著者
山本 佐和子
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、中世室町期の「抄物」について、多くの先行説を類聚・列挙した「編纂抄物(集成抄物、取り合わせ抄物)」の言語研究資料としての性格を明らかにすることを目的として、文献資料の発掘・調査と言語事象の記述研究を行っている。本研究課題以降には、この種の抄物について、抄物の成立時期半ばの1530年頃から最末期の織豊期にかけて、公家・高家に漢籍注釈書として受容される様相を書誌学・文献学的調査によって明らかにし、その言語的特徴の由来を考察する予定である。今年度は、2018年度に研究発表した、中世後期~近世の注釈書における文末表現「~トナリ」について使用実態と文法的性格を論文にまとめ、抄物の成立背景と言語的特徴は、抄物と同時期の古典講釈・注釈史の中で捉え直す必要があることを指摘した。本研究では一昨年度までに、建仁寺両足院蔵「杜詩抄」に一般の仮名抄には殆ど見られない文末表現「ヂャ」や「ゾウ〈候゛〉」等が認められることを指摘してきたが、「~トナリ」もその一つである(約220例使用)。一方で、「~トナリ」は近世以降の通俗的な注釈書・学習書では多用されている。論文では、注釈表現「~トナリ」が、応仁の乱以降、即ち、口語的な仮名抄の多くが作られた時期と同時期に成立した「源氏物語」「伊勢物語」等の和文の注釈書で、原典の解釈(当代語訳)を示す用法で多用されるようになる実態を明らかにした。注釈書においてこの種の定型的な「~トナリ」が多用された要因には、当時の言語変化(亀井孝「言語史上の室町時代」『図説日本文化史大系』4、1957年)及び、古典の受容層の拡大・変容による注釈書の質的変容(伊井春樹『源氏物語注釈史の研究 室町前期』桜楓社、1980年)が関わっていると考えられる。
著者
中岡 淳
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2021-08-30

本研究は、①比較法的な見地から、婚姻の自由と親の権利に関する「憲法上の権利」の規範内容に関する分析を行い、②その権利規範の分析を踏まえて、家族法の憲法適合性に関する日本の裁判例の判断枠組を再構成することを試みるものである。また、これらの権利概念の理論構築のために、③アメリカ法やドイツ法を比較研究の対象とすることで、これらの法体系においても、同性カップルの婚姻や親子関係の法的承認を契機として、婚姻や親子関係に関する法的理解に大きな変化が生じていることを描写する。
著者
捧 奈緒美
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.74, no.646, pp.2685-2691, 2009-12-30 (Released:2010-04-01)
被引用文献数
1 1

There are In, Den, Miya, Dai, Tei and Taku in the last word of the aristocracy residential name in Heian Period. On Hyakurensyo, how to use of these is as follows:1. In and Den are used as the residential name of the Emperor and the retired Emperor. Den is used as that name of the women in the Emperor family, also. Miya on record is few. However, that is used as that of the women in the Emperor family and the aristocrats.2. Dai, Tei and Taku are used as the aristocracy residential name. Taku is used as that of people except the Emperor family and the aristocrats, also3. In, Dai and Taku are continually recorded in Hyakurensyo. Den and Tei are recorded in the latter half of that.
著者
川上 輝昭
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編, 人文・社会編 = Journal of Nagoya women's University (ISSN:21857962)
巻号頁・発行日
no.67, pp.45-57, 2021-03-10

本稿の課題は、障害者を対象とした生活介護支援施設(以下、支援施設)の現状と課題について若干の考察を試みることである。障害があるために一般就労が困難な人たちを対象に、生活介護支援施設が設けられている。支援の内容は食事、排せつ、軽作業等を主とした日中活動である。この施設を利用者している人たちは、それぞれ障害の種類も程度も異なっている。したがって生活を支えている支援員には障害に対する広い知識と高い専門性が求められている。しかし、慢性的な人手不足に加えて、日々、多忙で研修の時間さえ確保しにくいという現実もある。生活介護支援施設は、今後も多様な人たちの利用が想定されているだけに、個の思いに寄り添った支援のあり方やその内容が問われている。
著者
東 順子
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.11-16, 1986 (Released:2010-08-25)
参考文献数
7

