著者
板橋 雅子 高村 範子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.208-211, 1985

王滝蕪と小松菜とを用いて,最初から乳酸を加えてすんき漬処理を試み,同時に行なった漬種(乳酸菌源)処理物と諸性状を比較して以下の結果を得た。<BR>(1) 粗たんぱく質含量は原料よりも漬処理物の方が大きな値を示すが,その度合は乳酸処理物の方が漬種処理物よりも大きい。このことは乳酸処理ではたんぱく質の分解が少ないことを示す。<BR>(2) 漬処理物中の遊離アミノ酸含量は原料中のそれより減少しているが,減少度は乳酸処理物の方が漬種処理物より少ない。このことは,漬処理による原料葉菜の組織の破壊が乳酸処理の方が少ないためと考えられる。<BR>(3) 乳酸菌源を用いずに乳酸添加のみによってすんき漬を行っても同様な結果が得られる。<BR>(4) 乳酸処理によるすんき漬は葉緑素の鮮度が良好に保存され,味覚上においても良好であった。
著者
板橋 雅子 高村 範子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.56-60, 1985

すんき漬種の代りに菌種とその含有量がほぼ一定であるプレンヨーグルトを用い,王滝蕪と小松菜を原料としてすんき漬処理をしたものを,すんき漬種を添加して同様に処理したものと比較考察し,以下の結果を得た。<BR>(1) 粗たんぱく質含有率はプレンヨーグルト処理物,漬種処理物共原料中の水溶性非たんぱく質の溶出によって原料より高い値を示すが,前者は後者よりやや低い。原料別に見ると王滝蕪の方が残存率が高い。<BR>(2) 漬物中の遊離アミノ酸は王滝蕪ではプレンヨーグルト処理物は漬種処理物よりもはるかに多く,甘味および旨味アミノ酸含有率が高く,官能検査でもすぐれている。小松菜では両者の間に顕著な差がない。<BR>(3) 全アミノ酸含有率は粗たんぱく質の場合と同様に,漬処理物が原料より高い値を示し,その増加率は王滝蕪の方が小松菜より多い。添加物による相違はプレンヨーグルト処理物の方が漬種処理物より含有率がやや高い。<BR>必須アミノ酸含有率は王滝蕪,小松菜共にプレンヨーグルト処理物と漬種処理物との間に大差は見られない。<BR>(4) プレンヨーグルトを添加した場合の漬汁のpHは,最初はプレンヨーグルトそのものの値を示し,時間の経過と共に葉菜中の水分の浸出によって高くなるが,3週間後より次第に低下し,乳酸発酵の進行を示す。
著者
板橋 雅子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.229-231, 1982

すんきの栄養学的効果を知る日的で,すんき漬法による試料とこれに類似する数種の漬け方の試料の成分をそれぞれ分析して以下の結果を得た.<BR>1)すんき漬法では漬種の有無に拘らず,原料中の粗たんぱく質の損失が非常に少ない.<BR>2)すんき漬と同様の漬込操作でも,食塩を5%添加すると粗たんぱく質のほぼ半量が失なわれる.<BR>3)漬込過程中に,原料中の遊離アミノ酸および粗たんぱく質の分解によるアミノ酸は漬汁中に溶出するが,乳酸菌による乳酸濃度が大であると,粗たんぱく質の分解が少ない上に,アミノ酸の漬汁中への溶出が抑制されるものと考えられる.
著者
津田 洋子 内山 隆文 塚原 嘉子 西村 繁 塚原 照臣 野見山 哲生
出版者
信州公衆衛生学会
雑誌
信州公衆衛生雑誌 (ISSN:18822312)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.64-65, 2007-08

長野県木曽地域に伝わる"すんき漬"にはⅠ型アレルギーに関与するIgE抗体を抑制する植物性乳酸菌が含まれていることが報告されている。すんき漬の抗アレルギー効果を調べるための自記式調査票による調査を王滝村に実際に居住する全村民(910人)に実施した。回収率88.2%であり、回答者の76.6%が冬季にすんき漬を食し、64.1%がすんき漬を好んでいた。冬の間のすんき漬摂取の有無、煮大豆、・みそ(味噌汁として)・豆乳・乳酸菌飲料・ヨーグルトの摂取、飲酒、喫煙を説明変数としてロジスティック解析を行った結果、食物アレルギーの有無には豆乳の摂取(p=0.02)、アレルギー疾病の有無には煮大豆(p=0.03)・乳酸菌飲料(p=0.02)・ヨーグルトの摂取(p<0.00)が有意に関係している結果であった。冬の間のすんき漬の摂取は食物アレルギーの有無(p=0.10)、アレルギー疾病の有無(p=0.14)の両方に関して有意な関係はみられなかったが、オッズ比がそれぞれ1.81、1.38であった。
著者
大澤 克己 松井 淳一 丸田 正治 森田 祐子 斉藤 信博
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.585-590, 2015
被引用文献数
1

