著者
恩田 裕一 辻村 真貴 松下 文経
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

北東アジア地域における土地の荒廃について、現地調査およびリモートセンシングによって調査を行った。土地荒廃の理由としては、伐採、リターの採取、プランテーション、過放牧と様々な土地改変が行われており、それによる表面被覆の低下による土壌の浸透能の低下が激しい土壌侵食を引き起こし、土地荒廃の直接的な引き金になっていると考えられる。一方で、中国においては、植林の進展につれて、浸透能の増加、および土壌侵食量の減少も報告されている。本研究においては、現地と協力した詳細な現地調査および、リモートセンシングによって、表面被覆が回復すると浸透能が増加し、土壌侵食量が減少したことがあきらかとなった。また、リモートセンシングによって、NDVIの解析により東アジア全体における荒廃度の変化について、MAPを作成することができた。
著者
山川 岩之助 阿部 一佳 田崎 健太郎 諏訪 伸夫 村木 征人 井上 一男
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究の目的は、我が国競技スポ-ツ選手の競技水準を世界のトップレベルまで引き上げることないしはそれに限りなく近づけることにある。具体的な研究方法としては、第一に、競技水準については、オリンピック大会におけるものを考察の対象とし、それも夏季大会を中心として時系列的には、過去数回のオリンピック大会までさかのぼって考察した。第二に、競技力向上政策をそれぞれの国の実情に応じてスポ-ツ政策それ自体のレベル、労働・雇用問題等の社会政策レベル及び国策としてのレベルの面から考察することとし、具体的には、「概念規定」「歴史的背景」「組織形態」「政策主体及び理念」「立法措置」「予算」「重点施策」及び「選手養成」等について吟味した。その際の政策ないし施策の評価をオリンピック大会における金、銀及び銅メダルの獲得数及び獲得状況からみることとした。スポ-ツ超大国であり、メダル獲得数でも他を圧している米国とソ連からみてみると、米国は「アマチュアスポ-ツ法」の制定にみるように、一項の国際競技力の退潮を、連邦の直接的支援や国内競技スポ-ツ組織の改革等によりおしとどめ且つ押し上げようとした。ソ連はスポ-ツにおける英才教育の整備や競技施設建設の推進や指導法の開発等の研究部門の充実などにより成果を収めてきたが、より一層の競技力向上を求めてスポ-ツ分野におけるペレストロイカやグラスノスチ(公開)による改革が現在進行中である。フランスは米国と同じく国法であるスポ-ツ振興法を制定し改定するなど強力なテコ入れを行っており、西ドイツは、官民相提携して競技力向上政策に務め相当の成果を収めてきた。中でも選手強化策たる拠点強化制度は有名である。英国はスポ-ツカウンシルによる「新10カ年計画」の一環として着々と競技力向上施策が進行中である。わが国はJOCの法人化等組織の改正や選手強化体制の充実による国際競技力の向上を図っているが、その成果はこれから問われよう。
著者
原 淳子
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

