著者
丹羽 隆介
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

多細胞生物が適切に発生して大人になるためには、未成熟なステージから成熟に向けて決まったタイムスケジュールに沿って段階的に成長する必要がある。本研究代表者はモデル動物である線虫Caenorhabditis elegansを用いて、幼虫から成虫へのスイッチングを正に制御するlet-7マイクロRNAに着目し、let-7経路に関わる新規遺伝子を探索した。その結果、進化的に保存された核内受容体遺伝子nhr-25が、幼虫から成虫への発生運命のスイッチングに重要な役割を果たすことを証明した。
著者
船越 祐司
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

リン脂質キナーゼPIP5Kは、PIP2の産生を介して多様な生理機能を発揮する。PIP5K にはα、β、γの三つのアイソザイムが存在する。先に研究代表者の属する研究室ではPIP5Kの活性化因子として低分子量Gタンパク質Arf6を同定しているが、本研究では各アイソザイム特異的なArf6による活性化を検討し、PIP5Kγに固有のN 末領域が分子内マスキングによりArf6による活性化を調節するというユニークな制御機構を明らかにした。
著者
植田 宏昭
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成17年度では、熱帯アジアモンスーン地域での気候変動について、日変化・季節変化・年々変動さらには地球温暖化を含む長期変動スケールの研究を行った。使用したデータは客観解析データ(GAME再解析,NCEP,ERA40)、衛星リモートセンシングデータ(TRMM,NOAA)などで、大気海洋結合モデル、海洋1.5層モデルなどの数値モデルと組み合わせて包括的な研究を実施した。個別の成果は下記の通りである:1)IPCC-AR4にむけた複数の地球温暖化数値実験(排出シナリオはSRESA1-B)の結果に基づき、モンスーン降水量の将来変化とその要因について、モンスーン強度、熱帯循環、水蒸気収支などの観点から調査した。解析には8つのモデルを用いた。地球温暖化時には日本を含むモンスーン域の降水量は広域で増える傾向にある。しかしながらモンスーン西風気流は弱くなっており、パラドックスが生じている。この理由として、モンスーン域への水蒸気輸送の増加の寄与が明らかとなった。2)ERA40、NCEP/NCAR再解析データを用いて、インドシナ半島における非断熱加熱の時空間構造とトレンドを調べた。インドシナ半島ではモンスーン期間の始まりと終わりの年2回、積雲対流が多雨をもたらす。雨は春よりも秋に強まる傾向があるが、いづれも風が比較的弱く東側からの水蒸気フラックスの流入がある時期であった。対照的に風が強い7〜8月には地面からの蒸発が顕著であった。どちらのデータを用いても気候学的な特徴は同様に見られたが、トレンドに関しては一貫性のある結果は得られていない。この原因のひとつにはモデルに含まれるバイアスが考えられる。3)インド洋の海面水温はENSOの影響を強く受け、全域で昇温することが知られている。一方、ダイポールモードと呼ばれる東西非対称の海面水温(SST)偏差の発生が指摘されるようになり、ENSOとは独立した存在だと考えられていた。我々は大気海洋結合モデル(CGCM)にEl Ninoの海洋温度を季節を変えて挿入するという実験を行い、夏にEl Ninoが現れた場合は東西非対称海面水温偏差を、一方秋に現れた場合は全域昇温することを証明した。このことからこれらの海面水温偏差の発生にはモンスーン循環とENSOの影響の季節的な結合過程が主因として考えられる。
著者
松本 明日香
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

