著者
佐藤 俊 平野 聡 太田 至 河合 香吏 湖中 真哉 岡倉 登志
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

地域間の生態的,政治的,経済的,社会的,軍事的な諸要素の相互浸透的な相互作用は地域連環と定義され,在地の遊牧民が地域社会を自ら変容させつつ外的要因を選択的に取り込み,社会の持続性を維持するシステムを生活安全網と定義される。後者の概念はすぐれて地域社会に根ざすものであるが,複雑な地域連環を視野に入れてはじめて理解できるものである。1.遊牧生態系のGIS/RSによる解析:SRTM成果を標高値,DEMから計算された水系網の評価によって,基盤地図データの整備,地理情報の視覚化,自然環境のモデル化,遊牧民研究への応用が可能であることが検証された。2.地域社会の生活質リスクの解明:個々の遊牧社会が直面している問題のうち,家畜の略奪,市場経済化による社会的平準化機構の脆弱化,貧富の格差増幅による地域社会の変質,町場形成による牧野生態の劣化,就学と就労の増加による牧人不足と家計の多角化による家族構造の変化,伝統的政治体系と儀礼体系の変質などが,実証的資料によって明かにされた。3.地方的社会経済の広域的枠組みとその歴史的背景の解明:エチオピアでは,経済自由化によっても,社会的紐帯に制約された皮流通経路は開放されないことが判明した。ジブチのFRUD(ジブチ民族統一回復戦線)結成の背景,ならびに13〜15世紀のスルタン国家アファルに由来するアファル人のアイデンティティが文番資料によって明らかにされた。ケニアの政治的動向を,大統領の権限縮小,地方分権化をめざす現行憲法の見直し問題の経緯,国民投票(2005年11月実施)の選挙区党派別分布,憲法見直し問題とNARCの本格的分裂の3点について分析した結果,政党組織が意見集約機能を喪失して地域化していく過程が明らかとなった。今後の課題として,地域社会の生活安全網と地域連環を統合的に理解できるモデルを精緻化する作業が残されている。
著者
守屋 正彦 井川 義次 山澤 学 柴田 良貴 藤田 志朗 木村 浩 菅野 智明 程塚 敏明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

儒教は、日本では古代より受容され、中国を中心とした東アジアでの一大文化圏を形成してきた。儒教は地域特有の文化と融合もし、礼拝のあり方、また聖像やそれを荘厳する絵画・彫刻は、東アジアの、また日本の各地域に展開し、礼拝の「かたち」は、儀式のあり方、礼拝の諸像の形式や配置、また唱道する詩文や作法などに見られた。その表象について、本研究では東アジアのいくつかの孔子廟を調査し、地域間の文化の同一性と民族的な表現の相違について確認し、5年に及ぶ研究期間中に国際シンポジウムを開催するとともに、年次報告書を作成して研究成果を発信した。
著者
長谷川 敦章
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

昨年度の研究活動において,北レヴァントの海岸部であるシリア・アラブ共和国ラタキア県における遺跡踏査および測量調査を行った。これにより本研究の目的の一つである,調査対象が地中海沿岸の大規模テル型遺跡への偏重の是正を試みた。本年度の研究では,この成果を周辺地域と比較し位置づけていく調査・研究を実施した。特に本研究のねらいの一つである,先行研究で疎かにされてきた,内陸地域との関係に焦点をあてるため,以下の3地域で調査を行った。その一つは,ラタキア県の東に隣接する,北レヴァントの内陸部であるシリア・アラブ共和国イドリブ県のエル・ルージュ盆地である。当該地域では,テル・エル・ケルク1号丘遺跡の発掘調査を行った。本調査では,ラタキア県,ひいては該期の東地中海世界に極めて特徴的なミケーネ土器が出土した。この事例は内陸地域では極めて珍しく,ミケーネ土器の東限域を示す可能性がある。またこの成果は,これまで東地中海世界と隔離されて考えられがちであった北レヴァント内陸地域の歴史的位置づけに再考を促すものである。第2の調査は,ラタキア県の北側に位置するトルコ共和国アンタキア県における考古学的踏査である。この地域は北レヴァントを南北に流れるオロンテス川下流域であり,ラタキア県と比較する上で重要な資料を得ることができた。第3の調査は,ユーフラテス中流域に位置するテル・ガーネム・アル・アリ遺跡である。当該遺跡周辺は考古学的調査の空白地域であり,その成果は極めて貴重である。メソポタミア地域の西端にあたり,北レヴァントに影響を与えたメソポタミアの文化を考える上での一つのケーススタディになると考えている。東地中海世界に果たした北レヴァントの歴史的意義について再考するためには,上述した地域での成果を詳細に分析し,北レヴァントの歴史的重要性を内陸地域との関係性で捉え直し,歴史の再構成を試みる必要がある。
著者
設楽 宗孝 水挽 貴至 松本 有央
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