オレキシン神経を除去したマウスのナルコレプシー様症状を改善するために、CAGプロモーターを用いてオレキシンを全身に発現させたマウスと、このオレキシン神経を除去したマウスをかけあわせ、ダブルトランスジェニックマウスを作成した。このダブルトランスジェニックマウスにおいて、脳波・筋電図測定を行い、解析した結果、オレキシン神経を除去したマウスに見られたナルコレプシーの発作は見られず、発作を改善できることがわかった。またダブルトランスジェニックマウスでは、神経除去マウスにみられるようなsleep-on-set-REMは見られず、また分断化も改善され、持続した覚醒が維持できるようになり、やはり症状は改善されたと考えられた。絶食により自発運動量、覚醒レベルが上昇すること、オレキシンのmRNAは通常より増加することはすでに知られている。そこでオレキシンによる摂食行動の制御と睡眠覚醒の制御にはどのような関係かあるのかを考え、このオレキシン神経除去マウスを用い、絶食時の自発運動量、覚醒レベルを観察した。マウスを絶食し始めてからの行動量を赤外線でカウントしたものを合計してTG, WTで比較した。WTでは、絶食により行動量が増加するが、この増加はTGでは見ることができない。また絶食時の覚醒レベルを脳波・節電図で解析すると、覚醒時間の延長はWTでは明期の後半に見られたが、TGにおいでは見られなかった。つまり、オレキシンニューロンは絶食に伴う覚醒レベルの上昇に必須であることがわかった。食事をとらなくなるとエネルギーバランスがマイナスになり、摂食行動を維持するために覚醒レベルが上昇するが、その際脳の視床下部でオレキシンニューロンが活性化され、覚醒レベルの維持する働きがある。また正常の睡眠覚醒パターンを維持するためにオレキシンニューロンは必須であることがわかった。以上をもって今年度の研究実績報告とする。
著者
長谷川 聖修 衣笠 隆 木塚 朝博 本谷 聡 檜皮 貴子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

研究の目的は、JPクッション・ソフトジム・Gボール・バランスボードなど、動的なバランス運動「遊び」に関するブログラムを開発し、高齢者の動的バランス能力や不安定な環境時の身体動作の改善を目指すことであった。高齢女性26名を対象に6ヶ月間にわたる転倒予防教室を実施した。各種体力測定を実施した結果、動的なバランス能力に改善が認められた。また、アンバランスな状態からの回避動作に改善傾向が示唆された。
著者
安仁屋 政武 青木 賢人 榎本 浩之 安間 了 佐藤 和秀 中野 孝教 澤柿 教伸
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

エクスプロラドーレス氷河の前面にある大きなモレインの形成年代を推定すべく周辺で合計15点の^<14>Cによる年代測定試料を採取した。大きなモレインの6つの試料の年代は9250BPから820BPである。このデータからは形成年代に関して確定的なことは言えないが、モレインの堆積構造、試料の産出状況、植生、年輪などから14-17世紀頃の小氷期に形成されたと解釈した。氷河観測では、D-GPS静的測位を用いた氷河流動測定、 D-GPS動的測位を用いた氷河表面形態の測量、5MHzアイスレイダーによる氷厚測定を行った。流動は各期に氷河上の巨礫を反復測定し、末端部付近では50m、アイスフォール下部では140m程度の水平流動を得た。また、末端部付近では著しい上方向の流動があることが観測された。レイダーによる氷河末端付近の氷厚は260〜300mと推定された。氷河流域の年間水収支を算出し、それにより氷河の質量収支を推定した。2004年12月から末端付近に自動気象・水文観測ステーションを設置し、観測を継続している。また、夏季(2004年12月)、冬季(2005年8月)の双方で、氷河上の気象要素分布・表面熱収支・融解量分布などの観測を実施して、氷河融解の特性を明らかにした。2004年12月から2005年12月までの1年間における末端付近の平均気温は7.4℃、降水量は約3300mm、さらに氷河流出河川の比流出量は約6600mmであった。ペリート・モレーノ氷河において、中流部の表面高度測量および歪速度観測、カービングフロント付近の氷河流動の短期変動観測および写真測量、融解観測、氷河湖水位観測、中流部におけるGPS記録計による年間流動の観測、氷河脇山腹における長期写真記録および温度計測を行なった。近年上昇していた中流部の表面高度が2004年〜2005年で減少していた。この地域に2004-2005年の期間にストレイングリッドを設置してひずみや上昇速度を観測したが、大きな下降速度が計算された。また移動速度は0.8〜1.2m/dayの値が観測された。氷河末端部の測量からは、1.5m/dayを超える速度が多くの地点で観測された。
著者
福田 妙子 斎藤 重行
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

