著者
向江 頼士
出版者
横浜国立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

1937年,K.Wagnerによって5頂点からなる完全グラフK5をマイナーに持つグラフの構造が特徴付けられたが,6頂点以上の完全グラフに関しては何も知られていない状況であった.ところが,2003年にB.Moharたちは,「グラフが閉曲面に埋め込める」という位相幾何学的な条件を付加することにより,「射影平面上の5-連結3-representativeグラフはK6をマイナーに持つ」という定理を証明した.この結果により,K6をマイナーに持つためのある程度意味のあるグラフ構造が記述されたが,まだ十分条件を与えるに留まっていた.そこで本研究では,曲面上のグラフを「三角形分割(各面が三角形であるような曲面上の単純グラフ)」に限定した.B.Moharたちの定理よりも条件は強くなっているが,射影平面,トーラス,ダブルトーラス,クラインの壷,種数3の向き付け不可能な閉曲面上の三角形分割がK6をマイナーに持つための必要十分条件を示している.これらの結果を皮切りに,完全グラフをマイナーに持つ曲面上のグラフ構造とその関連についての研究を行った.今年度の研究結果の一つとして,種数4の向き付け不可能な閉曲面上の三角形分割がK6をマイナーに持つための必要十分条件を示した.この結果から「種数4の向き付け不可能な閉曲面の全ての5-連結三角形分割と全ての4-representative三角形分割はK6をマイナーに持つ」という系を得られた.また,その他の閉曲面上のグラフの研究として,四角形分割から偶三角形分割への拡張可能性についていくつかの結果が得られた.
著者
田中 正俊 和田 直久 関谷 隆夫 大野 真也
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本年度の研究計画に従って、原子層単位で酸化したSi(001)表面や表面修飾により仕事関数を変化させたSi(001)表面上にGFP、ルシフェラーゼ極薄膜を作成して蛍光、生物発光の測定を試みたが,共に変化は確認されなかった.しかし,下記のような系においては,分子の荷電状態により発光色が変化する現象を見出すことができた.1.caged ATPを用いてルシフェリン-ルシフェラーゼ反応による生物発光を起こさせると,caged ATPから放出された2-ニトロアセトフェノンによりルシフェラーゼの活性部位の荷電状態が異なり,通常の黄緑色ではなく赤色の発光を放出する.2.GFPに静水超高圧を印加すると分子の圧縮効果により蛍光ピーク波長が短波長側へシフトするが,IGPa付近では発色団から周囲のアミノ酸残基へ電荷が移動することにより,このシフトが相殺される.3.より単純なa-sexithiophene分子を様々に表面修飾したSi(001)表面上に供給すると,仕事関数の変化に呼応して分子から表面への電荷移動量が,そしてその結果としてπ→π*遷移のエネルギーが変化する.以上の結果は,もっと多量な分子を表面修飾したSi(001)表面上に供給できれば発光色の変化を観測できることを示しており,本研究の目的であった「荷電状態をチューニングすることにより光スペクトルを制御し、新規なバイオ光デバイスを開発できる」可能性を初めて明らかにしたものである.
著者
蒲生 重男
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学理科紀要. 第二類, 生物学・地学 (ISSN:05135613)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.1-21, 1991-10-31

