著者
松岡 心平 天野 文雄 磯田 道史 小川 剛生 落合 博志 小林 健二 高桑 いづみ 高橋 悠介 橋本 朝生 宮本 圭造 山中 玲子 横山 太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

観世文庫の能楽関係資料は、質・量ともに能楽に関する最重要の資料群である。本研究では、これらの資料の調査・研究に基づき、インターネット上で画像と解題を公開するデジタル・アーカイブ「観世アーカイブ」を拡充させると共に、これを活用して、近世能楽史の研究を大きく進めた。特に、15世観世大夫元章(1722~74)の能楽改革に関する研究に重点を置き、観世元章に関する用語集と関係書目、年譜をまとめ、刊行した他、元章による注釈の書入れが顕著な謡本『爐雪集』の翻刻と検討を行った。さらに、観世文庫に世阿弥自筆能本が残る「阿古屋松」の復曲を行い、観世文庫資料の展覧会でも研究成果を公開した。
著者
下田 正弘 小野 基 落合 俊典 蓑輪 顕量 永崎 研宣 宮崎 泉 鶴岡 賀雄 中村 雄祐 MULLER Albert 苫米地 等流 三宅 真紀 田畑 智司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

研究成果の概要(和文):知識の蓄積・発信の手段が紙からデジタル媒体へと大規模に移行し、ウェブをとおして知識が世界規模で連結されつつある現在、研究資源と研究成果の双方を適切に継承する知識の枠組みを構築することは、人文社会学における喫緊の課題となっている。本研究は、国内の学会や機関、およびドイツ、アメリカ等で進める関連諸事業と連携して、仏教研究の知識基盤をSATデータベースとして構築し、次世代人文学の研究モデルとして提供するものである。http://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/参照。
著者
研谷 紀夫
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、歴史的な人名典拠情報を、APIを使用してDigital Cultural Heritageに提供し、利用することの妥当性を実証することを目的とする研究である。研究期間において行った実証実験では、歴史的な人名などを中心とした、人名典拠情報を典拠情報サーバ(A)からAPIを用いて文化資源をデジタル化したDigital Cultural Heritage(以下DCH)(B)に提供する実証実験を行い、その有効性を検証した。また、(A)において、複数の人名を検索し、それぞれの共通点や人間関係を介したつながりを明らかにするような検索機能を設けた。この機能は、典拠の履歴情報の掲載された、所属組織や家、生没年などから共通のバックグラウンドを導き出すとともに、これらの共通情報をヒントに、血縁や師弟関係などについて示された人間関係のつながりを最短の経路で導き出す機能を持っている。これらの機能を活用することによって、これまで、多くの時間が必要だった、人間関係のネットワークを明らかにする支援ツールとしても役立つデータベースである。そして、サーバの(A)に格納した具体的な人名としては、戦前期の皇族・華族と写真師に関する人名典拠情報をその対象とした。また、(B)のDCHには絵葉書や、歴史的な写真を格納して、各写真を用いた戦前期の皇族・華族・政治家の写真イメージとそれを担った写真師を対象とする表象文化研究に活用し、その有効性を実証した。本研究では、上述のように、一か所に集約した典拠情報を、APIによりDCHに配信し、活用するモデルを示すとともに、具体的な実証実験を通して、DCHにおけるその活用方法とその有効性を示した。本研究の成果は、今後の日本における人名典拠情報の具体的な整備方法と活用方法のあり方を示す点に意義がある。
著者
山本 雅 渡邊 俊樹 吉田 光昭 平井 久丸 本間 好 中地 敬 永渕 昭良 土屋 永寿 田中 信之 立松 正衛 高田 賢蔵 澁谷 均 斉藤 泉 内山 卓 今井 浩三 井上 純一郎 伊藤 彬 正井 久雄 村上 洋太 西村 善文 畠山 昌則 永田 宏次 中畑 龍俊 千田 和広 永井 義之 森本 幾夫 達家 雅明 仙波 憲太郎 菅村 和夫 渋谷 正史 佐々木 卓也 川畑 正博 垣塚 彰 石崎 寛治 秋山 徹 矢守 隆夫 吉田 純 浜田 洋文 成宮 周 中村 祐輔 月田 承一郎 谷口 維紹 竹縄 忠臣 曽根 三郎 伊藤 嘉明 浅野 茂隆
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