「ハロタン最小肺胞濃度における7-Nitro Indazoleの効果」(平成10年度分課題)[方法]Sprague-Dawleyラット14匹を、対照群と7-Nitro Indazole(7-NI;神経型一酸化窒素合成酵素阻害薬)群に分けた。ハロタンの最小肺胞濃度(MAC)をEgerらの方法で測定した後、7-NI100mg/kgあるいは溶剤のピーナッツ油を腹腔内投与し、再度MACを測定した。測定後ホルマリンで脳と脊髄を固定し、NADPH-diaphorase染色を施行した。[結果]7-NIはハロタンのMACを約50%低下させた。同時にNADPH-diaphorase染色では青斑核と脊髄後角で約25%の陽性細胞低下を認めた。「デキサメデトメジン投与後のハロタン最小肺胞濃度とNADPHジアホラーゼ組織化学染色」(平成11年度分課題)[方法]Sprague-Dawleyラット36匹を、デキサメデトメジン(DEX;α2作動薬)単回投与(50μg/kg)と3日及び14日間の慢性投与(50μg/kg/day)の3群、さらに各々の対照群3群の合計6群に分け、MAC測定とNADPH-diaphorase染色を施行した。[結果]単回投与のDEXはハロタンMACを約50%低下させたが、NADPH-diaphorase染色の低下は伴なわなかった。持続投与のDEXはハロタンMACを変化させなかったが、3日投与群で青斑核の陽性細胞数が有意に低下していた。DEXによるMACの低下は一酸化窒素の抑制を介しているとはいえなかった。[まとめ]一酸化窒素は吸入麻酔薬の最小肺胞濃度決定に重要な役割を果たしていたが、最小肺胞濃度は一酸化窒素単独で決定されてはいない。
著者
浅井 武 瀬尾 和哉 藤井 範久 高木 英樹 小池 関也 藤澤 延行
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,先端的スポーツ流体科学・工学の基盤創生と展開研究の一環として,実際にキックされたナックルボールに対して,高速度ビデオカメラと発煙物質を用いて可視化し,渦放出の動態について検討した.その結果,飛翔するボールに働く横力と揚力の周波数と,大規模渦構造における渦振動の周波数に高い相関がみられた(r=0.94,p<0.01).これらのことから,大規模渦構造における渦振動がナックルボールの不規則な変化を引き起こす大きな原因の一つになっていると考えられた.
著者
河野 一郎 秋本 崇之 赤間 高雄 河野 一郎 福林 徹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

簡易型SIgA測定キットの開発本年度はまず市販のSIgA特異的なモノクローナル抗体を用いて,比濁法による測定を行ったが,おそらく抗体自体の力価のあるいは抗体のエピトープの問題により良好な測定系を構築できなかった.そこで,比濁法に適応可能なモノクローナル抗体の作製を試みた.現在,クローンを選別しているところであり,本補助期間にはキットの開発までにはいたらなかった.しかし,キットの開発に必要となる基礎的なデータは得ることができ,今後の展開に利するところは大と考えられた.SIgAレベルと感染症の関係昨年度,2ヶ月に渡って30名の被験者から唾液を採取し,SIgAと上気道感染症の関係を調査し,SIgAの低下と,上気道感染症の発現に一定の関係があることを見出した.本研究成果は臨床スポーツ医学に掲載された.また,高強度トレーニング(試合期)のSIgAの変化と,心理的・肉体的ストレスに関する成果についてまとめ,論文としてアメリカスポーツ医学会の機関紙(Med Sci Sports Exerci)に掲載された.本研究の結果,SIgAと上気道感染症罹患リスクには一定の関係があることが明らかとなり,今後SIgAを上気道感染症リスク把握の手段として応用することが可能であることが本研究の結果により示されたと考える.また,SIgAの測定は非侵襲的であり,その応用範囲は大と考えられた.本研究の成果により論文発表5件(国内誌3件,国際誌2件),学会発表7件を公表することができ,基礎研究としては十分な研究成果が得られたと考える.
著者
宗像 恒次 橋本 佐由理 橋本 佐由理
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

