著者
藤田 眞作 小山 行一 小野 茂敏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.1, pp.1-12, 1991-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
11

インスタントカラー写真に用いるo-スルホンアミドフェノール色素放出剤の分子設計における知見を述べる。この化合物の色素放出能力は,酸化と加水分解による。これらの効率が,ベンゼン環の置換基によって,大きく変化することを見いだした。とくに,相当する酸化体(o-キノン・モノスルホンイミド)の加水分解の副反応を調べ,それがt-ブチル基の立体障害により抑止できることを見つけた。一方,放出されるアゾ色素の堅ろう性は,アゾ成分中の電子供与基の存在で向上することを示した。色素放出剤の合成設計においては,o-アミノフェノール中間体の合成経路を種々検討した。その中から,ベンゾオキサゾールを経由する経路を開発した。Beckmann転位によるベンゾオキサゾールの合成法,スルホニルクロリドの合成条件,2-メトキシエトキシ基の導入方法,キノンの新規還元法を述べる。この研究によって,この色素放出剤を用いるインスタントカラーフィルムが,実用化された。
著者
樋口 亜瑞佐 梨谷 美帆
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要
巻号頁・発行日
vol.11, pp.9-18, 2021-07

本稿は、LGBTsに関する臨床心理学的支援をテーマに、児童・思春期段階にあるトランスジェンダー当事者のケースについて、性自認の視点から検討することを目的としたものである。現在のところ、LGBTsにとって性自認や性指向に対する揺らぎや葛藤は、児童・思春期の発達段階に自覚されることが多く、文部科学省はそうした児童生徒に対する個別的配慮の必要性について指摘する。本稿では児童・思春期のトランスジェンダー当事者ケースにおいて、取り巻く支援者や当事者家族が、どのように性自認をめぐる揺らぎや葛藤を理解し、援助のあり方を考えることができるのかについて、2つのエピソード事例をもとに検討を試みた。社会・学校・家庭で、無理解や孤立に晒されたトランスジェンダー当事者は、自己無価値観や将来への絶望を感じやすく、より重篤なメンタルヘルスの問題を抱えるリスクも高い。今後はLGBTsに対する正しい理解や適切な対応を周囲の支援者や当事者家族がより意識し、教育現場を含め社会そのものが性の多様性を受け入れることのできる素地作りに向けた取り組みを一層行っていく必要がある。
著者
虎尾 憲史 山元 啓史
出版者
筑波大学留学生センター
雑誌
筑波大学留学生センタ-日本語教育論集 (ISSN:13481363)
巻号頁・発行日
no.15, pp.47-61, 2000

虎尾・山元(1999 )での分析に続き,データベース化した日本語教科書の初級15 種22 冊,中級15 種16 冊の本文部分に出現する漢字の分析を行った。今回は各教科書の含有異漢字について,15 種全てに共出現するものから1 種のみに出現するものまでの,それぞれの個数と各教科書内での割合の分析結果に現われた,各教科書の特性の異同による大まかなグルーピングを試みた。そして,各教科書の日本語能力試験対象漢字の含有率も分析し,3 級以下を初級漢字,2 級以上を中級漢字とした場合の,それぞれの含有比率の異同によるグルーピングも試みた。その結果,先の大まかなグルーピングとほぼ同様の結果となり,データベース分析による各教科書の含有異漢字の種類や重複,個数,出現の様子等の情報に基づく,教科書分類の可能性と各教科書の位置づけを明らかにすることができた。Following our analysis in Torao/ Yamamoto (1999 ), we have made an analysis of the kanji in the database of the main text part of 15 kinds of 22 basic Japanese language textbooks and 16 intermediate ones. we analyzed the kanji of each textbook and calculated the number and percentage of kanji, ranging from those appearing in only one kind of textbook to those appearing in all 15 kinds of textboks. These data also premit a rough grouping of textbooks. We have also analyzed the degree to which each textbook contains the kanji tested in the Japanese Language Proficiency Test (JLPT) . We first devided the JLPT kanji into level 4 and 3 kanji (basic level kanji) and level 2 and 1 kanji (intermediate to advanced level kanji) . We then regrouped the textbooks according to the ratio of these two levels of JLPT kani. The grouping of textbooks was more or less same using both methods, and shows the possibility of grouping and positioning textbooks based on their kanji as derived from the database analysis.
著者
山崎 允宏 菊地 裕絵
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.242-248, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
43

