著者
佐野 仁美
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回 (2019)
巻号頁・発行日
pp.2I3OS15a03, 2019 (Released:2019-06-01)

本稿では、2015年2月より開催されているAI社会論研究会の社会的な役割について検討を試みる。人AIが社会に浸透し、大規模に人々とAIが混在する社会が形成されるにつれて予期し難い影響が生じるのであれば、あらかじめ多くのステークホルダーとの対話の中でリスクや不確実性を回避することが求められる。人とAIが織りなす新たなエコシステムを検討するには、限られた分野に閉じた議論ではなく、分野共創、マルチステークホルダー、調和 などのキーワードとともに、異分野が対話する‘場’の設計が新たなエコシステムのフレームワークとして有効である。AI社会論研究会は、これまでAIと社会の接点としての、その場を担っているとすれば、どのような効果をAI技術と社会のあり方の議論に波及してきたのかをAI社会論研究会の特徴である「HELPS」を指標に取り入れ、その議論とステークホルダーの多様性を中心に分析し、今後のあり方についても示唆する。
著者
永渕 輝佳 中田 活也 玉木 彰 永井 宏達 永冨 孝幸 木村 恵理子 濱田 浩志 二宮 晴夫
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1325, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】私達は第48回日本理学療法学術大会において筋温存型MIS-THAであるanterolateral-supine approach(AL-S)と筋切離型MIS-THAであるposterolateral approach(PA)の進入法の違いによって股関節外転,伸展,外旋の筋力回復はAL-Sのほうが早いことを報告した。また,Gremeaux(2008年)らは,THA術後の筋力回復において大腿四頭筋と下腿三頭筋へ低周波を行うことによって,膝伸展筋力の改善があると報告しているが,股関節周囲筋への電気刺激による筋力への影響を検討した報告はみられない。そこで今回,THA術後早期の下肢への電気刺激(Electric muscle stimulation:EMS)が術後下肢筋力,達成度に与える影響を明らかにすること目的に検討を行った。【方法】当院において変形性股関節症(股OA)を原因疾患として初回片側THAの施行症例で脱臼度Crowe分類III度以上の股OA,非手術側が有痛性の股関節疾患を罹患している者を除外した70例を対象とした(全例女性・平均年齢63.0±7.6歳)。これらの内訳は,AL-S群32例(62.8±7.2歳),PA群32例(63.0±8.2歳),PAの電気刺激群(EMS-PA)6例(60.8±5.5歳)であった。身長,体重,BMI,手術時年齢は3群間に統計学的有意差は認めなかった。手術はすべて同一の術者が行い,術後は3群ともに同一のクリニカルパスを使用し,術翌日より理学療法士による関節可動域練習,筋力増強練習,歩行練習,ADL練習を実施した。EMS-PA群においては手術側の大殿筋に対して術後3日目より週5日を3週間行った。電気刺激の周波数20Hz,肢位はベッド上背臥位とし,関節の動きを含まないような収縮を20分間行い,不快感や痛みを訴えた場合は中止した。電気刺激装置はホーマーイオン社製オートテンズプロIIIを使用した。検討項目は股関節外転,屈曲,伸展,外旋,内旋,膝関節伸展,屈曲筋力とし,術前,術後10日(10D),21日(21D),2カ月目(2M)に測定した。筋力測定にはHand-Held Dynamometerを使用し,同一の検者によって行い,得られた値からトルク体重比(Nm/Kg)を算出した。達成度は手術日からのStraight Leg Raiseが可能,片脚立位(SLS)が可能,杖自立,独歩自立になるまでの日数を調査した。統計学的検討は筋力推移の比較には分割プロット分散分析3×4,進入法(AL-SとPA,EMS-PA)×時期(術前,10D,21D,2M)を行った。術前に有意差を認めた項目は共分散分析を行い,交互作用を認めた項目は多重比較検定を行った。達成度の検討は一元配置分散分析を用い,有意差を認めた項目は多重比較検定を行った。全ての検定の統計学的有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会による承認を受けた上で実施した。全対象者に対し,事前に十分な説明を行い,研究参加への同意と同意書への署名を得た。【結果】筋力推移の比較では股関節外転(p<0.01)屈曲(p<0.05)外旋(p<0.01)伸展(p<0.01)筋力において進入法と時期の要因間に交互作用が認められた。各時期の3群間の比較では股関節外転は術後10DではAL-SがPAより高く,21D,2MではAL-S,EMS-PAがPAより高かった。股関節外旋は術後10DではAL-SがPA,EMS-PAより高く,EMS-PAがPAより高かった。21DではAL-SがPA,EMS-PAより高く,2MではAL-SがPAより高かったがEMS-PAとの間には有意差はなかった。伸展は10DではAL-SがPAより高かったがEMS-PAとの間には有意差はなかった。達成度は,SLS可能日数,杖歩行自立までの日数は3群間に有意差が認められ,両項目ともにAL-S群がPA群より有意に早かったがEMS-PAとの間には有意差はなかった。EMSは全例,途中で中止することなく行えた。【考察】電気刺激療法の効果としては筋機能の改善,疼痛緩和,組織修復促進,血管新生,血管透過性の促進などが報告されている。Simon(1990年)らは大殿筋への電気刺激により臀部の血流が増加したと報告しており,今回の電気刺激の強度,頻度から考えると大殿筋に関与している股関節伸展や外旋筋力がPAに比べ回復していたのは,電気刺激により血流増加による疼痛緩和や動員される運動単位の増加,type2繊維の筋収縮を促すことが筋機能の向上に繋がったのではないかと考える。外転筋力に関しては,短外旋筋は関節の後方安定性に寄与していると言われており,EMS-PAがPAより外旋筋力が高かったことからEMS-PAの股関節の安定性が向上し外転筋力が改善したのではないかと考える。本研究の結果より,THA後の電気刺激は安全に行うことができ,術後の筋力回復に有用であることが示された。【理学療法学研究としての意義】THA術後早期の下肢への電気刺激が術後下肢筋力,達成度に与える影響を明らかにすることで,術後早期のリハビリテーションにおける個別プログラム立案の一助になると考えられる。
著者
高橋 保
出版者
公益社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.38-44, 1992-09-15 (Released:2010-04-30)
参考文献数
14
著者
辻 泰弘 田中 英子
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.385-388, 2004-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
12

