著者
中川 辰郎 下田 忠和 大野 直人 桜井 健司
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.2976-2980, 1992-12-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
17

胃癌の疑いで手術し組織学的に胃のサルコイドーシス合併と診断した症例と胃の所属リンパ節および胃壁内にサルコイド結節を伴ったpm胃癌の症例を経験したので報告する.症例1は68歳男性.主訴は食欲不振.透視で胃体中下部の大小彎に壁の硬化像を認め,胃内視鏡で同部にびらん,不正潰瘍を認めたが,生検では陰性であった.胃びまん性癌および胃悪性リンパ腫を否定できず胃全摘を施行した.組織学的には,胃全体の粘膜から固有筋層にラングハンス型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫と所属リンパ節にもサルコイド結節を認め,胃サルコイドーシスと診断した.症例2, 52歳男性.心窩部痛の精査目的で入院.透視,胃内視鏡で胃体下部前壁にIIc病変を同定した.組織学的には印環細胞癌で深達度はpmであった.癌病巣とは別に幽門部の粘膜内に微小類上皮肉芽腫を認めた.サルコイドーシスは全身性疾患として注目されてきたが,消化管,とくに胃のサルコイドーシスについての報告は少なく,その臨床的意義について検討した.
著者
小谷 通泰 山中 英生 秋田 直也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.109-114, 2006-10-25
参考文献数
8
被引用文献数
1

本研究は、神戸市内の有料道路で現在実施中であるオフピーク時の料金割引制度を対象として、ドライバーへの事後調査結果をもとに、導入による利用者の交通行動への影響を把握することを試みる。具体的には、利用者への意識調査結果をもとに割引制度の認知度やその要因を明らかにする。次いで、割引制度実施後の通行時間帯の変更実態を示しその変更要因を分析する。さらに、導入後の通行頻度の変化により利用者グループをセグメント化し、各グループの特性を明らかにする。また、交通量の観測結果から割引制度の実施前後における時間帯別通行台数の変化を示す。そして観測された通行台数の変化と意識調査結果より推定した交通量変化を比較し、両者の関連を考察する。
著者
中島 直樹 杉村 隆史 小野 恭裕 江崎 泰斗 柳瀬 敏彦 梅田 文夫 名和田 新 本村 正治
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.8, pp.521-529, 1997-08-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
16

副腎アンドロゲンは抗糖尿病作用を有すとされるが, その詳細な機序は明らかでない. 今回, 非インスリン療法中の成人男性糖尿病患者59名および非糖尿病者32名の計91名について早朝空腹時に血中dehydroepiandrosterone (以下DHEA), DHEA-sulfate (DHEA-S), testosterone, estradiol, cortisol, 空腹時血糖, HbA1c, IRIを測定した. 全対象において, 血中DHEA-S濃度はHbA1c (p<0.05) や空腹時血糖値 (p<0.05) と有意の負相関を示した. 比較的高IRI血症群 (IRI10μU/ml以上群, n=25) では, 正IRI血症群 (n=66) に比して血中DHEA濃度が有意に低下していた (1.91±1.32ng/ml vs. 2.42±1.12ng/ml, p <0.01).糖尿病群から抽出した28名で6カ月後に再検をしたところ, HbA1c値1%以上改善群 (n=6) では血中DHEA-S濃度は有意 (p<0.05) に増加した. また, 血中IRI低下群 (n=12) では血中DHEA濃度が有意に (p<0.05) 増加した. 以上, 成人男性においては, 糖尿病コントロール状態と血中DHEA-S濃度が関連し, 一方血中IRI値と血中DHEA濃度が関連することが示唆された. これらの関連は経時的観察においても認められた.
著者
Masaki Hasegawa Shusaku Kanai Michele Eisemann Shimizu Sadaaki Oki Akira Otsuka
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.77-81, 2007 (Released:2007-03-23)
参考文献数
9

The purpose of this study was to investigate the function of Japanese Geta clogs. We measured the foot pressure and the distance between the Geta and the heel. An F-scan and three-dimensional motion analyses were done. Toe pressure increased in the stance phase at toe-off, and we confirmed that heel-Geta contact is present at the beginning of swing phase. The distance between the Geta and the heel increased from heel-off to toe-off and decreased from toe-off to mid-swing. The results suggest that active toe movement occurs during Geta gait, and the use of Geta clogs may contribute to preventing foot disorders and falls. Geta may be useful for foot and toe strengthening.
著者
阿久津 智子 櫻田 宏一 横田 勲
出版者
科学警察研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