肥満は, 発症および経過にさまざまな心理社会的因子が関わる, 代表的な 「心身症」 である. 肥満に対してはこれまで行動療法を含むさまざまな治療が試みられてきたが, 治療からの脱落や減量した体重の維持が大きな問題となっている. 治療からの脱落や減量した体重の維持に影響を及ぼす肥満患者に特有の認知的特性が明らかになってきており, 肥満に対する認知行動療法 (personalized cognitive-behavioral therapy for obesity : CBT-OB) が注目されている. また, 最近では肥満に対するスティグマの話題が, 医療の世界を超えた社会問題となっており, 患者の医学的アウトカムとの関連も明らかになってきている. このような背景から, 今後肥満治療に対する心身医学の役割はますます大きくなっていくものと考えられる.
著者
高橋 美沙 渡邊 裕之 嘉治 一樹 津村 一美 橋本 昌美 高平 尚伸
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48102030, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】肩関節の安定性には,inner musclesである腱板とouter musclesである浅層筋群との力のバランスが重要であり,このバランスが破綻すると肩関節の不安定性を生じさせ,肩峰下インピンジメント症候群などの種々の障害を引き起こす(筒井ら,1992).特に,棘上筋は上腕骨頭を求心位に保つ機能を有しており,動揺性肩関節患者では棘上筋が正常な機能を果たしていないことが報告されている(河野,1986).したがって,棘上筋を強化すること(棘上筋トレーニング)は肩関節安定性の向上を目的とした肩関節障害予防として重要である.従来,棘上筋トレーニングの効果判定法として肩甲骨面挙上筋力測定が行われてきた.しかし,肩甲骨面挙上筋力測定は三角筋の影響を受けやすく,棘上筋単独で筋力を評価することは困難である(Reinold et al,2007).一方,超音波画像診断装置を用いた筋厚測定は技術的に簡便かつ非侵襲性であるため棘上筋トレーニングを評価する方法として着目されている(二木ら,2001).棘上筋筋厚はMRIで測定された棘上筋断面積と相関することが報告されている(Yi et al,2012).また,我々が事前に実施した実験の未報告データにおいて,棘上筋筋厚と筋活動との相関が認められ,筋厚測定によって筋活動を推定することが可能である.棘上筋トレーニングの実施効果を縦断的に検討した報告は少なく,棘上筋トレーニングの効果については不明な点が多い.本研究の目的は,超音波画像診断装置を用いて棘上筋筋厚を測定することにより,棘上筋トレーニングが棘上筋筋活動に及ぼす影響について検討することである.【方法】対象は健常成人男性9 名の18 肩とした.肩関節疾患および外傷の既往歴,肩関節に疼痛を有する者は対象から除外した.棘上筋トレーニングの方法は,イエローセラバンド(2kg負荷)を使用し,肩関節外旋位での肩甲骨面挙上0°〜30°までの反復運動とした.回数は20 回× 3 セットとした.棘上筋筋厚は超音波画像診断装置(ProSound,SSD-4000,ALOKA)を使用して測定された.超音波画像の撮像位置は,肩甲棘長を100%とし,肩甲棘基部から10%,50%の部位に15MHzのリニアプローブを肩甲棘に対して垂直にあてた.筋厚は,棘上筋浅層筋膜と深層筋膜との間の距離とした.試行動作は,肩関節外旋位での肩甲骨面挙上30°の肢位にて,他動保持時,セラバンド2kg負荷時,最大等尺性収縮時の3 条件とした.実験手順を以下に示す.トレーニング開始前に棘上筋筋厚を測定しベースライン値とした.その後,対象者は棘上筋トレーニングを週に5 回の頻度で6 週間実施した.トレーニング終了後,再度棘上筋筋厚を測定した.統計学的解析として,各条件における棘上筋筋厚をWilcoxonの符号付順位和検定を用いてトレーニング前後で比較した.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施された(承認番号:2012-014).本研究実施に際し,対象者に研究内容に関して説明し,書面にて同意を得た.【結果】肩甲棘長の10%部位での棘上筋筋厚は他動保持時(介入前0.28 ± 0.16cm,介入後0.41 ± 0.14cm)およびセラバンド2kg 負荷時(介入前0.61 ± 0.26cm,介入後0.80 ± 0.22cm)の条件においてトレーニング後に有意に増加した(p < 0.05).50% 部位での棘上筋筋厚は他動保持時(介入前1.76 ± 0.19cm,介入後1.89 ± 0.12cm)の条件においてトレーニング後に有意に増加した(p < 0.05).【考察】肩甲棘長の10%および50%の部位における棘上筋筋厚は,6 週間の棘上筋トレーニング後の他動保持時,セラバンド2kg負荷時において増加した.Yiらは,棘上筋筋厚と筋断面積が相関することを報告している.また,我々が実施した実験の未報告のデータによると,棘上筋筋厚と筋活動との間に相関が認められたことから,筋厚の増加は筋活動の増加を反映している可能性がある.したがって,6 週間の棘上筋トレーニングは筋活動を増加させる可能性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】6 週間の棘上筋トレーニングは棘上筋筋厚を増加させた.したがって,本研究で実施した棘上筋トレーニングは肩関節障害予防を目的とした棘上筋強化法として有用である可能性がある.また,超音波画像診断装置を用いた棘上筋筋厚測定は,棘上筋筋活動を非侵襲的に評価でき,棘上筋トレーニングの効果判定法として有用である可能性が示唆された.
著者
佐藤 昭雄 加藤 督介
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.390-393, 1986-05-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
9