視覚認識視覚認識において確率共鳴現象がどのような条件で起こるかどうかを調べるために、サルに逐次型遅延見本合わせ課題をトレーニングするための実験制御装置を作成した。ここで、ノンマッチ刺激およびマッチ刺激、背景にはランダムドットノイズを加える。ノイズ量と視覚認識の反応の早さとの関係を調べるために、サルのこの課題のトレーニングを行っているところであるが、ヒトで予備的検証を行ったところ、5%ノイズ程度のところで反応時間が最も短くなり、ヒトでも同様のプロセスがあることが考えられた。
著者
川間 健之介 佐島 毅
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

重度・重複障害児42事例の学習場面における車いす座位姿勢について検討した。その結果、頭部、体幹、足底の安定が図られていない事例が多かった。ポジショニングの改善により視覚探索と上肢の操作性に良好な変化の見られた8事例について検討した。学校の授業における腹臥位姿勢の活用とキャスパーアプローチの適用について検討した。集団による授業場面でのポジショニングについて3つの授業において検討した。これらの結果から、狭い学習空間の構築、能動的な視覚探索と主体的な上肢の使用を促すポジショニングが有効であった。
著者
狩野 均
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、アントコロニー最適化法(ACO)で時間依存TSPを効率的に解く手法を開発した。この問題は旅行時間が変化するタイプのTSP であり、宅配便の配送経路探索問題に直接応用できる。渋滞が激しく変動する環境下で良い解を求めるためには、探索の高速化が必要となる。ACOのフェロモンの初期値の分布を探索における有効な知識(部分解)と見なし、これに偏りを与えることで、探索領域の削減を行った。また、予測交通量と再探索を組み合わせて性能向上を図った。TSP のベンチマーク問題、ならびに、現実の道路網と交通量データを用いた実験の結果、提案手法は解の精度を落とすことなく収束が早まっていることを確認した。
著者
荒木 淳吾
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.7-11, 2001-06

「当社を志望した理由を述べてください」このフレーズ何度見聞きしたことか。就職活動といえば、この質問(?)に必ず行き当たります。この単純な問いに対して、学生側は気に入られようとあの手、この手の策略を練り、就職へと挑みます。 …
著者
木越 英夫 北 将樹 早川 一郎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,抗腫瘍性および腫瘍細胞増殖抑制活性を持つ研究代表者独自の化合物であるアプリロニンA,オーリライド,ハテルマライド類の抗腫瘍性および腫瘍細胞増殖阻害活性の発現機構に関する研究を行った.アプリロニンAについては,人工類縁体(ハイブリッド化合物)を合成し,その生物活性を検定した.オーリライドについては,その標的分子がプロヒビチンであることを確認し,活性発現機構を解明した.ハテルマライドについては,その人工類縁体を調製し,構造活性相関を得た.
著者
望月 昭彦 久保田 章 磐崎 弘貞
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

