著者
東田 京子 田中 智貴 山上 宏 泊 晋哉 福間 一樹 奥野 善教 阿部 宗一郎 長束 一行 豊田 一則 猪原 匡史
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.217-222, 2018 (Released:2018-04-25)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

脳卒中後てんかんの大規模研究は少なく,一定のコンセンサスが得られていない.今回,本邦での脳卒中後てんかんの診療実態を明らかにすることとした.2015年2~5月の脳梗塞治療症例数上位500施設を対象に患者数,検査,治療について,計14問のアンケートを依頼し,189施設から回答が得られた.てんかん入院症例の39%に脳卒中既往があった.検査については頭部MRIや脳波検査はそれぞれ99,97%の施設で施行されていたが,検査陽性率は低値であった.治療については発作の再発抑制にはカルバマゼピン,バルプロ酸,レベチラセタムの順に第1選択薬とされていた.
著者
大林 光念 安東 由喜雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1044-1046, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーや糖尿病性末梢神経障害は発症早期から小径線維ニューロパチーを呈するが,有用な臨床指標がない現状では,この病態の早期発見は容易でない.そこでわれわれは,小径線維ニューロパチーを早期診断するため,レーザードプラ皮膚血流検査や換気カプセル法による発汗検査,汗腺の形態チェック,胃電図,胃内の小径線維やCajal細胞の密度測定,123I-MIBG心筋シンチ,血圧オーバーシュート現象をみる起立試験などの自律神経機能検査を考案した.これらは,ATTR V30M保因者やIGT患者にみられる早期の小径線維ニューロパチーを診断しえる.また,これらにC,Aδ特異的痛覚閾値検査を加えることも,診断に有用となる.
著者
安東 由喜雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.797-803, 2015 (Released:2015-11-21)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

神経関連アミロイドーシスはとりわけこの10年の間に治療の道が開けてきた.ALアミロイドーシス,AAアミロイドーシスではそれぞれ新規化学療法剤やIL6レセプター抗体による治療が奏功している.遺伝性アミロイドーシスの中で最も患者数の多いトランスサイレチン(transthyretin; TTR)型家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloidotic polyneuropathy; FAP)は,肝移植,TTR4量体安定化剤,gene silencing剤と次々に治療法が開発され,根治目前の状態が拓かれつつある.神経関連アミロイドーシスとしては,ALアミロイドーシス,AAアミロイドーシス,透析関連アミロイドーシス,FAP,老人性全身性アミロイドーシス(senile systemic amyloidosis; SSA),脳限局アミロイドーシスとしてアルツハイマー病,プリオン病などがあげられるが本稿では全身性アミロイドーシスに絞ってそれらの診断・病態・治療について述べる.
著者
上原 拓也 角田 渓太 隅 寿恵 山内 周 望月 秀樹 中 隆
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.777-780, 2016 (Released:2016-11-29)
参考文献数
7
被引用文献数
7 6

症例は47歳女性.母親が原因不明の多臓器不全.4年前から両下肢の痺れ感が出現し,起立時に失神した.徐々に失神回数が増え下痢と便秘を繰り返すようになった.診察上,下肢優位感覚優位の末梢神経障害と高度な自律神経障害を認めた.心筋生検にてアミロイド沈着とトランスサイレチン遺伝子変異(Gly47Arg; G47R)が判明したが,多臓器不全のため積極的な治療は行えなかった.数か月にわたって徐々に意識が低下し,多臓器不全にて死亡した.解剖の結果,末梢神経系と一般臓器のみならず,クモ膜下腔および脊髄脳幹の表層に高度なアミロイド沈着を認めた.G47R変異が髄膜アミロイドーシスを引き起こすことを示した初の症例報告である.
著者
関島 良樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.1130-1133, 2011 (Released:2012-01-24)
参考文献数
10

The amyloidoses are a large group of postsecretory protein misfolding and deposition diseases. There are over 20 secreted human proteins whose misfolding and misassembly outside the cell is linked to amyloidosis. In this paper, we described epidemiological and clinical aspects of non-hereditary systemic amyloidosis, including senile systemic amyloidosis (SSA) and systemic AL amyloidosis. SSA, induced by wild-type transthyretin (TTR) deposition, is a prevalent aging-related disorder, as about 25% of people over age 80 have TTR deposition in the heart, but it is usually detected by microscopic examination at autopsy. Although SSA is usually associated with cardiac disease, TTR deposition is not limited to the heart and is found in systemic organs. Carpal tunnel syndrome is one of the most common clinical manifestations of SSA and often precedes cardiac symptoms. Systemic AL amyloidosis is the most common non-hereditary systemic amyloidosis induced by immunoglobulin light chain deposition. Involvement of visceral organs usually dominates the clinical picture of systemic AL amyloidosis, but some patients suffer from serious peripheral neuropathy, including polyneuropathy, carpal tunnel syndrome, and autonomic dysfunction. High-dose melphalan with stem cell transplantation improves prognosis of systemic AL amyloidosis including neurological symptoms.
著者
小河 秀郎 中島 敦史 小橋 修平 寒川 真 楠 進
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.171-173, 2015 (Released:2015-03-17)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

