著者
加我 君孝 室伏 利久
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

聴性脳幹反応(ABR)の難聴乳幼児の早期発見のための臨床応用が広く普及するようになった結果、わが国では0才のうちに難聴児が発見されるようになった。同時に0才のうちに補聴器のフィッティングを行い、超早期教育が行われるようになった。我々はこの難聴乳幼児の早期発見、早期教育に過去20年取り組んできた。その成果は著しく、2才前後での言語獲得がなされ就学後は普通学校に入学し、高等教育を受けるに至る場合も少なくなくなってきた。これらの症例を対象とする乳幼児の喃語や言語に関する研究は極めて少ない。早期発見された難聴乳幼児の始語に至る0〜1才の間の発達と音声の変化の関係について、他覚的に明らかにすべく音響分析を行った。対象:0〜1才の正常乳児3例とABR他の検査で高度難聴の証明された5例方法:ビデオカメラで、喃語を行動の記録とともに録音し、それをサウンドスペクトルグラフで解析した。結果:1)代表的な高度難聴乳幼児の発達と喃語および音声の変化を図1にまとめて記述解説し、サウンドスペクトルグラフによる解析の例を生後11ヶ月の“あー"を図2、生後19ヶ月の“あうーん"を図3に示した。2)対象例も難聴乳児もサウンドスペクトルグラフによる解析では、ほぼ同様のパターンを示した。異なる部分も一部に認めた。
著者
多部田 茂
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

海洋生態系における炭素や窒素の循環をシミュレーションするための生態系モデルを構築した。低次生態系の窒素循環を扱うときに広く用いられているKKYSモデルをベースとし、植物プランクトンの分解実験に基づいて構築されたPDP(Phytoplankton Decomposition Process)モデルを参考にして拡張した。構築した生態系モデルを海域の流れや成層を再現する物理モデルと結合し、人工湧昇流を対象とした実海域の計算を行って観測値との比較により再現性を確認した。その際、長期間の炭素収支の推定には、準難分解性有機物の分解に支配される物質循環が重要であることが示唆された。そこで、3次元モデル(短期モデル)では易分解性有機物の分解に支配される物質循環がほぼ定常になるまでの時間スケールの計算を行い、その結果を用いて鉛直1次元モデルで長期の炭素収支を計算することによって、対象海域における長期間の炭素収支を推定するスキームを構築した。海底マウンドによる人工湧昇流に関して炭素隔離量評価モデルを用いたシミュレーションを実施し、炭素/窒素比の鉛直プロファイルが準難分解性有機物の生成・分解の影響によって徐々に変化し,それに伴って大気一海洋間の炭素収支が変動することを示した。また、オホーツク海沿岸や沖ノ鳥島周辺海域など日本近海のいくつかの海域において、海域の特徴を考慮した生態系モデルを構築し、物質循環のシミュレーションを実施した。さらに、海域肥沃化技術を導入したときの社会経済的な影響を評価するために、水産物を考慮した食料経済モデルを開発した。それを用いた日本の将来の動物性タンパク源食料(肉類・水産物)の需給予測、および海域肥沃化による水産物増産がこれらの需給に与える影響の予測を行ない、日本の食糧自給率に及ぼす水産物の重要性を示した。
著者
畑 啓介 篠崎 大 釣田 義一郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

近年、マイクロRNAが癌、自己免疫性疾患と関与していることが注目されており、癌や炎症などの治療法開発やバイオマーカーとしてマイクロRNAの臨床応用が期待されている。本研究では炎症性腸疾患患者の血清や腸管粘膜におけるマイクロRNAの発現プロファイルを明らかにし、炎症性腸疾患の臨床病理学的因子との関連を調査することで、疾患メカニズムの解明と炎症性腸疾患合併大腸癌の早期発見に応用するための基礎的なデータを構築することを目的とした。昨年度に引き続き潰瘍性大腸炎手術後の回腸嚢(正常および回腸嚢炎)からの生検サンプルを用いて、マイクロアレーを用いてmRNAの発現を網羅的に調べた。また、今年度も引き続き手術標本、内視鏡時の生検、および血清サンプルの収集を行った。それと並行して、炎症性腸疾患合併大腸癌症例のパラフィン包埋サンプルを利用し、あるマイクロRNAと発現が負に相関することが報告されているタンパクの発現を免疫染色により調査した。このマイクロRNAは孤発性の大腸癌やそのほかの臓器の癌において上昇していることが報告されている。まず実験に先立ち、孤発性の大腸癌症例を陽性コントロールとして、マイクロRNAの発現に関してはリアルタイムPCRを用いて、タンパク発現に関しては免疫染色を用いて、条件設定を行った。その後、内視鏡時の生検標本および手術時の切除標本を用いてそのタンパク発現を免疫染色により調査した。その結果、そのタンパク発現は正常大腸粘膜では発現が強くみられたのに対して、炎症性腸疾患合併大腸癌では一部で発現が弱くなっている傾向がみられた。
著者
古矢 旬 久保 文明 大津留 智恵子 橋川 健竜 廣部 泉 常本 照樹 酒井 啓子 中山 俊宏 西崎 文子 林 忠行 遠藤 泰生 久保 文明 大津留 智恵子 橋川 健竜 廣部 泉 常本 照樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