がん生存者の効果的なストレスマネジメントのために、Webを用いた電子学習プログラムを開発することを目的とした。研究1で、DVDを用いた電子学習プログラムを開発し、実施前、後、1週間後において、ストレス対処力が有意に高まり、ストレス蓄積性の高い行動特性や抑うつが低下し、免疫力の向上が見られた。研究2では、筑波大学にサーバーを置き、Webで無料配信するeプログラムを構築し、効果を分析した結果、ストレス蓄積性の高い行動特性が有意な低下を示した。がん生存者が自らの感情を過度に抑えず、素直に自分を表現し、必要時に周りに救援を求められる行動特性への変容が考えられ、DVDと同じようなストレスマネジメント効果が確認できた。
著者
谷川 朋範
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

非球形粒子の光学特性を考慮した放射伝達モデルを用いて,衛星観測に必要な積雪の双方向反射率について考察した.球形粒子を仮定した積雪放射伝達モデルを用いると双方向反射率パターンに虹が現れるが,現実の雪面に虹はほとんど出現しないため,この虹の効果が積雪物理量を推定する際に誤差を引き起こす可能性がある.そこで本研究では積雪の双方向反射率パターンに虹が現れる事を防ぐために,非球形粒子の光学特性と粒子の結晶表面にラフネス(凹凸)を取り入れた幾何光学モデルを開発し,粒子の形と結晶表面ラフネスの有無による双方向反射率の効果を理論計算と分光観測によって調べた.その結果,粒子の形に円柱及び回転楕円体を仮定し,結晶表面ラフネスを入れない場合,虹のパターンは消えたが不連続な双方向反射率パターンが出現した.一方,結晶表面にラフネスを入れた場合,新雪のときには双方向反射率の観測値は円柱粒子を用いた理論計算反射率パターンと可視域,近赤外域ともに良く一致し,また古雪(ざらめ雪)のときの観測値は結晶表面にラフネスをいれた回転楕円体粒子の理論計算値と可視域においてほぼ一致することが確認された.近赤外域では前方散乱側の双方向反射率において観測値と理論計算値の間に差があるものの,前方散乱側以外の双方向反射率においては両者ほぼ矛盾のない結果が得られた.これらの結果より,積雪の双方向反射率パターンは粒子の形と結晶表面のラフネスに依存することを数値計算と分光観測から明らかにした.
著者
植田 宏昭
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

大気-海洋混合層結合モデルによる瞬間的CO_2倍増実験より、全球降水量変動におけるCO_2倍増の直接効果を地表面・大気熱収支の観点から評価した。温室効果ガスであるCO_2の増加により、大気よりも熱容量の大きい地表面が加熱される一方、水蒸気とCO_2のオーバーラップ効果は正味地表面放射の変化を抑制するため、それを補うように蒸発による潜熱フラックスが減少する。この結果、CO_2倍増の直接効果として、降水量の減少が引き起こされる。
著者
清水 知子
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

現代英国における多文化主義の可能性と限界について以下の知見を得ることができた。1)新自由主義社会においていかに移民が分断され、「国民」が再編されたか、その構造の変化について明らかにした、2)多文化主義の根底にあるリベラリズム、世俗主義の暴力性がどのように主流の見解として社会のなかで機能しているのかをメディアの表象から明らかにした、3)上記1)、2)のなかから高まった他者への不信感と監視社 ・ュ策への傾倒を考察し、現代社会におけるコミュニティの実態がどのように変化しているのかを明らかにした。
著者
瀬田 益道 中井 直正 山内 彩
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

