著者
植原 亮
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本年度は、研究課題である認識論(知識の哲学)に関わる学術論文一本が学会誌に掲載され、もう一本もまた雑誌に掲載予定であるという点で、目に見える成果を十分にあげることができた。具体的な内容に即して述べるならば、まず第一に、懐疑論的な議論を知識に関する一種の反実在論(あるいは認識論的ニヒリズム)として捉えたうえで、知識を自然種であるとする立場(知識の自然種論)からそうした反実在論を批判し、知識の自然種論という立場がさちに多くの認識論上の問題を解決しうる豊かなリサーチプログラムであるということを論じた。そして、第二に、直観の認識論的な身分に関わる問題に関して、反省的均衡の方法論的妥当性をめぐる議論においてそれがどのように位置づけられるのかを明確に示し、「認知的分業」の観点からこの問題を解決するという提案を行った。すなわち、直観や理論的枠組みは、おおよそ生得的・文化的バイアスによって個人や集団ごとに大きな偏倚を示すものであるが、にもかかわらず認知が個入に閉じるのではなく共同的営為である限りにおいて、認知ないしは探究は、全体としては十分と言えるような合理性を発揮することができるのだ、ということを明らかにしたわけである。上述の知識の自然種論からはまた、生物種や人工物に関する存在論的あるいは科学哲学的問題を引き出すことができたので、これに関する研究も進行中である。
著者
茅 陽一 手塚 哲夫 森 俊介 辻 毅一郎 小宮山 宏 鈴木 胖
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

1)統合型エネルギーシステムに関する研究 近年の地球環境、中でも温室効果問題の関心増大を考慮して、現在はCO_2(二酸化炭素)の発生抑制を基本目標として作業を行なった。a)LPモデルによるCO_2の発生抑制シナリオの検討、b)化石燃料の2次エネルギー転換時のCO_2の除去のためのプロセスの化学工学的概念設計、c)エネルギーシステムの個別機器及びシステムの規模の経済性の検討。a)従来システムと異なる化石燃料の二次エネルギー(CO、H_2等)への転換設備を含むLP型システムモデルを開発し、CO_2の抑制量を変化させた時、そのシステム構成・総コストの変化を検討した。この結果CO_2の数十%迄の抑制は、海洋投棄がエコロジカルに可能ならば、さほどの不経済を伴わないが、それ以上の抑制は電力の熱需要充当を必要とし、システム効率の大幅な低下をもたらす、との結果を得た。また、従来型システムに比して原料価格変動に遙かに強いことを立証した。b)化石燃料からメタノールに至る変換の過程で、かなり工業的に可能性の高いCO_2除去プロセスが可能であるとの示唆が得られた。c)電力系統中心の分析の結果、個別の機器については、送配電部門でデメリットが現れている可能性が高い。2)都市を中心とするエネルギーシステムの研究近畿地域を対象とし、研究基盤であるエネルギー需要モデルの改善とデータの更新した。そして太陽光発電及び都市ガスコージェネレーションを想定し、モデルによりそれが従来システムに代替するポテンシアルを推定した。更にコージェネレーションシステムについては、民生用を対象とし、建物用途・規模・運転時間帯を入力可能とするモデルを作成し、建物用途毎に(事務所・デパート・ホテル)適したシステム構成・運転方式・建物規模を検討すると共に、システムの運転時間帯の影響も検討した。また、蓄熱諸方式の経済的・技術的特性の予備調査も行った。
著者
住 明正 新田 勍 岸保 勘三郎
出版者
東京大学
雑誌
環境科学特別研究
巻号頁・発行日
1986

