著者
権田 絵里
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.99-105, 2007-02-15

はじめに 普段,われわれが人類の進化の道のりを考えるとき,高い知能やコトバの獲得,そしてそれらを土台とした文化の形成や文明の発展など,万物の霊長としての栄光の歴史に焦点が当てられるのが常であり,栄光と引き換えに負った代償を顧みることは少ない. 例えば,「腰痛」もその1つである.あまりにも身近であるため,われわれはそれらがヒトであるがゆえの宿命的な苦難であることを意識していないが,われわれの祖先が直立二足歩行を始めたときから延々と受け継がれてきた負の遺産1)である.人類が知性や技術,コトバといった進化の恩恵にあずかるのは,実はそれよりもずっと後のことである. 本稿では,ヒトという動物の特殊性や進化の道のりという視点から,人類と直立二足歩行への不適応現象,特に腰痛との関わり合いについて探ることを目的とする.
著者
細川 雅人
出版者
医学書院
雑誌
訪問看護と介護 (ISSN:13417045)
巻号頁・発行日
vol.14, no.7, pp.602-605, 2009-07-15

高齢者の場合,認知症か体力の低下で掃除ができなければ家事援助を利用できる。ゴミ捨てができないときは近所の人に頼んでもよい。ところが,室内がゴミであふれていても援助を拒み,説得も受け入れない人がいて,周囲に迷惑を及ぼすようになると相談が寄せられる。 若い人の例を調査すると,ほとんどが自閉症をともなう知的障害者であったことから,高齢者の場合でも,広汎性発達障害による例がかなり含まれていると考えている。特に,若いときから家の中にゴミが散乱していた人や,わざわざ粗大ゴミを拾ってくる人の場合はその可能性が高いと推定するが,精神科医による診断や心理検査による裏付けがほとんど得られないので,実態はよくわからない。
著者
板野 聡
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.919, 2014-08-20

7月号では,ラグビーで使われる言葉について書かせて頂きましたが,小説『三銃士』が御本家の“one for all, all for one”のことが気になり,少し調べてみることにしました.この言葉は,一般には「一人は皆のために,皆は一人のために」と解釈されているようですが,フェイス総研の小倉広社長のコラムを拝読して,眼から鱗が落ちることになりました. 小倉社長の解説には,ラグビーで有名な平尾誠二氏のお話として,この言葉は「一人は皆のために,皆は『勝利』のために」という意味だと紹介されていたのです.そう,後者の“one”は“victory”だったのです.確かに,ある集団で「一人」が「皆」のために努力することは当たり前でしょうし(いや,最近はそうでもないか?),一人ひとりが力を合わせることで,1+1が3にも5にもなるでしょう.そのためには,“one for all”でいう“one”は自立し然るべき能力を備えた大人であるという前提が必要になります.もっとも,「一人」が半人前で他のメンバーの助けを借りなければ仕事ができないようでは,その集団の力は十分に発揮されることはなく,ただの烏合の衆となり,期待された相乗効果も生まれるはずがありません.したがって,個々に独立し,それなりの能力を備えた「大人」が集まってこそ,一つの目標,戦いであれば当然「勝利」に向けてその力を合わせることができるというわけです.言葉の出自を考えれば当然のことと納得でき,この解説で頭の中の霧が晴れた気がしたわけですが,聖徳太子の時代から,「和を以て尊しとなす」日本人ゆえに,先のような一般的な解釈がなされたのではないかと,今にして思い当たることになりました.
著者
菊池 良和
出版者
医学書院
雑誌
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 (ISSN:09143491)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.120-124, 2017-02-20

POINT ●診察時には,吃音が出ないことが多い。 ●自然回復率は,男児は3年で約6割,女児は3年で約8割である。 ●成人になると約4割は社交不安障害に陥るので,発話意欲を損なわないことが大切である。 ●180度方向転換した,吃音の歴史的変遷を知っておくことが大切である。
著者
飯村 大智 安井 美鈴 横井 秀明
出版者
日本言語聴覚士協会
雑誌
言語聴覚研究 (ISSN:13495828)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.354-368, 2017-12-15

言語聴覚士(以下,ST)を目指す吃音者にとって,吃音の問題は様々な障壁となり,ST養成校における支援が求められる.本調査ではST養成校における吃音者の困難・配慮および吃音STの実態調査を質問紙法により実施した.ST養成校に在学経験のある吃音者27名(男性22名,女性5名,平均年齢29.0±5.3歳)からの回答が得られた.回答者は,臨床実習や検査演習での検査の教示,授業での音読,就職活動や入試での面接など,様々な場面で困難を感じていることがわかり,「吃音の認知」「吃音の理解」「吃音を考慮した評価」「代替手段の利用」などの配慮を必要としていることがわかった.自身の吃音を契機に養成校に入学する者は多いものの,入学後に吃音領域の少なさを知る者も多かった.教員などへの相談により心理的にプラスの影響があったり,環境整備が行われる例も多くみられたが,教員へ相談ができない例もあり,教員の積極的な吃音学生への介入が求められる.
著者
伊藤 亜紗
出版者
医学書院
雑誌
看護教育 (ISSN:00471895)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1038-1041, 2017-12-25

