著者
但野 茂 GIRI Bijay
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

骨組織はナノサイズのミネラル粒子がコラーゲン構造に沈着した複合構造を有する。規則的な原子構造を有する材料にX線を照射すると、その規則性に応じて回折X線が発生する。骨組織においては、コラーゲン鎖の周期構造がX線の小角散乱を引きおこし、ミネラル結晶の格子構造からは広角へのX線回折現象が生じる。このX線の回折パターンを解析することで、結晶構造や分子構造といった微視組織の構造変形を検出することができる。そこで、本研究では牛皮質骨から力学実験用の試験片を作製し、試験片負荷時に発生する回折X線の2次元パターンから、ミネラル内部のひずみと結晶学的な構造特徴の変化を調査した。その結果、X線回折により骨組織負荷時にミネラル結晶に明確な構造変化が生じていることが検出された。また、結晶配向と負荷時の変化および除荷時の形態再現性が作用負荷の履歴に依存して変化することを示した。このX線回折結果が示したように、負荷による超微視形態的な変化は明確であるにもかかわらず、作用応力と弾性率の間にはこのような複雑な挙動が現れなかった。すなわち、マクロな特性観察から微視構造に生じる変化を判断することは難しいといえる。今回確認した微視構造レベルのミネラル粒子間および、ミネラル-コラーゲン間の組織の付着と剥離挙動に関する特性は、骨組織破壊の発生源として考えることができる。本結果を生体骨に適用することで、非破壊的に測定可能なナノレベルの構造情報を基にした骨強度診断の実現が期待される。特に、整形外科分野において、骨の加齢や疾患の進行を定量的に診断し、骨折リスクを予測する新しい臨床応用技術として利用される可能性が高い。
著者
関沢 明彦 市塚 清健 松岡 隆
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

正常妊娠の末梢血を採取し、胎児由来の遺伝子としてY染色体特異的なマーカーであるDYS14遺伝子を標的にして、その妊娠経過に伴う変化を標準化した。この結果を元に、胎児DNA濃度をMultiples of Median (MoM)値に変換し、妊娠週数による違いを補正した上で各種病態における胎児DNA濃度の変化について比較できるようなシステムが整った。RhD血液型診断に関し、研究期間中にRhD陰性の症例は合計で25例に過ぎなかった。RhD遺伝子exon7を標的とする遺伝子診断を行い、25例全例で正確な胎児診断が可能であった。このことから、この方法は、既に確立された方法であり、精度向上を図る必要性がない思われた。超音波診断で極端な下肢の短縮を認めた症例が9例あり、その症例の妊婦血漿を採取した。また、同時に分娩時の膀帯血も採取した。その症例にFGF-R3の遺伝子についてAchondroplasia、Thanatophoric Dysplasiaなどの原因遺伝子を直接シークエンス法で検討した。しかし、9例全例で遺伝子異常は検出されず、新しい診断には結びつかなかった。次に、妊娠高血圧症候群での胎児DNA濃度の変化及びそれを用いた妊娠高血圧症候群の予知についてであるが、妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)では、胎児DNA濃度が上昇することが分った。また、蛋白尿と高血圧の臨床症状の程度と胎児DNA濃度を比較検討した結果、胎児DNA濃度は、蛋白尿及び高血圧とは独立した因子であり、蛋白尿に比較し、高血圧により強く相関していることが分った。また、それらの症状の重症化に伴ってその濃度も上昇することが示され、妊娠合併症の病態把握にも優れたマーカーになると考えられた。
著者
岩本 理
出版者
東京農工大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