近年、がん遺伝子、がん抑制遺伝子の研究が進み、がんを遺伝子ならびにその産物の機能に基づいて理解することが可能になった。それと共に、細胞増殖のためのシグナル伝達機構、細胞周期制御の機構、そして細胞死の分子機構の解明が進んだ。また細胞間相互作用の細胞社会学的研究や細胞表面蛋白質の分子生物学的研究に基づく、がん転移の機構についての知見が集積してきた。一方で、がん関連遺伝子の探索を包含するゲノムプロジェクトの急展開が見られている。また、ウイルス発がんに関してもEBウイルスとヒトがん発症の関連で新しい進展が見られた。このようながんの基礎研究が進んでいる中、遺伝子治療のためのベクター開発や、細胞増殖制御機構に関する知見に基づいた、がんの新しい診断法や治療法の開発が急速に推し進められている。さらには、論理的ながんの予防法を確立するための分子疫学的研究が注目されている。このような、基礎研究の急激な進展、基礎から臨床研究に向けた情報の発信とそれを受けた臨床応用への試みが期待されている状況で、本国際学術研究では、これらの課題についての研究が先進的に進んでいる米国を中心とした北米大陸に、我が国の第一線の研究者を派遣し、研究室訪問や学会発表による、情報交換、情報収集、共同研究を促進させた。一つには、がん遺伝子産物の機能解析とシグナル伝達・転写調節、がん抑制遺伝子産物と細胞周期調節、細胞死、化学発がんの分子機構、ウイルス発がん、細胞接着とがん転移、genetic instability等の基礎研究分野のうち、急速な展開を見せている研究領域で交流をはかった。また一方で、治療診断のためには、遺伝子治療やがん遺伝子・がん抑制遺伝子産物の分子構造に基づく抗がん剤の設計を重点課題としながら、抗がん剤のスクリーニングや放射線治療、免疫療法に関しても研究者を派遣した。さらにがん予防に向けた分子疫学の領域でも交流を図った。そのために、平成6年度は米国・カナダに17名、平成7年度は米国に19名、平成8年度は米国に15名を派遣し、有効に情報交換を行った。その中からは、共同研究へと進んだ交流もあり、成果をあげつつある。本学術研究では、文部省科学研究費がん重点研究の総括班からの助言を得ながら、がん研究の基盤を形成する上述のような広範ながん研究を網羅しつつも、いくつかの重点課題を設定した。その一つは、いわゆるがん生物の領域に相当する基礎生物学に近いもので、がん細胞の増殖や細胞間相互作用等の分子機構の急激な展開を見せる研究課題である。二つ目の課題は、物理化学の分野との共同して進められる課題で、シグナル伝達分子や細胞周期制御因子の作用機構・高次構造に基づいて、論理的に新規抗がん剤を設計する試みである。この課題では、がん治療薬開発を目的とした蛋白質のNMR解析、X線結晶構造解析を推進する構造生物学者が分担者に加わった。三つ目は、極めて注目度の高い遺伝子治療法開発に関する研究課題である。レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターの開発に関わる基礎側研究者、臨床医師、免疫学者が参画した。我が国のがん研究のレベルは近年飛躍的に向上し、世界をリ-ドする立場になってきていると言えよう。しかしながら、上記研究課題を効率良く遂行するためには、今後もがん研究を旺盛に進めている米国等の研究者と交流を深める必要がある。また、ゲノムプロジェクトや発生工学的手法による、がん関連遺伝子研究の進展によって生じる新しい課題をも的確に把握し研究を進める必要があり、そのためにも本国際学術研究が重要な役割を果たしていくと考えられる。
著者
岩附 研子 堀本 泰介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