症例は67歳男性.某日,両下肢違和感出現.3日後に道で転倒し当院救急入院.入院時,脳神経系異常なし.四肢筋力保たれるも両下肢深部覚障害のため起立困難.深部腱反射減弱,表在覚障害なし.腰椎MRI異常なし.神経伝導検査は運動神経異常なく,上下肢で著明な感覚神経振幅低下あり.Gal-C抗体陽性であり,純粋感覚型Guillain-Barré症候群(GBS)と診断.免疫グロブリン大量静注療法をおこなうも深部覚障害残存し入院53日目に転院.Gal-C抗体のみ陽性の純粋感覚型GBS症例の報告はなく貴重な症例と考えられた.
著者
大山 健 小池 春樹 高橋 美江 川頭 祐一 飯島 正博 祖父江 元
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1047-1049, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3 5

近年,IgGのサブクラスのひとつであるIgG4の上昇をともなう疾患群がIgG4関連疾患(IgG4-RD)として報告され,注目されている.IgG4-RDは,臓器の腫脹・腫大,組織での線維化をともなうIgG4陽性形質細胞浸潤,血清IgG4値の上昇を共通の特徴とし,種々の臓器で報告されてきた.神経領域では下垂体炎や肥厚性硬膜炎が知られていたが,新たにIgG4-RDがニューロパチーでもみられることを明らかにした.IgG4関連ニューロパチーは,下肢遠位優位の運動感覚障害を呈する多発性単神経炎の様式で発症していた.腓腹神経生検では,神経上膜のIgG4陽性形質細胞浸潤および線維化をみとめ,有髄線維密度の低下,軸索変性像の出現がみられた.IgG4-RDもニューロパチーの鑑別疾患の一つとなる可能性が示唆された.
著者
関島 良樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.953-956, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3 1

遺伝性アミロイドポリニューロパチーのほとんどを占める遺伝性ATTRアミロイドーシスは,トランスサイレチン(TTR)遺伝子変異を原因とする常染色体優性の遺伝性疾患である.本症は全身性アミロイドーシスであり,多発ニューロパチー,自律神経障害,心症状,眼症状など多彩な症状が様々な組み合わせで出現する.診断には上記の症状に加え,組織へのアミロイド沈着とTTR遺伝子変異を証明する必要がある.本症に対してはすでに肝移植の有効性が確立しているが,近年TTR四量体安定化薬の有効性が臨床試験で証明され,2013年にタファミジスが治療薬として認可された.本症は治療可能な遺伝性ニューロパチーであり,早期診断が非常に重要である.
著者
赤川 優美 上野 晃弘 池田 淳司 石井 亘 宍戸-原 由紀子 関島 良樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.324-331, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
27
被引用文献数
4 5

症例1は59歳女性.特発性好酸球増多症に対しプレドニゾロンを内服中.脳MRI病変に軽度の造影効果が認められ,炎症の存在が示唆された.症例2は30歳女性.全身性エリテマトーデスに対し免疫治療中.脳生検が実施され,CD4およびCD8陽性細胞の均衡がとれたリンパ球浸潤を認めた.両症例とも神経症状発症早期に進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)と診断し,メフロキン,ミルタザピン,リスペリドンによる治療を行った.症例1は発症から24ヶ月,症例2は45ヶ月経過しているが,症状改善し生存している.PMLの予後は不良とされているが,JCウイルスに対する制御された免疫応答を有する症例では薬物治療が有効である可能性がある.
著者
高下 純平 林 信太郎 山口 浩雄 立石 貴久 村井 弘之 吉良 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.667-671, 2016
被引用文献数
1

<p>症例は37歳男性.23歳よりけいれん発作を繰り返した.35歳から難聴や歩行時のふらつきが出現し当科に入院した.近親婚の家族歴があった.低身長で,腱黄色腫はなかった.mini-mental state examinationは19点,感音性難聴,断綴性発語,嚥下障害,四肢の痙縮,小脳症状を認めた.血中と脳脊髄液中の乳酸とピルビン酸が増加していた.頭部MRIで小脳半球,脳幹,内包に対称性の病変を認めた.ミトコンドリア病を疑ったが,筋生検とミトコンドリアDNA遺伝子解析に異常なかった.血清コレスタノール高値,CYP27A1遺伝子の新規遺伝子変異(c. 43_44delGGのホモ接合体)を認め,脳腱黄色腫症と診断した.</p>
著者
中村 拓真 今井 啓輔 濱中 正嗣 山﨑 英一 山田 丈弘 水野 敏樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.100-104, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

