著者
谷川 攻一 細井 義夫 寺澤 秀一 近藤 久禎 浅利 靖 宍戸 文男 田勢 長一郎 富永 隆子 立崎 英夫 岩崎 泰昌 廣橋 伸之 明石 真言 神谷 研二
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.782-791, 2011
被引用文献数
2 4

東日本大震災は,これまでに経験したことのない規模の地震・津波による被害と福島第一原子力発電所の事故を特徴とした複合型災害である。3月11日に発生した地震と巨大津波により福島第一原子力発電所は甚大な被害を受けた。3月12日には1号機が水素爆発を起こし,20km圏内からの避難勧告が出された。14日には3号機が爆発,15日の4号機爆発後には大量の放射性物質が放出されるという最悪の事態へと進展した。一方,この間,原子力災害対応の指揮本部となるべく福島県原子力災害対策センターも損壊を受け,指揮命令系統が十分に機能しない状態となった。20km圏内からほとんどの住民が避難する中で,医療機関や介護施設には推定でおよそ840名の患者が残されていた。これらの患者に対して3月14日に緊急避難が行われた。しかし,避難患者の受け入れ調整が困難であり,重症患者や施設の寝たきり高齢患者などが長時間(場合によっては24時間以上)にわたりバス車内や避難所に放置される事態が発生した。不幸にも,この避難によって20名以上の患者が基礎疾患の悪化,脱水そして低体温症などで死亡した。一連の水素爆発により合計15名の作業員が負傷した。その後,原子炉の冷却を図るべく復旧作業が続けられたが,作業中の高濃度放射線汚染による被ばくや外傷事例が発生した。しかし,20km圏内に存在する初期被ばく医療機関は機能停止しており,被ばく事故への医療対応は極めて困難であった。今回の福島原子力発電所事故では,幸い爆発や放射線被ばくによる死者は発生していないが,入院患者や施設入所中の患者の緊急避難には犠牲を伴った。今後は災害弱者向けの避難用シェルターの整備や受け入れ施設の事前指定,段階的避難などを検討すべきである。また,緊急被ばくへの医療対応ができるよう体制の拡充整備と被ばく医療を担う医療者の育成も急務である。
出版者
京都
雑誌
総合文化研究所紀要 = Bulletin of Institute for Interdisciplinary Studies of Culture Doshisha Women's College of Liberal Arts (ISSN:09100105)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.18-49, 2015-07-16

江戸後期の有職故実家である松岡行義の著作、『源氏類聚抄』(宮内庁書陵部蔵本) の翻刻を呈する。本書は、『源氏物語』に示された建築・調度・装束等に関する注釈書である。松岡行義 (1794-1848) による有職故実書は、平安期文献を重視する原点回帰の姿勢、絵画や図面等により対象を視覚化することに特徴がある。本書は、『源氏物語』の読解のみならず、平安期における生活文化への探求、一九世紀における有職故実学の諸相を知る上でも重要となろう。研究ノート
著者
山口 輝臣
出版者
九州大学
雑誌
史淵 (ISSN:03869326)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.二五-五一, 2004-03-10
著者
近藤 純正 本谷 研 松島 大
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.821-831, 1995-12-31
被引用文献数
10 15

面積13km^2の宮城県秋山沢川流域について,「新バケツモデル」を用いて土壌水分量,流出量,積雪水当量の季節変化を計算し,さらに河川の熱収支式の解から河川水温を求めた.この研究では,山地の気象は平地のアメダスデータに基づいて,標高の関数として推定した.各標高の積雪量は雨雪判別式で計算し,融雪量は各標高の気温の関数とした.計算結果は河川の日々の最高水温の観測値がよく再現でき,また積雪水当量の標高分布の調査結果ともよく対応する.春期の山地における積雪水当量は500mm程度もあり,融雪期以後の地下水タンクの貯留水量の増加と,夏の流出量に大きな影響をもつ.1994年夏の渇水は,春の積雪水当量が他の年に比べて小さかったことも一因であると思われる.
著者
財津 亘
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.111-124, 2010 (Released:2010-08-27)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