インフルエンザウイルスの核外輸送に関わるNS2蛋白質のN末側に、蛍光標識蛋白質(Venus)を組み込み、蛍光標識組換えウイルスの作製を行った。このウイルスを培養細胞(Madin-Darby Canine Kidney細胞)に感染させ、共焦点顕微鏡を用いてタイムラップス解析を行ったところ、NS2蛋白質が一度核内に集積した後、一気に核外に放出される映像をリアルタイムでとらえることに成功した。本研究で得られた蛍光標識組換えインフルエンザウイルスは、NS2蛋白質の細胞内輸送を解明する有効なツールとなることが期待できる。
著者
塩田 邦郎 高橋 英司 遠矢 幸伸 明石 博臣 高橋 英司 前田 健 宮沢 孝幸 塩田 邦郎 堀本 泰介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

ネコ免疫不全ウイルス(FIV)は、後天性免疫不全症候群(エイズ)様症状のネコから分離され、ヒト免疫不全ウイルスと同じくレトロウイルス科レンチウイルス属に分類される。本研究はFIV感染防御上大きな役割を担っていると考えられるCD8陽性細胞およびNK細胞を中心に、そのphenotypeと抗FIV活性を解析することを目的としている。当該研究期間において以下の項目について研究を行い、新たな知見を得た。1.NK細胞マーカーの解析:ネコFcγRIII-Aの膜貫通型分子のクローニングとネコCD56抗原のバキュロウイルス組換え発現に成功した。CD56についてはモノクローナル抗体(MAb)も作製した。2.CD8α+β-or low細胞群の解析:ネコCD3εを組換え発現させた蛋白を抗原としてMAbを作製し、FIV増殖抑制活性を有するCD8α+β-or low細胞群のフローサイト解析に用いた。その結果、当該細胞群はT細胞系であると考えられた。3.ネコCD2の性状解析:免疫応答において重要なT細胞表面抗原CD2のネコホモローグをクローン化してその塩基配列を決定した。解析したcDNAには1008塩基対の翻訳可能領域が含まれており、336アミノ酸をコードし、その配列は他の動物と46〜57%の相同性を有していた。さらに、抗ネコCD2MAbを作製したところ、得られた抗体はネコCD2のEロゼット形成を阻止し、フローサイトメトリーによるネコ末梢血中のCD2陽性細胞の検出に有用であることが示された。4.ネコCD11aの抗体作製:CD2と同様、免疫応答に重要な接着分子CD11aのネコホモローグのcDNAをバキュロウイルスにより組換え発現させ、抗ネコCD11aMAbを作製した。T細胞の活性化に伴うCD11aの発現量増加が認められ、ネコ末梢血中の活性化T細胞の解析に有用であった。
著者
三田 智文 角田 誠 船津 高志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近年、分析化学におけるダウンサイズ化として、半導体微細加工技術を利用したマイクロ化学分析システムが注目されている。本研究では、微量生体成分の高感度分離検出系を組み込んだ液体クロマトグラフィー(LC)のマイクロチップ集積化を目的とした。最初に、高感度検出を目指して、ベンゾフラザン骨格を有する水溶性の蛍光標識試薬を開発した。水溶性の試薬はマイクロチップ上での分離において問題となる基板への吸着を防ぐことができると考えられる。