61歳男性.声の聞こえにくさ,物の見えにくさ,ふらつきにて第6病日に受診した.両側聴力低下とともに,見当識障害,眼球運動障害,体幹失調,深部反射の消失がみられた.頭部MRIのFLAIR画像にて両下丘を含む中脳蓋と両視床内側に高信号域がありWernicke脳症(Wernicke encephalopathy; WE)が疑われた.ビタミンB1補充療法開始後に聴力は急速に回復し,眼球運動障害と歩行障害も徐々に改善した.入院時の血清ビタミンB1低値にてWEと診断され,第39病日の頭部MRIでは異常信号は消退していた.本例におけるビタミンB1補充後の聴力低下と下丘のMRI異常信号の改善経過からWEの聴力低下の可逆性が確認された.
著者
森 真由美 湧川 佳幸 矢坂 正弘 安森 弘太郎 詠田 眞治 岡田 靖
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-9, 2014-01-01 (Released:2014-01-15)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

脳動脈解離にともなう急性期脳梗塞における神経症候急性増悪例の特徴を検討した.急性期脳梗塞連続1,112例のうち,脳動脈解離にともなう脳梗塞は18例(1.6%)だった.平均年齢52歳,男性83%で,後方循環系解離が72%を占めた.発症30日以内の神経症候増悪例は4例(22%)で,すべて発症3日以内にみられ,入院時血圧が高値であり,優位側椎骨動脈や脳底動脈の解離をきたしていた.瘤形成症例を除いて積極的な抗凝固療法をおこなったが出血性合併症はみられなかった.増悪例の転帰は有意に不良であった.優位側椎骨動脈または脳底動脈解離による脳梗塞で,入院時血圧が高値である症例は,発症3日間はとくに注意深く観察する必要がある.
著者
竹下 潤 小林 宏光 下江 豊 曽根 淳 祖父江 元 栗山 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.303-306, 2017 (Released:2017-06-28)
参考文献数
10
被引用文献数
5

症例は65歳の男性.全経過約3時間の一過性の健忘が出現した.3年前にも同様の症状が出現した.認知症状は認めず.神経学的には,小脳失調や不随意運動は認めなかったが,神経伝導検査で末梢神経障害を認めた.MRI拡散強調像で,前頭葉から頭頂葉にかけて皮質下の皮髄境界域に高信号を認め,皮膚生検で神経核内封入体を多数認め,成人発症の神経核内封入体病と診断した.家系内には類症者はおらず,孤発例である.健忘は一過性全健忘と極めて類似し,辺縁系障害が推測された.
著者
高橋 淳
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1009-1012, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
10
被引用文献数
4 2

パーキンソン病に対しては1980年代の後半から胎児中脳腹側細胞の移植がおこなわれ一定の効果がみられているが,倫理的問題に加え移植細胞の量的,質的問題があり一般的な治療にはなっていない.これらの問題を解決するために幹細胞とりわけES, iPS細胞をもちいた移植治療に期待が寄せられている.分化誘導技術が発達し,ヒトES, iPS細胞から効率的に中脳ドパミン神経細胞が誘導できるようになった.さらには選別技術も開発されつつある.ラットや霊長類モデルへの移植では行動改善が観察されており,臨床での効果も期待される.あとは安全性を厳しく検証すること,万が一腫瘍化がおこったときの対策を立てることが重要になるであろう.
著者
松浦 啓 蒔田 直輝 石井 亮太郎 藤田 泰子 古野 優一 水野 敏樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.378-382, 2017 (Released:2017-07-29)
参考文献数
25
被引用文献数
1

Chronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids(CLIPPERS)の病変は一般的に後脳から離れるに従って縮小することが多いが,側頭葉に最大病変を示す症例を経験した.症例は49歳男性.来院22日前から発熱が,その後左眼視野障害が出現し入院となった.神経学的に左眼視野の中心部に暗点を認め,MRIで右側頭葉に粒状のガドリニウム造影効果を伴うFLAIR高信号病変を認めた.その後,橋及び小脳に病変が拡大し,複視・滑動性眼球運動障害・輻輳麻痺が出現した.右側頭葉病変から開頭脳生検し,CLIPPERSと診断した.ステロイド投与により病変・症状ともに軽快した.病初期に後脳から離れた病変が大きい症例であっても,CLIPPERSの可能性を考慮する必要がある.
著者
谷 裕基 中嶋 秀人 山根 一志 大西 宏之 木村 文治 花房 俊昭
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.581-584, 2014-07-01 (Released:2014-08-02)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は66歳の女性である.約1ヵ月の経過で小脳性運動失調と意識障害が増悪し,頭部MRI FLAIR強調画像で脳幹の腫大,および中脳,橋,小脳脚,右小脳半球,右後頭葉に高信号をみとめた.造影MRIでは橋に造影効果を有する多発性の点状病変をみとめ,右後頭葉にも造影病変をみとめた.ステロイド薬により臨床症状と画像所見は急速に改善したが減量後に再燃した.右後頭葉の生検で血管周囲にT細胞を主とする炎症性細胞浸潤をみとめchronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids(CLIPPERS)と診断した.ステロイド薬増量と維持によりこれらの病変は消失し寛解した.MRIで高度脳幹浮腫を呈する疾患としてCLIPPERSを考慮する必要がある.
著者
青木 正志 鈴木 直輝 加藤 昌昭 割田 仁
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1115-1118, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
2

封入体筋炎(sIBM)は骨格筋に縁取り空胞と呼ばれる特徴的な組織変化を生じ炎症細胞浸潤をともなう疾患である.厚生労働省,希少難治性筋疾患班ではsIBMの患者数把握・診断・治療改善に関する取組を継続しておこなっている.現在日本には1,000~1,500人前後のIBM患者がいると考えられる.筋病理をもちいたTDP43, p62などの検討も各施設でおこなわれており,診断マーカーとしても検討がおこなわれている.さらに2013年にはIBM患者血清中に抗cytosolic 5'-nucleotidase 1A(cN1A)抗体が存在するという報告もある.さらに現状では治療法が無い難病であるが,IBMに対するアクチビンのタイプII受容体をターゲットにした拮抗薬の治験も進行中である.
著者
鈴木 匡子
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.930-933, 2011 (Released:2012-01-24)
参考文献数
7

非典型認知症では健忘以外の高次脳機能障害が前景に立つが,それらに対し臨床的にどうアプローチしていくかは未だ手探りの状態である.変性性認知症でみられる"行為"の障害も,対象の受容の段階から最終的な出力の手前まで多くの段階での機能異常が原因となりうる.詳細な検討から後部皮質萎縮症では視覚性注意障害が,進行性核上性麻痺では対象のある意図的な運動の制御の障害が"行為"に影響していると考えられ,それぞれ視覚背側路,補足運動野の関与が示唆された.神経心理学的検索と神経放射線学的検討を統合することにより症状の背後にある機能異常とその神経基盤を明らかにし,各認知症の病態やその進展の特徴を知ることが重要である.
著者
牧岡 大器 中谷 経雪 Yan Ling 鳥居 慎一 斎田 孝彦 吉良 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.553-561, 2017 (Released:2017-10-27)
参考文献数
18
被引用文献数
1

日本の実臨床下でのインターフェロンβ-1a筋注用製剤の安全性と有効性検討のため,2006年11月から2010年12月までに登録された本剤投与例全例を対象に観察期間2年の使用成績調査を実施した.全国397施設より調査票が回収され,安全性は1,476例,有効性は1,441例を評価した.安全性評価の86.3%は再発寛解型多発性硬化症であった.主な副作用は発熱(19.24%),重篤な副作用は多発性硬化症の再発26件,肝機能異常10件であった.有効性検討では,年間再発率は1.07から0.29,総合障害度は3.08から2.94と改善した(各P<0.001).安全性と有効性プロファイルは既報と同様であった.
著者
福元 尚子 白石 裕一 中道 一生 中嶋 秀樹 西條 政幸 辻野 彰
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-000776, (Released:2016-01-21)
参考文献数
30
被引用文献数
3

症例は65歳男性である.急速進行性の認知機能低下で発症した.頭部MRIのFLAIR/T2強調画像で大脳皮質下に広汎な高信号域を認め,髄液よりJohn Cunningham virus-DNAを検出した.最終的に脳組織所見から進行性多巣性白質脳症と確定診断した.合併症として高安動脈炎と慢性型/くすぶり型成人T細胞白血病が認められた.発症早期にメフロキンとミルタザピンによる治療を開始したが,症状・画像共に改善なく約半年後に死亡した.本例において治療効果が認められなかった理由としては,HTLV-I感染に加えて高安動脈炎によるB細胞系の異常が影響した可能性を考えた.