大気中の二酸化炭素の増加は、温室効果により、大気中の気温を上昇させ、大規模な気候変化を引き起こすとされている。しかしながら、従来のモデルの計算では、海面水温を気候値に固定して行なって来た。しかしながら、最近の大気ー海洋結合モデルの結果によれば、同時に、海面水温も増加するという結果が得られている。しかし、海面水温が上昇すると、当然、積雲活動が変化する。それ故に、【CO_2】の気候変化に対する影響を見積るためには、この積雲活動のふるまいを正しく理解する必要がある。このためには、積雲活動の振舞を充分に表現出来るような大気ー海洋結合モデルを用いれば良いのであるが、現在の計算機の能力では時期尚早である。そこで、本研究では、高分解能の東大大気大循環モデル(T4-2全球スペクトルモデル)を用い、海面水温上昇を既知として、その後の、積雲活動の分布の変化を計算し、【CO_2】の増加に伴う、気候の変化の予測を行うことを目標とした。その結果、熱帯域では、海面水温が東西に一様であっても、積雲群は特長的な分布をすることが分かった。つまり、海洋の西半分に、二本のITCZ(熱帯収束帯)が、そして、赤道上では、海洋中央から東に積雲群が分布する。この傾向は、初期値、海面水温の絶対値には、依らなかった。【CO_2】による海面水温の上昇は、東西に一様になるという結果が得られているので、そのような温度アノマリーを与えると、当然の様に、海洋西半分のITCZの積雲活動が強化される。その結果は、亜熱帯ジェットの強化、そして、低気圧活動の強化と一連の現象をへて、中緯度に伝わっていく。しかしながら、それは、東西一様ではなく、大陸の西半分で顕著であった。日本のように、大陸の東端には、それ程顕著な影響は見られなかった。この結果を確証するには、更なる実験が要る。
著者
井上 英史
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

結果1. Aspergillus niger var.macrosporusが分泌する非ペプシン型酸性プロテアーゼであるプロクターゼAの活性中心残基を検索するために化学修飾を行った。プロクターゼAはpH6以上で不可逆的に失活するので用いることのできる反応は限定される。本研究ではカルボキシル基、トリプトファン、ヒスチジンに対する化学修飾を行った。その結果、カルボキシル基の収縮により活性の低下が見られ、トリプトファンやヒスチジンは修飾されなかった。結果2. アスパラギン酸残基・グルタミン酸残基を標的に部位特異的変異を行った。プロクターゼAはScytalidium lignicolumのプロテアーゼBとアミノ酸配列が50%一致することから、活性中心は両者の間で保存されていると考えられる。そこで保存されている16個のアスパラギン酸及びグルタミン酸残基をそれぞれアスパラギンまたはグルタミンに変換した変異体を作製し、活性を測定した。その結果、Asp123とAsp220を変異した場合のみに活性が消失した。結論 この2つの残基は近傍に分子内ジスルフィド結合が存在することから、高次構造上で近くに位置すると考えられ、プロクターゼAはペプシン型アスパラギン酸プロテアーゼと同様に2つのアスパラギン酸残基が活性中心を形成していると考えられる。プロクターゼAはペプシン型アスパラギン酸プロテアーゼと一次構造の共通性が全く見られないことから、収斂進化により触媒機構の類似した2つのアスパラギン酸ファミリーが存在すると予想される。
著者
山田 作衛 徳宿 克夫 石井 孝信 浜津 良輔 二宮 正夫 奥野 英城 今西 章
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

電子・陽子衝突装置による素粒子実験は、いわばレプトン・クォーク衝突実験であり、レプトンやクォークの内部構造、近距離における両者の相互作用を探る上で新しい情報をもたらす。従来試みられた例はなくHERAが最初の装置であり、加速器技術とともに、実験遂行上も測定器とデータ取得用エレクトロニクスに新しい課題がある。例えば、荷電流弱反応に際して終状態では電子がニュートリノになるため、現象再構成のために高精度のハドロンカロリーメーターが必要になる。また、ビーム電流を大きくするために、パンチ数が多く、間隔が96ナノ秒しかない。このためトリガーやデータ取得に並列処理の手法が取られた。本研究は電子・陽子衝突の研究を進めるためZEUS測定器の設計に伴う開発研究、量産試験と建設を主目的とした。具体的研究テーマは次のとおりである。1)ハドロンカロリーメーター用シンチレーター材料の対放射線試験2)吸収材によるe/h比のコンペンセーションの検討3)直流変換タイプの高電圧電源の開発による省エネルギー化4)新しい磁場遮蔽用材の試験と量産5)多数の光電子増倍管の性能試験と較正6)半導体検出器による電子識別系開発と製作7)並列処理型初段トリガー回路の開発と製作、同ソフトウェアの開発以上の研究に基づき建設された測定器は予定通り完成した。HERAがビーム衝突を開始して以来正常に稼動し、予想された性能を示している順次物理結果が得られている。
著者
住 明正 中島 映至 久保田 雅久 小池 俊雄 木本 昌秀 高木 幹雄
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