まず、1976年米国大統領選挙に関して、昨年度収集した米国公文書館の外交文書などをもとに分析結果の一部を論文「フォード大統領東欧発言の形成過程-1975年ヘルシンキ協定と1976年米国大統領テレビ討論会から-」として纏めて『国際公共政策』に上梓した。次に、比較対象として、1960年米国大統領選挙の第4回キューバ侵攻計画を扱うために、アイゼンハワー大統領とニクソン大統領図書館にて調査に行った。二者における関係性を平成24年6月には『アメリカ学会』にて「公開討論会と外交機密-1960年第4回、1976年第2回米国大統領候補者テレビ討論会の対照比較-」と題して報告することが決定している。最後にこれまで研究してきた政治テレビ討論会をベースに米国の状況をより客観的に分析するために各国制度比較を行っている。NHKアーカイブスにおいて、日米の討論会を比較検討する『政治テレビ討論会と国家指導者像の変遷-日本党首討論会と米国大統領討論会』の研究を進めている。これまでの資料館調査を元に、平成24年4月24日に『日本アーカイブズ学会』で「テレビ政治討論会のアーカイブズ-日・英・米を比較して-」を報告することになっている。また政治スピーチの分析手法を精査するため、これまでの質的に分析に加えてコーパスによる量的分析も行った。自然言語処理を専門とする吉田光男との共同研究を行い、『日本政治学会』において「国家指導者のTwitterレトリック-バラク・オバマと鳩山由紀夫の対照比較-」のポスター報告を行った。これまでの質的分析をある程度裏付ける結果を出すことに成功した。さらにこれまで扱ってきたテレビと、近年のウェブにおける政治言説の差異と継続も吟味できた。
著者
王 碧昭
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

腎臓の発生は他の臓器と異なり、二つ別×の始原から出発、其々尿管と糸球体を生成する。この二つの始原の相互作用は異なる基質段階を経て、最後にネフロンを構成する。本研究は、腎臓発生期に発現する複数のコラーゲンを中心とし、損傷細胞の再生環境を築くことを最終目標とする。そのため、細胞が再生する際、細胞と足場が緊密付着よりもダイナミックな付着することに着目し、発生期の外的環境を模倣し、基底材料をV型-IV型コラーゲンで重層する。腎糸球体細胞が時間的に基質から付着、脱着を可動化し、空間的に凝集して、糸球体を形成することを目的とする。本年度の研究は、以下の点を明らかにした。(1)マウス発生期(胚性E11,E13,E15,E17)の後腎組織を其々取得し、コラゲナーゼ処理後、腎組織をV型コラーゲン再構成繊維上で培養する。V型コラーゲン繊維が発生腎臓に及ぼす影響を、免疫染色、共焦点顕微鏡観察とタイムラプスで観察した。その結果、V型コラーゲンは培養した後腎において、帯状高次構造を形成し尿管芽先端に巻きついていることを明らかにした。また、培養後腎は、V型コラーゲン繊維の足場情報により、後腎間充織中で閉鎖血管構造を形成することも明らかにした。(2)胚性期各時期のマウスの後腎組織をコントロールとして、組織取得後、すぐに凍結、切片化、各発生期におけるV型コラーゲンの局在とIV型コラーゲン、フイブロネクチンなど、V型コラーゲンからバトンタッチされる次環境ECMの局在を調べた。その結果、V型コラーゲンは発生後腎成長面に近い未成熟糸球体に局在、逆にIV型コラーゲンは発生後腎内部の成熟糸球体に局在、ECMバトンタッチが行われている。(3)アダルトの腎疾病モデルマウスから腎臓を摘出、mesh seiving法により、糸球体を取得する。V型コラーゲン繊維内で糸球体を培養してから、発生期の胚性腎臓と共培養する。その結果、アダルトの糸球体が発生腎の尿管芽先端に付着、融合することが可能となった。共焦点蛍光顕微鏡で観察した結果、発生期後腎尿管芽先端にアダルト進級態が近づくと、間充織細胞を巻き込んだシャープなV型コラーゲン繊維が尿管芽先端を糸球体間に形成されることを認めた。これらの結果より、V型コラーゲンが超高次構造ECMを介したcell-ECM-cell間相互作用を緩やかに誘導し、腎発生における基調ECMとして働き、毛細血管組織である腎糸球体と尿管芽との融合を助長するECMであることが明らかにした。
著者
山田 恭央 間渕 利明 境 有紀 山越 隆雄 八木 勇治 松島 亘志 庄司 学
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、大規模斜面災害に対する予測精度向上を目指して(1)最新の国土基盤情報データベースを導入した解析支援システムの構築(2)高精度な強震動予測手法の開発(3)地盤の飽和度が斜面流動に及ぼす影響の検討と(4)降雨による集水地形評価・危険斜面の簡易抽出・斜面崩壊危険度および流動範囲予測を組み合わせた多段階斜面崩壊・流動シミュレータの開発(5) 斜面崩壊危険度を地震動特性から予測する被害関数の構築、および(6)斜面崩壊に伴う道路インフラ等の被害の類型化と被害関数の構築を行った。
著者
小田 竜也 柳原 英人
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

