著者
久恒 彩子
出版者
金沢工業大学
雑誌
KIT progress : 工学教育研究 (ISSN:13421662)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.49-61, 2004-03

金沢工業大学では、入学後の春学期に、全ての学生がプレースメント英語を履修する。約千七百名の学生が、二回にわたって行われるレベル分けテストによって英語I、II、IIIに、それぞれ分けられる。自分のレベルにあった英語の課程が始まると、語学学習法を紹介する時間は、授業中にはほとんど無い。春学期のうち二週間だけがレベル分けテストに割り当てられているので、残りの学期は学生にとって、いろいろな語学学習法を学ぶことに専念できる最適な機会だと言える。本論説は、外国語としての英語をまなぶ授業で、学習する者がどのように効率的な学習法を見につけ自立していくか、その方法を紹介する。学生にとって語学学習法を習得することは大切だが、語学教育者にとっても学生の経歴、学習様式、動機レベルなど、語学を教える前に把握しておくことも、同じく、或いはそれ以上に重要である。学期の最初に行ったアンケートにより、学生が既にどのような語学学習法を使っているかを調べた。学期中には様々な学習法が紹介され、学期の最後には、語学学習法と英語に対する意識がどのように変化したかを調べるために再度アンケートを行った。計493人の学生が、著者が担当したプレースメント英語の授業を履修した。そのうち学期の最初と最後に行ったアンケートの双方に答えた463名のデータが本研究に使われている。本研究は、次の三つの答えを模索する。(1)学生の言語運用能力を向上させる語学学習法/(2)学生の英語に対する意識が語学学習法の習得後に変わるかどうか/(3)レベルが著しく異なる学生に対しての有効な語学学習法の教え方 t分布の結果は、語学力、動機共に低い学生の英語に対する意識が、語学学習法を学ぶことによってどれだけ変わったかを表している。自分に適した語学学習法を認識し、今後に生かす学習法を理解したことにより、学生は進んでそれらを使うようになった。様々な学習法を習得することは、学生が人生の早い時期に自立した学習者になるために、必要不可欠な道具になりえると言える。
著者
平泉 隆房
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

白山信仰と日吉(山王)信仰が、中世にどのように全国に広まっていったかを、現在の白山神社・日吉神社の分布図を作成し、それを参照しつつ検証した。中世前期までに成立した日吉社領が近江や北陸道を中心に全国に散在してみられ、その付近には現在でも多くの日吉神社が鎮座していることを確認した。白山神人と日吉神人、言い換えれば両信仰が対立することなく、協調して信仰圏の拡大につとめていたことも明らかとなった。なお、これらの勢力が、衰退した延喜式内社に入り込み、それぞれの地域の拠点としていた事例を多く検出することができた。あわせて、古代中世について、白山信仰に関するこれまでの研究史をまとめた。
著者
野口 啓介;NOGUCHI Keisuke 池永 訓昭;IKENAGA Noriaki 津田 敏宏;TSUDA Toshihiro 坂本 康正;SAKAMOTO Yasutada 平間 淳司;HIRAMA Junji 廣田 哲夫;HIROTA Tetsuo 大澤 直樹;OSAWA Naoki 深田 晴己;FUKADA Haruki 芦野 慎;ASHINO Makoto
出版者
金沢工業大学
雑誌
工学教育研究;KIT progress (ISSN:13421662)
巻号頁・発行日
no.27, pp.135-143, 2019-03-01

電気電子工学科(EL 学科)の平成 30 年度における新たな取り組みとして、プロジェクトデザイン入門(実験)(以下、PD 入門(実験))の検討を行い、前学期に実施した。ここではその内容について報告する。専門科目との接続を重視した PD 入門(実験)のカリキュラムにおける位置付けを示すとともに、EL 学科の実験科目との関係について説明している。これまでのいきさつとして電気系ワーキングの取り組みについても説明する。PD 入門(実験)の学習支援計画書に盛り込んだ内容を示し、6つのテーマ、運営方法などを紹介する。実施結果の検証として受講学生および TA 学生に対するアンケート調査を行い、その結果について検討している。さらに過去3年間の電気回路Ⅰの中間試験結果について比較検討し、PD 入門(実験)と並行して開講された電気回路Ⅰの理解度について考察する。;We have developed practical education of the introduction to project design (PD introduction (experiment)) as a new approach of the department of electrical and electronic engineering in this academic year. This paper reports the detail of the development. Position of the curriculum of PD introduction (experiment) is shown for orientation of major subjects. Relationship with the major experiment subjects is also explained. As the past efforts, related activities in our department are described. Contents of the developed syllabus are explained, and then it shows six themes and steering methods. As a verification of the implementation results, we conducted a questionnaire survey on students attending and TA students. The summary results and graphs are shown. In addition, based on the results of the intermediate test of Electric Circuit I in the past three years, understanding degree of students with respect to PD introduction (experiment) is discussed.
著者
陳 淑茹
出版者
金沢工業大学
雑誌
KIT progress : 工学教育研究 (ISSN:13421662)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.63-73, 2010-03-31