Eleven specimens of serolids (Crustacea, Isopoda, Flabellifera, Se-rolidae) were collected by the Japanese Antarctic Research Expedition (JARE) from the Antarctic Sea during 1973-85. Examination of the materials has resulted in the finding of four known species, Serolis polita PFEFFER, S. pagenstecheri PFEFFER, S. (Ceratoserolis) trilobitoides EIGHTS, and S. (C.) meridionalis VANHOFFEN, Some brief notes and illustrations are given for the species.
著者
新飯田 宏
出版者
横浜国立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究では、まず不当廉売における不当性の評価基準として、(イ)資源配分の効率性、(ロ)企業行動の戦略的効果の2つの観点から理論的にアプローチすることを意図し、簡単な寡占モデルによって競争政策に適用可能なルールの導出を検討した。その結果、次の点が明らかとなった。(【i】)資源配分の最適性を保証するように、限界費用に価格を等しくするように価格を値下げしても、それが一時的な値下げである限り、何ら社会的厚生を増大させることはない。したがって、特定の廉価販売を単純な短期の価格・費用の関係から、不当廉売に関する判断基準を作成することは不可能である。(【ii】)不当廉売の問題で重要なのは、その廉売が相手企業の戦略行動を予想した長期にわたる動態的プロセスであり、戦略的最適化の問題である。そこで廉売を潜在的参入者の参入阻止と、相手企業のシェア拡大阻止を狙う行動としてみたとき、不当廉売の判断基準として、(1)価格は限界費用以下ではならない(限界費用ルール)、(2)価格は総平均費用以下ではならない(平均費用ルール)、(3)新規参入の後、既存の企業は参入前の産出量以上に生産してはならない(生産量制約ルール)の三つを理論的に検討した結果、社会厚生最大の観点からは、産出量制約ルール>限界費用ルール>平均費用ルールの順で望ましいことがを明らかとなった。しかし、不当廉売を行っている企業が周辺企業に印象づけている"評判"という"情報"としての機能を考慮すると、競争政策として比較的コストを少なく不当廉売規制を行うとすれば、何が望ましい政策かが次に問題となる。現実の不当廉売問題と上記の理論的な結果を併せ考慮すると、「すべての廉価販売をまず自由に認め、その上で資源配分の効率性を高めるように、原則として相当期間、廉売商品について元の価格以上に戻ることを認めない条件を付するのがよい」というのが結論である。
著者
中村 博之
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、現代企業の緊急課題とされる地球環境問題との対応で、いかなる設備投資を行うかの意思決定に際し、必要不可欠な予測要素である設備投資のキャッシュ・フロー予測の測定枠組みを検討することを課題とした。このため、環境については、管理会計のみならず環境工学との関連を重視したアプローチを試みた。それによれば環境工学的には、環境配慮のために、化学的研究を通じて排気物質の無害化や削減は可能となるが、そのことの経済性についての検討が非常に不足した状況にあることが判明した。そこで、設備投資の段階において、そのような有害廃棄物の放出が少なく、節電、省エネ型の設備の導入が今後ますます必要となることとその金額的効果の測定が必要なことは明らかである。このために、本研究では、理論構築に際し、企業実務の観察を並行したが、環境配慮という新たな目的を持った新型の設備投資が促進されていることが目立っていた。このことは日本のみならず海外調査先の先進国では顕著であった。しかしながら、日本企業の製造子会社ネットワークの重大拠点を形成する中国企業においては、法制度の影響もあってか日本ほどの導入状況ではなく、今後の課題となることが実感された。このような実務の対応状況を受けて、環境配慮設備投資のキャッシュ・フローをいかなる方法で行うことが適切であるかを継続的に研究してきた。従来の設備投資の効果とは異なり、この設備の場合、リサイクル促進や廃棄物処理コスト低減をもたらすという特長があるため、これらの数量化が不可欠である。このため、従来は、製造間接費の中に埋没していた環境配慮活動を行うことのメリットを、他のコストから切り分け、キャッシュ・フローとしなければならない。このために、本研究ではABC(Activity-Based Costing)により、環境関連アクティビティを抽出し、それをもとに広範かつ正確にキャッシュ・フローを予測する方法を明示した。これにより、設備投資がどのような環境関連アクティビティの節約をもたらし、それがキャッシュ・フローとして予測できるかという実践的な予測モデルを明らかにした。
著者
酒井 暁子 北川 涼 近藤 博史
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

丹沢山地の306ha集水域において、樹木の分布パターンは地形変数で説明され、大径木が主尾根に分布することと支尾根で小径木の本数が多いことにより、尾根周辺で地上部バイオマスが大きいこと、また樹種により多様な分布特性を持つこと等を示した。また南アルプスの亜高山帯で、地表の撹乱状況と対応した微地形構造に規定される樹種の分布パターンを明らかにし、山地帯渓畔林との類似・相違点を示した。
著者
蒲生 重男
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学理科紀要. 第二類, 生物学・地学 (ISSN:05135613)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-18, 1983-10-30
被引用文献数
1