3年計画の最終年度であるので、今までの研究成果の取りまとめを中心に研究活動が行われた。まず、陸域班では、顕熱・潜熱フラックス、アルベド、土壌水分などの物理量の推定が第2年度に引き続き行われた。海洋班では、ほとんどの月平均フラックス求められたので、それらを用いて、海洋内部の熱輸送などが解析された。その結果、西太平洋暖水域の維持機構について、中部太平洋で暖められた水が西に移流される、という関係が明らかになった。大気班では、大気中のエアロゾルや、雲の微物理量の推定が行われ、世界で初めて、広域・長期にわたるデータが得られた。植生班では、NOAAのGACデータを再処理することにより、新しく、土地利用分布を解析した。モデル班では、衛星データのモデルへの取り込みについて研究を深め、マイクロ波による水蒸気データの影響が大きいこと、高度計のデータが非常に重要であることなどが得られた。又、衛星データとモデルを用いた大陸規模の熱輸送・水輸送の推定が行われた。最近の衛星データを用いることにより、この推定が改善されることが示された。成果報告会も2回開催し、又、成果報告書も年度末に刊行する予定である。
著者
松原 望 北村 喜宣 繁枡 算男 小宮山 宏 細野 豊樹 佐藤 仁 石 弘之
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1998

(松原)最終年度のとりまとめを行った。アジア・太平洋地域の環境問題は、開発と高い経済成長にともなう環境破壊、資源開発と相関する環境破壊、「環境保護」の名のもとの環境破壊、所得格差と不平等増大の進行、などの各論的問題が次第に総論化し、政策の統合と協調が政治経済学的に「集合行為」(オルソン問題)としての課題となっている。その中でアメリカの環境政策での立場が、ブッシュ政権のもとで従来との一貫性を欠く等の局面が現出していることに焦点をあてた総括を行った.(小宮山)中国を含む東アジアおよび東南アジア諸国における資源とエネルギーについて20世紀後半50年間分のデータを収集し、農業生産量、エネルギー資源等の天然資源の生産量、工業生産量の経年変化から現状を分析した。(繁桝)構造方程式モデル(SEM)のパラメータを推定するためのベイズ的な解析方法を理論的に精緻化し、ギブスサンプリングを用いて実用化した。SEMは,リスク認知における因果関係を検証するために有用な方法である。(佐藤)今年度は、日本における資源概念の形成にかかわる文献を集中的に収集し、とくに南洋地域における資源確保の政策背景について研究した。タイでは関連する現地調査も行った。(北村)環境保護のためにきわめて厳格な法執行制度を整備している米国環境法を概観し、日本環境法の導入可能性をさぐった。非刑事的制裁の有効性などが示唆されたが、日本の行政システムのなかで機能させるには、組織文化的な課題があることがわかった。(細野)アメリカ合衆国2000年大統領選挙で明らかになった投票集計機材の誤差問題に対応すべく策定された、2002年10月の連邦政府の対策法がなぜ不十分なものに終わったかを、自治体の新技術への対応能力の格差にからめて、キングダンの政策モデルで分析。
著者
茅 陽一 手塚 哲央 森 俊介 辻 毅一郎 小宮山 宏 鈴木 胖
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