"Hi, my dear students, let's speak in English!" Many English teachers in English classes across Japan find it is easy to say but extremely difficult and frustrating to implement it. In this paper, the writer tries to explore what workable and efficient methods are to help our Japanese learners of English build their confidence and thus change their attitudes toward speaking English. The method that the writer used and conducted, prior or after English class, to elicit her Science and Engineering students to speak in English will be discussed in this the paper. In addition, the factors influencing students' attitude toward speaking English out aloud will also be mentioned but will not be mainly discussed in this paper since it is not the main issue of this paper. The student (learner) subjects the writer refers to in this paper are Science and Engineering college freshman students, who have been learning English for at least six years prior to their enrollment in college. This group of students is always thought to be a bit negative toward English-learning than humanities majors, since they are more knowledgeable and perform better in Science or Engineering courses/areas. However it is, perhaps, inevitable that they will have to communicate with foreigners in English some time in workplace in future. Therefore, no matter how superior their knowledge is about their professionals, if they can not express their own ideas/opinions or convey their messages on their own to foreign engineers or scientists, then for sure, it will turn into a burden or harm their career. With this in mind, in this paper, the writer aims at finding ways to reduce students' anxiety, and consequently build their confidence in using and speaking English in their everyday lives.
著者
松林 賢司
出版者
金沢工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

①雪の輸送中の融解挙動の実験による評価:雪の長期輸送中の融解挙動は経済性の試算に必要なデータである為に独自の実験設備を製作してその評価を実施した。結果は良好で赤南半球の想定陸揚港であるシドニー付近まで輸送するのにかかる2週間の融解による損失は5%以内であり経済性の試算が可能な範囲であることが分かった。②雪資源の陸揚港と需要者の技術的、及び経済的な評価とその最適化:積出港の研究手法と同様に陸揚港としての適性が確認された3港に関してフィールド調査を実施した。バンコック港とシドニー港に関しては現地訪問の上、自治体、並びに前年度に予め協力先として選定された研究機関との意見交換を経て最適港候補の技術的、並びに経済的な評価(使用可能期間、雪置場面積、内陸への雪資源輸送利便性、陸揚設備、雪輸出に関する法規制、自治体の協力体制等)を実施した。本件に関しても関係する専門家として商社、船会社、港湾業務委託会社等に手続きと経済的な観点よりヒアリングを実施した。需要者に関しては大規模な雪資源の冷熱利用を前提として地域冷房施設である北海道ガスや新千歳空港も現地補門の上、調査研究した。並びに冷蔵倉庫を想定の上、陸揚港としての適性が高い地区の需要者候補を政府、及び自治体資料により調査の上、リストアップの後、有望先のフィールド調査を現地研究者の協力も得て実施した。
著者
堀田 英一 宮田 孝富
出版者
金沢工業大学
雑誌
KIT progress : 工学教育研究 (ISSN:13421662)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.191-203, 2014-03

本稿は,数値計算のための代表的なプログラミング言語やツールを,共通の問題を扱うことにより評価し,その結果を比較検討することによって,工学系大学における数値計算教育における言語やツールとして,何がどういう目的に相応しいかに関して見通しを提示することを目的とする.
著者
谷口 進一 青木 克比古 中 勉 高 香滋 石井 晃 大林 博一 大林 博一 中村 晃 中江 友久
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