2003年度に公立中学校において、2年生の3クラス合計134名を対象として、9月中旬から11週間、実験前に熟達度テスト、プリ英作文、作文に関する意識調査を実施した。教育上の配慮から、統制群を設けず、一貫性のある文章の書き方について全員の生徒に指導した。その後、指導法1「文法的誤りを気にせず、一貫性、構成に注意して書かせる」、指導法2「思いつくままに制限時間内に多く書くことに注意して書かせる」、(1、2は各15分間)、指導法3「英語の文章を黙読させ、その内容をまとめて口頭でペア活動で発表した後に、個別に書かせる」(25分間)の3種類の指導法に分類し、同中学校の3人の教師が各々のクラスの指導を6回実施した。生徒の作文答案を研究者が採点し翌週に宅急便で返送した。実験後に、実験前と同じ調査を実施した。2004年度は、国立の高校2年生4クラスを対象として、4月上旬から12週間、統制群を1クラス設けたことを除いて前年度の中学校と全く同様な手続きで実験を行った。分析尺度として、内容の一貫性のために、望月・久保田・磐崎(2004(青木(1991)の改良版)の分析法、総口評価法の7つの指標、文法的正確さのために、EFT等12個の指標、作文の量のために、語数等9個の指標、文法的複雑さのために、T-unitの数等4個の指標、語彙の複雑さのために、洗練語割合等の7個の指標を使用した。中学校の分析結果は以下の通り。仮説1「内容の一貫性に注意して書かせた指導法1は、内容の一貫性の点で、指導法2,指導法3より、優れている」について一部支持された。仮説2「内容の一貫性に注意して書かせた指導法1は、文法上の正確さの点で、指導法2、指導法3より、優れている」は支持された。仮説3「ただ多く書かせた指導法2は、指導法1、指導法3より、作文の量が多い」は支持されなかった。仮説4「指導法1,2,3は、それぞれ、作文指導を受けるにつれて、それぞれの被験者は、文法構造上、複雑な文を作るようになる」は支持された。仮説5「指導法1,2,3による作文指導を受けるにつれて、それぞれの被験者は、より豊富な語彙を使うようになる」は、一部支持された。研究質問1「内容の一貫性、文法的正確さ、作文の量、語彙の豊かさの各々の点で、指導法1、指導法2、指導法3のうち、どれがどれが最も優れているか」については、一貫性及び文法的正確さでは指導法1、作文の量は全ての指導法、語彙の豊かさでは指導法3が最善だった。研究質問2「作文の能力・技能と熟達度はどのような関係があるか」について総合的な指導法が熟達度と総合評価の相関が高い。高校については、仮説1,2は、支持された。仮説3は一部支持され、仮説4,5は、支持されなかった。研究質問1は、一貫性、文法的正確さ、作文の量は指導法1が最善,語彙の豊かさはどの指導法もあてはまらない。研究質問2は全体的に熟達度と一貫性、作文の量、文法的複雑さとは相関が低いか殆ど相関がなかった。
著者
松本 肇
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、孟郊と賈島を例に、唐代の「悲愁の文学」の実態を明らかにした。研究成果は以下の通りである。1、孟郊の文学(1)孟郊は、賢者を処罰する詩を書いている。それは自己の正しさを証明する逆説的な方法であり、孟郊の自虐的な態度を表わしている。(2)孟郊は、困窮を詠じる詩を書いている。そこには、悲愁を楽しむ態度が見られる。悲愁を快楽にまで高めたのが、孟郊の功績である。(3)孟郊の文学は、悪意の文学という性質を持っている。孟郊は、幻想の中でも死を求めた。(4)孟郊は、詩作によって反世界を創造した。それは、天に対する反逆行為である。反逆者には代償が求められる。孟郊が詩という牢獄に自己を閉じこめたのは、自己を処罰したのである。2、賈島の文学(1)賈島の詩には、たとえくじけても望みを捨てない、不屈の精神が表われている。(2)賈島は、廃墟の美を詠じた詩を書いている。中唐期には、盛唐期には見られない新しい美意識が生まれた。廃墟の美を詠じるのも、そのような美意識の反映である。(3)賈島には、病気を詠じた詩がある。病気は、中唐期の知識人のシンボルである。このような文化現象の背景には、「休息」への願望があった。(4)賈島の詩には、微少な世界を詠じるものがある。それは、杜甫の影響を受けたのである。杜甫は、中唐文学の先駆者である。3、孟郊と賈島杜甫以後、詩を作ることに価値が認められるようになり、詩人として生きることが、知識人の目標となった。孟郊と賈島は、このような時代に生まれ、詩人としての人生を全うした。宋の蘇軾は、孟郊と賈島の文学を「郊寒島痩」と批評した。それは、彼らを非難したのではなく、彼らが世界を驚かす言葉の創造者であることを賛美したのである。
著者
近藤 文代
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は重大事件ニュースがPOSデータに表れる消費者の行動に与える影響を測定することである。消費者の行動の記録を重大事件に関連した商品の売り上げと捉え、それと報道との関係についてPOSデータを使用してARIMAモデルによる干渉分析を行い、統計的に有意なBSE問題のニュースの影響を確認することができた。さらに、地域差をモデル化するために、階層ベイズ手法によるBayesian Sampling-based ARMA モデルを構築し、モデル間でのPOSデータ分析の比較を行った。
著者
山口 佳樹
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