近年, 調剤に係わる医療事故が相次ぎ, 薬剤師による処方監査の重要性が再認識されている. 今回, リスクマネージメントの観点から処方せん疑義照会内容を集計し, 検討を行った. 平成14年に医療の質の向上を目的として, 電子カルテ及びオーダリングシステムを核とした診療・調剤支援システムを導入した後, 平成15年1月から12月までの本院処方せん159,354枚 (外来: 125,723枚入院: 33,631枚) において, 疑義照会を行った1,010件 (外来: 679件入院: 331件) を「薬学的疑義照会」と「処方形式的疑義照会」に分類し比較検討した. 総処方せん枚数に対する疑義照会率は0.63% (外来0.54%, 入院0.98%) であり, 入院の疑義照会率は外来の疑義照会率と比較して有意差 (p<0.05) がみられた. 外来・入院双方とも疑義照会発生比率は, 「処方形式的疑義照会」が「薬学的疑義照会」を上回る結果となった. なお, 疑義照会後の処方変更率は外来90.3%, 入院92.1%, 全体で91.6%と高い処方変更率となり, 薬剤師の疑義照会が合理性を持って受け入れられ, 適正な内容であったことを示しており, 副作用防止・相互作用回避など, 医薬品に関わるリスクマネージメントへ貢献していることが示唆された.
著者
山口 修平
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.222-230, 2007-09-30 (Released:2008-10-01)
参考文献数
25
被引用文献数
2

エピソード記憶の記銘と想起,意味記憶の想起,そして作業記憶における前頭葉の役割を神経機能画像研究の成果を中心に概説した。エピソード記憶の記銘の際には左の前頭前野が関与し,想起に際しては両側の前頭前野が関与している。記憶内容の言語化の程度も半球差に影響している。新奇な刺激の自動的な記銘には後方連合野の関与が強いが,前頭葉の情動(前頭眼窩面)や注意のネットワーク(前帯状回)も関与している。意味記憶そのものは側頭葉を主体とするネットワークに存在するが,その随意的な想起には左腹外側前頭前野の役割が重要である。作業記憶は前頭葉の実行機能の中で中心的な役割を果たしており,その際に主に活動する前頭葉内部位は中および下前頭回であり,頭頂葉とのネットワークが重要である。
著者
Hidechika Karasawa Hiroki Shibasaki Go Itohiya Shinichiro Yamashita Kazuyoshi Arai
出版者
The Japan Institute of Metals and Materials
雑誌
MATERIALS TRANSACTIONS (ISSN:13459678)
巻号頁・発行日
pp.MT-Z2022002, (Released:2022-05-20)
参考文献数
15

