著者
福田 航 横山 茂樹 山田 英司 片岡 悠介 濱野 由夏 池野 祐太郎 五味 徳之
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.25-31, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
19

【目的】本研究の目的は,ACL 再建術前後における片脚スクワットの運動学・運動力学データの変化と健患差を把握することである。【方法】対象はACL 再建術後患者11 名(年齢24.9 ± 6.9 歳,男性8名,女性3名)であった。方法は,床反力計と3 次元動作解析装置を用いて術前と術後9 週時の片脚スクワット下降相の膝屈伸モーメント変化量と体幹および下肢の関節角度変化量を測定し,健側と患側,術前と術後で比較した。【結果】ACL 再建術前後ともに患側は膝屈曲変化量が小さく,体幹前屈変化量は大きく,膝屈伸モーメント変化量は伸展方向に小さかった。患側の骨盤前傾変化量は術後に増加した。【結論】術後に膝屈伸モーメント変化量が小さかったことは膝伸展機能の回復が不十分であると示唆される。術後の膝屈伸モーメント変化量に関連する因子は体幹前屈変化量,膝屈曲変化量,骨盤前傾変化量が考えられ,スクワット動作を観察する視点になると示唆される。
著者
中山 一麿 落合 博志 伊藤 聡
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

昨年度後半から本格始動させた覚城院の調査であるが、調査が進むにつれて新たな発見があり、多義に亘る史料の宝庫として、その実態把握を加速させている。字数制限上、覚城院に関する主たる成果のみ以下に記す。6月には、中山一麿「寺院経蔵調査にみる増吽研究の可能性-安住院・覚城院」(大橋直義編『根来寺と延慶本『平家物語』』、勉誠出版)において、新出の増吽関係史料を中心に、増吽やその周辺の研究を進展させると共に、聖教調査研究が新たな発展段階にあることを示唆した。9月には本科研を含めた6つのプロジェクトの共催で、「第1回 日本宗教文献調査学 合同研究集会」が行われたが、中山はその開催に主導的役割を果たし、二日目の公開シンポジウム「聖教が繋ぐ-中世根来寺の宗教文化圏-」では基調報告として「覚城院所蔵の中世期写本と根来寺・真福寺」を発表し、覚城院から発見された根来寺教学を俯瞰する血脈の紹介を交えつつ、覚城院聖教が根来寺・真福寺などの聖教と密接に関係することを報告した。加えて、同時に開催された寺院調査に関するポスターセッションでは、全29ヵ寺中、本科研事業に参加する研究者5名で計10ヵ寺分(覚城院・安住院・随心院・西福寺〈以上中山〉・木山寺・捧択寺〈以上向村九音〉・善通寺〈落合博志〉・地蔵寺〈山崎淳〉・薬王寺〈須藤茂樹〉・宝泉寺〈中川真弓〉)のポスターを掲示した。3月には「第1回 覚城院聖教調査進捗報告会―今目覚める、地方経蔵の底力―」を開催し、覚城院調査メンバーから9名の研究者による最新の研究成果を公表した。同月末刊行の『中世禅籍叢刊 第12巻 稀覯禅籍集 続』(臨川書店)においては、覚城院蔵『密宗超過仏祖決』の影印・翻刻・解題を掲載し、翻刻(阿部泰郎)・特論(中山一麿)・解題(伊藤聡・阿部泰郎)がそれぞれ担当して、本書の持つ中世禅密思想上の意義やその伝来が象徴する覚城院聖教の重要性を論じた。
著者
松田 法子
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