人間にとって「話す」とは,まぎれもなく発声器官を用いた身体の運動です。しかしそれは同時に,社会的な行為でもあります。社会的な行為であるとはつまり,他者との関係を左右する,意味を帯びた行為であるということ。ちょっとした言葉の選び方や表情のつくり方が,場の雰囲気を変えたり,人間関係を左右しうることは,今さら説明するまでもないでしょう。 それは別の言い方をすれば,私たちの「話す」は,常に他者の期待のうえになされる行為だ,ということです。独り言であれば,他者からの期待が一切ない,いわばまっさらな状態で,私たちは話すことができます(そして多くの吃音当事者が,独り言ではどもりません)。しかし,通常の会話ではそうはいきません。相手が「どうぞ」と言ってお茶を置いてくれたなら,私にはお礼を言うことが期待されているし,相手が真剣な顔で相談をしてきたら,それに真剣に応えることが期待されています。
著者
小池 春樹
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.113-120, 2018-02-01

近年,ジカ熱の世界的な流行に伴いジカウイルスとギラン・バレー症候群(GBS)との関連が注目されるようになった。日本においてはジカ熱の流行は確認されていないものの,海外渡航からの帰国後に発症した患者が報告されている。ジカ熱に関連したGBSは脱髄型の病型を呈する場合が多く,治療は一般的なGBSに準じて行われている。発症の誘因となる自己抗体が明らかになっておらず,病態に関しては今後の研究課題である。
著者
小栁 貴裕
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.339-347, 2017-04-25

前編(52巻2号)では,ランダム化比較試験(RCT)ではないデータのバイアス対処に関する最近の手法を紹介した.後編では群内に従属性を持つ複数のデータ群,すなわち階層構造データを分析する手法としての混合効果(マルチレベル)モデル分析につき言及する.2005年頃から特にRCTで頻繁に使われ出した手法であり,この構造を無視した分析では,しばしば誤った結果を導く可能性がある.
著者
高橋 正雄
出版者
医学書院
雑誌
看護学雑誌 (ISSN:03869830)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.446-449, 1994-05-01

はじめに 『リア王』1)(1605年)は,シェイクスピアの4大悲劇の頂点と目される2)など,今日なお高い評価を受けている作品だが,精神医学的には,リア王の言動が痴呆性老人に似ている点で興味深い作品である.もっともリア王痴呆説は別に目新しいものではなく,前世紀末のレールをはじめ,ワイガントやガイヤーも既に唱えている3).ただ,ここで面白いのは,『リア王』という悲劇そのものが,リア王の痴呆に周囲の人々が気づかなかった,あるいは気づいても適切な対策を取らなかったがために起きた悲劇のように見えることである.即ち,『リア王』という物語は,臨床的には周囲が痴呆に対する認識を欠き,その対応を誤った場合に生じる事態によく似ているのである. そこで本論では,リア王の痴呆老人的な言動とそれに対する周囲の対応を中心に,作品冒頭の財産分与の場面と,その後の長女・次女の対応,最後の場面でのコーディーリアの対応という順で,検討を加えてみたい.
著者
熊谷 雅美
出版者
医学書院
雑誌
看護管理 (ISSN:09171355)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.44-47, 2018-01-10

日本看護協会では,看護職が資格をさまざまな形で活かしつつ,長期にわたり社会で活躍することを支援する新たな事業「看護職員の多様なキャリアパス周知事業」として,2017年9〜10月に実態調査を実施。2017年度中に報告書をまとめる予定である。本稿では,常任理事として同事業を担当する立場から,また病院の看護管理者として職員のキャリア開発を応援してきた経験から,看護職が長期的視点で自らの働き方を考えることの意義や,看護管理者によるサポートへの期待について述べる。
著者
石山 恒貴 保田 江美
出版者
医学書院
雑誌
看護管理 (ISSN:09171355)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.16-22, 2018-01-10

国は人生100年時代構想会議を発足し,いつでも学び直すことができ,誰もがいくつになっても新たな活躍の機会に挑戦できる環境を整備するとしている。人生100年時代を展望し,これまでのキャリアの棚卸しや新たな学びを模索している読者も少なくないのではないか。 石山恒貴氏は,これからの働きかた,新たなキャリア開発,成人学習などの方法論として,本業以外の場に越境し社会活動などを通じて新たな学びを得る「パラレルキャリア」を提唱している。「ひとつの組織だけの学び」では変化に対応できない時代に,外での学びは本業にも活かせるだろう。 本対談では,看護部組織における職場学習やリーダーシップについて多角的に研究してきた保田江美氏が,パラレルキャリアの概念や多様な可能性について,石山氏に聞いた。
著者
東 めぐみ
出版者
医学書院
雑誌
看護管理 (ISSN:09171355)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.71-76, 2018-01-10