長野県木曽地域の伝統食品である無塩乳酸発酵漬物すんきから植物由来乳酸菌を分離し,ヨーグルト製造に適した乳酸菌を選抜を行い,その乳酸菌を用いたヨーグルトが開発できた.初発菌数1.0×10<sup>8</sup>cfu/ml,発酵時間24時間以内で良好なカードが形成でき,牛乳以外に他の乳酸菌増殖用添加物を使用しないで商業ベースでヨーグルトを製造することを可能にした.
著者
板橋 雅子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.226-228, 1982

The &ldquo;Sunki&rdquo;, a kind of Japanese pickles peculiar in Kiso district, Nagano pref. is pickled without salt under lower temperature (winter season), then dried and preserved throughout the year. And so, it is considered to be available for preserving green vegitables and for providing dietary fibers protecting so-called adult-disease.<BR>The auther studied the dietetic components of the Sunki and its pickling conditions concerning with sample A (produced in Ohtaki village, Kiso district) and sample B (prepared in our laboratory under strict temperature conditioning) obtaining following results.<BR>1. Appearance and taste of the pickles; sample A was inferior in comparison with sample B.<BR>2. The pH of the pickling liquid; Sample A increased acidity with passing time, otherhand sample B held neary nutral throughout period.<BR>3. Free amino acid in the pickles; sample B contained less than sample A.<BR>4. Crude protein remaining in the pickles; sample B contained more than sample A, and its quantity is almost equal to that in the raw greens.<BR>In conclusion, it was demonstrated that the strict temperature conditioning (about -5&deg;C) is necessary for producing good Sunki.
著者
荻原 博和 河原井 武人 古川 壮一 宮尾 茂雄 山崎 眞狩
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.98-106, 2009
被引用文献数
5

京都で製造されているすぐきの製造工程における微生物叢および化学的成分の変遷を検討した.製造工程における菌数の推移は,工程が進むにつれてグラム陰性菌や大腸菌群数が減少するのに対して,乳酸菌数が増加する傾向を示し,室発酵終了時には10<sup>8</sup> CFU/gに増加した.製造工程における微生物叢の推移は,原料からは多種多様な菌が検出され,なかでも<i>Pseudomonas</i> 属菌が多く検出された.荒漬および本漬工程後では<i>Microbacterium</i> 属菌の占める割合が高く,<i>M. testaceum</i> が多く検出された.追漬工程では<i>Lactobacillus</i> 属菌が優占種となり,なかでも<i>L. sakei</i> と<i>L. curvatus</i> が多く検出された.室工程後では<i>L. plantarum</i> と<i> L. brevis</i> が優占種であった.塩濃度は原料および面取り工程では低く,荒漬工程では6.3%を示し,その後の工程では塩濃度は3%程度の数値で推移した.pHについては製造工程が進むにつれて低下する傾向が認められ,室工程後では4.2を示した.酸度ならびに乳酸値は原料から荒漬工程までは大きな変化は認められなかったものの,室工程から数値が増加し,熟成後が最も高い数値を示した.
著者
板橋 雅子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.356-361, 1987
被引用文献数
5

すんき中に見出されている乳酸菌の単菌数種を用いてすんき漬を行ない,すんき漬種を用いた場合と比較して,以下の結果を得た.<BR>(1) 漬物中の粗たんばく質の量は,単菌使用のものがすべて漬種使用のものより多い.<BR>(2) 漬物中の遊離アミノ酸中,旨味アミノ酸であるアスパラギン酸およびグルタミン酸の和の値は<I>B.coagulans</I>使用のものが,最大で,このものは官能試験でも最高に評価された.<BR>(3) 漬汁中の乳酸含量の測定結果により,菌種により乳酸菌発酵能が大きく異なることが知られた.すなわち,<I>L. buchneri</I>は非常に大で<I>S. faecalis</I>は非常に小さい.
著者
中山,大樹
出版者
大阪醸造學會
雑誌
醗酵工學雑誌
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, 1965-03-25