モジュール毎に分割した回路を動的かつ部分的に書き換えることで、回路量の削減および耐故障性が実現できることを確認した。対象アプリケーションにもよるが、時間方向にモジュールを分割実装することで最大40%程度の回路の削減が可能であった。また、これを利用して回路冗長性を高効率に実現することも可能となった。アプリケーションに特化した構成だけでなく、組込み用マイコンなどの一般的な回路についてもFPGAを使用して検証を行いその有効性について実証した。
著者
宮崎 佳子
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

【研究目的】耳や目などから入る情報が皆無に等しい盲聾二重障害生徒は、指導内容および、周囲の状況説明を含む授業内容のすべての伝達を、通訳介助者の『視覚及び聴覚に頼らない様々な手段』(例えば、触手話、指文字、指点字、身体への接触による合図)によって行っている。通訳介助者は授業者と連携し、盲聾生徒と授業者、生徒同士のコミュニケーションを補償しながら、指導内容と言葉をピタリと呼応させるという重要な使命を持つこととなる。「家庭科教育」を例として、効果的な通訳方法、指導方法の検討をすることによって盲聾二重障害生徒の社会生活スキルを高め、社会生活の自立支援を図ることを目的とする。【研究方法】(1) 家庭科の授業内容が理解できているかについて、生徒と通訳介助者両方の聞き取り調査を行い指導内容、通訳内容を検討する。(2) 授業の内容を生活の中に実践的に反映させている、またはしようと試みているか生徒と通訳介助者両方の聞き取り調査を行う。(3) 授業の内容を生活の中に実践的に反映さるために通訳介助者にどんな援助依頼をしたか、またはできるようになったかの変化を生徒と通訳介助者両方の聞き取り調査をおこなう。【研究成果】(1) -1授業者と通訳介助者の打ち合わせを行うことにより授業中に生徒が理解していなかった言葉や概念をその都度ピックアップできそれを後日指導し強化することができた。(1) -2生徒の理解度を知ることは聞き取り調査だけでは困難である。授業内容を応用した実践的課題(例 親子丼の調理をする、地域の消費者センターのについて調べてくる、など)を出しそのレポートから理解度を得ることが有効である。(2) 授業内容を実践した事例(家庭での食品の購入、調理、陸上大会の身支度、海外旅行時の荷物のパッキング、など)を介助者または生徒から調査できた。(3) 授業内容を応用した実践的課題をこなすために通訳介助を依頼する際に以下の変化、成長があった。1. 通訳介助者の依頼内容のコーディネートを生徒自信でメールなどを通じて行うようになってきた。2. 課題に適する通訳介助者を複数の中からを選ぶようになってきた。3. 援助依頼の内容を適切に伝えることが出来るようになってきた。
著者
安藤 邦廣
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1金沢市湯涌の茅場(カリヤスモドキ)と茅葺き技術石川県金沢市湯涌のメガヤと呼ばれるカリヤスモドキの茅場の現地調査を行い、その利用体系を明らかにした。また、標高の高い地域にカリヤスモドキが自生しており、それを利用して近年まで屋根が葺かれていた。これまでカリヤスの類いは、白川郷や五箇山のようなごく限られた山村でのみ使われてきた材料と考えられていたが、北陸や信越の比較的標高の高い地域に広く分布する材料であることが明らかになった。2岐阜県宮川村種蔵集落における茅の利用体系岐阜県宮川村種蔵集落における茅の利用体系について現地調査および聞き取り調査を行った。その結果、この地域では、民家はすべて茅葺きであり、養蚕業の隆盛とともに、屋根裏空間の拡大が見られた。その後、昭和初期に養蚕業から農耕馬の飼育貸し付けに生業が変わると、茅の利用は農耕馬の飼料にむけられ、屋根はクリの木羽葺きに変わった。その際に屋根裏は養蚕の蚕室としての拡大されたときよりもさらに冬期間の飼料の保存場所として拡大され、クリ木羽葺きの三層構造の民家に変遷した。3岐阜県山之村のコウガイ棟岐阜県山之村のコウガイ棟の現地調査および職人への聞き取りを行った。コウガイ棟は、白川郷や五箇山の合掌造りとその下流域から能登半島にかけて分布すると考えられてきたが、岐阜県の山間部全域にその分布が広がっていることが分かった。4能登の炭焼き小屋における逆葺き技術能登に現在もつくられている炭焼き小屋の現地調査と聞き取り、逆葺きの技術体系を明らかにした。5 田麦俣の甲造りの多層民家山形県田麦俣の多層民家の甲造りの茅葺きの現地調査を行い、道具、材料、葺き方の詳細を明らかにした。
著者
坂本 瑞樹 徳永 和俊
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