I.統合型エネルギーシステム(IES)1)システム構成の分析と効果の評価:3種の統合概念を提案した。第一は供給面での統合で供給の量・価格変動に対処し、第二は需要面の統合で需要の変動に容易に対応し、第三は規模の統合で同一システム内で異なる規模の設備を包括、両者の欠陥を補完する。これらの利点を数値的に示し、更にこの柔構造を有するシステムがCO_2削減にも効果的に対応出来ることを示した。2)CO_2の海洋循環と回集技術:地球温暖化対策の基礎として海洋での炭素循環を検討し有機炭素の役割の重要性を数値的に示した。また、産業から排出されるCO_2回収と海洋への廃棄の基礎的検討をした。3)高温核熱によるCO_2排出削減:IESの一つの方式は原子力の拡大利用で、高温核熱がエネルギー変換に有効に利用出来、結果的にCO_2削減に有効であると示した。4)規模の経済性の検討:電力システムを対象に検討し、設備建設コストの規模の経済性が認められる一方で、稼動率やシステムの周辺コストで規模のデメリットが認められることを示した。II.広義のロードマネージメントの研究1)分散型エネルギーシステム導入のポテンシアル:近畿地方を対象に、地域的需要分布を詳細に調査・モデル化し、太陽光及び燃料電池の導入のポテンシアルを検討し、かなり高い可能性があることを示した。2)民生部門におけるロードマネージメント:近畿地域対象の詳細民生需要モデルを作り、その調整可能性を検討した。電力のロードマネージメントの有効化にはガス冷房の普及が鍵となること等興味ある知見を数多く得た。3)コージェネレーションの民生利用評価:民生建築物を対象に運用モデルを作成、特に需要パターンがシステム選択に及ぼす影響を検討し、システム評価手法を提案した。4)産業用の共同火力運用プログラムの開発:産業での自家発電設備やコージェネレーションの運用に多大の示唆を与える知見が得られた。
著者
小宮山 宏 中田 礼嘉 山田 興一 角張 嘉孝 松田 智 小島 紀徳
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1994

平成6年度には大規模スケールでの降雨量分布を予測するためのシミュレータの開発を行った。本シミュレータを地球レベルのグローバルモデルから与えられる境界条件、初期条件等のもとで利用し、オーストラリアでの地表条件と降雨量の関係についての検討を開始した。乾燥条件下における、樹木および毛管力作用による地下水、特に塩水の上方への移動、地上部での塩分蓄積を模擬土壌を用いて検討した。その結果、太陽光を想定した赤外線照射条件下で水分移動が促進され、表層への塩の蓄積を抑制しうることが分かった。また、砂漠に降雨をもたらすためには湿潤な空気と上昇気流が必要であり、人工山の設置する方法と、熱対流により上昇気流を起こす方法とがリストアップされ、検討を進めている。湿潤空気の発生については、人工の浅瀬による蒸発促進を考え、浅瀬での湿潤空気の生成過程を定量化するため、浅い水面上での熱収支モデルを構築し、任意の条件下で平衡水温と水の蒸発速度を推算できるようにした。さらに、砂漠緑化の水収支のうち、モデル実験により蒸散量・土壌水分・地表面蒸発の総合依存関係を調べた。植物の蒸散による水の持ち去りは土壌水分量の豊かさに比例するが、土壌がある程度乾燥すると蒸散量はむしろ抑制されることが明らかになった。平成7年度は前年度に引き続いて砂漠気象シミュレーションのプログラム開発、および要素技術のモデル化を進めるとともに緑化シナリオの策定および評価を行った。西オーストラリア砂漠内に海岸を含む600km×600kmの領域を設定し、物質収支、エネルギー収支に基づくプログラム計算を行い、大気中の水蒸気量や降雨量の変化を求めた。その結果、アルベド、表面の起伏、含水率を変化させることにより、大気中の水蒸気量や降雨量を増加させることができた。さらに砂漠緑化シナリオの具体性を高めるには、緑化により固定された炭素のコストを計算するとともに、他の対策技術と比較を行うことが必要であり、そのための評価手法および一時的評価の具体例を検討した。二酸化炭素問題は地球温暖化問題、エネルギー問題とも重なる部分が多く、これらへの副次的効果についても検討を進めた。
著者
金子 邦彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