まず、前年度までの成果である血液・唾液・精液multiplex RT-PCR系に、膣液multiplex RT-PCR系を統合し、さらに鼻汁マーカー1種を加えた、5種の体液に対する16-plex RT-PCR系を構築した。標準的な体液試料を用いて16マーカーの増幅バランスを確認したところ、血液マーカー1種および膣液マーカー1種の増幅が著しく低下していた。両プライマーの配列から、プライマーダイマーが形成されることが判明したため、血液マーカーのプライマーを再設計したところ、増幅バランスが改善した。つづいて、新たに整備されたジェネティックアナライザーSeqStudioを用いたフラグメント解析による、16-plex RT-PCR法の増幅産物の検出を試みた。検出条件の最適化のため、PCR産物の希釈、プライマーの希釈、PCRサイクルの調整等を行ったところ、PCR増幅産物を適宜希釈することで、PCR条件を改変することなく、SeqStudioによるフラグメント解析にも対応可能であることが確認できた。併せて、フラグメント解析・ジェノタイピング用ソフトウェアGenemapperによる解析条件も決定した。決定した分析・解析条件により、標準的な各種体液試料における16-plex RT-PCR法の増幅産物をSeqStudioで解析し、各マーカーの特異性を確認した。その結果、各マーカーは、概ね想定される体液に対して特異的であったが、一部のマーカーで他の体液との交差性が認められた。
著者
山田 容三 安樂 怜央
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>インドネシアのEfi Yuliati Yovi博士が開発した林業安全ゲームを基に、ボゴール農業大学とのJSPS二国間共同研究(2016〜2018年度)を通して、日本版の林業安全ゲーム・チェーンソー伐木作業編を作成した。林業安全ゲームは、5人のプレーヤーと1人のゲームマスターで進めるボードゲームであり、初心者向けの安全編と技術編、熟練者向け、経営者向けの4つのレベルで構成される。林業安全ゲームの学習効果を確かめるために、ゲーム前後に選択式の10問の小テストを行い、チェックリストにより質問カードの出現頻度と正答率を調べた。調査は、静岡県で熟練者向けを、愛媛県で初心者向けの技術編を試行した。小テストの得点は、熟練者向けと初心者向けともにゲーム後に2ポイント前後の向上が見られ、林業安全ゲームの効果が確認された。特に、ゲーム中に16〜18枚程度の質問カードが全て出ると、ゲーム後の小テストの得点が高くなることが確認され、5人のプレーヤーでプレーすることが効果的である。また、質問カードはゲーム中に順不同で現れ、質問の解答中にゲームマスターからのヒントやプレーヤー間の知識や経験の情報交換が促進され、学習効果を高めていると考察された。</p>
著者
橋本 賢一郎 遠峰 隆史 関谷 勇司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.236, pp.51-56, 2014-10-07

社会活動や日常生活のうち,インターネットを用いた活動の比重が高くなってきている.それに伴い,これまでの国家間のサイバー戦争だけでなく,インターネットに接続された機器や個人情報,知的財産を狙った被害が増加し対策が急務となっている.本論文では,Interop Tokyo 2014にて構築したShowNetを事例として,昨今のサイバーセキュリティに関する脅威の手法と,それに対抗するための技術,それらを組み合わせた防御システムの構築方法について考察する.また,ShowNetでのセキュリティ対策を通じて得られたデータから,標的型攻撃の存在や未知のマルウェアの侵入,更にはIPv6による攻撃も開始されていることがわかった.短期間の展示会のために構築されたネットワークへの脅威から,日常的に利用されるネットワークへの脅威を推察し,今後の攻撃の傾向と,サイバーセキュリティにとって重要と思われる防御方法に関して考察する.
著者
生野 優輝 外村 佳伸
雑誌
2020年度 情報処理学会関西支部 支部大会 講演論文集 (ISSN:1884197X)
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020-09-11

指文字を含む手指ジェスチャー認識にLeap Motionを用いて取り組んできたが,現在単眼カメラから様々な認識処理を実現するGoogle社のMediaPipeの活用を検討している.今回それらを用いた特性上の比較検討を報告する.
著者
近田 典行
出版者
明治大学経理研究所
雑誌
経理知識 (ISSN:03895890)
巻号頁・発行日
no.71, pp.p55-82, 1992-06

近年におけるジョイント・ベンチャー(Joint Ventures:JV)の代表例は、アメリカにおける1931年着工のフーバーダム建設のために結成された「シックス・カンパニーズ・インコーポレイテッド(six companies incorporated)」と称する建設業でのJVであった。わが国では、第二次世界大戦後1950年、沖縄における米軍関係の工事でアメリカの建設会社と鹿島建設のJVが組まれたのが最初といわれている。いうまでもなく、JV(法人又は非法人形態による合弁事業)は、上記のような建設業に限らず、石油・ガス、化学、鉄鋼、鉱業等各産業で、事業拡張などの手段として使われてきた。それは、資金的、技術的なネックを乗り越え、また危険分散するための合弁である。
著者
学習院大学史料館
雑誌
学習院大学史料館紀要 (ISSN:02890860)
巻号頁・発行日
no.21, pp.55-72, 2015-03-31
著者
廣田 拓
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.54-66, 2015

本稿は、イギリスの社会学者A・ギデンズのモダニティ論で言及されている、専門家と非専門家の出会いの場を意味する、「アクセス・ポイント」という概念を検討する一論考である。アクセス・ポイントとは、モダニティを生きる人々が、特定のコンテクストを共有する(専門家などの)集団に所属すると同時に、そこを離れたところでは一般人として生活しているという両義性が顕在化する場でもある。本稿ではこのことを、自他の対面的/非対面的相互行為に現れる人称代名詞の観点から議論している。対面的な相互行為において、自他はともに双方の呼びかけに応答する〈あなた〉として現れると同時に、この関係性は相互了解的な〈ワレワレ〉性を帯びている。他方、各種マス・メディアなどを利用した非対面的な相互行為において、自己は他者を〈彼/彼女〉として対象化する一方で、この他者にとって、自己はその他大勢の中の一人として〈ヒトビト=大衆〉性を帯びて現れる。ギデンズのアクセス・ポイント概念は、こうした〈私〉の中に含まれる〈ワレワレ〉性と〈ヒトビト〉性を結びつける接合点としての意味をもつ。モダニティを生きる諸個人の実存的不安は、その実存の無根拠性を露わにする〈ヒトビト〉性を解消するべく〈ワレワレ〉性に人々を接近させる。ギデンズの議論は、それがモダニティを生きる現実から目を逸らす結果となることに注意を喚起し、この問題を乗り越えるための概念を提示している。