組織的教育力の効果を数理の基礎学力・ジェネリックスキルの観点から、入学から卒業までのスパンで定量的・質的に検証を行った。学力に関しては、同一の学力診断において、入学時に比べ1年後学期では成績が向上し授業効果が確認された。しかし、4年次では専門教育に力点が移り、授業効果は低下した。ジェネリックスキル自己評価では2年次で一旦多くの評価項目の自己評価が低下するが4年次では回復しほとんどの項目で最高点となることが確認された。
著者
諏訪部 仁
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

結晶系太陽電池ウェハーのスライシング加工には,マルチワイヤソーが用いられている.本方法には遊離砥粒方式と固定砥粒方式があり,ダイヤモンド砥粒を固着したワイヤ工具を利用した固定砥粒方式が注目されている.本申請課題では,固定砥粒方式のワイヤソー切断において,ワイヤコスト低減,切断性能の向上や切断代の減少を目指して,ダイヤモンドワイヤ工具の高速作製法の開発並びに固定砥粒方式の加工精度等の加工特性に与える影響因子を実験的に検討し,高能率切断の可能性を示した.
著者
栃内 文彦 札野 順 西村 秀雄 岡部 幸徳 金光 秀和 夏目 賢一 金 永鍾 デイビス マイケル プール イボー・ファン・ダ ピーターソン マーティン ニッケル フィリップ バーグ ポール・ファン・デン ワグナー-ツカモト シグモンド
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

社会のグローバル化を十分に踏まえた技術者倫理教育のための教材開発に資するべく、日・米・蘭の三カ国で技術者の価値観についての実証的比較研究を行ない、以下の成果を挙げた:1)「ソーラーブラインド(英語吹替版)」を用いたケースメソッド型の事例教材パッケージの開発、2)「技術者が重視すべき価値がモノづくりの現場においてどの程度重視されているか」に関する、日・米・蘭の工科系大学で学ぶ学生間における認識の違いの明確化、3)技術者倫理教育・研究ネットワークの拡大、4)現在行なっている技術者倫理教育のための教材開発への貢献、5)モノづくりにおけるアジア・イスラム的価値観に関する調査・研究の基盤構築。
著者
土田 義郎 松井 利仁 永幡 幸司 塩川 博義 川井 敬二 森原 崇 船場 ひさお
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

音環境の評価には、量だけでなく意味が関与する。良好な音環境の実現には、文化的視点も必要であり、マネジメント思考も求められている。本研究で得た成果は次の3点である。(1)主観の影響や、居住地・世代による音源の聞き取り頻度の差といった点から、音環境全体の評価に関する成果を得た。(2)ガムラン音楽や商店街の音環境の他、海外(アジア地域)における鉄道騒音や道路騒音のように幅広い音環境に対して、質的な情報と量的な情報の相互作用についてテキスト・マイニングやPAC分析を用いて成果を得た。(3)個人の認識を可視化し、深層面接を行うツールを用い、認知構造の同定手法に関する成果を得た。
著者
金光 秀和 直江 清隆 本田 康二郎 寺本 剛 鈴木 俊洋
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、技術が新しい行為の形を生み出し、社会のあり方を大きく変える現代において、技術のあり方に反省的な眼差しを向けることのできる批判的視点を獲得することを目的とした。この研究によって、第一に、技術に対する批判的視点に関する哲学的考察を進めてその成果を発表することができた。第二に、技術の営みを記述することの哲学的な意義について考察し、また、実際に日本の職人のフィールド調査を行い、その営みを哲学的に記述して成果を学会などで発表した。第三に、福島第一原子力発電所事故に関する記述的・規範的探究を進めてその成果を公表した。第四に、技術哲学の知見を反映させた教科書の作成に参加した。
著者
村田 俊也 橋爪 和夫
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、優れた剣道技能を有する高齢者の動きと心理特性を解明することであった。剣道7段の被験者が8段(上位者)、7段(同等)、4段・3段(下位者)の相手に対する剣道技性を解析した。8段の上位者に対する時は、打撃動作前の動きを自己制御することができず、4段以下の下位者に対しては完全に自己制御できた。同等の7段に対する時は、自分の心理を制御することで身体を制御するという方向性を自覚できた。剣道では、打撃前の自分の心理の制御が重要であることが解明できた。
著者
永瀬 和彦
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