さらに、核酸類似骨格を有する二環性化合物を合成しその蛍光特性を検討し、デオキシシチジン誘導体が強い蛍光性を有することを明らかにした。今後この骨格を有する蛍光標識試薬を開発する予定である。また、開発した試薬とLCを用いてペプチド類、微量生体成分および薬物の分析法を開発した。これら開発した分析法はマイクロチップ上に集積化可能である。マイクロチップLCの検出系として質量分析も有力視されている。そこで、質量分析用標識試薬を開発し、生体成分の分析法に適用した。本法もマイクロチップ上に集積化可能である。また、モノリス型キャピラリーカラムおよびチップ上でのモノリスカラムの作成に取り組み、分離系の微量化を検討した。さらに、チップ上でのLC用レーザー蛍光顕微検出法の開発に取り組んだ。溶液中の蛍光検出対象物質が対物レンズから近い距離に存在すれば、蛍光を十分に集光できるため高感度に検出できる。そこで流路の厚さが5μm程度以下の部分を作成し、この部分で検出を行うことにより高感度検出を可能にした。今後、これらの方法をマイクロチップ上に集積化する予定である。
著者
五神 真 宮野 健次郎 十倉 好紀 永長 直人 宮野 健次郎 宮下 精二 鹿野田 一司 内田 慎一 内野倉 国光 花村 栄一
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は、固体中の電子が、そのスピンと電荷さらに格子系の自由度を通じて互いに強い相関を保ちながら運動することによって生じる多彩な物質相に注目し、その多体量子系としての物理学と外場や光による相の制御を利用した新しいエレクトロニクスを開拓することであった。遷移金属酸化物、有機系固体、半導体など幅広い物質系を対象とし、物質開発、物性測定、レーザー分光、X線光学さらに理論を互いに連携させながら研究を推進した。その結果、従来の物性物理学研究では伝導や磁性といった低エネルギーの物性と光領域の高エネルギーの物性が同じ土俵の上で議論される機会はなかったが、この両者の融合を図ることで、独自の研究領域を世界に先駆けて創始することができた。これにより、従来の一体問題の発想では捉えられない新規の現象を次々に発見し、それをきっかけとして、強相関電子系の磁気的性質、伝導、光学応答、非線形光学応答に関する知見とそれを記述する理論研究が格段に進歩した。本研究により、高品質の遷移金属酸化物結晶作製技術の確立、テラヘルツ領域から紫外線領域にわたる超高速分光技術の確立などの技術基盤整備をメンバーの強い連携のもとで進めた。これらを用いて、光誘起金属絶縁体転移の発見、金属絶縁体転移と超伝導機構の関連、軌道量子(オービトン)の発見、超高速光制御機能の発見などの成果を上げた。これらの成果は従来の半導体エレクトロニクスを超える次世代エレクトロニクスにつながる新しい工学を拓く成果であると言える。本研究によって、この東京大学の研究チームを世界的研究拠点としてアピールすることができた。この成果を踏まえ、国際研究拠点として本研究をさらに発展させるため平成13年4月に東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センターが発足した。
著者
小入羽 秀敬
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.309-316, 2006-03-10