dopamine receptor-blocking drug metoclopramideを投与して, 甲状腺機能異常症における下垂体Prolactin分泌にご及ぼす内因性dopamineの抑制作用を評価することを試みた.1. 甲状腺機能亢進症ではTRHに対しては低反応であつたが, MCP投与後PRLは有意に上昇した.2. 原発性甲状腺機能低下症ではPRL値は高値でTRHに過大反応がみられたが, MCPに対してはさらに過大反応がみられた.以上のことより甲状腺ホルモンの高値は視床下部のdopamine分泌を刺激し, 甲状腺ホルモンの低値は抑制しているものと思われる.
著者
田中 宣行 岩出 純 川田 明彦
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.319-324, 2015 (Released:2018-01-25)
参考文献数
9

エンジン高出力化に伴い排気バルブの熱負荷が高くなり,各運転域での温度を正確に把握する必要がある.最高温度のみを計測する硬度法に代わる方法として,可視化法・熱電対法を確立した.可視化法ではNa 封入バルブは熱負荷の高い首部を効果的に冷却できることを確認し,熱電対法と併せて各運転域での温度を明らかにした.
著者
山下 晋吾 岡本 誠
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.F03-F03, 2007

近年の情報技術の発達により、ユーザを取り巻くウェブコンテンツは急速に変化してきた。ウェブコンテンツを記録するブックマークは、その多くがディレクトリ構造による整理を行なっている。ディレクトリ構造は、非日常的で、論理的な整理を強いられるため、ひとたび編成されたディレクトリ構造は、再編成に手間がかかり、日々変わりゆくユーザの状況や視点に柔軟に対応できない。新たに登場したソーシャルブックマークは共有目的で、私的なブックマークとのシームレスな連携が必要であると考えた。 この問題を解決するために、本研究では「使用頻度による分類」と「位置による特徴付け」という実世界の整理法を用いたソーシャルブックマーク"Drawers"を提案した。日常的に使うものは机の上に、滅多に使わないものは押し入れの中に入れておくような感覚で操作することができる。また、Drawersはユーザの関心を表したデジタルダイアグラム"BookmarkStatus"を生成する。BookmarkStatusは全てのユーザで共通の関心領域の指標であり、これはユーザのソーシャルブックマークとしての用途をサポートすることができる。 評価実験の結果、個人のブックマークは良い評価を受けることができた。しかしBookmarkStatusが不完全であり、各ユーザの関心領域を示すパラメータの解析等、改良の余地が見られた。
著者
三輪 高喜
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.70-79, 2011 (Released:2012-04-15)
参考文献数
26
被引用文献数
2