現代アメリカの国民意識、国家意識はいかなる要素、要因によって構成され、どのような理由でどのような過程を経て変容してゆくのか、本研究はこの問に対し、歴史、政治、政治思想、外交・国際関係、経済、文化、文学、宗教などの多元的な専門領域を通して接近を図った。それにより、建国期に形成された啓蒙主義的政治理念を主柱として成立したアメリカのナショナリズムが、その後の移民の波によってもたらされた様々なエスニック文化、宗教的観念を取り込みながら、国際秩序の内で次第に重きをなしてゆくプロセスに新しい光を当てることができた。
著者
富松 宏太
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

Ge(001)表面にIV族元素X蒸着すると、XとGeからなる二量体(X-Geダイマー)が表面に形成される。平成19年度までの研究で、走査トンネル顕微鏡(STM)探針からのキャリア(電子・正孔)注入により、Sn-Geダイマーの表面からの傾斜を反転できることを明らかにした。さらに、STMで電子定在波を測定することにより、Sn-Geダイマーによる表面一次元電子の散乱を明らかにした。当該年度は、(i)X-Geダイマーの散乱ポデンシャルの形成機構と(ii)キャリアによるダイマー傾斜の反転機構を解明する目的で、Si-Geダイマーを作成し、Sn-Geダイマーの結果との比較を行った。実際にSi-Geダイマーは作成可能であり、これらのダイマー傾斜もSTMで反転できる。我々は、電子定在波をSTM測定し、電子伝導経路にX元素が位置するダイマー傾斜において、Si-GeダイマーとSn-Geダイマーが逆符号(引力または斥力)の散乱ポテンシャルを形成することを示した。さらに、清華大学(北京)の理論グループとの協同研究により測定結果を理論検証し、散乱ポテンシャルは伝導経路にある元素の原子軌道エネルギーから説明されることを見出した。これらの研究成果は、学術誌(Physical Review B誌)および国内外の学術会議で論文発表した。国際会議(ISSS5)において招待講演発表も行った。また、我々は、Si-Geダイマー・Sn-Geダイマーの傾斜反転に必要な電子エネルギーをSTMで精密測定した。上述の清華大学の理論グループと協同して、測定した電子エネルギーは表面周期欠陥の局在電子状態によって特徴付けられていることを示した。これらの実験・理論結果に基づき、ダイマーの傾斜反転は、「共鳴散乱」と呼ばれる電子の非弾性散乱過程により誘起されていることを解明した。一連の研究成果は、学術誌(Surface Science誌)で論文発表を行った。
著者
木村 伸吾 北川 貴士 銭本 慧 板倉 光 宮崎 幸恵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ニホンウナギの回遊生態と生息環境の解明を目的として、産卵域が位置する北赤道海流域および代表的な生息水域である利根川水系での調査を中心に研究を実施したものである。その結果、レプトセファルス幼生は表層で懸濁態有機物を摂餌し、同じ形態を有していても種によって摂餌する水深が異なっていること、幼生の輸送過程は大西洋と大きく異なること、成魚は餌生物が多様な自然堤防域を好んで生息することなどを明らかにした。
著者
坂原 茂
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究では,従来の意味論の枠内で処理することが困難なコピュラ文をメンタル・スペース理論の枠組みで研究し,コピュラ文に反映される人間の知識使用の柔軟性についての基礎的研究も行った.コピュラ文「AはBだ」は,通常,同一性と集合論的包含関係を表すと考えられている.本研究では,コピュラ文をさらに詳しく見た場合,変数的に使われた非指示的名詞句に値の割り当てを表現する同定文(「源氏物語の作者は,紫式部だ」).すでに同定された対象に付加的属性を付与する記述文(「紫式部は,源氏物語の作者だ」).異なる情報領域で互いに独立に同定された2つの対象の同一性を表わす同一性文(「シェークスピアはベーコンだ」),対象同定のパラメータと値が直接結合された多少アクロバット的な知識使用を含むウナギ文(「私はウナギだ」),メタ言語的な定義文(「ピラミッドは古代エジプト王の墓だ」)などのさまざまな用法があることを明らかにし,それらの用法の相互関連について考えた.この研究は,シカゴ大学出版から刊行されるメンタル・スペース理論関係の論文集に掲載予定である.さらに.コピュラ文の特殊例としてトートロジーについても考察を広げ,それを東京大学教養学部紀要に発表した.その後,コピュラ文の意味論から考えた場合,トートロジーは4つの基本的用法があり,それ以外の用法はすべてこの4つからの派生として説明されるべきであるという暫定的結論に達し,その主旨の口頭発表を筑波大学で行った.この結論が,広くデータを収集した場合も成立するかどうかは確かめていないが,トートロジーの多様な用法に対する包括的理論を構成できるという見通しを得ることができた.この点に関する本格的研究は,将来の研究課題である.また,知識使用との関連で,条件文の語用論的解釈についての研究も行った.
著者
垣見 和宏 森安 史典
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