近年の技術発展でサブミリ波からテラヘルツ帯での天体観測が現実的となった。ところが、この帯域は大気の吸収が強く観測可能な地は限られていた。我々は寒冷な高地である、南極大陸内陸部に着目してきた。サイト調査として、南極ドームふじで220GHzの大気透過率を測定したところ、地上最良と思われ大型干渉計ALMAの建設の進むチリ北部の砂漠地帯よりも優れていることを示した。ドームふじでの天体観測用に30cm望遠鏡を開発した。500GHz受信機を搭載し、天の川の一酸化炭素及び炭素原子の観測を行う。実験室での評価試験を経て、スイスアルプス及び南米のチリで試験観測を行った。
著者
村尾 修
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究プロジェクトでは,まず1999年台湾集集地震の被災地である集集を対象として,復興過程に関して継続的な観測を実施した.そして,その数年間の復興調査データ等を用いて,「空間復興モデル」を提案した.これは被災地の都市空間の復興過程を物的環境の変化すなわち建物の復興状況(被災,瓦礫の撤去,建設中)という視点から記述し,その変化を客観的に示す方法である.そこで得られた知見を活かし,より詳細な建築確認申請データを用いて.地域の復興過程を復興曲線として客観的に示す方法を提案した.さらにこの客観的な指標で示される地域の復興過程を支える社会的背景についても,調査した.その方法としては地域の資料を読み解くとともに,被災者,役人,その他のステークホルダーに対して面接調査を実施した.その成果のひとつとして,集集鎮志を翻訳し,現地の復興過程を理解するための情報として利用した.そして面接調査や資料など集集の復興過程を読み解き,復興のエスノグラフィ作成のための方法論としてまとめた.これは,地域の復興を包括的にとらえ,工学的な要素と社会学的要素を盛り込んだ復興研究のアプローチであり,本プロジェクトで実施した他地域の復興報告書等を活用した.復興過程を表す指標構築のための研究と平行して,復興をアーカイブズとして記録するための研究も行った.そのひとつとして,筆者がモニタリングしてきた復興の記録を都市史の中でどのように位置づけたらよいのかを考察し,復興デジタルアーカイブズの意義についてまとめた.そして,その考え方の一部を集集を対象として具体化(GoogleEarthを用いた復興デジタルアーカイブズ)し,方法論としてまとめた.
著者
佐伯 聰夫 仲澤 眞 矢島 ますみ 鈴木 守 間宮 聰夫
出版者
筑波大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