This paper focuses on the reason why the private high school subsidies differ between prefectural governments. To answer this question, this paper mainly refers to Ito's policy diffusion model. According to Ito and other foregoing studies on government, factors of policy decision can be segmented into "internal factor" and "external factor". In addition to these two factors, this paper discusses the "institutional factor". The discussion of the private school subsidy system adds new information to the hypothesis made by the internal and external factor. The output of the analysis shows that 1) internal and external factor effects the subsidy, and 2) also the institutional factor effects the subsidy.
著者
多田 富雄 栃倉 辰六郎 鈴木 紘一 高久 史磨 上野川 修一 白井 俊一
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

本研究では、食品成分の生体防御系に対する作用を、免疫応答系とそれ以外の作用を介した系で解析した。免疫応答系に関するものでは、無菌およびSPFマウスのパイエル板のTおよびB細胞について、フローサイトメトリーを行ない、消化管が免疫細胞分化の場として重要な役割を果していることを証明した。また代表的な牛乳アレルゲンであるαsl-カゼインを免疫したマウスより、Lytー2^+サプレッサ-T細胞をクローン化することに成功した。食品成分の自己免疫疾患におよぼす影響を検討した結果、低カロリー食がBWF_4マウスにおける自己免疫疾患の治療に効果のあることを立証した。さらに食品によるアレルギーの制御を目的として、患者に造血因子GCSFを投与すると、好中球数が増加することを明らかにした。また、生体の防御ポテンシャルを増強する目的で、ハイブリドーマを検定細胞として、食品中に抗体産生を促進する成分を検索し、卵黄リポタンパク質、スキムミルク、ラクトフェリンなどにその効果のあることを明らかにした。つぎに、好中球、マクロファージなどの白血球の局部浸潤を調べる方法を用い、植物性食品を中心に、免疫賦活作用を持つ成分を検索し、キノコ類、緑黄野菜類にその活性のあることを明らかにした。一部にはインターフェロン誘導活性がみられた。免疫系以外による生体防御では次のような成果が得られている。セノバイオティクス(有機人工成分)の解毒、排泄に必須である肝薬物代謝物質の誘導に食餌タンパク質の量、質が大きく影響することを明らかにした。また生体防御において重要な役割を果たしているビフィズス菌の増殖因子であるβーDフコシルグルコースを酵素的に合成した。さらに、生体防御系に重要な役割を果たしているカルシウムプロテアーゼについて、その構造と機能について分子生物学的研究が行なわれた。さらに、消化管に分布する免疫細胞の組織化学的特徴を解明した。
著者
大津 尚志
出版者
東京大学
雑誌
東京大学教育学部紀要 (ISSN:04957849)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.381-389, 1995-02-28

In this study, I intend to examine the existing textbook system in America, special attention be put to the way how national government control the system. According to the Tenth Amendment, it is not the federal government but the states that have authority over education. It is the states and school districts which have the authority to control over the adoption of textbooks. As a result, it is a limited control system instead of a complete control system as the one in Japan. In this paper, I would outline the existing textbook system in America in terms of its effects, issues and controversies and my research is focus on a comparative textbook system between America and Japan.
著者
梶川 裕矢
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

引用ネットワーク分析は、学術分野の全体像を俯瞰するための手法として国内外で広く研究がなされている。その手法として、共引用、書誌結合、直接引用が古くから知られているが、手法間の差異を実証的に検討したものは極めて少ない。本研究では、各手法の有する特徴を定量的に明らかにした。具体的には、特定の分野の論文集合に対し、3種類のリンク形成手法(共引用、書誌結合、直接引用)を用いて引用ネットワークを形成し、それぞれの手法の妥当性、有効性、効率性を評価した。さらに、引用に重みを持たせる手法にを提案し分析を行った。その結果、萌芽領域の検出において、直接引用を用いた手法が最も効果的であることが分かった。また、直接引用を用いたネットワークの語の分布の特徴、分野横断性や、分野間の引用の時間遅れを測定する手法に関する基礎的な検討を行った。
著者
齋藤 民徒
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.41-80, 2003-03-31

冷戦終結後,国際政治学・国際関係論において規範の重要性が見直されてきた.これとともに,北米を中心に国際政治学・国際関係論と国際法学の相互接近が試みられ,一定の研究成果が出されてきている.そのような研究動向の中,従来,国際法学において「ソフト・ロー」と呼ばれてきた各種の「非法」規範についても,新たに研究が進められてきた.本稿は,このような国際規範研究の最新動向の現状と課題について,国際法学の見地から,「遵守」研究の問題点,「法」と「非法」の区別の問題等を論じる近時の諸業績に検討を加えたうえ,大沼保昭の提唱する「行為規範/裁判規範」概念の国際規範の基礎理論としての可能性を探究し,「法」と「非法」の区別の実態を分析するための理念型として,「適用」/「援用」/「参照」という規範使用・作用の三類型を提案するものである.
著者
鬼頭 秀一
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