Serial arsonists (N=125) were differentiated into four groups on the basis of their social independence and the degree of criminality, by using categorical principal components analysis (CATPCA). Results indicated the following. (1) Arsonists with high social independence and high criminality were aged 40 years or more in age, did not live with their parents, and tended to have criminal records for theft. (2) Arsonists with high social independence and low criminality were most frequently employed, high school graduates, married, and had no criminal record. Moreover, there were more female and mental patients in this group compared with other groups. (3) Arsonists with low social independence and high criminality were all male, compulsory education level (including high school dropouts), unmarried, not living with parent(s), and had no criminal record of theft. These arsonists tended to have relatively no criminal record of arson compared with other groups. (4) Arsonists with low social independence and low criminality were the youngest among four groups and were aged between 10 and 30 years, unmarried, lived with their parent(s), and had no criminal record. Results of log-linear analysis indicated that arsonists with high social independence tended to use a car or walk to the crime scene, whereas those with low social independence were inclined to use a bicycle. Moreover, arsonists with high criminality records tended to prepare the medium for arson in advance and drink alcohol before the offence, whereas arsonists with low criminality had a tendency to set fire to the same place repeatedly.
著者
藤吉 康志 工藤 玲 川島 正行 林 政彦 宮崎 雄三 青木 一真 山本 真之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

地上リモートセンサーと同時にグライダーでのin situ 観測を実施することによって、大気境界層内の各種物理量が整合的に変動することが確認できた。さらに、大気境界層上端に発生した強い乱れは、小さな積雲の縁に存在する極めて狭い下降流によってもたらされていたことが分かった。また、エアロゾルの時空間分布と光学的特性の変動要因を解明するため、エーロゾルの量と光吸収特性の鉛直分布を導出するアルゴリズムを開発し、日射による加熱量を推定した。アルゴリズムの検証は、滝川で行ったグライダー観測データで行った。その結果両者にはまだ不一致が見られ、さらなるin situ観測との比較が必要であることが明らかとなった。
著者
高橋 秀男 清水 晃
出版者
首都大学東京
雑誌
小笠原研究 (ISSN:03868176)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.9-20, 2007-03

小笠原諸島は東京の南約1000kmの太平洋上に南北に連なる聟島,父島,母島,火山(硫黄)の各列島などからなり全域が亜熱帯気候下にある.小笠原諸島は海洋島であり,一般に生物の種類数は少なく,固有種が多い.しかし近年父島,母島においては移入種であるグリーンアノールにより花蜂類を含む在来昆虫が激減しているという報告(苅部・須田,2004)がある.首都大学東京(東京都立大学)では返還直後から生物相の調査が行われている.このうち昆虫類膜翅目については,清水(1976)及び山崎ら(1991)の報告があり,主に父島,母島の貴重な標本が保存されている.本報では首都大学東京理工学研究科・生命科学専攻動物系統分類学研究室昆虫標本室に所蔵されている小笠原諸島産の膜翅目標本12科41種580個体のリストを作成した.このうちEnicospilus melanocarpus,E. signativentris(ヒメバチ科)は母島初記録,Bembecinus anthracinus ogasawaraensis(ギングチバチ科)は姉島初記録である.
著者
菅原 正 高倉 克人
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

1)光学顕微鏡観察およびフローサイトメトリによるベシクル集団解析のデータより、ベシクル内でのDNAの自己複製とベシクルの分裂が連動するダイナミクスを解明した。2)親ベシクルの自己生産で生じる娘ベシクルに、枯渇したヌクレオチドを包みこんだ運搬ベシクルを融合させることで、娘ベシクルに自己増殖能を獲得させた。3)ベシクル型人工細胞には、外的および内的刺激に対して、それぞれ選択的に活性化される4つのステージ (摂取、複製、成熟、分裂) があること、さらに、各ステージでの内部的変化が、ベシクルを次のステージへと駆動していることを明らかにした。
著者
広瀬 智久
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.31-35, 1971
被引用文献数
1

1) 貯蔵トマトの追熟中のペクチン質並びにペクチン酵素の変化を追究する目的で, 樹熟果の成熟中の変化を調べ, これと比較検討した。2) 水溶性ペクチンは, 未熟果からDark Pink stage頃まで, ほとんど増減がなく, それ以後次第に減少した。追熟果では樹熟果に比較して, Breaker stageからTable Ripe stageにかけて, かなり低い値であった。3) Calgon 可溶性ペクチンは, 未熟果では少く, 成熟につれて増加した。全期間を通じて追熟果の含量がやや大であった。4) 塩酸可溶性ペクチンは, 成熟に従って減少した。追熟果の減少速度は樹熟果に比べてかなり緩慢であった。5) Calgon抽出, 塩酸抽出を行った後のしゅう酸アンモニゥーム可溶性ペクチンは, 成熟とともに減少した。追熟果は樹熟果との間に全く差異が認められなかった。6) 全ペクチンは成熟とともに減少したが, 追熟果の減少の方が緩慢であった。7) ペクチンエステラーゼ活性は, 成熟の初期に急増し, Breaker stage以後変化がなかったが, 追熟果は全期間を通じてやや小さい値をとった。8) ポリガラクツロナーゼ活性はBreaker stageまで, わづかづつであったが, それ以後成熟未期まで著しく増加した。追熟果もほぼ同様であったがDark Pink stage頃やや低かった。