improvement of mobility, not on the training itself. The results of our research can be summarized as follows : Muscle mass decreases with age, with the legs being affected to a greater degree than the arms. Moreover, muscle atrophy is dependent on weakening of muscle fibers, especially fast-twitch (Type II) fibers. Reduced lower limb muscle mass increases the risk of falling and can decrease walking ability to a degree that can affect daily living activities. In order to improve reduced muscle mass in aging, it is important to use an exercise program that is designed to strengthen fast-twitch fibers, which can be followed even by the elderly. Since walking therapy mostly mobilizes slow twitch fibers, it is not effective in preventing and improving muscle atrophy. It is important to have an exercise program that is designed to mobilize fast-twitch fibers.
著者
白木 仁 田淵 健一 児玉 啓路 宮川 俊平 上牧 裕 天貝 均
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, 1983-12-01

陸上競技における走、跳、投の種目別のスポーツ障害の特徴を明らかにし、実際の障害予防を行なう上での基礎的資料を得るために・筑波大学陸上競技部男子部員114名に対しアンケート調査を行った結果、次のことが明らかになった。短距離では、大腿後面の肉離れが半数を占め、中・長距離では、下腿の腱鞘炎、腱炎、骨膜炎、疲労骨折などの過労性の障害が半数を占めていた。跳躍では、大腿部の肉離れと足関節捻挫が同様の頻度(22.8%)で上位を占め、投てきでは、肘の疼痛と腰部の障害が7割を占めていた。
著者
井上 恵子 西川 〓八 木村 直人 広田 公一
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.156-165, 1992-04-01
被引用文献数
2 2

日常継続的な運動を行っていない6名の男子学生(23〜25才)に対し, 主に上腕二頭節がコンセントリックおよびエクセントリック収縮となるような重量負荷運動を課した. 運動強度は20%MVCであった. そしてその運動の3週間後に同一運動(2nd Ex.)を再負荷し, 筋痛と血清CK活性値, および白血球数におよぼす影響について検討し, 以下の結果を得た. 1. 血中乳酸値は, 1st, 2nd Ex.とも運動直後に有意(p<0.01)な上昇を示し, 運動終了6時間後には安静レベルに戻った. 血中乳酸値は, 両運動間ではとんど差はみられなかった. 2. 白血球数は1st Ex.および2nd Ex.ともに運動終了直後から6時間後まで一過性に増加し, その後安静レベルに戻ったが, 運動終了7日後に再び上昇を示した. 1st Ex.の運動終了6時間後と7日後に, 5%レベルで安静値より有意な上昇が認められた. 3. 血清CKは, 1st Ex.において5名に安静値からの著しい上昇(266〜763%)がみられ, 上昇のピークは運動終了3〜4日後と遅延した上昇を示した. これに対し2nd Ex.のCKは僅かな変動しか示さなかった. 血清CK値の両運動間には有意(p<0.01)な差が認められた. 4. 1st Ex.の運動後, 3〜7日間に亘って被検者全員に筋痛が認められ, そのピークは運動終了2日後であった. しかし2nd Ex.においては, 筋痛の程度は軽く, 消失も早くなる傾向が認められた. 5. 2nd Ex.において, 1st Ex.と同程度の筋痛が見られた被検者YIについては, CKについても1st Ex.と同様の上昇が認められた. しかしその値は, CK上昇が見られた5名中最も低い値であった. 以上のことから, 1st Ex.により, 新組織に損傷を与え筋痛を引き起こしたものと思われるが, 2nd Ex.で認められた筋痛と白血球数およびCK逸脱の低減は, 筋組織の損傷後修復過程が進行し, 3週間後の運動負荷に対し耐えうる準備ができたことによると推察された. また, 1st Ex.においてCK上昇の程度が低かった者には2nd Ex.においても筋痛とCKの低減が認められず, 筋組織に適応を引き起こす閾値が存在することが推測された.
著者
岩川 孝志 中村 好男 村岡 功
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.491-499, 2001-08-01
被引用文献数
1 2