磁性ナノ粒子を腫瘍に集積させ、外部から照射する交流磁場による誘導加熱で癌を焼灼する新規治療の実現を目的にした。コバルトなどの生体に有害な金属を添加せずに高効率に発熱する、棒状の磁性ナノ粒子(DINP)の開発に成功し、国際特許出願した。血管内投与する磁性ナノ粒子のステルス化、iRGDペプチドの同時投与による腫瘍集積増強は十分な効果を得られなかった。DINPを腫瘍に直接注入し、交流磁場照射により腫瘍を完全に焼灼する事には成功し、新たな電磁誘導癌焼灼治療性の可能性を示せた。
著者
樋口 篤志 近藤 昭彦 杉田 倫明 機志 新吉
出版者
筑波大学
雑誌
筑波大学農林技術センター研究報告 (ISSN:09153926)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.19-32, 1999-03

水田は農業的な側面のみだけではなく、モンスーンアジアを代表する土地被覆という観点から、水文学的・気候気象学的側面でも重要な土地被覆である。また、リモートセンシング技術は非接触で地表面の状態を連続的にモニターできる唯一のツールである。本研究では水田の大気-陸面過程のより深い理解のために、地表面フラックスと分光反射特性の連続的な観測を行った。地表面フラックスはボーエン比熱収支法を用いて算出し、分光反射特性に関しては近赤外波長域まで撮影できるビデオカメラを用いて"面"的な観測を行った。結果は以下に要約される; 1)地表面フラックスは、日変化レベルでは成長期には有効エネルギーの多くを水体の貯熱量変化に使われ、成長後はそのほとんどが顕熱に消費されていた。 2)地表面フラックスの季節変化では、稲キャノビーの成長期に有効エネルギー(Qn=Rn-G:RnとGはそれぞれ正味放射、地中熱流量)中、顕熱(IE)に消費される割合(IE/Qn)に明確な上昇傾向がみられ、"Ageing effect"(植物体の成長期の違いによって気孔コンダクタンスが変化する)に伴う、植物生理学的な要因が影響していると考えられた。 3)分光反射特性の季節変化は、近赤外波長域のそれはアルベドのそれに類似し、赤色域は成長初期に減少、収穫期に増加傾向が認められた。植生指標の季節変化は稲の活性度を比較的反映していた。
著者
阿部 正子 中島 通子 宮田 久枝
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は女性不妊症患者と自然妊娠女性の生活習慣を比較検討し,女性の妊孕力を予測するアセスメント指標ならびに妊孕力に影響を及ぼす予測因子を探索することであり,この成果を活かし看護介入プログラムへの示唆を得ることにある。そのために平成20年度は質問紙調査の実施および分析を行った。調査期間は平成20年7月〜平成21年2月,調査票は関東および関西の不妊治療クリニックならびに総合病院産婦人科に受診している妊婦700名に配布し615部回収した(回収率87.8%)。調査内容はフェースシートとして年齢,職業,妊娠前の体重や体温,不妊治療の有無などを尋ねた。妊孕力を左右する変数としてダイエットの経験,嗜好品の摂取状況の他に生活習慣,食習慣等39項目を採用し,(1)高校(18歳)まで,(2)高卒後〜結婚,(3)結婚〜妊娠,(4)現在の各時点での経験頻度を4段階で測定した。分析はSPSSver.15を使用し,記述統計と多重ロジスティック回帰分析でステップワイズ法による変数選択を行った。対象の年齢は29.8歳(SD5.0),今回の妊娠が不妊治療による者は73名(11.9%),自然妊娠は537名(87.3%)であった。