この連載は主にリフレクションをファシリテートする指導者・教育者を対象とし,実践から学び,新たな価値を見いだし,次の実践につなげることができる看護師の育成の手助けをしたいと考えます。また,「看護経験から学ぶ力をつける」ことをファシリテートする手立てを描きたいと思います。 これらを通じて,多くの看護実践家が自分の実践をリフレクションできる,つまりセルフリフレクションができるようになることを期待しています。 第10回は,実践の場でリフレクション(ちょこっとリフレクション)を行うことについて考えます。
著者
牧 美充 髙嶋 博
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.1131-1141, 2017-10-01

多くの橋本脳症の患者がgive-way weaknessや解剖学的には説明しづらい異常感覚を呈していることをわれわれは見出した。それらは身体表現性障害(いわゆるヒステリー)で特徴的とされる身体症状に類似しており,脳梗塞のような局所的な障害で引き起こされる症状とは切り離されて考えられてきた。そのような神経症候が出現するためには,びまん性,多巣性に濃淡を持った微小病変を蓄積させることができる自己免疫性脳症のような病態を想定する必要がある。このような考え方で,われわれは「びまん性脳障害による神経症候」という新しい診断概念に到達し,実臨床では多くの患者を見出している。今回,抗ガングリオニックアセチルコリン受容体抗体関連脳症,子宮頸がんワクチン接種後に発生した脳症,またはスティッフ・パーソン症候群でも同様の症候がみられることを報告する。自己免疫性脳症の臨床では,抗体の存在だけでなく,自己免疫性脳症による「びまん性脳障害」という概念が重要であり,この新しい診断概念を用いることで診断が困難な自己免疫性脳症の軽症例であっても容易に診断が可能となる。
著者
伊賀 立二
出版者
医学書院
雑誌
胃と腸 (ISSN:05362180)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.1646, 2007-10-25

1998年,日米欧のハーモナイゼーションに基づいたわが国の臨床試験(治験)における新GCP(Good Clinical Practice)が完全実施された.CRC(Clinical Research Coordinator)はこの新GCPによって誕生した職種で,わが国では治験コーディネーターと呼ばれており,その守備範囲は治験の枠を超えて臨床試験を含む臨床研究全般に及んでいる.医薬品の臨床試験におけるCRCの役割は,臨床試験コーディネーターとして,(1)創薬ボランティアのケア,(2)治験担当医師の支援,(3)治験依頼者との対応(モニタリングと監査),(4)治験が円滑に進むように全体のコーディネーションを行うことと要約され,今では臨床試験になくてはならない重要な職種となっている. CRCの養成は,2000年以前は種々の団体が個別に実施してきたが,2001年に各団体が一堂に会して,「CRC連絡協議会」を結成し活動をともにすることとなり,その後2001年秋に第1回の「CRCと臨床試験のあり方を考える会議」が開かれ,その後,毎年開催され,現在では参加者も2千数百名を超えている.
著者
竹内 新治 吉田 穣 三浦 重人
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.213-219, 1969-02-20

はじめに 視診と触診のみに基づいての乳癌の診断法では,腫瘤がある一定の大きさに達するまでは診断が不可能であり,より早期に診断する事が出来るような手段の現れない限り,もはや乳癌の根治成績の向上は期し難いとするLawson1)およびLe-wison2)の説は,極めて正鵠を得ているものと思われる.より早期の乳癌腫瘤が発見され,かつまた,乳腺症,線維腺腫をはじめ種々の良性疾患との鑑別も試験切除の結果を待つまでもなく可能にするような手段の開発が切に望まれるところである.さらに,その手段の実施に当つて普遍性がありMass Screeningに使用可能である事が最も望ましい.このような目的を追求するために,Thermo-graphyもMammography,超音波,同位元素による診断法等と共に登場して来た. Thermographyは生体表面から放散される赤外線をScanning mirrorを通し,増幅してフィルムに写しとる方法であり,皮膚温度の分布を白黒の濃淡度によつて表現するものである.従つて本法により乳癌を診断するためには,乳癌部皮膚温が非癌性腫瘤部および正常乳腺部のそれよりいつも上昇しているという前提が不可欠である.
著者
松岡 瑛 芝田 宏美 山下 勉
出版者
医学書院
雑誌
臨床検査 (ISSN:04851420)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.227-230, 1996-10-30

