著者
吉田 康一 吉田 隆一 伊東 智美 殿内 利夫 斎藤 達哉 瀧谷 佳晃 河野 哲 吉田 隆一
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.456-473, 2015 (Released:2016-01-06)
参考文献数
37

目的 : 強酸性水中の塩素酸や次亜塩素酸は大気に触れると反応し分解する. 水が凝固する際は食塩等溶解物を析出し純水に近い形で凍結するが, 電解機能水を氷結して固体で保存すれば対流はなく酸素との接触面は固定化され, 内部成分を保護でき, 殺菌力を維持した長期保存が可能になると考えた. 装置での機能水生成条件を変えて獲得した, さまざまな強酸性電解水と強アルカリ性電解水を氷結し, 保存条件を変えて解凍液の諸性質の変化を調べ, 最適な使用条件を求めた.  材料と方法 : 可変電圧 (0~90V), 直流電流 (0~10A, 整流), 貯留式の二室型機能水製造装置を試作した. 装置は生成される機能水の性状を大幅に変えることができる. 食塩水の電解により得られた酸性水とアルカリ性水を氷結前に10ml採取し, pHとORP値 (mV), 残留塩素濃度 (ppm) の測定を行った. 両水溶液は容器 (80ml) に各60mlを注入し, −17°Cの冷凍庫にて氷結した. 24, 168時間後に容器を取り出し, 室温 (23°C) で約2時間放置して解凍し, 性状を再度計測した. 分析は, 食塩添加率 (要因A) ; 3水準 (0.3, 0.6, 0.9wt%), 電解電流 (B) ; 2水準 (2, 4A), 保存方法 (C) ; 2水準 (容器の密閉の有無), 氷結時間 (D) ; 2水準として, ランダムに繰り返し3回行い, 測定値を項目別に四元配置分散分析した. さらに, 氷結保存の方法と期間が水溶液に与える影響のみを, 同データからWelchのt-testによって検定した. 機能水生成直後の諸性質の測定値に対して, 同一液で氷結解凍後に得られた値を直線方程式にて回帰分析した.  成績 : 分析から酸性電解水では, pHは解凍液でも2.2以内の酸性度を維持した. ORP値は容器の密閉を行う短期間保存で高い値を維持したが, いずれの条件でも解凍液は1,100mV以上だった. 塩素濃度 (ppm) は氷結保存の前後で263ppmから経時的に減少したが, 食塩添加率と電解電流値を高くし, 容器の密閉でこれを抑制できた. 密閉保存, 168時間氷結の解凍液でy=0.5251x−36.212 (r=0.919**) であった. 開栓でも多種の生成・保存条件の解凍液で, 薬事法上の殺菌料としての強・弱酸性次亜塩素酸水に近似した性状を獲得した. アルカリ性水では, pHは生成時の電解電流が高ければ解凍液でもわずかにアルカリ側に傾いた. ORP値は−849.2から解凍後に+224.94~301mVに転じたが, 容器の密閉によって上昇を抑制できた.  結論 : 生成・保存条件の調節により, 容器を開栓し168時間の氷結保存で解凍した酸性電解水でも十分な殺菌能が維持されており, 密閉保存すればこれが向上した. 解凍アルカリ性電解水では, 市販清掃用アルカリ性水に近似した性状であった. 氷結保存法により解凍後も殺菌能をもつ機能水を獲得でき, 人体への臨床応用の可能性が示唆された.
著者
上野 良樹 奥 和代
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.175-182, 2006 (Released:2006-05-30)
参考文献数
26

HITのII型は免疫学的な機序によって起きることが明らかにされているが, I型のHITなどに見られるヘパリンによる血小板への作用は必ずしも明らかにはなっていない. われわれはこれまで全血を用いたin vitroの系においてヘパリンによる血小板凝集が起きる場合に物理的刺激による血小板の活性化と, RGD配列をもつ粘着蛋白のGPIIb/IIIa complexへの結合とそのクラスタリングが必要であることを報告してきた. 今回血小板の凝集を誘起するヘパリンの条件を検討するために未分画ヘパリンによる血小板凝集作用をかきまぜ刺激あるいは寒冷刺激下において低分子ヘパリンおよびヘパリン類似物質(ヒルドイド, ダナパロイド)と比較した. 低分子ヘパリンはかきまぜ刺激下では有意の血小板凝集効果を示したが, 寒冷刺激下ではその作用はほとんど認められなかった. ダナパロイドは寒冷刺激下で軽度ではあるが有意の血小板凝集効果を示した. しかし, ヒルドイドはいずれの刺激下でも未分画ヘパリンより有意に強力な血小板凝集作用を示した. この作用は未分画ヘパリンと同様にRGDSにより阻害された. これらの結果より, ヘパリンによる血小板凝集作用にはその分子量や硫酸化の状態が関与しているものの非特異的な作用であると考えられた.
著者
宋,清華
出版者
和漢医薬学会
雑誌
和漢医薬学雑誌
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, 2000-06-30