近年、電位依存性ナトリウムチャネルは抗疼痛や鎮痛作用の分子標的として注目されている。本研究ではサキシトキシン骨格を基盤とすることで電位依存性ナトリウムチャネルのサブタイプ選択的リガンドの創製を志向した、柔軟な合成手法によるサキシトキシン類の全合成について検討を行った。これまでの研究において、サキシトキシン骨格の構築に成功している。しかしこれらの手法は依然、本研究の目的である「多様な構造展開が可能な柔軟な合成手法」を満足できなかったため、依然として残っていた問題点を解決しつつ新たな反応と方法論を開発した。まず、炭素骨格形成時における工程数を短縮させるために、応用例の全くないニトロン-ニトロオレフィン型1,3-双極子付加環化反応と続く化学種選択的な変換反応をワンポット法と組み合わせる手法を開発した。そして従来法では理論上、(-)-デカルバモイルオキシサキシトキシンよりも工程数が必要な(+)-β-サキシトキシノールをより短段階で合成し、(+)-サキシトキシンの形式全合成を達成した。さらに、サキシトキシン骨格形成時における脱保護の必要性に関する問題を、立体配座を制御し、不安定構造を安定化する手法を用いて克服した。これにより12段階25%で得られるサキシトキシノール保護体をサキシトキシン構造活性相関の共通物質として供給可能となった。また、本化合物の有用性を示すべく各官能基の変換について検討を行いα-,およびβ-サキシトキシノールと13位アジド体の合成、そして(+)-デカルバモイルサキシトキシンおよび(+)-ゴニオトキシン3の全合成に成功した。
著者
半田 宏 落合 孝広 青木 伊知男
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

SV40外殻タンパク質VP1の自己集合化能を利用して、試験管内でナノカプセルを形成し、ナノカプセルの中へ生理活性物質を導入し、さらにナノカプセル表面を修飾・改変する技術を開発した。また、形状や性状やサイズの異なる構造体をVP1五量体で被覆する技術を開発したので、VP1五量体被覆により形成されるナノカプセルの応用展開される分野を大幅に拡大することが可能になり、新規DDS用キャリアとして極めて有用な高機能性ナノカプセルの基盤となる技術開発に成功した。
著者
水崎 純一郎 河村 憲一 二唐 裕
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究は微重量熱天秤による酸化物試料中の酸素濃度測定装置の整備を行い,酸素に微量の一酸化炭素(あるいは酸化窒素)を含む非平衡混合ガスが触媒(コバルト系,鉄系,銅系のペロブスカイト型酸化物など)の表面に接したとき,そこで起こる一酸化炭素や酸化窒素の酸化還元反応に伴い触媒酸化物中の酸素濃度がどの様に変化するかを測定することを目標とした.然るに,初年度前半に代表者が横浜国大から現職場に移動し,当初計画で既存設備としていた装置が利用できなくなり,特に,熱天秤系とその周辺機器の全てを新規購入作製が必要となったため,研究の進め方は当初計画と可成り異なるものとなった.即ち,熱天秤系の作製と平行して,代表者の元所属した横浜国大の研究室との共同で導電率の変化から固体内の不定比的な酸素濃度変化を考察する手法を検討した.この研究は酸素に微量の酸化窒素を含む場合を中心に進められ,銅系,鉄系,チタン系のペロブスカイト型酸化物において,微量の二酸化窒素分圧の変化によって雰囲気酸素分圧が実効的に数桁上昇したことに相当する導電率変化が認められた.この変化は緻密体・単結晶の方が他孔体より顕著であり固体内不定比酸素濃度が平衡論から予想される値より大幅に酸化側に変化したことを示している.熱天秤系は平成7年度後半に漸く測定可能な段階になり,酸素中に微量の一酸化炭素を含むガスが接したときのコバルト系ペロブスカイト型酸化物の重量変化の測定を単結晶試料を用いて進めた.900℃で1%程度の酸素を含む系に一酸化炭素を数百ppm〜0.5%導入することにより不定比酸素量の還元側への変化を示す重量減少が観測され,表面での一酸化炭素酸化反応により試料の酸化比量が熱力学平衡によって決まる値より更に還元側の値を示すことが検証された.
著者
市村 直幸
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,近年急速に発達している多数の計算コアを有する GPU (Graphics Processing Unit)を利用し,並列処理に基づく物体認識アルゴリズムを構成することを目的とした.まず,物体認識の基盤要素である局所不変特徴の抽出に対し,並列処理を適用した.方向マップと呼ばれるデータ構造を導入することにより,並列処理で効率的に実行可能な均一な局所演算により特徴抽出を構成できることを示した.その結果,従来の方法よりも,高速かつ特徴数の変化に対しスケーラビリティの高い特徴抽出を実現することができた.
著者
古賀 靖敏 ポバルコ ナターリア 西岡 淳子
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