エタノールに起因する慢性蕁麻疹, 接触蕁麻疹および化粧品皮膚炎について報告した。これらの症例の原因確定には, 通常の48時間のパッチテストでは診断困難である。エタノールの場合20-30分間のクローズドパッチテストが有用である。スクリーニングテストとして消毒用アルコール (添加物を含まない) を用いた。陽性の場合は確定診断のために99.5%試薬用エタノールを段階稀釈 (2倍へ32倍, エタノール濃度50-3%) したものを用いて行なった。8倍稀釈 (約13%) 以下の濃度で陽性反応を示す場合にはエタノールが皮膚障害の原因となっている可能性が大である。
著者
奥 恒行 岡崎 光子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.201-207, 1999-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
19
被引用文献数
8 8

健康な女子学生17名 (延22名) について, ガラクトシルスクロースの1日総摂取量を同一にして一括摂取した場合と1日2-3回に分散して摂取した場合の下痢に対する最大無作用量への影響を観察した。ガラクトシルスクロース60gの一括摂取では被験者14人中9人 (64.2%) が下痢を生じ, 45g一括摂取では被験者8人中3人 (37.5%) が下痢を生じた。しかし, 1日2-3回に分割摂取した場合, 下痢はいずれの被験者にも観察されなかった。さらに, ガラクトシルスクロース60gの一括摂取で下痢を生じた被験者9人のうち5人に30gの3回摂取 (1日90g) させたところ, 3名は下痢を生じなかった。すなわち, ガラクトシルスクロースを分割摂取する場合の下痢に対する最大無作用量は同量の一括摂取よりもかなり高くなるととが明らかになった。ガラクトシルスクロースの一括摂取による最大無作用量は体重kg当り0.80gで, 他の難消化吸収性糖質のそれの2倍以上であった。また, 腹部症状のうち「吐き気」「上部腹痛」「悪心」は, 試験物質量が多い一括摂取にみられ,「グル音」は2-3回分割摂取に多かった。「違和感」「おなら」「おなかが張る」はいずれの摂取時にも観察された。
著者
鈴木 生郎
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、相互的な存在論的依存(相互的根拠づけ)関係について理論的に整備するとともに、それをさまざまな形而上学的問題に応用することである。こうした目的を達成するために、2021年度は以下の研究を進めた。(1) 前年度に引き続き、(A)ある対象が特定の種に属すること、その対象がその種の成員として典型的な性質を持つこと、その対象その種に属するものとして同一性を保つことの間の相互依存関係を明らかにすることによって、持続の形而上学における「根拠づけの問題」を解決する論文をまとめ、出版することを目指す。また、根拠づけ概念に関する研究の応用として、(B) 死の害悪についての「タイミング問題」に対する、いわゆる「死後説」(人は死によって生じる害を、死後に被るとする説)に、より十全な擁護を与える論文を執筆するとともに、新たに着想を得た論点として、(C) 時間の哲学における「現在主義」と呼ばれる立場に対して、持続の事実を根拠づけるものは何かということに関する困難があることを指摘する課題にも取り組む。(2) 相互的根拠づけの概念に基づいて実体概念を解明する。特に、アリストテレス以来典型的な「実体」とみなされている中間的なサイズの対象が、その構成要素であるミクロな対象に対してどのような意味で「独立的」であると言えるのか、という問題意識のもとで、その独立性を相互依存関係のあり方から捉えることを目指す。
著者
藤生 雅子 光増 高夫 平野 実
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.2-7, 1988-01-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

妊娠に伴い著しいピッチの低下をきたした音声障害の1症例について, 声域, 話声域, および楽な発声時の声の基本周波数 (F0) を経時的に観察した.妊娠23週で, 声域の上限は6半音, 話声域の上限は9半音低下した.F0もB2まで低下した.出産後5カ月間経過観察した後, 保存的治療として音声治療を2カ月施行した.出産後の7カ月間, 声域の上限は妊娠前より5~15半音低い範囲で変動し, 経時的な声域拡大はなかった.話声域は上限が徐々に上昇し, 音声治療後はさらに上昇した.F0は音声治療後, わずかに上昇した.いずれの場合も妊娠前の状態にまでは回復しなかった.音声障害の発現について, エストロゲンのピアルロン酸に対する作用から若干の考察を加えた.
著者
大橋 盛徳 藤村 滋 土屋 志高 中平 篤
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21888655)
巻号頁・発行日
vol.2021-CSEC-94, no.24, pp.1-6, 2021-07-12