肝がんに対するRFA治療を受けた患者に対して免疫細胞治療を実施するために、in vitroにおける樹状細胞(DC)培養条件の最適化を検討し、肝がん患者に対する臨床試験の開始を計画した。腫瘍特異的な免疫応答を誘導するためにDCには、1.RFA治療により熱変性した腫瘍細胞をuptakeする能力、2.免疫応答を誘導するために必要なCD80, CD86などの共刺激分子の発現、3.リンパ節へのホーミングに必要なケモカイン受容体CCR7の発現、が必要である。そこで我々は、1.immature DCをOK432で刺激して2-6時間後のDC(maturating DC)は、OK432刺激を除いても、それ以降mature DCへの成熟過程が進行し、16時間後にはCD80, CD86, CCR7などの分子を発現すること。2.肝癌細胞Huh7 cellをRFA治療と同様の加熱条件(85℃で10分間)で熱変性させた後、さまざまな成熟段階のDCとover nightで共培養すると、maturating DCは、熱変性した腫瘍細胞を効率よく取り込むこと。3.さらにmaturating DCは腫瘍の取り込みによって成熟過程を妨げられることなくmature DCへと変化することを明らかにした。これらの結果に基づいて、肝がんRFA治療後に腫瘍局所内へ投与するDCは、GM-CSFとIL-4によって誘導した末梢血単球由来のimmature DCを、OK432を用いて2時間刺激したmaturating DCの状態で用いることに決定した。東京医科大学病院において、肝がんの治療を受けた患者を対象に臨床試験を実施するためにプロトコールを作成した。倫理委員会での承認を受け臨床試験を開始し、肝がん患者の登録を開始した。
著者
郭 伸
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)脊髄運動ニューロンに見出された疾患特異的分子異常を再現する動物モデルであるコンディショナルADAR2ノックアウトマウスを用いて、運動ニューロンの脳神経核におけるADAR2ノックアウトによるCa^<2+>透過性AMPA受容体の発現と神経細胞死との関連を調べた。コリン作動性ニューロンが局在する脳神経核では、対照群では100%に保たれていたGluR2 Q/R部位のRNA編集率が90%以下に低下していた。細胞数算定により統計的に有意な神経細胞脱落が明らかになったが、外眼筋神経核では細胞脱落、グリオーシスが見られなかったことから、運動ニューロンはADAR2鉄損により細胞死に陥るが、外眼筋神経核の運動ニューロンはこのメカニズムによる細胞死に抵抗性であることが明らかになった。ADAR2のノックアウトによる運動ニューロン死は、未編集型GluR2をサブユニットに含むCa^<2+>透過性AMPA受容体の増加による細胞内Ca^<2+>濃度の上昇によると考えられる。外眼筋運動ニューロンではCa^<2+>結合蛋白であるParvalbuminの発現量が多く、Ca^<2+>流入によるCa^<2+>濃度の上昇が抑制されることが細胞死に抵抗性である一因であると考えられた。ADAR2ノックアウトマウスの脊髄のWestern blotting解析により、運動ニューロン死には、アポトーシス、それもミトコンドリア障害を介するintrinsic apoptosis経路よりextrinsic apoptosis経路の活性化、オートファジー経路の活性化の関与もあると考えられる。ADAR2ノックアウトマウスは、孤発性ALS様の神経細胞死を呈するので、細胞死カスケードを更に詳しく調べることでALSの病因解析のためのツールになると考えられる。
著者
石井 勝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.夏季に下向きリーダが先行する複数の落雷が期待できる鉄塔の近傍での電磁界観測を、栃木県鹿沼市において平成16年度、17年度の夏季に実施した。電磁界観測装置は、電流測定・カメラ観測のため計装されている100m級UHV送電鉄塔から100m程度の場所に設営し、無人で24時間運転された。しかしこの鉄塔での雷電流観測記録は得られず、至近距離の雷撃の電磁界データの取得も叶わなかった。この観測は世界のどこでも試みられておらず、きわめて意義深く重要なので、科学研究費による研究期間終了後も、鉄塔での電流観測が続けられる限り継続する計画である。2.大地に直接落雷した場合と高構造物に落雷した場合の、放電路の等価性において矛盾がないと考えられる帰還雷撃の電磁界モデルを新たに提案し、それを用いて高鉄塔に落雷があった際の近傍の電磁界の発生様相を解析した。鉄塔近傍の数百mの範囲では、鉄塔の影響は電界、磁界で全く異なった様相を示すことが計算上予測される。電流、近傍の電界、磁界の同時計測が1度でも実現すれば、このモデルの妥当性が明らかになり、応用面で重要な、高構造物の遠方電磁界への影響についての議論にも終止符が打たれる。3.公表されたロケット誘雷近傍の電磁界の観測結果を用いて、観測結果をかなりよく再現できる工学モデルを得た。後続雷撃の帰還雷撃電流波は、地上数mの上向き・下向きリーダの結合点から大地と上方に向けて進行を開始し、その速度は光速の数分の1で、大地面で電流波の反射が生じていることが推測される。4.新たに提案した帰還雷撃の工学モデルと、第1帰還雷撃の特徴の、やや長い電流波頭長を組み合わせると、遠方の電磁界波高値と電流波高値の関係が、電流波頭長の短い後続雷撃とは異なってくることを見出した。これが電磁界観測により確認されれば、第1帰還雷撃電流の直接測定と電磁界による推定の相違点が解消される。
著者
牛島 廣治
出版者
東京大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