1981年の夏に,白鳳丸(東京大学海洋研究所の研究船)によって行なわれた東北沖の日本海溝および附近海域の生物学ならびに海底地震調査に関する研究航海(1981年7月6日〜8月4日:KH-81-4)の折に,金華山の遙か東方沖の日本海溝の東側斜面のSt.11(KH-81-4),38°33.9'N.145°15.7'E-38°35.5'N,145°15.1'E,水深5350-5370mとSt.12(KH-81-4),38°33.3'N,144°19.4'E-38°35.4'N,144°20.3'E,水深6380-6450mにて4mビーム・トロールによって採集された資料中に,次に示す甲殻綱,等脚目,ミズムシ亜目に属する7種があった。Janirella(Janirella)aculeata sp. nov., J.(Parajanirella)sedecimtuberculata sp. nov.とAryballurops japonica gen. et sp. nev.の2新種,1新属・新種が認められ,他は次の4既知種J.(J.)tuberculata BIRSTEIN,1963,J.(J.)rotundifrons GAMO,1982,J.(P.)verrucosa BIRSTEIN,1971およびMesosignum latum BIRSTEIN,1970に同定された。これ等および極く近い関係にあると思われるものを含めた11種の分布はFig.1の様である。
著者
森下 信
出版者
横浜国立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本研究では,外部磁場に応答する機能性繊維の開発および可変流量バルブへの適用について検討を行った.平成14年度には中空糸の内部に強磁性体粒子を封入して磁場に応答する機能性糸の試作を行った.さらに糸を2〜5mmの長さに揃えて切断し,これを化学繊維の布に植毛することを試みた.まず第1の結果として,外部から近づけた磁石に吸引される糸ができあがり,外部磁場に応答することが確認できた.繊維の太さは数ミクロン程度であり,化学繊維としては太い部類に属するが,機械的な応用を考えると極めて細い.製作上の問題は粒子の大きさのばらつきにあり,粒子径が大きいと中空糸が切断される危険性がある.これらは粒子径の大きなものを除去することで対応した.化学繊維の布に植毛する過程では,一般的には静電気を利用することで同じ長さに切断した糸を垂直にたてて接着剤で固定するが,糸の比重が大きく布に対して垂直に植毛するのが困難であった.これに関しては専門メーカーの協力により毛足が2〜5mmの機能性布を試作した.平成15年度にはこのビロード状の布を流路に対して垂直に貼り付け,油圧作動油の流量を調整できる範囲を実験的に確認した.その際にせん断流れを主とする場合と,圧力流れを主とする実験装置を開発し,その比較も行った.その結果,最大10%の範囲で流量を調整することが可能であることが明らかになった.この値は機械要素として用いるにはまだ小さく,今後さらに制御範囲を拡大するために,繊維の材質,繊維の太さ,長さを変化させてさらに研究を進める予定である.この機能性繊維の特徴は,従来開発されている分散系流体と比較して,分散粒子のちんでんは考慮する必要がないことにある.その意味で,開発の第1段階は終了したものと判断している.
著者
門倉 正美 岡本 能里子 奥泉 香
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

国際語用論大会(2009)および社会言語科学会大会(2010)での発表、「リテラシーとメディア・リテラシー」シンポジウム(2010)の開催等によって、言語教育における「見て理解するviewing(ビューイング)」要素の重要性を強調することができた。特に、視覚表現(例えば絵や写真など)と文字表現が複合した意味表現の理解のあり方、つまり「視解+読解」という意味での「視読解」の探究の端緒を切り開くことができた。
著者
前田 雄介 杉内 肇
出版者
横浜国立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