水素透過粒子束の実時間測定システムを製作し、厚さ0.1mmのタングステン試料に重水素プラズマを照射して、試料表面状態の変化に起因していると考えられる水素透過フラックスの減少を観測した。また、厚さ0.1mmのタングステン基板に約280nmのイットリウム薄膜と約20nmのパラジウム薄膜を蒸着させた試料を作成し、試料表面への水素導入に対して光反射率が可逆的に変化することを示した。水素透過フラックスシステムとの組み合わせにより実時間の動的リテンション計測が可能となることを示すことができた。さらに、結晶粒の延びの方向が表面に対して垂直のタングステン試料の重水素吸蔵量は、平行の試料よりも重水素吸蔵量が2~10倍高いことを明らかにした。これは結晶粒界を通した実効的拡散係数の違いに起因していると考えられる。
著者
村田 芳子 寺山 由美 細川 江利子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、学校体育における「表現運動・ダンス」の学習内容について、その理論的な枠組みを検討するとともに、児童を対象とした題材調査と教員を対象とした実施調査を通して発達段階に対応した学習内容の選定と配列の試案を作成し、小学校及び中学・高校の授業実践を通してその妥当性を検証した。本研究は新学習指導要領の改訂とその実施に向けた時期と重なる中で、それに対応した先駆的な実践研究として高い関心を得るとともにその啓発に大きな成果をもたらした。
著者
浜名 恵美
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

異文化主義(interculturalism)および異文化パフォーマンスに関する問題点を重点的に検討し、異文化パフォーマンスの実地調査、国内外の関連学会への参加と研究者との意見交換、インターネットを含めた情報収集、映像資料分析、文献調査、国内外で発表された論文および口頭発表をとおして、相互理解促進に資する上演のヒントを見出すと同時に、今後のシェイクスピア演劇の異文化パフォーマンスのあり方に有意義な提言を行なうことができた。
著者
芳賀 紀雄 三木 雅博 村田 正博 新間 一美 内田 賢徳 小島 憲之 栗城 順子 内田 順子
出版者
筑波大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

当該研究の中心であり,初の試みでもある島田忠臣の漢詩集『田氏家集』(全3巻)の注釈は,昭和63年度に,巻之上の69首について,小島憲之の指導,芳賀紀雄のとりまとめのもとに,当初の実施計画通り,分担執筆が完了した。また,巻之中の60首についても,平成元年度に原稿を整えた。その成果は,『田氏家集注』と題して,『巻之上』は平成3年2月,『巻之中』は平成4年2月に出版した。さらに,『巻之下』の84首についても原稿の完成を目指しており,平成6年2月に出版の予定である。注釈と並行して作業を進めた『田氏家集』の索引作製は,昭和63年度に完成し,『田氏家集索引』と題して,平成4年2月に出版,また,紀長谷雄の作品集成・本文校定および索引作製も,実施計画通り平成元年度に完了し,『紀長谷雄漢詩文集並びに漢字索引』と題して,平成4年2月に出版した。一方,平安朝前期に至るまでの漢文学に大きな影響を及ぼしたと見られる唐鈔本『翰林学士集』『新撰類林抄』については,本文校定・翻刻ならびに索引作製を平成元年度に完了し,『翰林学士集・新撰類林抄 本文と索引』と題して,平成4年2月に出版した。研究期間中,月に一度ないし二度開いた定例の研究会における研究発表のうち,平成元年度までに執筆の準備がなされ論文として公にされたものは,別記「11」の11篇である。