Klotho遺伝子のノックアウトマウス(KlothoKOマウス)では、ヒトの老化に類似した種々の症状を来すことから、老化現象に関わる重要な遺伝子として報告された。我々は、KlothoKOマウスにおける老化現象と正常加齢マウス(CD-1)を比較検討し、老化機構におけるKlotho遺伝子とミトコンドリア機能障害のネットワークを解明するために腎および脳組織における病理学的、生化学的解析を行った。正常加齢マウスでは、腎腫大が診られ、糸球体の減少と総タンパクの低下、ミトコンドリアの酸素消費の低下と電子伝達系酵素活性の全般的な低下が観察された。一方、KlothoKOマウスでは、正常糸球体数の減少と総タンパクの増加を伴う電子伝達系酵素活性の比活性の低下を来した。また、電子伝達系の酵素活性の中で、複合体IIが選択的に早期に低下する事を見いだした。終脳では、正常加齢のマウスでは電顕的なミトコンドリア腫大がみられミトコンドリア電子伝達系低下を伴っていた。KlothoKOマウスでは、その加齢減少に伴い、正常加齢マウスでは診られない、腎と脳でミトコンドリア機能不全を来し、その原因は、異常たんぱくの蓄積によると考えられた。
著者
奥山 恭英
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では災害の経済的影響評価のための枠組みを提案するために、まず経済的影響推計のための方法(モデル)を吟味し、その課題を抽出した。それに基づき実際の災害事例を用いて実証研究を行い、評価枠組みの構築に有用な成果を得た。被害などの災害一次データに関しては標準化が必要不可欠であるが、その推計方法は各災害の特異性により柔軟かつ状況適応が肝要であり、その上での比較可能な対応が今後の課題として導出された。
著者
井上 政義
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

先に我々が開発したカオス振動子を素子に用いたニューラル・ネットワークのダイナミックスを当科研費で購入したワークステーションを用いて調べた。その結果、我々のネットワークはカオスを用いているのでそのエネルギー時系列は強い間欠性を示すことが分かった。これは従来のボルツマン・マシンと非常に異なるところでありこの性質によってカオス特有の優れた情報処理能力が得られる。我々のモデルとボルツマン・マシンの両方のエネルギー時系列を揺動スペクトル理論を用いて解析した。これにより、両者の違いを明瞭に示せた。また、コントロール・パラメータの値に依ってはエピレプシー(てんかん)に対応する運動を示すことを発見した。このとき得られた時系列は“てんかん"を起こしているときの脳波と類似している。このとき3種類の典型例があり、そのそれぞれに対応する脳波も実際に観測されていることが分かった。その3類は(1)周期的てんかん(2)カオス的てんかん(3)間欠的てんかん、である。さらに、エネルギー・レベルの幅より仮想的な体積な導入し、ニューラル・ネットワークの状態方程式を計算し、また自己組織化過程におけるエントロピーの減少も調べた。また、我々のモデルの学習能力を調べた。ボルツマン・マシン学習はアンニーリングの必要がなく高速に学習できることが分かった。また、バックプロゲーション学習は1周期の超安定運動を用いると極めて良く学習をすることを最近発見した。これらの研究につき他大学の研究者との交流が役にたち、シュミレーションの実行および資料整理は大学院生の協力を得た。
著者
田子山 和歌子 中野 安章
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究テーマ「西洋近世哲学における「自然法則」の概念」を、二つの研究活動の柱である、1)関連文献の収集、および、その調査成果を研究ウェブサイト「ライプニッツ研究会」にて公開すること、2)各年度に定期的に研究会「ライプニッツ研究会」シンポジウムで上記テーマに関連した専門家を招聘し発表・討議すること、を中心に進めた。具体的には、1)の目的達成のために、上記ウェブサイト「ライプニッツ研究会」を構築する一方、2)のシンポジウム開催のためには、研究会を主宰し、自身も研究会司会ないしは研究成果の発表者として活動した。
著者
伊藤 康一 青木 孝文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題では,画像間の類似性を高精度に評価するための「局所位相特徴」と呼ぶ新しい特徴量を定義するとともに,基本となる画像照合アルゴリズムを開発した.また,これに基づいて,高精度な類似度評価が重要となるバイオメトリクスの問題に適用した.局所位相特徴に基づく画像マッチング手法を用いることで,顔認証,虹彩認証,掌紋認証,指関節紋認証において,世界最高水準の性能を達成することを実験を通して実証した.
著者
伊東 利勝
出版者
愛知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