In the Kiso district of Nagao prefecutre, there is a local pickle called sunki, a native vegetable food, prepared without brine or vinegar. The author isolated 25 strains of lactic acid bacteria from 15 specimens of sunki and five specimens of various pickles, obtained from the same distric. In this paper 19 strains of isolated rods were identified as follows : - One strain of spore bearing rod isolated from dried sunki was identified as B. coagulans Hammer. Six strains of homo-fermentative rods were identified as L. plantarum (Orla-Jensen) Holland, one strain of hetero fermentative rods was identified as L. buchneri (Henneberg) Bergey et al, and 10 strains of hetero-fermentative rods L. brevis (Orla-Jensen) Bergey et al.Among these strains two strains can be considered as new varieties, for which the authors proposed the names of L. plantarum (Orla-Jensen) Holland var. sunkorum nov. var. and L. brevis (Orla-Jensen) Bergey et al. var. otakiensis nov. var. respectively.
著者
板橋,雅子
出版者
調理科学研究会
雑誌
調理科学
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, 1982-12-20

すんきの栄養学的効果を知る目的で、すんき漬法による試料とこれに類似する数種の漬け方の試料の成分をそれぞれ分析して以下の結果を得た。1)すんき漬法では漬種の有無に拘らず、原料中の粗たんぱく質の損失が非常に少ない。2)すんき漬と同様の漬込操作でも、食塩を5%添加すると粗たんぱく質のほほ半畳が失なわれる。3)漬込過程中に、原料中の遊離アミノ酸および粗たんぱく質の分解によるアミノ酸は漬汁中に溶出するが、乳酸菌による乳酸濃度が大であると、粗たんぱく質の分解が少ない上に、アミノ酸の漬汁中への溶出が抑制されるものと考えられる。
著者
板橋,雅子
出版者
調理科学研究会
雑誌
調理科学
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, 1982-12-20

The "Sunki", a kind of Japanese pickles peculiar in Kiso district, Nagano pref. is pickled without salt under lower temperature (winter season), then dried and preserved throughout the year. And so, it is considered to be available for preserving green vegitables and for providing dietary fibers protecting so-called adult-disease. The auther studied the dietetic components of the Sunki and its pickling conditions concerning with sample A (produced in Ohtaki village, Kiso district) and sample B (prepared in our laboratory under strict temperature conditioning) obtaining following results. 1. Appearance and taste of the pickles ; sample A was inferior in comparison with sample B. 2. The pH of the pickling liquid ; Sample A increased acidity with passing time, otherhand sample B held neary nutral throughout period. 3. Free amino acid in the pickles ; sample B contained less than sample A. 4. Crude protein remaining in the pickles ; sample B contained more than sample A, and its quantity is almost equal to that in the raw greens. In conclusion, it was demonstrated that the strict temperature conditioning (about -5℃) is necessary for producing good Sunki.
著者
宮尾 茂雄
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 = Japanese journal of food microbiology (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.127-137, 2005-12-30
参考文献数
6
被引用文献数
2 1
著者
増田 健幸 中田 雅也 岡田 早苗 保井 久子
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 = Journal of Japan Society for Lactic Acid Bacteria (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.42-49, 2010-03-15
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

すんき漬から分離された乳酸菌の中にIgE産生を抑制する菌株が多数存在した。その中の1菌株(<i>Pediococcus pentosaceus</i> Sn26株(Sn26))は、経口投与により血中の卵白アルブミン(OVA)特異的IgEを減少させ、 OVAで誘導されるアレルギー性下痢症を有意に抑制した。このメカニズムを解析するために誘導組織である腸管パイエル板細胞及び実効組織である腸管粘膜固有層リンパ細胞の免疫応答性を調べた。その結果、Sn26の経口投与は、パイエル板細胞の1型ヘルパーT細胞(Th1)型サイトカイン産生能を上昇させ、Th1/ 2型ヘルパーT細胞(Th2)バランスを改善させ、総IgE産生能を減少させた。さらに、腸管粘膜固有層リンパ細胞のTh2型サイトカイン産生能を減少させ、OVA特異的IgE産生能を低下させた。以上のことから、経口投与されたSn26は、パイエル板に取り込まれた後、Th1/Th2バランスの改善を介して腸管粘膜でのIgE産生を抑制し、下痢発症を抑制することが推測された。