はじめに サーモグラフィ(熱画像)とは,生体面から放射される熱エネルギーを赤外線エネルギーとして感知測定し,得られる温度分布図を画像表示するもので1,2,3),画像表示された体表温分布図の差から,生体内の組織・代謝活性および循環動態などの変動を非侵襲的に検出する機能を有し,超音波・CTなどに代表される形態画像とは異なり,生理活性機能画像としての特徴を有する.生理活性機能は,安静時体表温のみならず,各種負荷試験(冷水・温水・運動・振動・薬剤)を行うことにより,生体の反応性を経時的に追跡し,潜在的な微細な変化をも捉えることが可能である.内在する因子の微細な変化4,5)は,特に四肢末梢で体表温の変動として容易に捉えられ,臨床上の応用が幅広く試みられているが,本文では主題に沿い,糖尿病を含めた動脈硬化性疾患による血管狭窄・塞栓などの末梢血流障害6,7)について記述する.
著者
浅井 仁 奈良 勲 立野 勝彦 山下 美津子
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.137-141, 1989-02-15

Ⅰ.初めに これまで,ヒトの立位姿勢保持能力の評価については,姿勢の評価,足圧中心動揺の測定による平衡機能の評価など諸家により数多くの報告がなされている.しかし,それらのほとんどは平衡機能において重要な前庭系,視覚系,体性感覚系を含めた中枢神経系の作用を中心に論じられたものである.また,ヒトが立位姿勢を保持する際に直接大地と接触するのは足部であるが,足底あるいは足指の機能と立位姿勢の関係については,藤原ら1~3)の報告があるのみで,リハビリテーション医学の分野においても,現状では,月村4,5)の報告以外はほとんど皆無である. 最近では足部の変形,特に女性における履物による外反母指などの足指の変形に対する関心6)も高まっており,足指が立位姿勢保持においてどのような働きをするかを,検索する必要性を感じた. そこでわれわれは,まず立位姿勢保持における足指の作用について,母指と他の足指との機能的役割の違いに着目した.その検索方法として,健常人を対象にし足指を免荷した場合の足圧中心動揺の測定を,今回は外乱刺激を与えずに月村4)によるクロステスト(後述)を応用して行ない,その結果若干の知見を得たので報告する.
著者
鈴木 秀和 遠藤 健司 松岡 佑嗣 西村 浩輔 関 健 堀江 真司 前川 麻人 小西 隆允 山本 謙吾
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.265-269, 2017-04-25

はじめに 成人脊柱変形患者は社会の高齢化に伴い増加し,脊椎矢状面アライメントに関する知見の重要性は増している.加齢による姿勢変化は,胸椎が後弯化し頸椎前弯が増強する傾向にあり,頸椎症の発症に大きく関与することが知られているが1,2,13),骨盤を含めた全脊椎アライメントと頸椎アライメントに関する定量的解析は多くなされていない.頸椎形態は,直線状,S字状,すべりの存在など多様性があり,頸椎前弯の計測法にもさまざまなものがある6).C2-7角は,途中の形態が不明となり前弯の形成の程度が不明となるため,C2-7角で頸椎矢状面アライメントを述べることにも問題があるといわれてきた9).また,頸椎矢状面アライメントは年齢,性差や個体差があるため,正常の定義,病的アライメントの解釈を明確に決めることは難しい11).1968年,石原8)は頸椎弯曲指数(石原指数)を用いて頸椎アライメントの性差,年代による変化があることを述べた7,8)が,徐々に,全脊椎矢状面アライメントとの関連が明らかになり,頸椎アライメントの概念は変化しつつある.近年,日本人を対象にYukawaらは626人の性別,年代別に全脊椎矢状面アライメント計測と,1,200人の頸椎矢状面アライメントと頸椎可動域(range of motion:ROM)を示した11,12).頸椎前弯の消失や後弯発生は,C2-7sagittal vertical axis(SVA)やT1椎体の傾斜と大きな関連があり,頸椎症発生は隣接脊椎のアライメントに強く影響を受ける2,4).本稿では,日本人のデータより得られた健常人の頸椎矢状面アライメントと全脊椎矢状面アライメントとの関係について述べる.
著者
戎野 庄一 吉田 利彦 大川 順正
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.210-211, 1993-03-30

結石の再発予防療法の現況 尿路結石の治療において,外科的な治療は内視鏡手術の発展と体外衝撃波砕石術の開発と普及により,近年大きな変貌を遂げた。この革命的ともいえる変革は,結石患者に福音をもたらしたと言っても過言ではない。しかしながらその一方では,これらの治療法が極めて安易に施行され過ぎるために,結石発生の機序解明ならびに再発予防に対する地道な基礎的および臨床的な研究あるいは努力がなおざりにされつつある傾向も否定できない。 本稿の序論として尿路結石の治療の本質は,その発生機序の解明と再発予防療法にあるということを改めて強調しておきたい。