生命現象の本質を適度に抜きだした力学系モデルを設定し、そこでの現象を解析することを通して、どのような条件のもとで、生命現象の特性があらわれるかを明らかにし、そのための論理を探った。(1)細胞分化システム:細胞内の化学反応ネットワーク、拡散相互作用、増殖だけによって、分化発生が起こることを示してきたが、この時にカオス的なダイナミクスを持って分化するような反応ネットワークを持った方が集団として速く増殖でき、選択されてきたことを示した。幹細胞から、分化、決定していく不可逆性が、多様性やカオスの減少として記述されることを示した。(2)空間的相互作用を含めた細胞分化モデルを解析し、チューリングの形態形成理論とは異なる型のパタン形成が生じることを示した。さらに、細胞内部のダイナミクスに基づいて位置情報が生成し、安定なパタンが維持されることを示した。(3)総分子数が少なく、ゆらぎが多い系では、コントロール的役割を持つ少数の分子と多様増殖をになう分子への分離過程が生じることを示し、デジタル情報を担う遺伝情報と代謝への役割分化を捉えた。(4)少数個の分子での反応系では、連続極限の力学系にゆらぎを加えた系とは本質的に異なる相への転移が起こることを見出し、その機構を求め、細胞内でのシグナル分子の性質との関連をも議論した。(5)ダーウィン進化論の枠の中でも相互作用によって表現型が分化すると、それが遺伝的進化を促しうることを示し、その成立条件調べ、特に、これまでの進化理論で説明されにくい、発生と進化の関係、進化のテンポの非一様性などを議論した。(6)時間スケール、空間スケールの異なる力学系が相互作用したときに速いスケールが遅いスケールに連鎖的に影響を与えるケースを探り、記憶、履歴構造を持つ力学系の原型を探索した。(7)分子内のモードが分化し、分子の一部に長時間エネルギーを蓄える構造が出現することを明らかにした。その時間が蓄えたエネルギーEについて、指数関数的に増大し、この緩和時間が余剰Kolomogorov-Sinaiエントロピーに逆比例することを示した。さらにこうして蓄えられたエネルギーを変換して利用するモデルを構築した。これは分子モーターの原理のひとつを与えると思われる。(8)この他、力学系ゲーム、関数力学系という新しい分野の開拓、計算の力学系的研究なども行った。
著者
安井 至 茅野 充男 浦野 紘平 松尾 友矩 高月 紘 中杉 修身
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

人間地球系の研究の過年度取りまとめ課題として、以下の活動を行った。1, 一般公開の報告会開催2, 参加者の記録冊子の作成3, 参加者の学術論文のインターネットへの掲載4, 一般向け成果報告としての一般図書の発行とその原稿収集まず、一般公開の報告会であるが、平成10年6月11日東京大学安田講堂において、講師7名による講演会として挙行した。一般にはダイレクトメールによる案内を行い、ピーク値で参加者700名を得た。参加者の記録冊子については、各人1ページを原則として、環境研究における重要事項であり、かつ、本研究領域の存在基盤をなす社会的要請について、各参加者がどのような貢献ができたかについて特に記述をしてもらった。参加者の学術論文については、まとめて一冊とするには余りにも大部であったため、また、一般社会への公開性の観点から、インターネット上に論文を掲載することにした。ただし、論文の版権などの問題もあって、テキストに戻して掲載することとした。そのため、スキャナーによるOCR技術を利用した。一般向け図書の発行は、当領域の社会的要請に応えるためには必須事項と考え、領域全体の目次に相当するものとして、「市民のための環境学入門」(丸善ライブラリー)が出版された。その後、各班の成果について順次発行が進んでおり、「エコロジーテスト」(ブルーバックス)、「環境と健康II」(へるす出版)がすでに刊行済みとなっており、さらに、丸善より、地球・環境・人間シリーズとして4冊が企画立案され、原稿を収集中となっている。
著者
竹内 雅彦 越村 俊一 目黒 公郎
出版者
東京大学
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.103-106, 2008-05