人間はきわめて柔軟で器用なマニピュレーション能力を持っており,環境とのインタラクションを伴う物体操作(グラスプレス・マニピュレーション)においても,環境からの反力を巧みに利用して物体を操ることができる.このような人間の能力は移動知の発現と考えることができる.本研究では,人間の行うグラスプレス・マニピュレーションに着目し,その技能のモデルを求めることを目的としている.今年度は,グラスプレス・マニピュレーションの中でも二指のピボット操作に着目して研究を行った.具体的には,人間の操作の計測結果を参考にして,CPG(Central Pattern Generator)に基づくピボット操作の制御モデルを構築した.この制御モデルは,松岡のニューロンモデルを用いて,手首の運動に関わる3つのニューロンと指の運動に関わる2つのニューロンから構成されている.これを用いてハンドを制御することによって,リズムの引き込みによって物体のピボット操作が実現可能であること,床面の摩擦係数の変化にも適応可能であることを動力学シミュレーションによって確認した.また,人間の手の機能とマニピュレーション技能の理解のために,詳細な筋骨格系モデルに基づく人間の手のモデルを開発した.このモデルは24リンク・31自由度の骨格系モデルと35筋切片・73腱切片から成る筋腱モデルから構成されており,筋力に基づいて指の運動の動力学シミュレーションを行うことが可能であることを確認した.
著者
松原 宏之
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1930年代に成立するとされるアメリカ型福祉国家の起源を探るには、国内史だけでなく、網の目をなすトランス・ナショナルな人と情報の流通を1900年代から1910年代に遡って視野に入れねばならない。
著者
岡 泰資 須川 修身
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

横風の影響を受けた火炎形状,熱気流性状を把握するために,単一および複数火源を用いた模型実験を実施し,以下の事項が明らかとなった。(1)横風を受け下流側に傾斜した単一火源上の火炎の高さおよび傾斜角度を,発熱速度と横風速度の複合関数で表した関係式を導出した。さらに,火源規模および形状を変化させた実験結果を基に,無次元発熱速度で0.05<Q^*(Q^*rec)<12.75,さらに正方およびアスペクト比が1:6の矩形火源まで適用可能となった。(2)横風を受けた火災プリューム主軸の軌跡をロジスティック曲線で近似した予測式を提案した。さらに横風速度の影響を加味した形でこの軌跡に沿った移動距離と温度減衰の関係を表した関係式を提案するとともに,この温度上昇,外気速度および移動距離を変数として,主軸に沿った温度上昇と熱気流速度の関係式を導いた。(3)横風を受けた熱気流が作り出す温度場の結果を基に,温度で定義したプリューム幅を求め,火災プリュームの断面形状を実験的に明らかにした。さらにこの半値幅を用いて,火源から運ばれてきた熱と横風により上流側から運ばれてきた熱の和として火災プリューム内の温度分布が表現出来ることを示した。(4)2種類のCFDコードを用いて,有風下の火災プリューム性状の再現性を検討した結果,燃焼モデルの適用と火源への発熱速度の与え方を同時に工夫することで,連続火炎領域の高さや火災プリュームの主軸位置をある程度再現できたが,温度減衰性状は計算コードによる違いが著しく,また実測値と異なる結果となった。(5)有風下における複数火源からの火炎および熱気流性状に対して,模型実験の実験結果と比較することで,単一火源上に形成された火災プリューム性状に関する既存の予測式がどこまで適用可能であるかを検討した。
著者
塚本 修巳 雨宮 尚之 福井 聡 小川 純
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2002

交流損失を現状より1桁低減できれば高温超伝導の応用分野が大きく広がる.本研究はこのような観点に立ち,超伝導の微細構造における電磁現象の研究に基づき,線材,集合導体,巻線の各構造を互いに関連付けて統合的に交流損失の大幅低減を図る手法を研究し,高温超伝導を交流電気機器に応用するための要素技術を体系化することを目的とした.具体的な研究課題は,1.機器における磁気環境下での交流損失の評価法を確立すること,2.機器における電磁環境下での交流損失の大幅な低減手法を明らかにすること,3.ロバストかつ高い超伝導性能を発揮する巻線構成手法を明らかにすること,である.本研究の主な成果を下記に要約する.1.線材全交流損測定法:交流磁界下で交流通電したとき線材に生じる全損失の電気的測定法を開発した.熱的方法と同時に測定することにより,本方法の妥当性検証を行った.これにより,線材の交流損失測定法の確立をした.2.擬似ツイスト導体による磁化損失低減:斜にYBCO層を分割した2枚のテープ線材を張り合わせ,実質的に撚りの効果を得る方法,擬似ツイスト導体を提案した.これにより,分割数を増やすことにより交流損失を1桁以上減らすことが可能であることが示された.3.集合導体の損失測定法開発:我々の開発した集合導体の損失測定法により,非磁性基板Y系線材の場合,隣接線材の作る磁界により損失が単独通電時の値より1桁程度小さくなっていることがわかった.これにより,線材の並べ方により損失が大幅に減少することが示された.4.巻線の交流損失低減最適構造:高温超伝導テープ線材の損失データより交流損失を近似的に解析する手法を開発し,巻線の断面形状の最適設計方法を示した.5.Y系線材のクエンチ保護:Y系線材を用いたコイルのクエンチ保護のための導体の安定化設計法が明らかにした.以上により,上述の研究の目的はほぼ達成できた.
著者
水口 仁 千住 孝俊
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