講演者は都市史・建築史を専門とする。まちの成り立ちやその展開の歴史を、地理的、建築的、社会的、文化的に検討し、わたしたちの居住地や、他の様々な土地が、いったいどのような背景や経緯によって現在に至っているのかを探っている。またそこから、土地と人とが取り結んできた本質的な関係とその意義を考えようとしている。さて、「ブラタモリ」では、番組の冒頭近くで、その土地に対するある「お題」(設問)が示される。それは一見平易な内容で、出演者や視聴者は、その設問に納得したり、そんなことはもうわかっているよ、と思ったり、あるいはまた少々戸惑ったりしながら、番組の道のりを楽しく想像する。しかし問いに的確に答えていくことは、専門家をもってしても実はかなり難しい。それは既に、多岐にわたる学術分野の知見を制作チームが吸収したうえで、かつ誰もがその土地のイメージとして理解できるようなフレーズとする、という絶妙なバランスによって練られたテーマだからだ。その後に続くまち(土地)歩きは、そのお題を軸に組み立てられていく。複数分野の専門家がリレー式にバトンをつなぎながら土地の解読に付き添うスタイルは、土地を見る視点の複数性と幅広さを担保する。そして、歩きながら答えを見つけていくこのやり方は、都市や山岳、巨大土木構築物などスケールの大きな対象や長い時間の流れを、手元や足元といった身体的で小さなスケールから体感的に理解していくという、フィールドサーヴェイの醍醐味も具現化している。そうした一方で、TVプログラムであるという媒体の特性上、問いの答え探しの道のりやそのストーリー立ては、視覚的に認識しやすい資史料や場所がつながれやすいという側面ももっている。歴史分野で言えば、絵図や古文書、古写真、現場の遺構などは大いに力を発揮するが、目で見てわかりにくい事物や、土地の歴史を語る上では重要であるものの、前提として込み入った解説が必要な事項は通過されがちになるだろう。以上について、講演者の知る範囲に限り若干の話題提供を行う予定である。
著者
大六 一志
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3+4, pp.239-243, 2009 (Released:2011-06-30)
参考文献数
20

今日の知能検査が何を測定しようとしており、今後どのような方向に発展しようとしているのかについて検討した。21世紀に入ってウェクスラー知能検査は言語性IQ、動作性IQを廃止し、知能因子理論に準拠するようになった。また、数値だけでなく質的情報も考慮したり、課題条件間の比較をしたりすることにより、入力から出力に至る情報処理プロセスのどこに障害があるかを明らかにし、個の状態像を精密に把握するようになっている。現在は、高齢者の知的能力の測定に対するニーズがかつてないほど高まっていることから、今後は高齢者の要素的知的能力の測定に特化した簡便な知能検査が開発されるとよいと考えられる。
著者
町 好雄
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39, 1995 (Released:2016-03-19)
被引用文献数
2
著者
新本 万里子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.25-45, 2018

<p>本稿は、モノの受容を要因とするケガレ観の変容を、女性の月経経験に対する意識とその世代間の違いに着目して明らかにすることを目的とする。パプアニューギニア、アベラム社会における月経処置の道具の変遷にしたがって、月経期間の女性たちがどのような身体感覚を経験し、月経期間をどのように過ごしているのかについて民族誌的な資料を提示する。その上で、月経を処置する道具を身体と外部の社会的環境を媒介するものとみなし、そこにどのような意識が生じるのかを考察する。これまで、パプアニューギニアにおいて象徴的に解釈されてきた月経のケガレ観を、女性たちの月経経験とケガレに対する意識との関連という日常生活のレベルから捉え直す。</p><p>本稿では、月経処置の道具の変遷にしたがい、女性たちを四世代に分類した。第一世代は、月経小屋とその背後の森、谷部の泉という場で月経期間を過ごした世代である。第二世代の女性たちは、布に座るという月経処置を経験した。この世代は、月経小屋が土間式から高床式に変化し、さらには月経小屋が作られなくなるという変化も経験している。第三世代は、下着に布を挟むという月経処置をした女性たちである。第四世代は、ナプキンを使用した女性たちである。各世代の女性たちの月経経験とケガレに対する意識との関係の分析を行い、第一世代の女性たちは、男性の生産の場から排除される自分の身体にマイナスの価値づけだけをしていたのではなく、むしろ男性の生産の場に入らないことによって、男性の生産に協力するという意識をもっていたことを明らかにする。第二世代、第三世代を経て、第四世代の女性たちは、月経のケガレに対する意識を維持しながらも、月経期間の禁忌をやり過ごすことができるようになったことを論じる。</p>
著者
瀧 大知
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.123-139, 2016-03-11