本研究は、治療的ワクチンを含めたワクチンを植物を利用することで開発しようというものである。ワクチンの投与法については経口、経鼻法といった簡便性、日常性をもった方法の検討も研究の目的とする。平成10年までに既に次のことが可能となった。(1)組み込む遺伝子領域とウイルス株の選定:HIVのエンベロープ(gp120)にはエピトープとなる部位が複数あり、抗原性の高い領域である。このgp120遺伝子を組み込む領域とした。マクロファージ親和性ウイルスの1つの株であるBAL株を選んだ。(2)遺伝子の増幅:プライマーの存謹下でPCRをし、目的遺伝子を増幅した。(3)ベクターへの挿入:目的遺伝子をpUC12-35S-NOSプラスミドBamHI切断部位に挿入した(35SプロモーターとNOSターミネーター間に挿入次に、EcoRI、HindIIIで切断し植物細菌アグロバクテリウムのベクターBin19のT-DNA領域に挿入した。(4)細菌への導入と植物への導入:アグロバクテリウム ツメファンテス細菌は自然界では、根頭癌腫病を引き起こし、独特の共存関係を営む。この現象は、アグロバクテリウムが植物に感染するとベクターBin19のT-DNA領域が植物のゲノムに移入されることによるものである。遺伝子を挿入したベクターBin19をアグロバクテリウムに導入した後、アグロバクテリウムを植物に感染させると、先の原理により目的遺伝子は植物のゲノムに移入された。(5)植物の分化・生育:今回は食用植物としてのレタスにHIVエンベロープ(gp120)遺伝子を導入し、カルスから分化させ形質転換植物を得た。(6)レタスの蛋白を葉から抽出し、ELISA法、ウエスタンブロット法でその発現を調べた。HIV抗体陽性血清と反応する蛋白の分画を認めた。このような粘膜免疫システムを応用したワクチン法は、HIVの感染者が増加している国内はもとより、感染が拡がり続けている開発途上国においても重要な戦略になりえるものと考える。
著者
近山 隆 湯淺 太一 上田 和紀 田浦 健次朗 遠藤 敏夫 横山 大作 田浦 健次朗 遠藤 敏夫 横山 大作 馬谷 誠二
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