王国内の地方村落コミュニティはアティー(平民)とアフムダーン(王務員)で構成されており,これらは人格的紐帯に基づく別々の支配体系に組み込まれていたので,村落の中で住民相互の利害が一致しなかった。日常生活は同一サイクルで展開されていたが,集落に住む人びとの心理的凝集性,すなわち村という社会単位への帰属意識は二次的であった。従ってこうしたコミュニティの中での我われ意識は流動的で,民族なる自覚(エスニシティ)はいまだ生まれていなかった。
著者
佐藤 裕之
出版者
弘前大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

(1)バルクナノメタルのマクロな残留応力の評価:残留応力と残留ひずみの評価方法について検討した。バルクナノメタルのように小型の試験材を対象として残留応力を測定する方法を検討するため,X線を用いた残留応力の測定方法について,東北大学の協力を得つつ,2D-XRD法の適用可能性について検討し,測定した。また,穿孔法によるひずみ-残留応力測定法についても実験した。提供を受けたバルクナノメタルの残留応力テンソルの測定を試み,残留応力の主応力と主軸の評価を行い次の結果を得た。ARB法により作成したバルクナノメタルの残留応力の主軸は,圧延方向と一致しており,熱処理によって主応力の大きさは変化するものの主軸の方向は変化しない。残留応力から見積もられるひずみは,バルクナノメタルの作成方法にも依存する。(2)マクロな変調組織を持つ合金の強化法の検討結晶粒径や硬度に分布や変調構造を作り込む方法として複合負荷による方法を実験的に検討し,室温強度と高温強度とマクロ組織の様相との関係を検討した。アルミニウム合金では,室温強度と高温強度(クリープ強度)を同時に改善できる場合のあることを見いだした。ホールペッチの関係やいわゆるDornの式からは,結晶粒の微細化による強度変化は,室温と高温では相反する依存性を持ち,広い温度範囲で強度を改善することは困難と予想されるが,組織の不均一さを積極的に生かすことによる室温強度と高温強度の同時改善の可能性を示した。高温強度の評価法として,代表者が提唱している「ひずみ加速指数」を用いる方法を改善して用いた。
著者
山中 俊夫 相良 和伸 甲谷 寿史
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

大空間を有するオフィスにおいて、自然換気を利用した次世代型自然換気・空調システムにおける様々な通風導入システムの室内気流・温度分布特性を温度、CRI3、CO_2濃度などの指標を用いて明らかにするとともに、省エネルギー性について検討を行い、自然風の利用によって空調による冷房負荷の約60%が削減されることを明らかにした。また、自然換気用チムニーの設置位置に関する基礎的なデータも収集した。
著者
田口 紀子 増田 真 永盛 克也 吉川 一義 杉本 淑彦 多賀 茂 王寺 賢太 アヴォカ エリック 辻川 慶子 村上 祐二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

フランスにおける、「文学」と「歴史」という二つの隣接ジャンルの美学的、認識論的境界の推移と、具体的文学作品での歴史認識の表出を、17 世紀から 20 世紀までのいくつかの特徴的局面に注目して検証した。2011 年 11 月には国内外から文学と歴史の専門化を招いて日仏国際シンポジウム「フィクションはどのように歴史を作るかー借用・交換・交差」を京都日仏学館で開催した。その内容を来年度を目途にフランスで出版するべく準備を進めている。
著者
森 治代 小島 洋子 川畑 拓也
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大阪府内で流行が拡大し、分子疫学的に大きなクラスターを形成するHIV-1 株に着目し、それらを特異的に増幅するPCR プライマーを用いることによりHIV-1 のsuperinfection(初感染とは異なるHIV-1 株に再感染すること)もしくは重複感染を簡便に検出する方法を開発した。3 種類の特異プライマーを作製し、HIV-1 感染者63 名から得られたプロウイルスDNA について検討した結果、2 症例においてサブタイプB 株の重複感染が認められた。
著者
原田 隆郎 横山 功一
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