Sand erosion is a phenomenon in which the collision of solid particles erodes a material surface. The rate of sand erosion is higher in carbon fiber reinforced plastics (CFRP) than in metallic materials. Therefore, CFRP requires a light and protective coating material. Herein, to improve the erosion resistance of CFRP, five polyurethane coated CFRPs with different glass transition temperatures were investigated at elevated temperatures, and a prediction formula of the erosion rate at the elevated temperatures was established. Furthermore, computational fluid dynamics was used to predict the surface temperature and erosion rate of fan exit guide vane (FEGV) when polyurethane coating was applied, and the coating thickness for FEGV in the erosion environment was estimated based on these predictions. This Paper was Originally Published in Japanese in J. Soc. Mater. Sci., Jpn. 70 (2021) 896–903. The caption of Fig. 10 is slightly modified.
著者
Nikolay V. Parin Sergei V. Mikhailin
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.27-30, 1982-06-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
8

タチウオ類の1新種, Lepidopus calcarの記載を行った.本種はハワイ海嶺のコラハン海山の水深270~350mのところから採集され, 強いトゲ状の啓鰭第2棘を有することで他のLepidopus属魚類 (成魚) と区別できる.本種の脊椎骨数と背鰭鰭条数はL.caudatus (Euphrasen) のものより少なく, L.xantusi Goode et BeanおよびL.dubius Parin et Mikhailinのものよりも多い.
著者
高坂正尭著
出版者
中央公論社
巻号頁・発行日
1965
著者
原 貴洋 松井 勝弘 鈴木 達郎 手塚 隆久 森嶋 輝也
出版者
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
農研機構研究報告 (ISSN:24349895)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.9, pp.25-36, 2021-11-30 (Released:2022-02-01)
参考文献数
21

「NARO-FE-1」は,九州沖縄農業研究センター(以下,九沖研とする)において育成された春まき栽培でき穂発芽しにくいソバ新品種である.「NARO-FE-1」は,九沖研選抜の5 系統の交配後代から集団選抜法により選抜固定して育成された.「NARO-FE-1」は春まき品種「春のいぶき」と比較し穂発芽しにくく,春まき栽培において多収で,容積重が大きい.夏まきの標準期播種栽培では,「さちいずみ」と比較し成熟が早く低収であるが,遅播栽培では同等の収量があり経済栽培が成り立つ.成熟期,草丈,倒伏程度と食味は「NARO-FE-1」と「春のいぶき」で同程度である.なお,品種名「NARO-FE-1」は,各地域等で育成したブランド名はそのままに品種を置換できる「地域農産物ブランド化における品種と商標との知財ミックス戦略」を想定し命名したものである.本品種は暖地,温暖地,北陸の春まきソバ栽培地域での普及が見込まれる.
著者
後藤 善則 又野 豊 吉光 雅志 高橋 直樹
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1603-1608, 2015 (Released:2015-08-29)
参考文献数
13

症例は66歳女性.29歳時にバセドウ病と診断されたが通院は中断していた.浮腫,倦怠感,黄疸を認め受診した.血液検査で汎血球減少と大球性貧血を認めビタミンB12低値から悪性貧血と診断した.原因として,ガストリン高値,抗内因子抗体陽性,上部消化管内視鏡検査で胃底腺領域優位の萎縮性変化を認めたことから自己免疫性胃炎を考えた.ビタミンB12を補充し症状は速やかに軽快した.自己免疫性甲状腺疾患に,長期経過して悪性貧血を伴った多腺性自己免疫症候群3B型と思われた.自己免疫性胃炎は胃癌やカルチノイドの合併頻度が高いことから,自己免疫性甲状腺疾患の患者には上部消化管内視鏡検査を勧め,A型胃炎の有無に注意した観察が望ましい.
著者
Yoshiro Kusano
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
Journal of Rural Medicine (ISSN:1880487X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.132-137, 2019 (Released:2019-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

A 52-year-old woman was transported for reduced consciousness. Her blood glucose was only 19 mg/dL, but her blood immunoreactive insulin and insulin antibody levels were high at 250 μU/mL and 50 U/mL, respectively. She had no history of insulin treatment, but she had been taking coenzyme Q10 supplements for three months. Her human leukocyte antigen serotype was DR4. After stopping coenzyme Q10, her hypoglycemia disappeared and immunoreactive insulin and insulin antibody levels normalized. Based on the above, she was diagnosed with insulin autoimmune syndrome caused by coenzyme Q10. It is necessary to be aware of the onset of insulin autoimmune syndrome due to coenzyme Q10. Its pathogenesis requires clarification.
著者
富田 広樹
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.88, pp.1-52, 2018-03

二○○○年に物故した英文学者、永川玲二は長年にわたってスペイン・セビーリャに居住し、膨大な蔵書を構築した。現在この蔵書はセビーリャ大学図書館に所蔵されている。本稿ではこのコレクションに含まれる日本語ならびに日本で刊行された文献について、その目録の有する問題点を指摘するとともに、実用に堪える書誌情報を提供することを目的とする。