本研究では自転車ペダリング運動中の活動筋における筋酸素化動態を自転車競技選と一般学生とで比較した.被験者として大学自転車部員6名 (サイクリスト群) と一般学生5名 (非サイクリスト群) を用いた.被験者には自転車エルゴメータ上で2分間の安静を保たせた後, 50 Wattでのウォーミングアップを2分間, 引き続いて150 Wattでの本運動を5分間行わせた.ただし, 本運動でのペダル回転数は40, 60, 90, および120 rpmの4種類とし, それぞれを1試行ずつ計4試行を行った.また, どの試行においてもウォーミングアップ時のペダル回転数は60 rpmとした.安静時から運動終了まで左脚外側広筋部の筋酸素化動態を近赤外空間分解法によって測定した.<BR>Oxy-Hb/Mbはサイクリスト群で非サイクリスト群と比較して有意に高い値を示したが, 群とペダル回転数による有意な交互作用は観察されなかった.従って, ペダル回転数の変化に対する筋酸素化動態の応答には, 両群で違いがないことが示唆された.<BR>またペダリング頻度の増大に伴って全身の酸素消費量は増大し, エネルギー効率が低下する一方で, Oxy-Hb/Mbはペダル回転数が毎分90回転までは有意な変化がなく, 毎分120回転に達すると安静時, および他のどのペダル回転数と比較しても有意に低値を示した.さらに, Deoxy-Hb/Mbも同様にペダル回転数が毎分90回転に達するまでは有意な変化はなく, 毎分120回転に達すると安静時, および他のペダル回転数と比較して有意に増大した.<BR>このことから, 毎分120回転では外側広筋部において脱酸素化が亢進したものと考えられ, 毎分120回転では外側広筋において酸素消費が, 低い回転数と比較して急増したことが示唆された.このことは逆に, 毎分120回転前後にペダル回転数を増大させると, 外側広筋での効率が大きく低下する可能性を示しており, 外側広筋での効率を急に低下させない最も高いペダル回転数は毎分90回転前後で発現すると思われる.
著者
渡辺 美智子 北 博正 万木 良平 向笠 由美 鈴木 久乃 金子 佳代子 小池 五郎 桜間 幸次 藤本 英男 井川 正治 笹渕 五夫
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.40-51, 1984

体重階級制スポーツ選手の試合前の急速減量は, 体力・生理学的および栄養学的に適正な方法によって生体の諸機能の低下を防ぎながら行われるべきであり, 同時に試合後の回復期においても適正な方法によって回復させることが大切であると思われる。<BR>これらの方法を見出すことを目的として, レスリングの新人選手を対象とし, 急速減量における体重調整期, 試合期および回復期の各期間にわたり, 諸調査を実施した。その結果は次のとおりであった。<BR>各栄養素の平均摂取量の概量は, 体重調整2期では, エネルギーが20kcal/kg, たんぱく質1.7g/kg, 水分20g/kg, ナトリウム2g/日, カリウム1g/日であったが, 回復期に入ると急増し, エネルギーは60kcal/kg, たんぱく質2g/kg, 水分46~73g/kg, ナトリウム5g/日, カリウム3g/日となった。<BR>試合直前に体重の10%前後を減少させた各選手は, 試合終了から翌日までにほとんど平常体重の水準まで回復したが, その後増加しすぎるものもあり, 平常体重におちつくまでに約7日間を要した。<BR>この減量に伴って, 体内窒素代謝の亢進と, それに伴う筋力などの若干の低下, 体水分脱出による血液濃縮の影響と考えられる血液性状の変化が認められた。<BR>回復期には, 体重は速やかに平常時に復したが, 窒素, カリウムの摂取量が増加したにも拘らず尿中排泄量は増加せず, 出納はかなり大幅な正に転じた。またナトリウムは, 回復期に塩分の摂取量が多くなるに伴い尿中排泄量も増加したが, 出納は正であった。しかし, 回復期1週間後においても血液性状の一部などに充分に平常値までもどっていないのではないかと思われる徴候もあった。<BR>同復期に摂った飲食物の食品構成と各栄養素の平均摂取量については大きな欠陥は見当らなかったが, 偏差が大きく, 各個人の摂り方の内容は必ずしも充分ではなかった。<BR>被検者となった選手たちは新人ではあるがいずれもかなり高い体力水準を有していることを考え合わせると, これらの結果から, 今後スポーツ選手の急速減量にあたって, 単に減量方法だけでなく, 試合終了後における体力回復の適正な方法についても検討の余地が残されているものと考える。