今回の妊娠が不妊治療による妊娠であることに有意に関連を示したのは次の7変数であった(Hosmer Lemeshow検定x2(8)=5.89,p=0.66)。結婚年齢(オッズ比:OR=1.1,95%信頼区間(CI):1.02-1.22),月経困難症の既往有(OR=12.6, 95% CI=1.16-137.74),クラミジア感染症の既往有(OR=5.9 ,95% CI:1.68-20.77),月経不順の班往有(OR=2.8, 95% CI:1.17-6.77),過去に不妊予測有(OR=O.85, 95% CI:0.25-0.29),高卒後から結婚までの間にジュースなどの清涼飲料水を毎日飲むかについて「その通り」と回答(OR=2.0, 95% CI:1.31-2.91),結婚後から妊娠までの問にイライラしたときにおやつを食べることが多いかについて「その通り」と回答(OR=0.7, 95% CI:0.52-0.98)。以上よりライフコース選択や性の健康へのセルフアウェアネスの強化の重要性が示唆された。なお,上記の結果には関連の向きについて解釈の困難なものがあり,今後より詳細な検討が必要で壷ると考えられた。
著者
塚原 伸治
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、老舗の生成・持続について分析することで、商家の存続の仕組みを、家の内部だけではなく世間という外部との関係性のなかで明らかにすることにある。具体的な作業としては、千葉県香取市、福岡県柳川市、および滋賀県近江八幡市という伝統的都市において、自営業者に対する聞き取り調査および資料調査を中心としたフィールドワークを実施した。フィールドワークにおいて得られたデータをもとにした商慣行および経営戦略の分析から「信用」を生みだす商いの形態を明らかにし、町内や近隣、マチの人びととの関係のありかたから家格維持の方法および、家の連続性を示す方法を明らかにした。その結果、商家が家/店の評価を操作することで安定的な評価を得るための戦略を選んできたこと、また、その評価は社会的な価値体系に基づいた土着的なものであることを明らかにした。一方で、その価値体系は商家の経営戦略にとって桎梏となり、自由な選択の幅を狭めてしまう傾向にあるような事例についても明らかにした。このことで、家業経営という面から事象を扱ってこなかった民俗学の経済研究における新たな領域を開拓し、そのための基礎的なモデルを提示した。地域社会の論理を重視して対象を扱うという民俗学の特徴を生かして家業経営者を理解することで、民俗学が当該分野の研究に参画する意義が明らかになった。その成果の一部は、学術論文(2011「豪商の衰退と年齢組織の成立」『史境』第62号)や学会発表などにおいて発表された。
著者
井田 哲雄 南出 靖彦 MARIN Mircea 鈴木 大郎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ウェブソフトウェア検証の事例研究として, WebEosの核となる部分の形式化と検証を行った.幾何と代数の基本的な部分にMathematicaの計算結果を援用することで, 効率的な検証が可能となった.文字列解析による検証において, 正規表現マッチングの正確な解析を可能とした.また, データベースとの連携の解析を導入し, 蓄積型XSS脆弱性検査を実現した.ポジションオートマトンを利用した正規表現の貪欲マッチングアルゴリズムの設計と実装を行った.
著者
松井 豊 望月 聡 山田 一夫 福井 俊哉
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