スマトラ沖地震津波以降, 太平洋津波警報システムのインド洋地域への適用が進められているが, このシステムは高価で技術的にも扱うのが難しく, 維持管理の持続可能性には大きな不安がある.そこで本研究は, 安価で維持管理しやすく日常的に利用可能なシステムとして「多目的ブイを用いた津波警報システム」を提案し, 本システムの導入による人的被害軽減効果の検証と要求性能に関する検討を行った.津波シミュレーションに基づく被害の推計結果からは多目的ブイシステムの津波対策としての有効性が示唆された.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
飯野 雄一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究では、線虫C.elegansを用い、性行動に関する突然変異体を分離することを目的とした。性行動は霊長類以外の多くの生物においては生後の学習を必要とせず、完全に遺伝的にプログラムされたものである。ところが、各種生物における性行動の記述は比較的よくなされているものの、その行動がいかにプログラムされているかという遺伝子レベルでの研究は非常に少ない。そこで、性行動の分子遺伝学的研究の第一歩として、線虫においてオスの性行動に異常のある突然変異体の分離を行った。オスが高頻度で出現するhim-5変異と、精子の注入に伴い雌雄同体の陰門に盛り上がり(プラグ)を生じるplg-1変異を持つ二重変異体に変異原処理を施し、プラグの形成を指標としてスクリーニングを行った。この結果、精子の注入に至らない突然変異体を39株分離した。線虫のオスの性行動は大まかにresponse to contact,turning,vulva location,spicule insertionの4つのステップから成るが、得られた変異体の中にはresponse to contactに異常があるものが14株、turningの異常が23株、vulva locationの異常が5株含まれていた。ただし、複数のステップに異常がある変異体も含まれている。また、これらの性行動不能変異体のうちの20株は、性行動に特に重要である尾部の形態に異常が見られた。オスの尾部にはSensory rayと呼ばれる感覚器官が左右9対存在するが、見られた異常の多くはSensory rayの融合、欠失などであった。また、精子の注入に重要な交尾針(spicule)の伸縮に欠陥があると思われる変異体も6株見出された。また、明らかな形態上の異常が見られない変異体の中の11株は蛍光色素DiOによる染色の結果、感覚神経の異常が明らかとなった。これらの突然変異体はオス特異的な構造、特に感器官の発生、分化に関わる遺伝子に変異を持つものと考えられる。本研究により、このような性分化に関わる遺伝子カスケードを明らかにするための端緒が得られた。
著者
能登路 雅子 油井 大三郎 瀧田 佳子 藤田 文子 遠藤 泰生 ホーンズ シーラ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本科研最終年度にあたる平成18年度においては、4年間の研究成集のまとめとして、9月に専門家会議を開催し、7月に科研メンバーを集め、専門家会議の準備とともに成果報告書作成のための、最終的なミーティングを行なった。その上で、9月30日(土)に、東京大学駒場キャンパスにおいて、"US Cultural Diplomacy in Asia : Strategy and Practice"(「アジアにおけるアメリカの文化外交:その戦略と実践」)と題した専門家会議を開催した。同会議には、本科研の海外協力者であるSusan Smulyan(Brown Univ. )とThomas Zeiler(Univ. of Colorado, Boulder)を招き、研究分担者である藤田文子(津田塾大学)を加えて、映画、芸術、科学、教育、スポーツ交流など、多様な切り口からの報告を行なった。科研メンバーのほかに、関連分野の研究者、外交機関を含む実務者らが参加し、活発で刺激的な議論が行なわれた。同会議のコメンテーターは研究代表者である能登路雅子が、司会は分担者である遠藤泰生がそれぞれ務めた。この専門家会議のために提出された論文と研究代表者・分担者・協力者の論文をまとめて、平成19年3月に成果報告書として刊行した。
著者
佃 為成 大木 靖衛
出版者
東京大学
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.19-38, 1994
被引用文献数
4

A small earthquake of M4.5 severely attacked Tsunan Town, Niigata Prefecture on December 27,1992. Unexpectedly destructive damage to school buildings and gymnasiums was mainly attributed to an extremely shallow focal depth of 2-3km within the Tertiary layer, which is as thick as 5-6km. The accuracy of the depth determination is estimated to be within 1km. A high Vp/Vs ratio of 2.0 measured locally also supports the shallow focal depths. We have no seismometric reports of a shallow earthquake with magnitude greater than 4 whose fractured region is entirely within the Tertiary layer other than this paper. The epicentral region is tectonically complicated, where the Shinano River Seismic Zone and the Naoetsu-Choshi Line deduced from Bouguer gravity anomalies cross each other. Probably due to this complexity, the earthquake generating stress of the mainshock indicates NNW-SSE compression, while the major aftershocks are generated by WNW-ESE compresional stresses which are in harmony with the surrounding stress field. This earthquake is followed by a comparatively small number of aftershocks, and preceded by microearthquake activity about 3 months before and during the 12 hours before the mainshock. The aftershock region is separated into three spots, one of which was the source region of the precursory activity 3 months before.新潟県南部の長野県境に近い中魚沼郡津南町にて,1992年12月27日11時17分,M4.5の地震が発生した.小さい地震の割に中学校や小学校の建物などに大きな被害を及ぼした.被害地域は逆巻地区を中心に1km2の範囲に限られている.強い震動の原因は,震源の深さが2~3kmと非常に浅い直下地震であったためである.地震発生滅は花崗岩層の上の第三紀層内である.精密な震源は新潟大学積雪災害研究センターによる余震の臨時観測と東大地震研究所のテレメータ観測網のデータを組み合わせ,媒質の不均質性を補正して得られた.
著者
真鍋 陸太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では「行政調査型」調査の現状を把握・整理し「参加調査型」での情報収集・蓄積・開示方法、その際に集まる情報の量・質などを分析し、双方を適切に総合化することによる都市計画・まちづくり分野全体を通じての「都市の情報」の収集・蓄積・開示の方法の総合化に関しての考察を行う。双方の情報は対象とするものが異なっていることや、後者は調査プロセス自体が住民の都市に関する関心を喚起させ参加型まちづくりの一翼を担うことが確認できた。両者を総合化した収集・蓄積・開示のシステムを築くことが必要不可欠であることが分かった。
著者
坂部 沙織
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