今年度は、前年度に引き続き、環境哲学・環境倫理学・環境思想研究者と保全生態学や野生生物管理学、環境社会学・環境史の研究者の交流と、生物多様性保全や自然再生にかかわる理念的研究の学際的な組織化を行ってきた。2005年7月には、サルの「いわゆる」獣害問題を巡って、現地の研究者と、環境社会学・環境史の研究者に報告をお願いし、上記のさまざまな研究者を招いて、その問題の核心について議論する研究集会を開催した。「いわゆる」をわざわざつけたのは、前年度のクマの問題も同じであるが、「獣害」という表現は、「問題」を一面的に捉えた表現であるからである。「問題」の本質は、野生生物のリスクも保護も含めた形での人と野生生物との関係性のあり方であり、それにかかわるさまざまな「問題」の解決は、生物多様性をどのように捉えてその保全を考えるか、「問題」の解決に至る「自然再生」はいかにあるべきかという、実践的で、しかも理念的な問題として捉えられるからである。2006年1月と3月には、これまでの集大成として、風土性、公共性という概念を軸に、公共哲学の視点を入れて、環境哲学・環境倫理学の問題を総括的に議論するようなシンポジウムとワークショップを、千葉大の公共研究のCOEと共催で開催した。参加者は、この萌芽研究で組織化してきた学際的な研究者を中心に、環境経済学、環境政治学の研究者も含めており、より広範な組織化を狙った。この萌芽研究の研究活動を通じて、生物多様性保全や自然再生の理念を考えたとき、ほぼ網羅する人文社会科学と自然科学の研究の領域を組織化したことになる。この萌芽研究の成果として研究成果報告書を作成した。本研究で研究助成を受けたさまざまな形態の研究集会で議論してきた内容を活字化するとともに、参加した研究者や大学院生の論文も収録した。その一部に関しては、東大出版会から出版することも計画している。
著者
嶋田 義皓
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究はマルチフェロイクスやキラル磁性体などの時間反転対称性と空間反転対称性が同時に破れた系においてのみ発現する「光学的電気磁気効果(Optical Magneto-electric ; OME)効果」および「磁気カイラル効果」の微視的メカニズムを明らかにし、機能効率の向上やデバイス応用に向けた新しい物質設計の指針を提示することを目的とする。このような時間・空間反転対称性が同時に破れる系として、強誘電体に磁性を担う希土類イオンを添加する手法がOME効果の観測に有効であるという前年度の研究成果をもとに、今年度は希土類サイトを有する強誘電性結晶について同一結晶場環境下での希土類依存性や同一希土類での結晶場依存性、遷移の振動子強度依存性などに注目して研究を進めた。前年度までに研究を行った強誘電性チタン酸化物La2Ti207と同様の結晶構造を有する強誘電性Nd2Ti207に注目し、Nd3+の4f-4f遷移による吸収におけるOME効果の検証を磁場変調吸収測定によって行った。Nd3+は反転中心のない結晶場環塊におかれk⊥H⊥Pの配置でOME効果に起因する非相反的方向二色性が生じると予想された。前年度までに研究を行った発光における方向二色性と本年度行った吸収における方向二色性は本質的には同じ2次のOME効果を起源とする非相反的光学応答を観測している。しかし、吸収測定では励起準位の占有率の影響が無いため、多くの状態へのff遷移が観測可能である点で発光とは大きく異なっており、全てのAサイトがNd3+で占められているNd2Ti207結晶を用いることで、初めて各遷移間での系統的な強度の吸収スペクトルにはNd3+のff遷移による構造が多く見られ、Judd-Ofelt理論による9つの励起状態について定量的にアサインを行った。磁場変調スペクトルには吸収スペクトルの構造に対応して、多くの構造が見られ、発光での測定同様、電気分極の反転にともなう磁場変調スペクトルの符号反転によってファラデー効果と区別でき、得られた磁場変調スペクトルがOME効果によるものであることを確認した。磁場変調スペクトルの積分強度から見積もったOME効果による振動子強度の移送量と、電気双極子(E1)・磁気双極子(M1)遷移の振動子強度の半経験的な計算値を比較することで、OME効果の微視的起源がE1遷移とM1遷移の干渉にあることを半定量的に裏付けた。実験によって得られた振動子強度移送量と計算によって得られた量では、結晶場分裂した励起状態に関する和のとりかたが、前者と後者では異なっていることに起因して、20倍もの違いが生じており、両者の相関はあきらかであるにせよ、定量的な比較は困難であった。
著者
綾部 広則 中村 征樹 両角 亜希子 黒田 光太郎 川崎 勝 小林 信一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