惨事ストレスへの耐性に関するプロアクティブな予測を行うために、消防署に配属された新人消防職員を対象にして、1年の間隔をおいて、心理検査・神経心理学的検査・脳科学的な検査を継時的に行った。2回の検査を受けたのは、消防職員7名と対照群として男子大学生2名であった。各神経心理検査得点について,大学生と消防職員を比較するために,Mann-Whitney検定を行った結果,各神経心理学検査得点には有意な差はみられなかった。職場配属から検査実施までの間で,衝撃をうけた災害へ出動経験があった消防職員が存在したので,被災体験があった消防職員(N=4)と被災体験がなかった消防職員(N=3)の神経心理学的検査得点を比較するために,Mann-Whitney検定を行った。その結果,Tapping Span(逆)に有意差傾向がみられ(p=.057),被災体験があった消防職員は,被災体験がなかった消防職員よりも得点が低かった。Tapping Span(逆)以外の神経心理学的検査得点には,被災体験による有無により,有意な差はみられなかった。また、効率的な検査実施のために、タブレット方パソコンを使って、検査過程を自動化するソフトの開発も行った。なお、研究協力者のスケジュールの調整がつかず、平成23年5月に検査が延びたため、研究終了が延期された。
著者
多田野 寛人
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題では,複数本の右辺ベクトルをもつ連立一次方程式を解くためのBlock Krylov部分空間反復法の高速・高精度アルゴリズムの研究を行った.本研究課題を通してBlock Krylov部分空間の安定化手法を開発し,同法の計算量削減による高速化を行った.開発手法を素粒子物理学分野の格子QCD計算に適用し,有効性を確認した.
著者
高根沢 均
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

サンタニェーゼ・フォーリ・レ・ムーラ聖堂(ローマ、7世紀初頭創建)について、2003年10月から現地の建築調査を実施してきた。本年度も2006年10月に現地を訪れ、約2週間にわたって同聖堂の実測と細部写真記録を行った。実測調査では、トータルステーションによる精密測量を行い、図化を進めている。また並行して文献収集を行うとともに、ドイツ考古学研究所にて初期教会堂建築の碩学であるブランデンブルク教授を訪問し、貴重な意見と示唆をいただいた。実測データ等については、図化・整理を行い、考察を進めている。本年度は、サンタニェーゼ聖堂の建築的特徴と建築部材の配置計画について、学会誌に論文を2本投稿し採用受理されている。これらは、本研究の重要課題である階上廊の機能について検討したものであり、新しい知見を得ることができた。また、イタリアでの研究報告のため、イタリア語の報告書の作成を進めている。2006年11月には、日高健一郎教授(受入研究者)のハギア・ソフィア大聖堂(イスタンブール、537年創建)学術調査に参加し、ドームつきバシリカ式建築の代表例である同聖堂の建築細部の特徴を確認した。また、同じくユスティニアヌス帝建立のハギア・イレーネ聖堂(6世紀初頭創建)を訪れ、細部の写真記録を行った。2007年1月にはテッサロニキとローマで目視調査を行った。テッサロニキでは、古代末期のドーム建築であるハギオス・ゲオルギオス聖堂(4世紀初頭創建)と、初期キリスト教時代の階上廊付バシリカであるアヒエロポイエートス聖堂(5世紀創建)において、細部の写真記録を行った。今後、日高教授が2007年度に実施する方向で準備を進めている建築調査に、一員として参加する予定である。またローマでは、初期中世の教会堂の目視調査を実施し、再利用部材と建築空間の機能との関係について、サンタニェーゼ聖堂での考察の検証を行った。
著者
小野里 美帆
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

平成12から13年度までの基礎研究、実験的支援研究をもとに、自閉症幼児に対する包括的なコミュニケーション指導プログラムの作成及び実験的支援を行った。これまでの研究から、自閉症児は、発達初期から相互伝達系(他者と関わること自体が目的化される伝達)や「会話」に顕著な困難性を示し、それが他者意図理解の困難性と密接に関連していることが明らかにされた。そのため、「会話」と構造的類似性をもつ原初的行動であり、かつ自閉症児にとって獲得が困難である「相互性の獲得」、すなわち相互遊び(ボールのやりとり、イナイナイバー等)の習得を目標として、「フォーマットの理解」、「自他同型性の理解」、「伝達効果の理解」という相互伝達系の下位構成要素を設定し、先行研究による発達過程をもとに、プログラムを構成した。自閉症児1名R児に対する支援を行った結果、第1期:「働きかけへの応答:共同行為への参入」(道具的他者としての認識)、第2期:「自発的な働きかけ:共同行為の成立」(行為主体としての他者認識)、第3期:相互性の獲得:というプロセスを経てターンを伴う相互遊びやルール遊び、言語や視線による要求を習得した。支援直後には、直接的に支援を行っておらず、自閉症児にとって非常に獲得が困難である提示行為と言語による叙述(3ヶ月後)が生起したことから、作成したプログラムの一定の妥当性が示唆された。
著者
田島 裕 フェンティマン R.G. ミラー C.J. ダイヤモンド A.L. ライダー B.A.K. バークス ペータ 長谷部 由起子 長谷部 恭男 平出 慶道 FENTIMAN R.G MILLER C.J DIAMOND A.L RIDER B.A.K BIRKS Peter ミラー J.C. アダムソン ハーミッシュ デンティス T.C. ゴフ ロード スクリブナ アンソニー
出版者
筑波大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