阪神大震災で脱線又は重大な損傷を被った車両が在線した箇所は気象庁が発表した震度階級7の被災地域とほぼ一致することがわかった.被災箇所の割合を高架,地上及び地下で区分したところ,地下在線中の車両の被災割合が最も少なく,高架橋在線中の車両の被災割合は圧倒的に高くほとんど全ての車両が何らかの被害を被っていた.よって,地下に在線する車両の耐震性は他の線区のものに比べ高いといえる.脱線の状況を調査した結果,激しい地震動により軌道が全く損傷していないのに飛び上がり脱線した車両があり,走行又は停止中の車両の心皿がが激しい上下動により脱出して心皿の脱出防止用コックが破断した事例も複数確認された.このような信じがたい激しい揺れに遭遇した列車は,どのような手段を講じても脱線を防止出来ない.幸いなことに,このような深刻な事態が発生した場合でも列車が崩壊した橋梁や高架橋に高速で突っ込む可能性は高くはないと判断できる事実を見いだした。土木構造物が重大な損壊を被るような激しい地震動に遭遇した場合,列車は全軸脱線し,非常ブレーキで減速するよりはるかに高い減速度で急停車しているからである.他方,構造物の崩壊や陸橋の落橋は列車が停止した時点以降に発生したと指定される事例がほとんどだったからである。従って,一部で提案されている脱線防止用レールを積極的に架橋橋上の軌道に敷設して震災時の脱線を防止しようとの考え方は必ずしも最善の策とは言えない。走行列車が激震に遭遇した場合に考えられる最も大きな人的被害の一つは,地下鉄内で高速走行する列車が揺れによりトンネル側壁に設置されたトラフや信号機に激突して側窓や側扉が大破するケースである.かような事態を回避するために地下鉄内の工作物はなるべく電車側窓に対応する高さを避けて設置することが望ましい.
著者
栃内 文彦 研谷 紀夫 玉井 建也 山本 博文 佐倉 統 宮本 隆史 佐野 貴司 添野 勉 飯野 洋
出版者
金沢工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

近現代科学史資料の体系的・効率的な収集・保存のための方法論の確立に向けた実践的考察を、東京大学大学院情報学環社会情報研究資料センター収蔵の地質学者・坪井誠太郎に関する資料(以下、「坪井資料」)の調査を通して行った。資料調査の結果、坪井資料が日本地質学史研究において高い価値を有することが示された。こうした資料の収集・保管に際しては、資料の付加価値を高めるためにも、研究者に着目して<研究者資料>として資料を体系化することが有効であることを実証することができた。
著者
野口 啓介
出版者
金沢工業大学
雑誌
KIT progress : 工学教育研究 (ISSN:13421662)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.75-84, 2008-06-01
被引用文献数
3

e-ラーニングの一つのシステムであるWebCTを電子回路授業に用い、学習教材と小テストを学生に提供することにより自学自習の促進を図っている。ここでは学習教材と小テストの作成について示すと共に、WebCTの教員側の機能を用いた学生の学習状況の調査例について報告する。さらに、平成15年度から19年度までに実施したWebCTに関するアンケート調査をまとめ、その代表例について集計結果を示す。
著者
北村 彰 竹俣 一也 直江 伸至 南出 章幸
出版者
金沢工業大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、生徒・学生が地域にいながらその発達段階に応じて1)職業観・勤労観、2)技術者倫理観・環境倫理観、3)共同作業をするためのコミュニケーション能力を育むことができる地域連携キャリア教育システムを開発するための調査である。平成18年度は以下の通り実施した。(1)大学生に対するキャリア支援体制についての調査金沢工業大学におけるキャリア支援体制について調査し、本研究で企画しているキャリア教育システムの展開の規模を検討した。求人情報からその会社の情報を得るには限界があることが分かった。また、インターネット上の就職活動サイトはある程度自分のキャリアデザインができている者でないとその活用が難しいことが分かった。(2)キャリア教育支援システムの構築就職を希望する生徒・学生と求人を募集する企業とがWeb上で情報交換しながら、生徒・学生が自らの就きたい職業を見つけていくシステムを構築した。ある程度の匿名性を保ちながら公開を原則として運用できるようになっている。インターネットの特性を生かし,地方の大学生が別の地方の企業と情報交換する場合に効果を発揮するシステムである。そのため,本システムの運用は地域に密着した潜在求人の発掘に効果が期待される。また、やりたい仕事と希望している会社とが一致しない場合に早期退職者が発生するが、本システムの運用はこのような事態を回避することに貢献するものと思われる。
著者
西田 昌彦
出版者
金沢工業大学
雑誌
KIT progress : 工学教育研究 (ISSN:13421662)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.59-79, 2008-03-01
被引用文献数
3