H5N1インフルエンザウイルスのサイトカイン誘導能の解析背景H5N1ウィルスによるヒトへの感染・死亡例は、依然増加している。その死因は、高サイトカイン血症であると考えられている。また、高サイトカイン血症には、肺胞マクロファージが大きな役割を担っていると考えられている。方法ヒト末梢血由来マクロファージに、様々なH5N1ウイルスおよび、コントロールとして、季節性インフルエンザウイルスを感染させ、ウイルスの増殖性と48種類のサイトカイン・ケモカイン放出量を調べた。さらに、高サイトカイン誘導能を示すH5N1ウイルス株と、低サイトカイン誘導能を示すH5N1ウイルス株で、遺伝子組み替えウイルスを作出し、サイトカイン高誘導に関わるウィルス遺伝子を同定した。結果H5N1ウイルスの中には、高いサイトカイン誘導能を示す株と、季節性ウイルスとあまり変わらないサイトカイン誘導能を示す株があることがわかった。また、増殖性に関しても、季節性ウイルスとH5N1ウイルスとで大きな差は認められなかった。さらに、組み替えウイルスを用いた実験から、H5N1ウイルスの、ヒトマクロファージにおける高サイトカイン誘導には、PA遺伝子が関与していることが明らかになった。H5N1ウイルスがヒトに対して高い病原性を示す原因は、未だ明らかになっておらず、PA遺伝子が何らかの役割を果たしていることが示唆された。今後、メカニズムを解明していきたい。
著者
河岡 義裕
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

薬剤耐性H5N1ウイルスの病原性を調べるため、マウスおよびフェレットを用いた感染実験を進めていたが、同課題名で応募していた特別推進研究が採択されたため、そちらで引続き研究を進めていくこととなった。
著者
堀本 泰介 五藤 秀男 高田 礼人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

インフルエンザウイルスが細胞に感染すると、細胞内で多数の子孫ウイルスが短時間で複製され、細胞外に放出される。この時、ウイルス感染に伴う細胞応答、つまり様々な細胞性因子がこの一連の過程を制御している。本研究では、それらの細胞性因子を同定し、解析することを目的とした。その成果は、効果的で副作用のない新しい抗インフルエンザウイルス薬の開発につながると考えられる。本研究では、その新しい解析方法として、自己発動性組み換えインフルエンザの応用を考えた。つまり、感受性細胞のcDNAをランダムに組み込んだ組み換えインフルエンザウイルスを構築し、それを非感受性細胞に接種した時のウイルスの増殖を指標にし、感染を制御する細胞性因子を同定しようという試みである。つまり、その場合に、ウイルスに組み込まれたcDNAを同定することにより、細胞性因子の同定が可能になる。昨年度のパイロット実験では、耐性細胞上で増殖を再獲得した組み換えウイルスを選択することはできなかった。そこで本年度は、新たに変異誘導剤ICR191を用いて、ウイルス感染耐性CHO細胞株を72クローン樹立した。さらに、人の肺組織由来のcDNAを新規に購入し、それを用いて組み換えウイルスを再度調整した。これらを、耐性細胞に接種した結果、残念ながら増殖を再獲得するような細胞株は得られなかった。その原因が、耐性細胞株側にあったのか、組み換えウイルス側にあったのかは現時点では不明である。