平成6年4月から3年間にわたる日英間の共同比較法研究の全体を総括し、今後の継続的な研究協力の在り方を検討した。研究者ネットワーク作りに重点を置いて研究活動を行ったが、その目的のために、本年度も田島(研究代表者)がバ-ミンガム大学で研究会(24回)を開催した。バ-ミンガム大学では、英国大学における日本法研究の在り方を問題とし、憲法、民商法、企業法、独占禁止法、訴訟手続法、刑法など12の主要テーマについて、具体的な検討をした。これは昨年度に続く二度目の経験であり、非常に大きな反響を呼んだ。研究会の基礎となるプレゼンテーションをレクチャー.レジュメの形でまとめ、最終報告書に添付した。この研究成果は、田島(研究代表者)の責任で、Western and Asian Legal Traditionsと題する著書(添付書類参照)として近く公刊される。予定どおり平成8年9月にケンブリッジ大学において学会を開催し、本格的な比較法研究を行った。その結果は、Anglo-Japanese Journal of Comparative Lawと題する著書として近く刊行されることになっている。また、予定どおり、平成8年4月に、高等法院裁判官フィリップス卿およびウッド教授(ロンドン大学)を招聘し、企業法学シンポジウム(法的紛争の処理)を開催した。約200名の法律家(学者、裁判官、実務家)が参加し、とくに国際企業取引をめぐる法的紛争の処理に当たりイギリス法を準拠法とすることの問題点を論じた。フィリップス裁判官は、筑波大学などでも陪審制と黙秘権の問題について特別講義を行った。また、マスティル卿(貴族院裁判官)も予定どおり8月に来日され、安田記念講義およびブリティッシュ・カウンシル特別講義を開いた。民事司法改革をテーマとしたが、この講義には約300名の法律家が参加した。平成8年8月に公表されたばかりのウルフ報告書に基づくもので、別途開いた専門家セミナー(国際商事仲裁協会)において、三ケ月章東京大学名誉教授を中心として日本の民事訴訟改正とパラレルに検討する機会をもった。この講義は安田火災記念財団から単行本『英国における紛争処理の動向』(平成8年8月)として既に公刊された。平成8年11月、長谷部(東京大学)、長谷部(成蹊大学)はロンドン大学およびバ-ミンガム大学を訪問し、憲法および訴訟法の領域における共同研究を行った。そして、9月のケンブリッジ大学の学会には、平出(中央大学)と田島(筑波大学)が出席した。その学会で特に焦点を当てたのは会社法および金融法・銀行法の領域である。正式の学会とは別に、この共同研究が今後も継続されるようにするため、研究参加者の間で具体的な検討を数日に渡って熱心に行った。その結果、平成9年10月に東京で学会を開催し、その折りに新たな共同研究の基礎づくりをすることになった。その主要研究テーマは、会社法と金融法・銀行法の他、司法制度と国際法・国内法の融合の問題とする。来日が既に確定しているのは、ライダー教授(ケンブリッジ大学)、ア-デン裁判官(高等法院;現在は、法律委員会の委員長と兼任)夫妻、およびヘイトン教授(ロンドン大学)である。なお、オックスフォード大学のバ-クス教授(オールソールズ・カレッジ)は、まだ来日していないが、平成10年に来日を約束している。その機会に日英学会の創設を本格的に検討することになると思われる。なお、研究協力者以外にも数多くの学者、実務家の協力を得たことも付記しておきたい。上記の三ケ月教授のセミナーはその一例である。平成9年4月にはジョン・ボールドウイン教授(バ-ミンガム大学)が来日されるが、これもわれわれの研究活動につながるものである。3年に渡る共同研究を通じて、日本法に関心のある非常に若いイギリス人研究者を数多く(約100名)育てることができたことも協調しておきたい。現在、そのうち2人のイギリス人大学生が日本を訪問し、研究を続けている。最後に、当該研究は、将来も継続されるべきものであり、今回の3年の研究を通じて問題を別に添付した『研究報告書』の中で説明した。それも読んでいただきたい。
著者
松田 ひとみ 久野 譜也 檜澤 伸之 増田 元香 橋爪 祐美 奥野 純子 野村 明広
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は高齢者の睡眠の質を向上させる方法を明らかにするために、一日の生活活動と休息の状態を評価し、昼寝とナラティブ・ケアの有用性を導き出すことができた。また、その効果測定には、活動量計であるアクティウォッチによる睡眠効率と心拍変動パワースペクトル解析による日中の情動変動の評価が有効であると考えられた。
著者
佐藤 美佳
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
no.71, pp.49-51, 2005-11