「酸化物半導体の熱励起を利用した完全分解」に関して、以下に示す4項目の検討を行った。1.ディーゼル排気ガスに含まれるトルエン、ベンゼン、黒色粒状物質(PM)の完全分解。2.各種の酸化チタンのキャラクタリゼーションと最適酸化チタンの探索。3."酸素過剰下における完全分解"から発想を転換し、"酸素欠乏状態"でメタノールならびにメタンの部分分解による水素生成を達成。4.VOC等への応用を考慮すると、酸化物半導体の支持体への担持が要素技術となるので、粉体を電気泳動電着法により発熱体への担持する手法、ならびにアルミナボール上にチタンやスズが被覆された金属ボールの直接酸化で担持する手法を確立した。項目1のディーゼル排気ガスの完全分解はディーゼルエンジン対策のみならず、一般の有害ガス、悪臭等の浄化に極めて重要な技術となる。我々は流動床タイプの分解システムを使って、排気ガスの成分であるトルエン、ベンゼンの完全分解、ならびにPMの完全分解を達成した。この研究成果を実用化に結びつけるには、現行の粉体システムから粉体を支持体へ担持する方法が要素技術となると考え、項目4の担持方法の検討に入った。項目2のスクリーニングで選び出した最適酸化チタン(ST-01:石原産業(株))を泳動電着法でNi-Cr線のような発熱体に直接担持することに成功した。この担持法の優れた点は酸化チタンの熱励起に必要な発熱体がシステムに内蔵されていることである。さらに、最適な酸化チタンの特性を損なうことなく担持出来ることも大きな特徴である。また、TiあるいはSnを被覆したアルミナボールの直接酸化のメリットは、酸化物半導体層を簡便な手法で調製できることである。更なるメリットは本ボールを最蜜充填で配置しても常に26%の空隙率が確保でき、目詰まり等の心配がないことである。本研究で検討した担持化の手法は項目2で述べたメタノールやメタンの部分分解により水素を生成する際のシステムにも適用することができる。
著者
小林 憲正 奈良岡 浩 三田 肇 橋本 博文 金子 竹男 高野 淑識 VLADIMIR A. Tsarev
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

模擬星間物質に重粒子線などを照射して合成した「模擬星間有機物」と、炭素質コンドライト中の有機物を分析し、両者と生命起源の関連について考察した。模擬星間環境実験では分子量数千の複雑態アミノ酸前駆体が生成する。これが星間や隕石母天体中での放射線・紫外線・熱などでの変性により隕石有機物となったことが示唆された。原始地球へは宇宙塵の形で有機物が供給された可能性が高く、その分析が必要である。宇宙ステーション上で宇宙塵を捕集する条件を検討中である。
著者
渡部 匡隆 岡村 章司 大木 信吾
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、知的障害を伴わない広汎性発達障害児への包括的な教育支援プログラムの開発を目的とした。研究では、1.広汎性発達障害の心理特性とアセスメント方法の開発、2.広汎性発達障害児への指導プログラムの開発、3.広汎性発達障害児の関係者への支援プログラムの開発、4.広汎性発達障害児への教育支援システムの調査を行った。本研究により、学齢段階において主に通常学級に在籍する知的障害を伴わない広汎性発達障害児への教育支援プログラムを明らかにすることができた。
著者
鳥居 昭夫
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

不確実性のもとで模索をしなければならないとき、業務の一部を外部に委託することが、十分な合理性を持つことがある。業務の委託を効率的に進める上では、これまで考えられてきたようにインセンティブの供与に拘泥する必要は必ずしもない。電力産業においては特に、インセンティブ供与が与える戦略的効果を図ることが重要である。また、サービスの最終ユーザーが求める品質等が、業務委託契約の段階で十分に反映されるよう図ることが有効である。