橋梁の各種振動によって人体が受ける影響度の定量化手法を提案するため,本研究では歩道橋の振動問題に着目し,歩道橋横断時に利用者が感じる不快な揺れを生体脈波で評価するための実験的検討を行った.実験では,歩道橋の振動を実測するとともに,歩道橋利用者の歩行時の振動を同時計測し,両者の振動特性と人間の生体脈波の関係を把握した.その結果,歩道橋の振動変位が大きくなればなるほど不快感も大きくなるとともに,利用者の歩調が歩道橋の固有振動数と一致する場合に利用者の生体脈波が大きく変化することを確認した.
著者
橋本 栄莉
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

平成24年度の研究の目的は、現地調査を通じて独立後南スーダンにおいて発生している民族集団間の武力衝突と在来の予言者との関係について明らかにするとともに、植民地時代から現代にかけての予言者の影響力の歴史的変遷を明らかにすることであった。研究の成果は次の3点に大別できる。(1)独立後南スーダンにおいて発生している民族集団間の武力衝突と在来の予言者との関係について2011年-2012年に発生した民族集団間の武力衝突において、在来の予言者が紛争にいかに関与し、どの程度地域住民に対して影響力を持っているのかを、2012年12月~2013年3月にかけて実施した村落社会や難民キャンプにおける参与観察、聞き取り調査によって明らかにした。その結果、南スーダン政府や各種国際機関における予言者の解釈と、地域社会の人々の認識との間にはズレが生じていることが明らかとなった。この成果は研究ノートにまとめ、雑誌『Nilo-Ethiopian Studies』18号に投稿、掲載された。(2)植民地時代から現代にかけての予言者の影響力の歴史的変遷について現代南スーダンにおける在来の予言者のあり方について理解するためには、植民地時代から内戦、戦後復興期にかけての予言者の影響力の歴史的変遷について明らかにする必要がある。平成24年度は歴史的資料と現地調査を通じて、スーダン(南スーダン}の歴史的出来事、特に南スーダンの独立に注目し、1世紀以上前に存在していた予言者に関する知識がどのように人々の間で共有され、信じられてきたのかを明らかにした。この成果は研究ノートにまとめ、雑誌『アフリカ研究』81号に投稿、掲載された。(3)キリスト教と土着信仰の混淆状況について平成24年度に実施した現地調査の中で、多くの地域住民がクリスチャンである一方、予言者に対する信仰をはじめとする土着信仰もキリスト教の教義を接合されるかたちで人々の間で根強く存在していることが明らかとなった。この点についてはさらなる調査が必要である。
著者
奉 鉉京 加藤 鉱三
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は類似する母語(日本語・韓国語)話者による英語前置詞の第二言語習得研究である。理論的方針として、英語の前置詞と日本語・韓国語の助詞を、意味的・統語的考察から、プトロタイプ理論に基づく習得仮説(Prototypicality Hypothesis)と生成文法に基づく言語習得仮説(Economy-Driven Development Hypothesis)を2つの実験研究を通じて検証した習得実験研究では、各々の中間言語、つまり、日本語・韓国語を母語とする学習者のL2としての英語の前置詞の心的標示を3つの構築段階に分けて記述し、母語の影響、習得難易度などについて議論しながら、経済性に統率された習得仮説の優越を提訴した
著者
今井 直
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

国連人権理事会を創設した2006年3月の国連総会決議60/251は、「理事会が、重大かつ組織的な侵害を含む、人権侵害の事態に対処」すべきことを定める。新設の普遍的定期審査(UPR)については、基本的に人権侵害事態対処機能とは異なる趣旨のメカ二ズムであることが確認される一方、「アラブの春」の文脈では、人権理事会の活動にその発足以来はじめて積極的なアプローチが見られた。しかし、その常態化は困難であり、特別手続や人権高等弁務官などによる注意喚起が、人権理事会の審議や決議の「引き金」となるメカニズムを確立させることが必要である。