- 著者
-
佐々木 掌子
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.4, pp.313-326, 2018-12-30 (Released:2018-12-27)
- 参考文献数
- 38
- 被引用文献数
-
4
本研究では,性的指向(sexual orientation)や性同一性(gender identity)をはじめとする性の諸要素の多様性を中学校の授業で教育することで,生徒の同性愛やトランスジェンダーに対する嫌悪(以下,嫌悪)が低下するのか否か対照群を設けたデザインで検討した。協力者は,授業実施群が公立中学の生徒397名,対照群が同地域同規模の公立中学の生徒328名である。その結果,交互作用(F(2, 1336)=4.77, p<.01)が有意であったため多重比較を行うと,授業実施群のみ,教科授業後及び道徳授業後に有意に嫌悪の減少が認められた。対照群には得点変化はなく,授業実施群は対照群よりも有意に嫌悪得点が低かった。なお,自尊感情と嫌悪とは無相関であり,どれだけ自尊心が高くなろうとも嫌悪は変わらないことが示唆された。また,男子においては,多様な他者の理解や対等な意識の向上が嫌悪の低減と関連していた。