平成17年3月1日から6月1日までの3ヶ月間、私は、大学教育の国際化推進プログラム(海外先進教育研究実践支援)により、「学習アドバイザー・特殊専門教育技法の習得」を目的として、南オーストラリア大学(University of South Australia)において教育・学習システムの調査を行いました。 ...
著者
佐藤 政良
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

ダムの設置による治水上の悪影響発生を回避するため、河川法に基づく標準操作規程があり、これをひな型として各ダムでは操作規程がつくられている。標準操作規程は、形式的には極めてよく整った内容をもっているが、現実にさまざまな問題が発生している。本研究は、予備放流の実施を中心に、農業用利水ダムにおける洪水管理のあり方を、実際の管理経験から検討した。多くのダムで、大雨の予想が出されてからの予備放流実施を、危険性が高いとして、あきらめており、その結果、本来の利水容量が減少、利水上の被害を発生させていることが分かった。羽布ダムにおいて、洪水発生と気象台からの大雨警報発令の関係を分析し、標準操作規程で想定しているような信頼を、気象台警報に置くことは危険であることを明らかにした。ダムで洪水が発生したとき、予備放流の実施に十分な条件を備えた警報は、全体の15%にすぎないので、ダム独自の予備放流実施基準の開発が必要である。羽布ダムで洪水が発生した過去の全事例で、予備放流が実施できる時間的余裕を考慮した時、気象台予報は、常に80mm以上の値であった。そこで、逆に、そのような予測が出されたときは必ず予備放流を実施するという基準を提言し、利水上の危険性の観点から、その採用の現実性を検証した。1976年から1991年の5-9月に出された80mm以上予測249事例を、半旬別に分け、過去の貯水池運用実績から、満水運用を原則にした場合の予備放流実施必要回数を求めると、十分な安全側の仮定を設けても年当たり1.3回にすぎない。小規模の出水を考えて、10cm水位低下を保証すれば、さらに治水上の安全度が高まり、かつ利水上の危険を減らすことが可能である。
著者
橋本 哲男 石田 健一郎 稲垣 祐司
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

フォルニカータ生物群は嫌気環境に生育する鞭毛虫からなる系統群であり、環境DNA解析から多様な生物種の存在が示唆されている。これまでに調べられたいずれの生物も、酸素呼吸を行う典型的なミトコンドリアをもたず退化型のミトコンドリアをもっているため、ミトコンドリアの縮退進化を解明する上で適切なモデル系と考えられる。しかしながら、実際に単離・培養されているフォルニカータ生物の種類は必ずしも多くないため、自然環境中から新奇フォルニカータ生物を見出すことを目的として研究を行った。これまでに数種のフォルニカータ生物を含む10種以上の新規嫌気性真核微生物の単離・培養株化に成功し、一部については記載を行った。