個人を当事者とした取引において各個人の志向がその実効性に大きくかかわると考えられることから,個人を当事者としたデータ取引の信頼性を高めるために個々人の特性を考慮し,活用することに着眼した.個人特性を行動ログから推定し,人に合わせた適切な条件設定や提示方法を確立することで,個人を当事者として含むデータ取引の信頼性向上へ繋げられると期待する.今回,個人特性の中でも,取引に不可欠なルール遵守に大きく関係する「一貫性」に着目した.日本語版の一貫性選好尺度を作成し,一貫性の選好度合いとルール遵守に関する態度や日常行動の関係を調査した.Web 質問紙調査の結果,一貫性選好度の弱いユーザは,ルールを行動選択の中心的基準としていると推測される一方で,一貫性選好度の強いユーザは,ルールのほかに,自分の周囲環境への変化の低減も行動判断基準として持つ可能性が得られた.また,一貫性の選好度合いは,商品の購買傾向や日常生活内のルーティンとして表出する可能性が示唆された.
著者
飯嶋 秀治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E14, 2021 (Released:2021-10-01)

人類学的先行研究は感覚機能障害のサーヴェイがされている[Keating&Hadder2010]が日本の「視覚障害」の先行研究[廣瀬2005;泉水2017cf.亀井2008;戸田2016等]では、諸学問の間に分散し、①教育学のような今ここの「視覚障害」、②宗教民俗学のような異文化・異時代での異なった生の在り方、③美学や障害学のような今後の生を切り開く研究がある。2019年に27名の聞書きや参与観察を通じて得た人びとのあり方がどのような研究を開きうるのかを考える。
著者
人見 優 森 傑
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.72, no.611, pp.75-82, 2007-01-30 (Released:2017-02-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2 5

This research aims to investigate how visually handicapped persons use their white cane to orient themselves when walking, and analyze their characteristic of behavior related to spatial perception from the viewpoint of ecological psychology. By focusing on 5 totally blind persons, it was found that they have been developing their dexterity for oneself in daily life. Basically, they walks along the physical guide using by slide motions and touch techniques which were instructed in the walking training. However, they have been progressing the combination slide motions with touch techniques as complex skills. The diversity of active touches could be a clue to understand spatial perception of visually handicapped persons, and to consider the effective inventions of the universal design for them.
著者
松井 康博
出版者
公益社団法人 日本薬剤学会
雑誌
薬剤学 (ISSN:03727629)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.300-304, 2019 (Released:2019-11-01)
参考文献数
5
著者
松井 康博
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.430-434, 2017 (Released:2017-05-01)
参考文献数
7

連続生産は2002年頃から始まった医薬品の品質向上のために新技術の採用を促進する取り組みの一環であり、QbD とも深い関係があると考えられる。連続生産ではスケールアップが不要であること、及び、製造工程を常時PATツールによりリアルタイムモニタリングすることからQbDアプローチの適用に適しており、高品質な医薬品の設計に有用であると考えられる。連続生産の実用化に向けては技術上、規制上の課題はあるが、近い将来それらが解決されて高品質な医薬品の迅速な提供に貢献することが期待される。
著者
松田 嘉弘
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.99-103, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
8

連続生産とは, 原料または混合物を連続的に製造工程内に供給し, 生産物を継続的に取り出す生産方法である. プロセスを長期間稼働させることで, 望ましい品質を有する生産物を, 必要な量, 必要な時期に製造できる. 連続生産により, 人的エラーの軽減や需要に応じた製造管理の実現など, 多くの利点が期待されているが, 連続生産に関連する規制上の考え方はまだ提示されていない. 連続生産を国内で円滑に導入していくためには, 産官学が一丸となり, 連続生産を導入するうえでの課題に取り組み, 知識を共有していく必要がある.
著者
清水 一
出版者
大阪経大学会
雑誌
大阪経大論集 (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.57-70, 2013-05-15 (Released:2018-02-26)
被引用文献数
4

社会科学系学部(約400学部)の偏差値と退学率・就職率をマッチングさせたデータを分析した結果、退学率や就職率は偏差値によってかなりの部分が説明されることが分かった。大学生にとって卒業できるか(退学率が低いか)、就職できるかは、大学生活の満足度を決める主要な要因であるが、偏差値はそれらの指標をかなりの程度代理する。そのため情報の入手しやすさを考慮すると、偏差値による大学選びにはかなりの合理性があると考えられる。だだし、低偏差値の学部では偏差値水準と就職率等の実績が逆転傾向にあるため、低偏差値の学部を選ぶ際には偏差値によらない大学・学部選びにも一定の合理性がある可能性が否定できない。