The formulations group of tonic actions in Kampo medicine, called "hozai", are in the limelight recently. Especially, formulations including Astragali root (黄耆 , Huang Qi ; Ougi) which is represented in Jingi-zai (参耆剤) (formulations including Ginseng root with Astragali root) play important role in the treatment of elderly patients. There are two herbs which have been used as Ougi, Astragali root and Hedysari root (晋耆 , Jing Qi ; Shingi) . Although Astragali root and Hedysari root have no similarity botanically, they have been used as comparatively in the clinical scene and even historically, Hedysari root was regarded as being better than Astragalus root. There is no systematic review which explicates the difference and similarity of the two herbs. In this report, we attempt to compare Astragalus root and Hedysari root clinically and pharmacologically, and discuss about the historical and theoretical basis of their clinical applications.
著者
服部 力 本郷 次雄
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
no.23, pp.p63-67, 1990-12
被引用文献数
2

Wood-decaying Hymenomycetes were collected in Amami-oshima Isl. (Kagoshima Pref.) mainly in 1989. Some tropical species were found for the first time from the Island. The distribution patterns of the species found from the Island are as follows. Species widely distributed in Japan : Bjerkandera adusta, Daedaleopsis confragosa, Coltricia montagnei, Hymenochaete mougeotii, Ganoderma lipsiense. Species distributed from the tropical region to the warmer region along the Pacific Ocean : Dictyopanus gloeocystidiatus, Corticium argenteum, Microporus flabelliformis, Nigroporus vinosus, Cyclomyces tabacinus, Phellinus umbrinellus, Polystictus substygius. Species distributed from the tropical region to the southern part of Kyushu (and/or occasionally to Honshu, Shikoku) : Cymatoderma lamellatum, Lenzites platyphylla, Loweporus fusco-purpureus, Tinctoporellus epimiltinus, Trametes rhodophaea, Phellinus mcgregorii. Species distributed from the tropical region to the southern part of the Cape Sada-misaki, Ohsumi Pen., Kagoshima Pref. : Panus fulvus, Erythromyces crocicreas. Species distributed from the tropical region to Amami-oshima Isl. or to Tane-ga-shima Isl. : Oudemansiella canarii, Daedalea aurora, Nigrofomes melanoporus, Trametes retropicta. Daedalea aurora and Nigrofomes melanoporus have been recorded only from Iriomote Isl. in Japan. Most species collected from the Island were warm temperate, subtropical or tropical species.
著者
可児 瑞夫 可児 徳子 富松 早苗 新海 研志 山村 利貞
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.281-285, 1977 (Released:2010-03-02)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

フッ化物洗口法による洗口時に口腔内に残留するフッ素量を調べることにより, フッ化物洗口法の安全性, う蝕予防効果の期待, さらに洗口方法そのものの再検討を目的として本研究を行った。某小学校児童80名 (3年生, 男子44名, 女子36名) を対象とし, 正確に秤取したフッ化物洗口液 (500 ppm F-, pH5.0, リン酸酸性フッ化ソーダ溶液) 10mlを用いて30秒間洗口をさせ, 次に蒸留水10mlで10秒間の洗口を2回行わせた。洗口カップに残したフッ素量, 吐き出した洗口液中のフッ素量および水による洗口で吐き出されたフッ素量をそれぞれ定量した。定量にはオリオン社製イオンメータ (801型) およびフッ素イオン電極を用いた。その結果, 男子では与えたフッ素量の93.79%, 女子では91.52%が洗口時に吐き出されることが認められた。すなわち, 現行のフッ化物洗口法による口腔内残留フッ素量は男子では0.31±0.12mg (6.21%), 女子では0.42±0.12mg (8.48%) であることが示された。児童80名中81.3%に相当する65名は残留量が0.5mg以下の値を示した。また, フッ化物洗口後に水で口すすぎを行うと残留フッ素量は男子で0.16±0.12mg (3.13%), 女子では0.27±0.12mg (5.46%) となることが示された。以上のことから, 現在行っているフッ化物洗口法における洗口液のフッ素濃度および液量は洗口方法を正しく実施すれば全く安全であり, フッ化物洗口法は効果的なう蝕予防法であることが再確認された。
著者
藤代 康誠 長谷部 浩二
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.309-310, 2019-02-28

本研究の目的は、ゲーム理論におけるプレイヤーが経験を通して知識を獲得していく状況で、どのように意思決定を行うのかを分析することである。金子らによって提案された帰納的ゲーム理論では、プレイヤーはゲームの構造に関する知識をあらかじめ持たず、経験を通してそれらを獲得する。本研究では、帰納的ゲーム理論に基づいたゲームにおける意思決定過程を、認識論理を用いて定式化する。認識論理は、意思決定に伴うプレイヤーの知識に関する推論を形式的に扱うことを可能にする。これにより、プレイヤーのゲームの構造に関する知識が完全なものに近づいていくにつれて、どのような意思決定が可能になるのかを明らかにする。