嗅覚検査の現状と将来の展望について概説する。嗅覚検査は自覚的検査と他覚的検査に分けられるが, 他覚的検査はいまだ臨床で用いられておらず, 臨床検査として行われているのは自覚的検査のみである。自覚的検査は, 域値検査, 同定能検査, 識別検査に分けられ, 域値検査は患者のニオイを感じる強さすなわち嗅力を表している。同定能検査ならびに識別検査は患者のニオイを嗅ぎわける, または認識する能力を表している。わが国で行われているT&Tオルファクトメーターは域値検査と同定能検査の両方を兼ねた検査であるが, 検査の煩雑さとニオイ汚染の問題から臨床の現場で用いられることは少ない。近年, ニオイスティック, Open Essenceなど日本人に適した嗅覚同定能検査が開発され発売されている。同定能を測定するのに有効な検査法であるが, まだ保険承認が得られていないため, 臨床検査として用いることはできない。今後は他覚的検査の臨床応用とともに, これらの同定能検査が臨床の場で用いられるようになることが求められている。
著者
河野 龍也
出版者
実践女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2020年度は、当初の計画通り、台南の台湾文学館における展示企画「百年の旅びと:佐藤春夫1920台湾旅行文学展」(百年之遇:佐藤春夫1920臺灣旅行文學展)に本研究課題の成果を活用した。展示に関する具体的な業務では、全体構成と展示品説明、翻訳等を担当した。展示期間は当初、2020年4月3日から11月29日までの予定であったが、好評のため2021年2月28日まで延長した。しかし、延長後も防疫上の渡航規制が解除されず、会期中一度も参観することはできなかった。また、国際交流行事がすべて中止され、研究者の連携や関係者への新規取材を進めることができなかった。ただし、この展示によって佐藤春夫の台湾での知名度が飛躍的に向上し、今後の研究連携や情報集約の基礎固めができた意義は大きい。また、資料写真と説明文を使って、台湾文学館がデジタルミュージアムを構築し、会期終了後もホームページで公開を継続している。これには日本語版・中国語版があり、日本からもアクセスできる。展示に合わせて図録を兼ねた論文集を台湾で出版し、その編集と執筆も担当した。そのほか、佐藤春夫の台湾旅行関連作品を9編集めた『佐藤春夫台湾小説集 女誡扇綺譚』(中公文庫)を編集し、解説を執筆した。春夫の「台湾もの」が文庫版になるのは、1936年の単行本『霧社』(昭森社)出版以来これが初めてである。また解説には、特定された作品の舞台に関する情報や、旅行日程に関する従来説の再検討など、本研究および本研究にいたる過程で明らかすることができた最新の成果を反映させ、一般的な作家紹介・作品紹介にとどまらない内容を盛り込めた。論文は春夫の「台湾もの」の一つ「鷹爪花」のモデルと虚構化の手法に関するもの1点、春夫の台湾観に「故郷の喪失」のテーマを指摘したもの1点(前記論文集所収)、『南方紀行』に関する論考を再構成して中国語訳したもの1点を発表した。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1916年10月05日, 1916-10-05