競技スポーツ大会の開催には、地域経済への波及効果を含め、地域住民のアイデンティティやロイヤリティ醸成等の地域活性化に対する効果が期待されている。しかし、一次的な競技大会の開催では、その効果も一過的なものに過ぎない。そこで本研究は、継続的・定期的な開催によって地域社会における社会制度にまで発展した競技スポーツ大会が、当該地域のコミュニティ形成にどのような意味を持ち、どのような機能を果たしているかを競技大会と地域社会の関連分析から調査した。具体的には、それぞれの競技大会開催地域に赴き、大会運営機構、関連組織、地域行政、地域住民組織、一般市民、学識経験者等にインタビユー調査を、また、合わせて関連資料の収集と分析を行うことによって明らかにしようとした。平成8年度調査は、単一種目の競技大会では至高の権威を有するウインブルドン・ローンテニスチャンピオンシップスとオーガスタ・マスターズトーナメントを事例に調査した。平成9年度調査では、伝統や歴史を担う民族文化的性格を持つ競技大会として、中世サッカーを再興させているフィレンツェ・カルチョストリコとバスク・ルーラルスポーツを事例として調査した。平成10年度調査は、グローナリゼーションの中にある地域形成の問題を焦点にして、英国スカイ島のハイランドゲームズとドイツ・バイヤー04レーバークーゼンのブンデスリーガ・ホームゲームを事例に調査した。こうした調査で得られたデータ分析の結果、競技大会が地域社会における社会制度として発展し、豊かなコミュニティ形成の機能を発揮するためには、競技大会が当該地域住民のコミュニティ・アイデンティティやローカル・ロイヤリティのシンボルとなることが重要であり、そのシンボル化作用は、長い開催の歴史に支えられた競技大会の権威、伝統文化やエスニシティと関わる文化的固有性、そして住民の生活と密着しながら社会変化に対応する柔軟な運営システムが必要なことが分析された。
著者
清水 一彦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、課程制大学院における伝統的な研究者養成型大学院のカリキュラムについて、日米の比較視点からこれまでの歴史と運用の実態を調査・研究し、わが国における運用改善の条件を提言することを目的とした。結論として、わが国の課程制大学院の発展のためには、次のような改革が求められる。(1)課程制大学院の実質化は、何よりもまず大学院教育の目標の明確化から始めなければならない。研究者養成と専門職養成の差異をはっきりさせ、授与される学位も明確に区別されるべきである。アメリカの大学におけるグラデュエート・スクールとプロフェッショナル・スクールとの明確な区別は、コースワークや論文、学位等において明白なものとなっている。(2)課程制大学院の実質化のためには、現在のような研究科や専攻、コースといった組織的な枠組みを廃止して、修士号や博士号の学位コースによる教育プログラムとして再構築される必要がある。わが国の場合、組織優先で教員所属組織に重点が置かれ、学生の教育や履修、コース選択といった課程あるいはプログラムの観点が軽視され過ぎている。(3)課程制大学院ではコースワークが重視され、カリキュラムの体系化・構造化が図られなければならない。修士課程2年、博士課程5年の標準年限や修了に必要な単位数については新たな見直しが必要である。修士課程でも博士課程でも30単位という規定は、課程制大学院の実質化を妨げるものとなっている。(4)学生の選択的学習による系統的履修の機会とともに集中的学習による学習効果の向上を図る必要がある。具体的には、GPAや履修アドバイス・システムの導入、サマーセッションを含めた学期制の検討などである。
著者
クラインシュミット ハラルド 竹沢 泰子 山田 直志 波多野 澄雄 岩崎 美紀子 秋野 豊 岡本 美穂
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

本研究グループは、地域統合の問題を理論的側面と現実的側面の二つのレベルにおいて共同研究を進めてきた。従来の地域統合理論では、ヨーロッパ以外に地域における統合の動きを分析しえず、アフリカやアジア・太平洋地域における統合の動きや、さらに1989年以降のヨーロッパにおける統合をめぐる激しい変化に対応できなくなり、新たな地域統合理論が必要であった。平成4年度は、研究最終年度であることから、平成3年度に行った従来の理論研究の再検討、およびそれを踏まえて構築した基本的フレームワークをもとに、各研究者が個別研究を行い、共同研究の総括をした。個別研究は下記の内容についてそれぞれ論文にまとめた。ハラルド・クラインシュミット 東アフリカにおける国家建設と地域統合岩崎美紀子 アンチ・ダンビング領域における統合の形態早坂(高橋)和 チェコスロバキアの連邦制竹沢泰子 アメリカ合衆国における民族集団の統合化波多野澄雄 近現代日本における地域統合論とアジア・太平洋秋野豊 東欧における地域協力ーカルパチア協力をめぐってー大島美穂 北欧会議とEC統合山田直志 EC統合と日本企業の海外進出これら個別研究の成果は、平成3年度に行った理論研究の成果とともに、同文館から『地域統合論のフロンティア』として出版される。
著者
金保 安則 長谷川 潤 船越 祐司
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

脂質性シグナル分子産生酵素のPIP5KとPLDの各アイソザイムの生理機能解析を行った。PIP5Kγ661は、海馬神経細胞において、クラスリンアダプター複合体AP-2と相互作用してAMPA受容体のエンドサイトーシスを促進し、長期抑制を誘起すことを明らかにした。さらに、PIP5KαとPIP5Kβは、精子形成に重要であることを明らかにした。また、PLDは、好中球機能に重要であることが報告されているが、それらの研究結果はアーチファクトである可能性を示唆した。