近年、日本では近隣諸国との歴史認識問題や領土問題に端を発した排外主義的な傾向が強まり、路上やインターネット上で、おもに在日コリアンをターゲットにしたヘイト・スピーチが行われ、大きな社会問題となっている。このような事態に対してこれまで様々な言説が生まれてきた。しかし、こうした言説では、ヘイト・スピーチが持つ「暴力性」を問題視することはなく、むしろヘイト・スピーチをする人々が注目されるばかりで、被害者の姿がほとんど見えなくなっているという問題が見られる。こうした言説を批判的に検討することにより、本稿ではこのような被害者不在の言説が結果として、ヘイト・スピーチを黙認してきた圧倒的多数の無関心層と同様の役割を果たしてきてしまったことを明らかにする。
著者
川村 和将 神谷 恵三
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E1(舗装工学) (ISSN:21856559)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.I_47-I_52, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
6
被引用文献数
3

東名高速道路は平成10年から全面的に高機能舗装を採用している.それにより基層以下への雨水の浸透が促進され,アスファルト層の損傷拡大が懸念されている.舗装の健全性を評価するために,東名高速道路では路面性状調査やFWD測定などを実施している.その結果,路面ひび割れ評価手法では,高機能舗装の損傷を評価できていないことや,路床の支持力は安定しており,雨水による影響が小さいことなど明らかにした.
著者
Yuzuki SHINJI Tatsuki TSUJIMORI
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences (ISSN:13456296)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.26-32, 2019 (Released:2019-03-08)
参考文献数
40
被引用文献数
7 8

Retrograde pumpellyite was newly found in garnet blueschist that is Mg–rich equivalent of late Paleozoic retrograde eclogite of the Yunotani Valley in the Omi area, Hida–Gaien Belt. The pumpellyite with high Al/(Al + Mg + Fe) occurs in pressure shadows around garnets; it is associated with secondary glaucophane, epidote, chlorite, titanite, phengite, albite, and quartz, which all characterize a retrograde blueschist–facies mineral assemblage after peak eclogite–facies mineral assemblage. This feature is comparable with retrograde pumpellyite in late Paleozoic garnet blueschist (with relict eclogite–facies mineral assemblage) in the Osayama area of the Chugoku Mountains. Equilibrium phase calculation confirmed that the pumpellyite is stable at a low temperature and pressure portion of the lawsonite–blueschist–facies. T–bulk–composition (Mg) pseudosection suggests that pumpellyite appears preferentially in high Mg/(Mg + Fe) bulk composition. The limited occurrence of retrograde pumpellyite in the Yunotani garnet blueschist and retrograde eclogite would be explained by Mg–rich bulk compositions. Also, the limited occurrence in pressure shadows around garnets suggests that the fluid trapped in the pressure shadows might have enhanced growth (or precipitation) of pumpellyite. This finding provides a strong evidence that the deeply subducted (eclogite–facies) metabasaltic rocks both in the Hida–Gaien Belt and the Chugoku Mountains were subjected to a very similar blueschist–facies overprinting locally reached the pumpellyite stability field. The ‘Franciscan–type’ cooling path suggests a ‘steady–state’ underflow of the paleo–Pacific oceanic plate in late Paleozoic at a convergent margin of the South China Craton.
著者
稲垣 朋子 Inagaki Tomoko イナガキ トモコ
出版者
大阪大学大学院国際公共政策研究科
雑誌
国際公共政策研究 (ISSN:13428101)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.17-36, 2015-03

This paper examines the issue of joint custody after separation/divorce. Joint custody was provided for by Article 1671 of the German Civil Code in 1997. I have investigated the actual situation of joint custody and its support in Germany. Visitation and the right of parents to information about the child are also considered in relation to joint custody. Finally, taking into account the results of the study, this paper goes on to consider what is needed to introducing joint custody to Japan.