爆発的に増加する大量の情報を効率的に扱うソフトウェアの構成には、広域に分散配置した高度な並列性を持つ情報システムを柔軟に記述できるソフトウェアの枠組が基本技術として必要となる。このためのプログラミング言語やミドルウェアのシステムと、複雑なソフトウェアの正当性を検証するためのシステムを対象に研究を進め、具体的なシステムを提案、設計、実装し、その性能を検証した。代表的成果ソフトウェアは公開している。
著者
吉田 稔
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

テキスト中の数値表現を適切に取り扱い,数値と言語の統合的なマイニングを行うための基盤技術の研究を行った.具体的な方針として,テキストを接尾辞配列により索引付けし,そこで数字列に対し,数値としての検索が行えるように拡張を行った.このシステムを,大規模なテキストに適用できるよう高速化し,これにより,文字列と数値の関係を対話的に取得できる基盤を構築できた.また,応用先として,数値を多く含む業務レポート等に対するテキストマイニングの研究を行った.
著者
岡田 真人
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

画像は,三次元世界を視点ベクトルから決まる二次元平面に射影することで生成される.これを透視投影という.それに対して非透視投影では,三次元世界を視覚物体毎に異なった視点から観測し,一枚の絵を生成する.我々は,視点の選択と統合に関して確率を用いてモデル化することで,非透視投影画像を自動生成する理論的枠組みを提案する.そこから導出された理論を用いて,非透視投影の画風を模擬するCGのアルゴリズムを提案した.
著者
影浦 峡 阿辺川 武 内山 将夫 佐藤 理史 宇津呂 武仁 竹内 孔一 相澤 彰子 戸田 愼一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

(1) レファレンス・ツールにおける「包括性」の概念および包括性を 実現するための要件を明らかにした。(2) 専門語彙クローラーと対訳・関連多言語アーカイヴ クローラーを開発し、機能的包括性を有するレファレンス情報資源を構築した。(3) 翻訳情報 資源を提供する統合翻訳支援サイト「みんなの翻訳」(http://trans-aid.jp/)を開発・公開し、 一般利用に提供し翻訳情報資源の有効性を検証した。
著者
有川 正俊 藤田 秀之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

現在の商用の地理空間サーチエンジンは、一般に住所や電話番号を点幾何オブジェクトに変換する枠組みとして実現されている。点空間関係よりも高次元である、方向、つながりなどの地理空間語彙を扱う体系とはなっていない。本研究では、人間の労力によって作られた品質の高い地図データを辞書として利用し、テキストコンテンツと映像コンテンツなどに対して高次ジオタギングを行う枠組みの体系化を行った。
著者
中村 努
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,情報通信技術(ICT)が特定の地域に受容されていくプロセスを一般化するため, ICTの先進国たる日本と欧州,新興国たる中国の3地域における医薬品流通システムの実態分析を通じて,日本の医薬品流通システムを相対化した。本研究は,情報ネットワークの受容プロセスに焦点を当てることで,国や自治体などの政策など制度的環境や顧客特性を踏まえた取引形態などの地域的文脈が,情報ネットワークの態様を規定していることを明らかにした。
著者
ハンドフォード マイク
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究における第一件目の成果は建設業におけるインタビュー、各種文書を含む様々なデータを収集したことである。国際的な環境で発生する多様な技師の談話の録音データは集積され、国際的建設業におけるコミュニケーションデータコーパスとなる。過去三年間に収集したデータは、アジアおよびヨーロッパ諸国で収集された、設計段階から建設過程を含めたものとなっている。収集データ内容は小規模プロジェクト、国際的大規模プロジェクトを含む、多様な組織から多数の技術者が参加したもので、英国その他の国際的建設現場における非言語コミュニケーションの使用、国際設計ミーティングの意見対立時における論証的理解等の発見がみられる。本研究の第二件目の目的である研究成果の学術出版については、2011年にJournalofEnglishforSpecificPurposesにおいて最優秀賞を受賞した。本研究の第三件目の目的は、本研究成果を東京大学大学院の生徒および国内の技術者のコミュニケーション能力向上教育に使用することであるが、この目的についても既に成果をあげており、内容は東京大学大学院社会基盤学科教授陣対象の講義、技術者を対象としたワークショップに使用され、学術記事として出版された。