欧米においては、近年、科学コミュニケーションにおける新たな試みとして、カフェ・シアンティフィーク(以下、CS)と呼ばれる活動が急速に広まっており、すでに実施主体間での国際的なネットワークが形成されている。一方、日本においても最近になってCSの手軽さもあって実際に実行しようとする団体が増えてきているが、しかしそれらの大半は欧米の表面的な模倣である場合が多く、そもそもなぜCSが開始されたのか、そしてそれは科学コミュニケーションにおいていかなる位置づけをもつのかを十分に理解した上で行われているとは言い難い。そこで本研究では、1)欧州各国における対話型科学コミュニケーションの現状に関する調査と国際的ネットワークの確立を行うとともに、2)日本における実験的導入と国内ネットワークの構築を実施した。まず、1)については、その他の国と際だった違いをみせているフランスとアジア地区の事例として韓国の状況を調査した。とりわけ、フランスについてはCSの発祥とされている英国のように話題提供者による発話を基本とするスタイルとは異なり、最初から議論に入ること、しかも単一の話題提供者ではなく、賛否双方の意見を持つ複数の話題提供者を参加させるというスタイルなど、英国やその他の地域において一般的に行われるのと際だった違いが見られ、日本における今後のCS運営においてもきわめて示唆的な成果であった。2)については、1)の海外調査の結果を活かしつつ、東京・下北沢において数回程度の実験的活動を繰り返したが、さらに4月に開催された「カフェ・シアンティフィーク」に関するシンポジウムに企画段階から協力することで、国内の実施主体を招聘し交流を行い、国内間でのネットワークが形成される重要な契機をつくった。
著者
藤垣 裕子
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

ソフトウェア開発に携わる10人の技術者のデータを、隔週で半年間に渡り採集した。ストレスの生化学的指標として、仕事時間中の尿、および正午の唾液を採集した。また、心理的(主観的)指標として、ZUNGのSDSを用いた抑欝症状、および不安、覚醒、だるさ、痛みなどの症状も評定尺度法で評価を得た。作業内容は、調査日については15分間隔で作業内容をコードで記入してもらった。また、調査日間の2週分(あるいは1週分)の仕事内容の概略も得た。その結果、ストレス指標は、作業密度、作業内容、仕事上のイベントに伴って変化することが示された。仕事上のイベントとの対応の検討結果は以下のとおりである。1.仕事上のイベントとアドレナリン値各個人ごと、各個人の平均値から週毎変動の標準偏差以上の変動を示した日は全181case中25caseであった。この25case中、22case(88.9%)に対応するjob-eventが存在した。eventのあるなしをevent1効果とし、個人差効果もふくめて2元配置分散分析を行った結果、アドレナリン値は、event1効果が有意(p<0.01)であることが示された。(後述のevent2効果は有意でない)2.仕事上のイベントとコルチゾール値各個人ごと、各個人の平均値から週毎変動の標準偏差以上の変動を示した日をpick-upすると、全181case中、24caseであった。この24case中、18case(75%)に対応するjob-eventが存在した。eventのあるなしをevent2効果とし、個人差効果もふくめて2元配置分散分析を行った結果、コルチゾール値は、event2効果が有意(p<0.01)であることが示された。(前述のevent1効果は有意でない)
著者
藤垣 裕子
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