平成16年度から18年度にかけて担当した1年次生に対する工学基礎物理の授業において、授業改善の試みとして3年間で授業のやり方を少しずつ変えてみた。平成16年度は自然法則や理論の解説を中心とし、平成17年度は演習問題の解法に重点を置き、平成18年度では両年度のやり方のバランスをとり、自然法則や理論の解説を中心としながらも演習問題の解法にも意を用いた授業を実施した。本論文では、過去3年間の工学基礎物理の授業において、授業の主たるやり方の違いに伴って学生による授業評価や成績との相関がどのように変わるかを分析した結果を報告する。まず、平成18年度の授業評価を主成分分析し、平成16、17年度の分析と比較した。分析によれば、授業のやり方を変えたにもかかわらず、第1主成分(授業の良さ)と第2主成分(学生の基礎学力)の基本的性格は年度によってはほとんど変わらない。しかしながら、重要な点に著しい違いがあることが分かった。それは、第2主成分と「授業への真剣さ」との問の相関において、平成16年度には正の相関があり、平成17年度には負の相関があるのに対して、平成18年度にはほとんど相関がないという点である。一方、演習問題解法に対する学生の達成感に対する重回帰分析によれば、学生の達成感は授業評価データと密接な関係がある。ところが、試験の成績に対する重回帰分析によれば、平成18年度では試験の得点と授業評価データとの間にほとんど相関がない。この点は平成16年度の分析とはかなり異なるが、平成17年度での分析とよく似ており、平成18年度の授業のやり方でも、試験の成績が大きく向上した平成17年度と同様の教育的効果が得られることが判明した。
著者
宮里 心一
出版者
金沢工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

海岸部に立地する鉄筋コンクリート橋における上部工の形状が、飛来塩分の付着量に及ぼす影響を、実験的に検討した。すなわち、寸法および凹凸に相違を設けた4種類の供試体を、人工飛来塩分発生装置や人工降雨装置に暴露し、付着した塩分量を測定・比較した。その結果、上部工底面の凹部への巻き込み現象や上部工側面の雨水による洗浄効果に着目して、最も塩分が付着する部位を解明できた。
著者
増山 豊 深澤 塔一 桜井 晃
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

我が国を代表する弁才型帆船の帆走性能を明らかにする一環として、帆船として特に重要と考えられる上手回し操船が可能であったかという点に焦点をあてて研究を行った。まず、大阪市が復元建造し筆者らが海上帆走実験を行った菱垣廻船"浪華丸"を具体的な対象として、定常帆走性能を求めるとともに、下手回し操縦運動シミュレーションを行う手法を確立した。このため、船体に関しては曳航水槽試験を行うとともに、帆に関しては風洞試験を行った。なお帆の性能に関しては、空力実験船「風神」を用いた実船レベルの海上試験と数値計算も実施した。また明治後期からは弁才型船に伸子帆が取り付けられた「合いの子船」も多く運用されたため、伸子帆の性能についても実験を行った。なお、伸子帆の性能に関してはこれまで公表されたものはなく、本研究によって初めて明らかとなったものである。浪華丸の定常帆走性能の計算結果と下手回し操縦運動シミュレーション結果は、同船の海上帆走実験データと比較され、よく一致することが確認された。一方、上手回し操船は浪華丸の海上実験でも実施されていない。このため、このような弁才船が上手回し操船が可能であったかについては、上記で精度が確認されたシミュレーション手法を用いて判断することにした。その結果、弁才型の船に弁才帆を組み合わせた場合は、残念ながら上手回しはできなかったものと考えざるを得ないものとなった。一方、弁才型の船に伸子帆を組み合わせた、いわゆる「合いの子船」とした場合は十分に上手回しが可能であることがわかった。このことは、船型的には弁才型の船が上手回しを行うことが可能であることを示しており、風上方向への切り上がり角が70°であることを含めて、江戸時代に完成された船としては、当時の西洋型帆船と比較しても遜色のない性能を有していたことが明らかになった。