高速度マシン使用による作業密度の増加の精神的負荷への影響評価を行うために、今年度は以下の研究を行った。(1)実験室調査1 : 93年度の助成(奨励研究:課題番号05780314)を得て購入した、小型で携帯しやすく長時間にわたり作業者の負担の少ない形で心電図を記録できるホルターレコーダを用い、今年度の助成をもとに被験者数を増やして実験を行った。高速マシンによる作業密度の増加(純粋思考時間の割合の増加/一定時間内のコマンド数の増加)によって被験者の緊張度が増加し、それに対応して心拍R-R間隔の分散の低周波数成分の増加があらわれるか、について検討した。実験はA(作業密度大)、B(作業密度小)の2つのマシン環境を設定し、プログラミングタスクを課して行った。その結果、A条件のほうが心拍RR間隔の分散が小さく集中の見られる傾向が見出されたが、個人差が大きいことも示唆された。また自己回帰スペクトルでは、呼吸成分の分離が課題となった。(2)実験室調査2 :上記の実験設計において、作業密度条件の設定の他に、タスク設定による影響が示唆された。そのため、思考作業をタスクの特性から階層モデル化して分類し、performance曲線を求める作業を行った。これを上記の実験設計におけるタスク設計の指針とした。(3)現場調査:実際に勤務する現場のソフトウェア技術者における、マシン環境によるストレス増加を検討するために、仕事上のストレス要因(job-event)を7ヶ月に渡って調査し、それによるストレス反応を計測した。
著者
廣野 喜幸 KIM SungKhum KIM SungKhun
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

19世紀以降、東アジア(中国・朝鮮・日本)に西洋近代医学が大規模に移植された。こうした移植に対する反応は各国様々であった。本研究では、そうした反応の差異を、特に日本と朝鮮に焦点を絞って検討した。西洋医学の大量移入に対して、当時、朝鮮の伝統医学者たちがとった態度は、大きく三つに分類できよう。(1)積極的導入派は、伝統医学の理論的な基盤であった陰陽説と五行説を厳しく批判した。(2)折衷派は、伝統医学の主な概念は西洋医学の言葉で翻訳できるし、二つの医学の間には疎通の可能性が残されていると考えた。(3)否定派は、身体に対する西洋近代医学の暴力性(侵襲性の高さ)に注目し、その限界を指摘した。近代朝鮮の医学システムの変化と比べると、日本の医学システムは遥かにドラスティックな形で転換した。近代日本は、江戸時代以来の伝統医学システムをほぼ廃止し、西洋近代医学に基づく新しい医学的システムを構築した。つまり、圧倒的大多数が積極的導入を支持した。また、その過程で近代日本は、朝鮮における医学システムの変化を促した直接的な介入者として機能することになる。われわれは、当時の朝鮮伝統医学がもっていた限界および可能性を、先の三つのグループに見出した。また、このような朝鮮の伝統医学者たちの理論は、日本による朝鮮植民地化以降、政治的な抵抗運動の理論と結合しながら、さらに精密化していくことになった。19世紀以降、東アジアの伝統科学はほとんど西洋近代科学に置き換えられた。しかし、そのなかでも伝統医学のみは、現在も現場の医療として臨床的成果を挙げている。東洋の伝統医学と西洋近代医学との衝突の中で起きた理論的境界に迫ることで、伝統医学のみならず、東アジア伝統科学の真相を再認識する手がかりを得ることができた。
著者
橋本 毅彦 廣野 喜幸 岡本 拓司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究においては、1960年代以降に通商産業省の主導によって設立された技術研究組合の活動内容の調査分析を目的とするものである。特に、戦後日本において不活発であったとされる産学連携、すなわち大学と企業との間の共同研究に関して、技術研究組合という場を通じて、直接的ないしは間接的な協力があったかどうかを調査することを目的とするものであった。平成17年度においては、そのような技術研究組合のいくつかを取り上げて、その研究活動を検討した。平成18年度においては、それらの技術研究組合に対して、過去における産学共同の有無、当時の史料の有無を問い合わせるアンケートを実施した。アンケートに対しては、10余りの技術研究組合から回答が寄せられた。また、『科学技術白書』などの政府の報告書に現れる記事を通じて、戦後の産学協同のあり方を概括した。それとともに、化学産業、コンピュータ開発などをめぐるいくつかの技術研究組合に関しては、関連する報告書等をより具体的に調査した。いずれの調査委においても、大学と企業とが直接共同研究するのではなく、本研究で取り上げた技術研究組合や科学技術の各分野において設立されている財団法人の研究機関などが、共同研究の場を提供することで両セクターの仲介役のような役割を果たしたものがあることが示された。